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青森県立中央病院
[糖尿病治療最前線]

2021年10月15日公開/2021年10月作成

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病院外観
  • ●病院長:藤野 安弘 先生
  • ●開設:1952年
  • ●所在地:青森県青森市東造道2丁目1-1

内分泌内科・眼科・皮膚科が糖尿病センターに集結
専門医療と患者教育で合併症を予防・改善

青森県唯一の県立総合病院として、県全域を対象に幅広い医療を提供している青森県立中央病院。糖尿病センターの開設は2010年。その最大の特徴は、内分泌内科、眼科、皮膚科の3科によって構成されている点だ。それぞれの診療科が専門的立場から合併症に対応している。その一方で連携体制の整った多職種による糖尿病教育入院を3通りのプログラムで運営。全国的にも珍しい夜間糖尿病教室を開くなど、患者ニーズに応えながら、合併症の予防、早期発見、改善を実現している。

1. 糖尿病センターの概要 外科系に強い皮膚科の参画が特徴的
糖尿病センター病棟で3科が協力

小川 吉司 糖尿病センターセンター長

小川 吉司
糖尿病センターセンター長

青森県立総合病院の糖尿病センターは2010年、「合併症を未然に防ぐこと」「合併症を早期に診断して悪化・進展を防ぐこと」「進行した合併症を専門的治療で改善させること」の3つを目標に掲げ、糖尿病の合併症に徹底的に取り組むべく開設された。

「糖尿病センターを持つ病院は全国にたくさんありますが、当センターは、内分泌内科、眼科、皮膚科の3科で構成されているという点が特徴的です。特に皮膚科が入っている糖尿病センターは珍しいでしょう。当院の皮膚科は外科系のスキルが高く、壊疽による足指切断術などは整形外科に頼ることなく皮膚科内で実施できます。これは大きな強みです」と話すのは、2008年に同院に赴任し、センター立ち上げを主導、現在は副院長、医療安全管理室長、栄養管理部長なども兼務する小川吉司糖尿病センターセンター長だ。

同センターのメインの拠点は病棟にある。糖尿病センター病棟(5階東病棟)に3科が揃い、約60床のベッドを共有している。ここでは多職種による糖尿病教室の開催、眼科、皮膚科で入院中の糖尿病患者に対する療養指導、視力障害のある糖尿病患者の生活支援、糖尿病患者の皮膚検診などを協力して行っている。なお、糖尿病センター外来は、3科が並んではいるものの、別々のブースで診療を行うのが基本だ。

小川センター長によれば、同院を受診する糖尿病患者には、合併症が進行してから紹介されてくるケースが目立つという。中でも多いのが、硝子体出血を起こした段階で開業医から同院眼科に紹介され、初めて糖尿病と診断されるというパターンだ。

「この場合は、まずは内分泌内科で糖尿病のコントロールをある程度行ってから、眼科で手術を行うことになります。目が見えなくなるまで糖尿病が放置され、診断すらされていないケースが多いのは、青森県の特徴かもしれません。実は青森県は、糖尿病による死亡率が2019年までは全国ワースト1位でした(2020年はワーストから3番目まで、やや改善)。健診の受診率が低いこと、高血糖を指摘されても放置してしまう人が多いことなどと関係しており、早急の改善が必要だと考えています」と、糖尿病を取り巻く青森県の状況を、小川センター長は深刻に受け止めている。

糖尿病センターを構成する3科それぞれの規模を示す受診者数は、2020年時点で、内分泌内科外来が年間のべ2万5,000人(うち新患250~300人)、入院が同4,500人、眼科外来が同1万2,000人(うち新患600人)、入院が同3,000人、皮膚科外来が同1万6,000人(うち新患600人)、入院が同3,500人となっている。この中には多様な疾患が含まれるが、全体の約8割は糖尿病患者が占めている。

