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独立行政法人労働者健康安全機構 中部ろうさい病院[糖尿病治療最前線]

2019年10月16日登載/2019年10月作成

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  • ●院長:加藤 文彦 先生
  • ●開設:1955年3月22日
  • ●所在地:愛知県名古屋市港区港明1-10-6

治療と仕事の両立支援を目指し
「オンライン診療サービス」をスタート

中部ろうさい病院は、東海地区で最初に「糖尿病センター」を設置した病院として知られる。同センターは現在、20床の専用病棟と、4つの診療室、3つの指導室を擁し、医師、看護師、薬剤師、管理栄養士、事務スタッフがチームを組んで、予防から治療、合併症管理までトータルに提供している。企業などで働きながら治療を受けるための支援に非常に力を入れており、その一環として2019年には「オンライン診療サービス」を導入し注目されている。

1. 糖尿病センターの概要 指導を重視した糖尿病医療を
充実した専用施設・多職種で展開

中部ろうさい病院が糖尿病センターを開設したのは1987年と、全国的にもきわめて早期だ。さらにそれに先がけ、1971年には糖尿病専門外来を開設している。名古屋大学医学部の代謝学教授が、退官後に3代続けて同院の院長に就任したことが、糖尿病に専門的に取り組むようになった背景にある。

同院は1955年に、労働災害・職業病治療を主たる目的として開院。その後、地域のニーズに応えながら急性期医療を担う名古屋市南部地域の中核病院として発展。一方で慢性期医療にも力を入れるようになった。糖尿病センターの設置はその象徴ともいえる。

糖尿病センターは病院2階の一角にある。受付窓口こそ心療内科と共同だが、その奥には専用の待合室を備え、待合室の片側一面には4つの診察室が並び、それと向き合うように看護外来や栄養指導のための指導室が3つ並んでいる。これらの指導室は常にフル稼働状態で、看護師と管理栄養士が一緒に行う透析予防指導は、受付前の相談室を活用して行っている状況だ。

現在、同センターで継続的に管理している患者は約3,500人に上る。糖尿病の診療にあたる常勤医師は、休職中の1名を含めて7名(うち4名は糖尿病指導医・専門医、1名は糖尿病専門医)、看護師は6名、栄養管理部に所属する管理栄養士6名、事務スタッフ2名である。

糖尿病内分泌内科・糖尿病センターの中島英太郎部長(栄養管理部部長を兼任)は、「糖尿病は医師が行う治療だけで良くなる病気ではなく、いかに患者さん自身に頑張っていただけるかが重要です。だからこそ私たちは指導に力を入れています。他の総合病院ではあまり見られないくらい充実した体制で外来での指導を行っているのも、患者さんや家族に糖尿病を正しく理解していただき、治療を継続し、良い状態を維持していただくためです」と患者指導を重視する姿勢を強調する。

中島 英太郎 糖尿病内分泌内科・糖尿病センター部長/栄養管理部部長

2. 治療と仕事の両立支援 機構主導のモデル事業で
糖尿病分野の中核的施設に

良い状態を維持するためには治療の継続が大前提であるが、糖尿病は重症化するまで自覚症状がほとんどないこともあり、治療を中断してしまうケースが珍しくない。そこで、中部ろうさい病院では、以前から治療と仕事の両立を支援する視点を重視している。特に、労災病院グループの経営母体である独立行政法人労働者健康安全機構が、「治療就労両立支援モデル事業」をスタートさせた1999年からは、仕事を持つ人が無理なく治療を継続できるための仕組みづくりを進めている。

藤田実医事課長によれば、労働者健康安全機構ではもともと就労者支援の立場から、予防医療に非常に力を入れていた。さらに、産業構造の変化などに伴い生活習慣病に罹患する就労者が増えたことから、治療と仕事の両立支援も同様に重視するようになったのだという。

「治療就労両立支援モデル事業は、がん、糖尿病、脳卒中(リハビリテーション)、メンタルヘルスの4分野について、全国の労災病院からそれぞれの中核的施設を定め、10年間にわたり実施し、2019年3月に終了しました。前半5年間は、アンケート形式による実態調査を、後半5年間は、実態調査の結果をもとに考案した方法で実際の患者さんに介入を行い、成果を分析し、その後の対策に活かしています」と藤田医事課長が紹介する。

