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医療法人渓仁会 手稲渓仁会病院[外来化学療法 現場ルポ]

2018年09月28日登載/2018年09月作成

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  • ●院長:成田 吉明 先生
  • ●開設:1987年12月
  • ●所在地:北海道札幌市手稲区前田1条12丁目1-40

化学療法の目的を本人・家族と共有しつつ
がんと向き合う生活を多面的にサポート

急性期の総合医療を提供する医療法人渓仁会手稲渓仁会病院は、がん医療、救急医療、災害医療などさまざまな分野で地域の中核的役割を担っている。2007年12月に開設した外来化学療法室は、腫瘍内科医の赴任(2013年)、各種マニュアルの整備、新棟(F棟)への移転(2015年)などを経て機能・規模ともに充実。現在までに医師、看護師、薬剤師をはじめとした多職種チームで患者と家族を支える独自の仕組みを構築している。

1. 病院概要 1987年の開業から30余年
成長を続ける地域の中核病院

医療法人渓仁会手稲渓仁会病院は1987年12月、500床の病院としてJR函館線手稲駅前に開業した。札幌駅からは電車で10分。国道や高速道路のインターチェンジからも近く、開業以来、多くの人々に親しまれている。

「地域住民及び利用者から信頼され、質の高い効率的な急性期総合医療サービスの提供」をミッションとして掲げ、施設や機能の拡充を重ねてきており、これまでに地域医療支援病院、地域がん診療連携拠点病院、救命救急センター、ドクターヘリ基地病院、地域災害拠点病院、初期臨床研修指定病院などの指定を受け、その役割を果たしている。

医療機能のさらなる向上、充実を目指して新棟(F棟)を竣工したのは2015年12月。合わせて既存棟の改修工事も行い、手術室や特定機能病床の増設、人工透析室や外来化学療法室の移転などを実施した。2018年4月現在、標榜科目数は36、ベッド数はICU、SCU、NICU、GCUなど含めて670床である。

このように急性期病院としての機能を高める一方で、かかりつけ医機能は縮小しているが、その分、多職種を配した患者サポートセンターを設置するなど、相談、紹介といった支援機能を強化し、さまざまな症例に対応している。

2. 外来化学療法室 2015年12月竣工のF棟1階に移転
患者をチームで支える体制を構築

同院に外来化学療法室が開設されたのは2007年12月である。当初の病床数は15床で、リクライニングチェアタイプが大半だった。また、常勤の腫瘍内科医はおらず、患者の主治医である各診療科の医師の指示により化学療法が行われており、その基本スタイルは現在も継続している。

同室の体制が大きく変わったのは2013年4月、石黒敦・腫瘍内科部長が赴任し、外来化学療法室室長を兼務するようになったのが大きなきっかけだ。石黒室長は薬剤部に働きかけて外来化学療法室への専従薬剤師の配置を可能にしたり、看護師や薬剤師とともに各種業務マニュアルをつくったりと、がん患者を受け入れる体制や環境を整備していった。

2015年12月外来化学療法室がF棟に移転し、同室の病床数は20床で、15床がベッド、5床がリクライニングチェア。ベッドは通し番号で、リクライニングチェアは色札で区別し患者をスムーズに案内している。ベッド、チェアともに左右のスペースに余裕があり、スクリーンカーテンで仕切ることができるので、患者は個室のような空間で治療を受けることができる。

部屋の中央にはスタッフステーションがあり、外来化学療法をはじめて間もない患者やアレルギー症状をはじめ治療中の急性症状のリスクが高い患者などはスタッフステーションの近くのベッドを、治療に慣れており安定している患者には奥のベッドを利用してもらうなど安全性や安心感を高めるための工夫をしている。外来化学療法室で治療を受ける患者の数は平均1日30人余り。多い日は50人を数える。

「外来で標準的な化学療法を実施する、という意味では当院の外来化学療法室はごく一般的といえます。しかし、患者さんが来院されてから化学療法を受けていただくまでの動線や、その後のフォローに関しては当院ならではの特徴ある取り組みをしています」と石黒室長。室長の言う動線とは、「来院」→「採血」→「ヘルスアセスメント」→「診察」→「服薬指導」というふうに、各職種がバトンタッチをするように順々にかかわり、段階的かつ多面的に患者の全体を捉え、チームとしてサポートしていく仕組みである。こうした流れの中で、それぞれが電子カルテの書き込みを行い、同時に患者情報を共有する。