2. 特徴的な取り組み 腎症2期から透析予防の「指導外来」を実施
糖尿病網膜症や足病変にも専門的に対応

糖尿病センターでは、各科がいち早く最新技術を取り入れたり、独自の診療システムを築いたりして治療効果を上げている。

■透析予防の指導外来
内分泌内科で2013年にスタートした透析予防のための「指導外来」では、内分泌内科の医師、CDEJ(日本糖尿病療養指導士)の資格を持つ看護師と管理栄養士がチームを組んで、電子カルテで患者情報を共有しながら、これまでに1,300人ほどの患者を指導。糸球体濾過量(GFR値)の悪化を防ぐなどの実績を残している。

最初の3年間は糖尿病性腎症3~4期の患者を対象としていたが、これでは透析移行を完全に予防するのは難しかったことから、2017年からは対象をより軽度の2期程度の患者に引き下げ、1期への回復も視野に進行予防に力点を置いている。2期から介入した患者は検査値が改善されることが多く、進行してもそのスピードが遅いケースがほとんどという。

小川センター長が担当した症例の中には、患者である父親のために娘さんが減塩食などに真剣に取り組み、結果的に3期から1期目前まで回復したケースもある。こうした経験から、「糖尿病性腎症の進行を左右するのは家族のかかわり方だとつくづく感じます」と実感を込める。

「指導外来」は週3回、1回2人で、週に6人ずつ、こつこつと症例を重ねている。今後、指導が必要な患者が増えることを想定し、「看護師外来」など新しい仕組みも検討中である。

他科に入院している患者も含めて、インスリン治療の指示を、内分泌内科で集約して行っていることも各科の医師たちに喜ばれている。これにはオリジナルの「インスリン指示書」を用い、電子カルテで共有している。

■25G(ゲージ)システムによる硝子体手術
眼科で力を入れてきた取り組みには、25G(ゲージ)システムを用いた硝子体手術がある。25Gとは器具を挿入するために開ける傷の大きさのことで、目に見えないほどの小さな傷を眼球の壁に3つ開け、硝子体を取り出すことで出血や濁りを解消する。低侵襲のため患者の負担が少なく、回復が早いのが特徴だ。同院では年間200例ほどの硝子体手術を行うなど多くの患者を糖尿病網膜症から救っている。

眼科では、糖尿病センターに入院した患者の眼底検査もしっかりと行うなど、糖尿病網膜症の予防にも貢献している。

■全身の皮膚のスクリーニング
皮膚科では、全国的にも珍しく、教育入院の最初に全身の皮膚のスクリーニングを行っている。特に靴擦れや水虫など足病変を見つけて早期に治療することで、潰瘍や壊疽に進行するのを防いでいる。このスクリーニングで足病変が見つかる患者は、軽症も含めると実に全体の70~80%。軽い水虫程度でも放置せず、早期からの治療で悪化を防ぐ。また、靴の選び方、暖房器具によるやけどへの注意喚起など、足のケガを防ぐための教育も行っている。

看護師主導で行っている「フットケア外来」、入院患者へのフットケア指導などで対応しきれない症例も、皮膚科医が専門的に治療している。

インスリン指示書。他科の入院患者も含めてインスリン指示は
内分泌内科で行っている

インスリン指示書。他科の入院患者も含めてインスリン指示は内分泌内科で行っている

眼科医による眼底検査

眼科医による眼底検査

看護師主導の「フットケア外来」(右写真)と入院患者へのフットケア指導(左写真)

看護師主導の「フットケア外来」(右写真)と入院患者へのフットケア指導(左写真)

3. 教育入院・糖尿病教室 3通りの教育入院で患者ニーズに対応
入院できない人には「夜間糖尿病教室」を実施

糖尿病治療の一環として、特に力を入れているものに教育入院がある。「糖尿病の教育入院のシステムを持つ病院が青森市内には当院を含めて3つしかないこともあり、使命感を持って実施しています」と小川センター長が言う。

