KYOWA KIRIN

このサイトは、日本国内の医療関係者(医師、薬剤師、看護師、技師・技士等)を対象に、弊社が販売する医療用医薬品を適正にご使用いただくための情報を提供しています。国外の医療関係者、一般の方に対する情報提供を目的としたものではありませんのでご了承ください。

自治医科大学附属さいたま医療センター[糖尿病治療最前線]

2019年12月2日登載/2019年11月作成

印刷用PDF

  • ●センター長:百村 伸一 先生
  • ●開設:1989年12月(旧大宮医療センタ―)
  • ●所在地:埼玉県さいたま市大宮区天沼町1-847

紹介窓口を「糖尿病重症化予防外来」に一本化
"30秒で記入できる紹介状"で病診連携を円滑に

糖尿病患者のQOLの維持・向上、医療費の抑制などを主な目的に、厚生労働省が推進する糖尿病性腎症重症化予防対策。埼玉県はその先進県であり、自治医科大学附属さいたま医療センターは、県の中心であるさいたま市の基幹病院として、その取り組みにおいてリーダー的な役割を果たしている。2018年4月には、「糖尿病重症化予防外来」を開設して開業医からの紹介窓口を一本化。同時に使いやすさを追求した連携パスの活用を開始し、地域連携のさらなる円滑化を図っている。

1. 糖尿病重症化予防外来の目的 開業医の声に応え
糖尿病患者の紹介窓口を一本化

自治医科大学附属さいたま医療センターは1989年12月、地域医療への貢献、辺地医療などに従事する医師の育成と生涯教育などを目的に、埼玉県旧大宮市(現さいたま市)に開設された。

同センターで糖尿病医療を担当する内分泌代謝科に、「糖尿病重症化予防外来」が開設されたのは、2018年4月のことだ。総合医学第1講座の原一雄教授(内分泌代謝科科長兼地域医療連携部部長)が、同外来開設の背景と目的を次のように説明する。

「糖尿病性腎症重症化予防プログラムの先進県である埼玉県では、糖尿病が重症化するリスクが高いにもかかわらず医療機関を受診していない人、あるいは受診を中断してしまった人に対する受診勧奨プログラムと、かかりつけ医と専門医の間での紹介・逆紹介プログラムの2つによって、糖尿病患者さんの透析予防に取り組んでいます。そんな中、さいたま市の基幹病院である当センターでは、専門施設としてこれまで以上に地域に貢献するためには、かかりつけ医の皆さんとの連携強化が特に重要と考え、患者さんを紹介していただきやすい仕組みづくりを目指してきました。その中心となるのが、紹介患者さんの受け入れ窓口としての糖尿病重症化予防外来です」

合併症の有無や重症度に関係なく、糖尿病患者であれば、すべて同外来で受け入れるというふうに、窓口を一本化したのが大きなポイントだと原教授は言う。いわば糖尿病医療の連携におけるワンストップサービスを実現したわけだが、それを後押ししたのは、窓口の一本化を望む地域の開業医たちの声だったという。従来から寄せられていた、「患者の症状によって、内分泌代謝科に紹介すべきか、腎臓内科にすべきか、あるいは眼科や循環器内科にすべきか、そのつど迷う」「複数の合併症がある場合は、それぞれの診療科に紹介状を書かなければならず、負担が大きい」などの声に応える形で実現したのだ。

糖尿病重症化予防外来の概要は図1の通りである。基本的には紹介されてきた患者は内分泌代謝科でまず診療し、必要に応じて関連する診療科に紹介して併診を行う仕組みになっている。

原 一雄 総合医学第1講座教授/内分泌代謝科科長/地域医療連携部部長

図1 糖尿病重症化予防外来設置の概要

2. 病診連携ツール 紹介時の使いやすさを追求した
糖尿病重症化予防連携パス

専門外来開設にあたっては、埼玉県の糖尿病性腎症重症化予防プログラムに準拠した専用の診療情報提供書も作った。それが「糖尿病重症化予防連携パス:紹介用」(図2)である。

「このパスのコンセプトは、"30秒で記入できる紹介状"です。宛名(自治医科大学附属さいたま医療センター内分泌代謝科担当医)や診断名(糖尿病)は最初から印字済みで、記入の必要があるのは、紹介理由や検査値といった必要最低限の項目だけです。しかも、文章を書く必要はなく、いくつかの項目にチェックしたり、HbA1cなどの数値を記入したりすればすぐに作成できます。窓口が1つで紹介状の作成が容易ということで、従来に比べて格段にご紹介いただきやすくなったと思います」と原教授。

同センターのあるさいたま市大宮区の大宮医師会からの指導を受けてパスを完成させた。また、医師会は専門外来の開設を会員に周知したり、専用の診療情報提供書の活用を促したりしてくれているという。「その意味では、当センターと大宮医師会の共同での取り組みと言ってよいと思います」と、原教授が地区医師会とともに歩む様子を語る。