石黒 敦
腫瘍内科部長兼外来化学療法室室長

外来化学療法室全景

スクリーンカーテンで仕切ることができる外来化学療法室のベッド。適度にプライバシーが保たれる

3. ヘルスアセスメント 共通の書式で有害事象などを事前にチェック
「本日の治療意欲」を特に重視

ヘルスアセスメントとは、手稲渓仁会病院の全診療科で実施している、看護師による外来化学療法を受ける患者や家族への聞き取りのこと。オリジナルのヘルスアセスメント表を用いてバイタルサインや有害事象をチェックするほか、セルフケアの状況や、患者・家族の思いなどを聞き取るのが特徴で、特に「本日の治療意欲」の項目が重要な意味を持つという。

「本日の治療意欲」は、「あり・なし・どちらでもない」の3択。聞き取りを担当した看護師はいずれかに○をつけるが、それだけでは済ませない。「がんの化学療法を受けることに対し、患者さんが前向きでいられなくなることは珍しくありません。そんなとき、私たちが重視するのは意欲が下がってしまった理由です。治療そのものが辛いのか、一時的に目的を見失ったのか、あるいは明日お孫さんに元気な姿で会うために副作用を避けたいという気持ちなのかなど、背景はそれぞれです。その背景をお話しいただいたうえでサポートするようにしています」と語るのは、山谷淳子・がん化学療法看護認定看護師だ。

なお、ヘルスアセスメント表に「本日の治療意欲」の項目を設けたのは看護研究がきっかけだ。看護研究で看護師が患者にどのようなことを聞いているのか調べたときに、各診療科の看護師がそれぞれ治療意欲について聞いていたため重要項目と判断し、ヘルスアセスメント表を改定するときに加えたという。

ヘルスアセスメントで把握した意欲や思いなどは医師や薬剤師、場合によってはMSWなどと共有し、その後のフォローに活かしていく。「限られた時間の中で可能な限り患者さんとコミュニケーションをとり情報を得たい。そのためにも看護師によるアセスメントは重要です。また、外来化学療法室で点滴などを実際に行う看護師が、事前に患者さんとお話しさせていただくことで、患者さんの気持ちに沿ったケアができると思いますし、そのことが治療を継続しようとする意欲を高めていただくことにもつながると思います」と石黒室長が語る。

山谷淳子
がん化学療法看護認定看護師

ヘルスアセスメント表

4. 診察 看護師や家族の同席もしばしば
今後の見通しへの理解を重視

ヘルスアセスメントの結果や患者の状況によっては、その後の診察に看護師が同席することもある。山谷看護師によれば、看護師が同席するのは、初診日や、治療効果判定の説明の場面、治療や療養の意思決定の場面など。

「医師と1対1よりも、他に誰かいたほうが話しやすいという人もいるでしょうし、事前のヘルスアセスメントで看護師が感じたことを診察の場面で活かすこともできると思っています」と山谷看護師。また、石黒室長は、「深刻な病状にある患者さんと向き合うことは、医療者にとっても負担の大きいものです。そんな負担を分け合う意味でも、看護師同席の診察は有意義だと感じています」と言う。

診察に家族が同席することもしばしばだ。そんな状況を想定して腫瘍内科の診察室にはイスが5、6脚用意してある。看護師が選んだ鮮やかなグリーンのイスで、診察室の雰囲気が明るく感じる。

診察において石黒室長が重視しているのは、今後の経過について患者に十分理解してもらうことだ。「進行を予防するために抗がん剤を使うが、抗がん剤は万能ではないので、いずれ転移などが起こってくることもある。治療を続けてどれくらいの期間でそういう時期が訪れるのか、そのときどう対応するか一緒に考えたい」といったことなどをじっくりと話す。緩和ケアの概念なども早い段階で伝えておく。