同モデル事業において、中部ろうさい病院は糖尿病分野の中核的施設を担い、中島部長をリーダーに事業を遂行した。

「実態調査では、特に健康診断で血糖値の上昇を指摘された直後くらいの人たちが治療を中断しがちであることがあらためて明らかになりました。そこで、患者さんが心置きなく治療を続けることができるためには企業の協力が不可欠と考え、我々医療者と患者さんが働く職場の人々とのコミュニケーションツールとして『就労と糖尿病治療両立支援手帳』を開発し、2014年から活用してきました。そして2017年3月には、手帳を活用した支援方法を、『糖尿病に罹患した労働者に対する治療と就労の両立支援マニュアル』にまとめたのです」と中島部長が経緯を語る。これら手帳やマニュアルは、労災病院グループだけでなく、全国の病院や企業でも広く活用されている。

藤田 実 医事課長

モデル事業の成果として発行した『糖尿病に罹患した労働者に対する治療と就労の両立支援マニュアル』。両立支援コーディネーター育成のための基礎研修(後述)のテキストとしても活用している

3. 両立支援手帳の活用 主治医と企業が情報交換し
患者が働きやすい環境づくり

『就労と糖尿病治療両立支援手帳』を使った介入の対象者は、企業などに勤務している患者の中で、介入の同意を文書で得られた人たちだ。手帳活用のおおまかな流れは次のようなものである。

最初に、糖尿病センター外来に勤務する大森恵子看護師とMSWの2人で患者一人ひとりに対して面接を行い、病状の確認と、職場環境などについての聞き取りを行う。その内容を多職種カンファレンスで報告。ここで企業側に伝えるべき内容を検討・決定したら、大森看護師が手帳の情報交換ページに「主治医から企業関係者へのお願い」のかたちで記入する。そして患者に手帳をわたし、さらに患者が企業側担当者にわたすことで、メッセージが伝わる。企業関係者からの返事は、同じ情報交換ページに、「主治医からの依頼事項に対する回答、その他問合せ」のかたちで記入してもらう。それを次の受診日に患者に持ってきてもらうことで情報交換が成立する。

「会社側に患者さんの病気を知っていただくのが大きな目的です。企業の担当者は、患者さんの上司、あるいは産業医であることがほとんどです。たとえば、こちらから『低血糖に気をつけてください』などと書いたとすると、それに対する会社側の見解や対応を書いてもらえます。質問が返ってきた場合は、さらに手帳に答えを書いて、患者さんを介して戻します」と、大森看護師が具体的な運用の様子を話す。

活発にやりとりするというよりは、重要な情報にしぼって企業側に伝え、対応を促すのが主旨。特に問題がなければ、半年〜1年置いて、また同じように情報交換をする。同手帳を持つ患者は最初の3年間で約60名を数え、その後は年に10名ほどずつ増えている。

「手帳によるこうした情報交換により、ほとんどの患者さんが、以前より働きやすくなったと話してくれています。患者さん自身が口頭で説明するよりも、やはり主治医の意見として文書で伝える力は大きいと感じます」と中島部長。

ただし、それでも手帳の受け取りを拒否された例が2社あったという。拒否の理由は、「1人だけ特別扱いはできない」というものだった。近年は健康経営が脚光を浴びるなど、大企業を中心に企業の意識も変わってきてはいるが、まだまだの会社があるのも事実だ。経営者の意識改革がぜひ必要で、労働者健康安全機構でも、ライオンズクラブと提携して啓発活動に乗り出すなど取り組みを進めている。

治療就労両立支援モデル事業は、前述した通り2019年3月に終了したが、同4月からは新たに、モデル事業としてではなく日々の業務として、すべての疾患の患者に対して両立支援を行うことが、労働者健康安全機構の方針として打ち出された。4分野のモデル事業で蓄積されたノウハウがおおいに活かされるはずだ。なお、同機構では、治療就労両立支援モデル事業の一環として、患者・家族、医療側、企業側の3者の情報共有を図る専門家として、グループ独自の資格として「両立支援コーディネーター」の育成も行っている。

大森 恵子 糖尿病センター外来看護師

独立行政法人労働者健康安全機構オリジナルの『就労と糖尿病治療両立支援手帳』。要請があれば機構外の病院や企業にも提供している

4. オンライン診療 スマホのテレビ電話機能の活用で
職場にいながらの診察を可能に

『就労と糖尿病治療両立支援手帳』を運用しながら、さらに有効な方法はないかと模索していた中島部長が、「オンライン診療」の導入を考えたのは2017年2月のことだ。政府が遠隔診療を保険収載する方針であるというニュースを耳にした部長は、即座に機構本部に取り組みを提案。許可と予算を取りつけ、2017年4月から準備を始めたのである。