図2 "30秒で書ける紹介状"をコンセプトとする「糖尿病重症化予防外来」専用の診療情報提供書

診療情報提供書を入れる封筒も専用で作成している

3. 初診から逆紹介への流れ 初診は専門医、2回目以降は多職種
HbA1cが安定したら逆紹介

糖尿病重症化予防外来は現在のところ、火曜午後、木曜午前、完全予約制で運営されている。同外来の主な人員は、医師の原教授と、従来から透析予防にかかわってきた看護師2名、栄養部に所属する管理栄養士約10名。この3職種で協力し合って診療と患者の療養指導を行っている。

「紹介患者さんが来られた場合、1回目の診療では、私が病状や状況を聞き取ります。ここで専門的な指導が必要と判断した場合は、2回目の受診に合わせて看護師による療養指導と管理栄養士による食生活のくわしい聞き取りと栄養指導の予約を入れます。他科の受診が必要な場合も、私が予約するのでスムーズです。このようにして病状が安定するまで通院していただきます。逆紹介の基準は、HbA1cがおおむね7.0%程度に落ち着いた段階と定めています」と、原教授が専門外来の流れを説明する。

同外来に紹介されてくる患者には、複数の合併症を持つなど複雑な症状の人が多く、外来開設から1年半ほど経っても、連携パスに則り逆紹介に至ったケースはほとんどないが、逆紹介時には、原教授はじめ関連部門での診療・指導内容を詳細に記し、血糖値やアルブミン尿の値が減少する経過などのデータを添付した資料をかかりつけ医に提供することにしている。

4. 腎臓内科の役割 24時間蓄尿で病状を正確に解析
患者一人ひとりにきめ細かく指導

糖尿病重症化予防外来との併診を行っている診療科の中でも、最も密なかかわりを持つのが腎臓内科である。糖尿病からCKD(慢性腎臓病)を発症する人(糖尿病性腎臓病患者)は全国的に増えており、これは同センターの患者においても同様だ。そのため、多くのケースで糖尿病を治療しながら、CKDの診断・治療を行うことになるのである。

腎臓内科科長で原教授と同じ総合医学第1講座の森下義幸教授が言う。「当科でも、内分泌代謝科の糖尿病重症化予防外来に全面的に協力しており、診療科間の垣根を低くして、連携パスに則って多くの患者さんを受け入れています。内分泌代謝科と腎臓内科の併診によって、糖尿病性腎臓病の重症化や、その先にある透析導入を、少しでも食い止めることができればと思っています」

糖尿病性腎臓病の患者が紹介されてきた場合、腎臓内科では、腎臓を守るための生活指導を主に行う。特に栄養指導は重要で、糖質制限からタンパク質制限に変わるなど糖尿病治療のための栄養指導とは内容が異なるので、それを理解し、実践してもらうために、栄養部と協力してきめ細かく指導することを心がけている。

「より適切な指導を行うために、糖尿病重症化予防外来から紹介されてきた患者さんには原則的に全員、最初に24時間蓄尿を行っていただきます。そして塩分やタンパク質、水分の摂取量を正確に解析し、数値に応じた栄養指導を行うようにしています」と森下教授。こうしたデータはわかりやすい図などにして患者に手渡し、それを一緒に見ながら説明を行うという。

腎臓内科での検査や指導の結果、腎臓はまだ専門的な治療を要するほどの状態ではないと判断した場合は、患者を内分泌代謝科に戻すが、多くの場合は継続管理が必要で、その場合は内分泌代謝科と腎臓内科の併診を続けることになる。2科による併診となるか否かの判断は、日本腎臓学会の『CKD診療ガイドライン』を基準に行っている。

森下教授は、「糖尿病重症化予防外来がスタートして以降、従来よりも早い段階で腎機能の低下を指摘され、当科に紹介されてくる患者さんが増えました。それにより早期の介入が可能になったのは有意義だと感じています」と連携強化の成果を語る。

なお、腎臓内科の外来は週に10コマある。これを10名余りの医師がシフトを組んで担当する。そのため、紹介患者への対応が医師によって異なることがないよう、腎臓内科内でのカンファレンスや症例検討会などを週に1回程度行い、情報共有を図っている。

一方で、治療のアウトカムを図示することにも力を入れている。先に、蓄尿のデータを患者に手渡すと書いたが、継続して通院している患者には、それを時系列でグラフ化して示したり、eGFRの変化を同じくグラフ化して示したりすることで治療の効果を目に見えるかたちで伝えている。

森下義幸 総合医学第1講座教授/腎臓内科科長

5. s-CKDプログラム 慢性腎臓病の早期発見・治療を
可能にする連携システム構築へ

糖尿病性腎臓病の治療を2科の併診で行うのとは別に、森下教授は糖尿病性ではない慢性腎臓病(CKD)の早期発見・治療にも力を注いでいる。

「糖尿病性腎臓病以外にもCKDを発症している場合があります。中でも特に腎硬化症といって、加齢や高血圧、脂質異常症等を原因とする動脈硬化性による腎症によって透析導入に至るケースが増えているのが問題です。また、減少傾向にあるとはいえ、慢性糸球体腎炎により透析導入となってしまうケースもまだまだあります。そういったものを予防するプログラムも必要なのです」と森下教授は指摘する。