外来化学療法室に隣接する腫瘍内科診察室での診察イメージ。
医師と看護師、患者と家族が同席することも多い

5. 服薬指導 専従薬剤師は服薬指導に特化
対話を通しエンパワメントを実感

外来化学療法室の専従薬剤師として最初に着任したのは、日本医療薬学会がん専門薬剤師の資格を持つ平手大輔薬剤師だ。「高度な薬物療法を行う外来化学療法室には専門的な知識を持つ薬剤師がぜひ必要」という石黒室長の推薦もあり、従来から同室に相談役として出入りしていた平手薬剤師を2013年8月、専従とする体制に変更した。その後、同じ資格を持つ複数の薬剤師が一緒に仕事をするようになり、外来化学療法室に薬剤師が常駐する体制が整った。

平手薬剤師によれば、同室専従薬剤師は服薬指導や処方提案に特化して仕事をしている。つまり、注射薬のミキシングなどは薬剤部のほかの薬剤師に任せることができているということだ。薬を薬剤部で使用できる状態にして病棟や外来化学療法室に運ぶやり方は以前からだが、新しくF棟ができてからはこの作業がよりスピーディーになった。その秘密は、薬剤部と外来化学療法室の位置関係にある。外来化学療法室はF棟1階にあるのだが、実は薬剤部はその真下のB1階にあり、これらは医薬品運搬用の昇降機でつながっている。これを使えば、薬剤部内の安全キャビネットでミキシングした薬をすぐに外来化学療法室に搬送することが可能となっている。

服薬指導に特化できるメリットについて平手薬剤師は、「事前に医師から説明されている治療の目的について患者さんが理解できているか、確認するところから始め、理解が不十分であればあらためて薬剤師から抗がん剤の治療の目的について説明する時間的余裕があります。また、薬が服用できない患者さんについて、主治医や看護師に相談しながらその理由をさぐり、どうすれば飲めるかを患者さんと一緒に時間をかけて考えられますし、副作用のコントロールなどについてもじっくりアドバイスできます。ミキシングなどほかの業務に追われてしまうと、どうしても話を早めに切り上げたりしがちだと思うのですが、当院ではそれがありません。服薬指導をしながら、化学療法そのものについての不安や治療に対する受容の状況なども捉えて、医師や看護師にフィードバックすることもできますので、チーム医療の実践という意味でも、薬剤師が余裕を持って患者さんと向き合う時間を持てるのは大きいと思っています」と語る。

薬剤師がきめ細かくフォローすることで、たとえば副作用が強く外来での治療が継続できるか心配されていた患者がしっかり副作用と向き合い、自主的に通院できるようになったり、1回目の服薬指導のときにはまだ自分の置かれた状況を受け止めきれずにいた患者が、服薬指導を重ねる中で徐々に理解し、前向きな気持ちに変わったりといった症例を通し、患者のエンパワメントの一端を担っているという手応えを感じているという。

2018年5月には、処方設計をより効率的に行ったり、患者の理解を更に深めたりすることを目指して、薬剤師による一連の説明を診察の前に移動し、新たに「薬剤師外来」を開設した。正面玄関に隣接する患者サポートセンターの部屋を使い、あくまで患者に負担のない動線の範囲内で行っている。ここでは使用する抗がん剤に合わせた支持療法や検査の入力なども薬剤師が行えるようになっている。

平手大輔
日本医療薬学会がん専門薬剤師

服薬指導のイメージ

外来化学療法室と薬剤部をダイレクトにつなぐ昇降機

昇降機前にあるデスクスペース。パソコンが設置されており、他職種スタッフとの情報交換の場ともなる

6. 患者支援 電話訪問でセルフケア支援
MSWや地域療養支援看護師とも連携

外来化学療法を開始した患者には、タイミングを見計らって看護師が電話訪問を行うことがある。目的はセルフケアの支援で、患者自身が自己管理をうまくできるようにアドバイスしたり、患者それぞれの状態に合わせた言葉がけをしたりする。

「特に、もともとかかっている診療科からフォローアップの依頼があった患者さんや、ここさえうまくいけばより安楽に暮らしていただける、というようなことがある患者さんには積極的にかかわるようにしています。治療の前後や診察のときなどに、『看護師からご自宅にお電話してお話しすることもできますがいかがですか』などと声をかけると、ほとんどの患者さんが受け入れてくださいます。お電話するのは特に有害事象が出そうな時期です。たとえばお通じのコントロールがうまくいかないといったときに、対応の仕方をアドバイスしたり、すでに患者さん自身で対応されていた場合、『それでいいんですよ』とお伝えしています」と山谷看護師が説明する。