同センターでは、それぞれ異なる入院期間を設定した3通りの教育入院を完備している。「2週間」「1週間」「3泊4日(金曜~月曜)」で、基本となるのは、各種処置、検査、運動、1日2~3回の糖尿病教室などを組み込んだ「1週間」の教育入院用クリニカルパスだ。「2週間」ではそれを2クール行うため、必要な検査や治療が多い人でもすべてのプログラムに漏れなく参加できる。「3泊4日」は最低限の検査と勉強をする機会と位置づけ、蓄尿検査など入院しなければできない検査をメインに、可能な範囲で他のプログラムにも参加してもらっている。教育入院の患者には、教材としてオリジナルの『糖尿病教室テキスト』を配付する。

教育入院中の糖尿病教室には、患者同士の討論の場も設けられている。「糖尿病が原因で網膜症になり眼科に入院している方、足を切断した方など、合併症の進んでしまった患者さんたちに討論に参加していただき、体験を語っていただくと、多くの患者さんは糖尿病の怖さを実感されるようです。入院患者さんからの、『自分みたいにならないためにも生活を改善したほうがいい』という言葉には説得力があります」と小川センター長。

この取り組みは糖尿病センターができて間もなくの頃、看護師の発案で始まった。このことを小川センター長は、「センターができたことでスタッフのモチベーションが高まったことの証の1つ」と分析。ここ10年余りでCDEJや、青森糖尿病療養指導士の資格取得者が増えたことも同様の効果だと話す。

さらに、入院はおろか、日中、病院に来ることもままならないという人たちに向けて、「夜間糖尿病教室」を開いている。CDEJ(日本糖尿病療養指導士)の制度が始まった2002年11月にスタートしたもので、年4回、18:00頃~20:00頃の2時間前後、患者とその家族など、毎回定員20人の予約制で実施している(コロナ禍では休止中)。予約枠がすぐに埋まるほどこの教室は好評だ。

当日は管理栄養士がつくったお弁当を提供し、前半はそれを食べながら、作り方や食事のポイントを教える。後半は医師、看護師、薬剤師、管理栄養士、臨床検査技師、健康運動指導士などが持ち回りで講義を行う。この講義のテーマや担当者は年度始めに計画する。4回のうち1回は必ず医師が担当し、糖尿病についての基本的な解説を行うが、ほか3回は話し合いで決める。

基本となる1週間の教育入院プログラム

基本となる1週間の教育入院プログラム

内容を絞り込んだ3泊4日の教育入院プログラム

内容を絞り込んだ3泊4日の教育入院プログラム

基本となる1週間の教育入院プログラム

運動療法指導士による糖尿病教室

4. 多職種会議 「糖尿病合同カンファレンス」で治療方針を共有
「糖尿病サポートチーム委員会」も活発に活動

糖尿病センターのスタッフは、内分泌内科に所属し糖尿病の診療に携わっている医師7名(うち2名が非常勤)、眼科医3名、皮膚科医4名。看護師は糖尿病センター全体で26名である。他の職種はそれぞれの部門に所属しながら、同センター担当者として糖尿病患者の治療や指導に携わっている。

各部門の担当者は週に1回集まり、新規入院患者についての治療方針の共有を図る「糖尿病合同カンファレンス」を行っている。メンバーは事前に電子カルテを開き、「糖尿病合同カンファレンス用シート」に自分の持っている情報を記入。実際のカンファレンスではこのシートをプリントアウトして各自が見ながら、問題点などを出し合い、検討する。カンファレンスで共有した内容はあらためてシートに記入し、各患者への対応の指標とする。

「比較的厳しい指導に耐えられそうな人、そうでない人、日頃の運動量の多い人、少ない人、食事療法と運動療法のどちらに興味があるか、治療のためのキーパーソンは誰かなど、事前の細かな情報共有ができているから、話し合いは比較的効率的に進みます。1回に扱う患者さんの数は3、4人から多くて7、8人。活動を継続するためにも、できるだけ1回のカンファレンスが1時間以内に済むように各自が準備しています」と小川センター長が紹介する。