CKDは、問診や血液検査、24時間蓄尿、腎画像検査などによって診断する。場合によっては腎生検が必要になる場合もある。検査の結果、たとえば慢性糸球体腎炎だと判明すれば、ステロイド剤等の尿酸抑制薬で加療する場合もある。このように、糖尿病性腎臓病と他のCKDの鑑別診断を行い、適切な治療を施して透析予防につなげることも腎臓内科の大きな役割である。

森下教授は現在、近隣の医療機関と協力しながら、「s-CKDプログラム(さいたま市CKD診療連携プログラム)」の作成を目指している。糖尿病重症化予防外来と同様に、CKDの重症化を予防するため、かかりつけ医から専門医へのCKD患者の紹介を推進し、透析予防につなげるプログラムである。「糖尿病重症化予防外来と車の両輪のようなかたちで運用できれば」と森下教授は言う。

同プログラムは、CKD重症化予防のための地域連携体制の完成をゴールとしている。すでに地域連携パスの原案はできており、専門医療機関も4施設ほどが参加を表明してくれている。今後は大宮医師会など関連機関も交えた会議の場で原案をより使いやすいかたちにブラッシュアップし、関係者の承認を得られた段階で、使用開始する予定である。

s-CKDプログラムにおける地域連携パス(紹介状・診療情報提供書)も、糖尿病重症化予防外来パスと同様に、紹介元の医師が迷ったり、書くのに手間取ったりしないように、患者の氏名、性別、生年月日と関連する検査値を記入する以外は、あてはまる項目をチェックするだけで作成できるように工夫されている。

かかりつけ医から専門医への紹介のタイミングは、日本腎臓学会の『CKD診療ガイドライン』を基準としており、一度でも尿蛋白や尿潜血が陽性になったり、eGFRが60ml/min/1.73m2未満に低下したりした場合には、速やかに紹介することとしている。

「この基準だとかなり多くの患者さんがあてはまります。そうした患者さんを見落とさずに管理していくためにも、かかりつけ医の先生方との診療連携を強化することにも同時に取り組んでいきたいと思っています。当面は、CKDに関する勉強会や、連携システムの説明会を重ねていく計画です」と森下教授。勉強会を通じた協力医療機関の拡大にも力を入れていく方針だ。

ただし、さまざまな取り組みを行っても透析導入に至るケースはあり、その場合は、QOLの維持・向上を重視したサポート、たとえば看護師による療養支援などに力を入れている。1回1時間程度を費やす看護外来では、療法選択支援から、透析導入に至った場合の食事や運動のポイント、地域とのかかわり方のアドバイスなどまで、丁寧に行っている。

6. 今後の課題・展望 2つのプログラムの
連携パスの融合を視野に

糖尿病診療における今後の課題について原教授は、糖尿病重症化予防外来を核とした予防システムの確立を挙げ、「逆紹介できる患者さんを少しずつでも増やしてきたい」と語る。また、「当科と腎臓内科それぞれで運用している地域連携パスを1つにまとめることができれば、開業医の皆さんの負担はさらに軽減され、ますます連携が進むと思います」と言い、森下教授と話し合いながら、より使いやすいパスを作成したい考えだ。

全国に先がけて糖尿病予防重症化予防プログラムを推進する埼玉県にあって、さらに有用なシステムの構築を目指す自治医科大学附属さいたま医療センター。同センターのシステムが全国のモデルとなる日は間もなくであろう。

KK-19-11-27394

糖尿病治療最前線

年末年始休業のお知らせ

下記の期間は年末年始休業とさせていただきます。
2019年12月28日(土)~ 2020年1月5日(日)
期間中はご不便をおかけいたしますが、ご容赦くださいますよう何卒お願い申し上げます。

おすすめ情報

  • おすすめ情報は、協和キリンのウェブサイトにおける個人情報の取扱い方針に基づき、お客様が閲覧したページのアクセス情報を取得し、一定の条件に基づき自動的に表示しています。
    そのため、現在ご覧いただいているページの情報との関連性を示唆するものではございません。

くすり相談窓口

弊社は、日本製薬工業協会が提唱するくすり相談窓口の役割・使命に則り、くすりの適正使用情報をご提供しています。
弊社医薬品に関するお問い合わせは、下記の電話窓口で承っております。

フリーコール

0120-850-150

受付時間 9:00~17:30
(土・日・祝日および弊社休日
を除く)

※お電話の内容を正確に承るため、また、対応品質の維持・向上等のため通話を録音させていただいております。あらかじめご了承ください。

お問い合わせ