オンライン診療の対象は中部ろうさい病院糖尿病センターの通院患者である。診療はスマートフォン(スマホ)のテレビ電話機能を利用して行う。

「オンライン診療の前に、患者さんには予め問診票に答えて返信しておいていただきます。予約日時には、医師、看護師、管理栄養士、事務スタッフの4名が揃ってテレビ電話の前にスタンバイし、問診票の内容をもとにした医師の診察から始めます。続いて看護師と管理栄養士が透析予防指導を行い、最後に事務スタッフが決済の方法などを伝えて終了です」と説明するのは、オンライン診療のシステム管理などを担当する医事課スタッフの渡邊佳織氏だ。

「患者さんの状況やパケット使用量などを考慮し、オンライン診療は10分程度にしています」と渡邊氏。つまり、仕事の合間や昼休みなどに10分の時間をつくれれば診療を受けられるわけだ。費用はクレジット決済、薬の処方せんは郵送で対応している。

さらに、情報共有のためのアプリ、『curon』(クロン:情報医療社)を活用し、主治医からの情報提供や、企業側からの要望や質問を、インターネット上で共有できる仕組みもつくった。「両立支援手帳の機能をインターネット上に乗せたかたちです。やりとりにかかる時間は手帳に比べて格段に短縮されるし、複数回のやりとりも手軽にできます」と中島部長が利点を語る。

オンライン診療は、2018年6月からの1年間に企業側の積極的な協力が得られた20名の患者でまず実施。患者にはおおむね好評だったが、企業担当者からは、操作が少々面倒だといった意見も寄せられた。そこで、システムの改善を進めているところだ。

そして、最近はオンライン診療システムに『PHR(Personal Health Record)』のアプリを連動させる試みを始めた。一般の人が無料で使えるヘルスケアアプリに睡眠時間、食事内容などを登録してもらい、オンライン診療で活用するのが狙いだ。現在は、病院スタッフの有志をモニターに、試行を重ねている。

モニターの1人で、自らの日々の食事内容などの登録を進めている、中部ろうさい病院治療就労両立支援センタースタッフの鷲野峰子氏は、「市販の食品や飲料でよく買うものを登録しておくと、最初の登録が多少面倒でも、次回からは楽になりますし、自分が毎日の食事でどの栄養素をどのくらい摂っているかがわかり参考になります」と感想を語る。

また、外来、オンライン診療の両方で、多くの糖尿病患者の栄養指導にあたっている森山大介管理栄養士は、「患者さんが普段食べているものが具体的に記録されていれば、摂取カロリーもだいたい計算できますし、栄養バランスのよしあしもわかり、どの食品を何に換えるといいかなど、具体的なアドバイスができます。PHRの活用は、栄養指導、透析予防指導においても非常に有意義だと思います」と言う。

ちなみに中島部長も、自ら体重や血圧などのデータを登録して患者の立場を体験してみているが、「正直言って、入力の手間はかなり負担に感じる」と話し、もう少し気軽に使えるシステムを考える方針だ。たとえば近距離無線通信を利用すれば、既存の検査データをスマホに転送できる。そういった工夫をして、ほぼ自動的にデータが蓄積されるような仕組みを構築してから、患者に負担をかけないかたちで導入したい考えだ。

5. 今後の課題・展望 ICTを活用し地域連携を強化
将来的には医師の働き方改革も

中島部長は、「糖尿病は体重、血圧、血糖値といったデータが正確に、経時的に把握できれば、治療計画が立てられますし、日常の食生活や運動量がわかれば療養指導も可能です。つまり、ICTを活用すれば医師と患者さんが必ずしも直接会わなくても診療ができるのです。法的問題がクリアできれば、将来的には医師が自宅にいながらにして診療を行うことも可能になるでしょう。このことは、我々医師、特に子育て中の女性医師の働き方改革にもつながるものと期待しています」と展望を語る。

直近の課題としては、地域連携の強化を挙げ、そのためにもやはりICTを駆使したいと考えている。

「当院と地域の診療所の間で患者情報を共有できれば、より質の高い医療を提供できると思います。現在、個別に紹介・逆紹介を行って実施している合併症チェックや治療も、地域全体でもっとシステマティックに行っていくことができるでしょう。開業医の方々とも話し合いながら、良い仕組みがつくれればと思います」と中島部長。

勤労者支援をキーワードにさまざまな取り組みを実践している中部ろうさい病院。同院から、まったく新しいかたちの糖尿病医療のモデルが示される日も近そうだ。

糖尿病センター医療チームの皆さん。常勤医師実動7名、看護師6名ほか、管理栄養士、事務スタッフなど充実した人員配置を誇る

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糖尿病治療最前線

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