もう1つ、多職種合同で行う会議に「糖尿病サポートチーム委員会」がある。こちらには、日常的に糖尿病センターにかかわっている専門職に加えて、同センターから異動し、センターでの経験を他科で生かしている看護師や、心理分析・メンタルサポートが必要と判断したときにセンターに来てもらったり、糖尿病教室に協力してもらったりしている臨床心理士、医事課の事務職員なども加わり、多種多様なテーマで活動している。

医療安全管理室長でもある小川センター長としては、糖尿病患者に関連するインシデントやアクシデントについても同委員会で取り上げ、対策についての意見を聞くようにしている。災害対策も大きなテーマであり、最近は、日本糖尿病協会作成の『糖尿病連携手帳』と同じ判型の小冊子、『糖尿病治療中の患者さんの安心メモ~災害の備え~』(全12ページ)を委員会名で作成した。このほか糖尿病をテーマとした県民への啓発活動などについてアイデアを出し合う場にもなっている。

外部組織と連携する場としては、主な紹介もとの医師との合同研究会である「糖尿病ネットワーク」、地域連携部と糖尿病センターとの共同で2019年から取り組んでいる介護施設スタッフを対象とした勉強会、「糖尿病連携研修会」などがある。後者は、糖尿病患者が多いにもかかわらず正しい知識が行き渡っていない介護現場に問題意識を持った地域連携部の提案で始まった。1日かけて6コマの講義を行い、全講義を受講した参加者には修了証が授与される。講師は小川センター長と内分泌内科の松井淳部長が中心だ。2019年の第1回の受講者は80名だった。2020年、2021年はリモート開催ながらも継続。県内の介護現場に糖尿病の知識が行き渡るまで続けて行きたい考えだ。

同院の医療連携部はこのほかにも地域に役立つ取り組みを積極的に進めており、現在は県内全域の医療機関の機能がわかる「医療マップ」を制作中で、近々公開予定である。

糖尿病合同カンファレンスの様子

糖尿病合同カンファレンスの様子

入院患者の治療方針共有ツールである
「糖尿病合同カンファレンス用シート」

入院患者の治療方針共有ツールである「糖尿病合同カンファレンス用シート」

「糖尿病サポートチーム委員会」で作成した『糖尿病治療中の患者さんの安心メモ~災害の備え~』

「糖尿病サポートチーム委員会」で作成した『糖尿病治療中の患者さんの安心メモ~災害の備え~』

講義を行う松井淳内分泌内科部長

講義を行う松井淳内分泌内科部長

5. 今後の課題・展望 糖尿病患者の早期発見が先決
院内外の連携強化で腎症治療を円滑化

「今後は、いまだ埋もれている患者さんをいかに発掘し、治療につなげていくかが重要」と小川センター長。「特に、これまでの経験で、透析導入に至る患者さんには、遺伝が濃厚な糖尿病を、若い段階で発症した人が多いとわかっているので、そういう人たちだけでも早期に見つける仕組みをつくりたいと思います。たとえば県民の健康状態をデータ化して管理し、年齢や血糖値などいくつかの指標によって早期発見につなげるシステムなども考えています。あとはとにかく市民啓発。住民の意識をなんとか変えていかなければ」と力を込める。

一方で、院内連携、地域連携のさらなる強化も進めている。小川センター長の現在の問題意識は、糖尿病性腎症と腎硬化症(高血圧性腎症)、ネフローゼ症候群などが混在し、糖尿病センターと腎臓内科の役割分担が曖昧な点、また、人工透析は別途、泌尿器科が担当しているため区別されがちな点にある。

「さまざまなタイプのあるCKDを、原因や病期によって整理し、担当する診療科を明確にすることで、地域の医師の皆さんから、より気軽に患者さんを紹介していただけるようにしたいと思います」と、診療科の枠を超えた仕組みづくりを目指している。

小川センター長は糖尿病センターについて、「やる気とまとまりのある、良い医療チームになってきました」と語る。新しい取り組みに次々にチャレンジしている青森県立中央病院糖尿病センター。その努力は着々と実を結んでいる。

※写真提供:青森県立中央病院糖尿病センター

KKC-2021-01113-1

糖尿病治療最前線

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