外来化学療法室では、看護師は患者担当制ではないので、電話訪問もそのとき患者さんに応対した看護師が行う。山谷看護師は、「電話訪問にしてもヘルスアセスメントにしても、看護師のコミュニケーションスキルが問われているのを感じます。これから経験を積んで、もっと上手に患者さんの力を引き出すことができるようになれたらと思っています」と言う。

患者の中には在宅で終末期を過ごすことを希望している人もいる。そんな患者についてはMSWや地域療養支援看護師につないで適切なフォローをしてもらっている。

7. 独自のマニュアル 「抗がん薬曝露対策マニュアル」を
独自に作成し院内全体に周知

石黒室長が着任してからは各種マニュアルを整備したと先に書いたが、その代表的なものの1つが「抗がん薬曝露対策マニュアル」である。医師、がん化学療法看護認定看護師である山谷看護師、感染管理認定看護師、平手薬剤師はじめがん専門薬剤師、ほかに事務部門のスタッフなども交えてワーキンググループを組織し、曝露予防の重要性を確認し、予防のための対策を整理していった。2013年当時、曝露予防に特化した本邦のガイドラインはなく、全国的にも取り組みを行っている事例が少なかったため、文献等を参照し作成した。

「具体的に曝露にどのような危険性があるのかといったところから意見が割れている状態でした。医師の中には、昔から現場で扱っている薬だから大丈夫と言う人もいたりして、それぞれが独自の捉え方、独自の対応で済ませていた状況でした。それではいけない、きちんと問題を整理して対応しようというのがワーキンググループの立場。調製時から始まり、輸送時、使用時と汚染が広がり、職員や患者さんが知らず知らずのうちに抗がん剤に触れてしまうこともあるといった知識を共有し、それを防ぐ方法を話し合いました」と、平手薬剤師が取り組み当初を振り返る。

このとき、薬剤部が提案したのが、抗がん剤の閉鎖式調製器具の導入だ。「抗がん剤による環境汚染の大元である調製の段階で抑えてしまえればそれが一番であるという科学的根拠は十分なため、議論が盛り上がっているタイミングで当院にも閉鎖式調製器具を導入したいと考えました」と平手薬剤師。ただし、閉鎖式調製器具は非常に高価で、毎月900~1000件弱の化学療法を実施している同院でこれを導入するのは経営的に難しい。ワーキンググループでは、職員の安全と経営について関連する各種委員会に議論を促し、病院全体の労働環境衛生上の問題として取り上げてもらうなど理解を求めた結果、医療材料などの導入について話しあう委員会で、閉鎖式調製器具が認められ、導入に向かって動き出すこととなった。

「デバイスを導入し有効に活用するためには、その目的や意義などを全職員に理解してもらう必要があります。そこで医療安全管理室などとも協力して、抗がん剤曝露の危険性や防ぎ方について周知する活動も行いました。そのかいあって、現在当院では、化学療法のほぼ全例で、調製から輸送、投与、破棄まで、すべての段階で抗がん剤が漏れ出しにくい環境を実現できています。閉鎖式調製器具、投与器具をほぼ全例にしようするというのは全国的にも珍しいことです」と平手薬剤師が先進的な取り組みを紹介する。

8. 今後の課題・展望 化学療法の進化に柔軟に対応
チーム全体でコミュニケーション力向上を目指す

石黒室長はじめスタッフが課題と感じているのがコミュニケーション力のさらなる向上だ。「実践の中で磨かれる面はありますが、今後はきちんとしたトレーニングの機会を設けられればと思っています。患者さん支援の意味ではもちろん、自分たちがより仕事をしやすくするためにもコミュニケーション力が重要だと考えています」と室長は言う。

治療内容における課題としては、新しい薬、新しい療法を常にキャッチアップし、それらに対応できる体制を柔軟につくっていくことを挙げる。就任以来、ルールづくりや改革を積極的に進めてきた石黒室長率いるチームとして、手稲渓仁会病院外来化学療法室の進化は続く。

スタッフ一同

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外来化学療法 現場ルポ

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