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国立研究開発法人 国立国際医療研究センター病院[外来化学療法 現場ルポ]

2018年5月28日登載/2018年05月作成

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  • ●院長:大西 真 先生
  • ●創設:1868年
  • ●所在地:東京都新宿区戸山1-21-1

米国の診療スタイルを導入することで
診療情報を一元化し多職種連携を強化

国際感染症、糖尿病、エイズなどの診療分野で全国をリードする国立国際医療研究センター病院は近年、増加するがん患者に対応するためにがん医療の充実にも力を注いできた。2014年に新棟低層棟の新築に伴い、外来治療センターを新設。このフロアにがん医療に必要な機能を集約するとともに、化学療法室を"外来における病棟"と位置づけた。ハード面はもちろんのこと、その運営にも工夫を凝らし、診療情報を一元化することによって患者が安全・確実に治療を受けられる体制整備を進めている。

1. 外来化学療法の歩み 2001年に8床からスタート
今では年間9,700人の治療を実施

150年の歴史を重ねる国立国際医療研究センター病院は、陸軍病院を前身とし1945年に厚生省(当時)に移管された後、他の国立病院との統合を繰り返しながら高度急性期病院として発展、現在では43科を標榜し、12のセンターを有する。なかでも国際感染症への対応をはじめ、糖尿病、エイズ、救急医療では特色のある診療を展開し、他院をリードする存在だ。

がん医療においては近年、重点医療の一つに位置づけ、その体制整備の充実に取り組んでおり、2016年には東京都がん診療連携拠点病院に、翌2017年には地域がん診療連携拠点病院に指定された。こうした動きがある中、がん治療の一翼を担う外来化学療法室では年間に約9,700人の治療を実施している(2016年度実績)。

そもそも同院が外来化学療法を開始したのは2001年4月に遡る。外来棟1階にある採血室の奥に8床のベッドを設置し、スタッフ2人(医師1人、看護師1人)で1日7.4人の患者に対応していた。次第に患者が増え、手狭になったことから2011年4月に外来棟2階に移り、ベッド数を13床に増床した。そして医師2人、看護師6人で1日平均35人の治療を行うようになった。

2011年から外来化学療法室室長を併任する第三呼吸器内科医長の竹田雄一郎氏は「外来を中心にがん患者さんが増えてきたこともあり、この頃から診療体制をしっかり整備して拠点病院を目指そうという動きが出てきました」と振り返る。そこで、外来化学療法室の診療体制も拡充が図られることになり、建設が計画されていた新棟低層棟に外来治療センターが新設されることになった。これに伴い、外来治療センターの設計を任されることになった竹田氏の脳裏にまず浮かんだのが、かつて留学していた米国ピッツバーグ大学がんセンターの診療体制だった。

竹田 雄一郎
外来化学療法室室長・第三呼吸器内科医長

外来治療センターを設計した際には、がん医療に必要な機能を集約することに努め、がん登録室も配置した。

2. 外来治療センターの特徴 米国のがんセンターをモデルに
患者訪問型と医師訪問型を融合

竹田氏によるとピッツバーグ大学がんセンターをはじめ、米国の診療スタイルは診察室で待つ患者のもとに医師が出向く「医師訪室型(病棟型)」が一般的だ。「ピッツバーグ大学がんセンターの外来化学療法室では受付を済ませた患者をクラークが診察室に案内します。患者が待っていると看護師がやって来てバイタルサインの確認と体調や有害事象の出現状況などを聞き取り、カンファレンスルームで待機している医師に報告します。そのうえでフェローとレジデントが診察室に出向いて患者を診察し、看護師も交えた協議でその日の治療方針を計画します。その内容を責任者の医師に伝えて、協議を重ねて、最終的な方針を出します。決定された治療方針は、責任者から患者に伝えられ、治療が実施される仕組みです。つまり、外来に病棟を作ったようなイメージで運営されているのです」と竹田氏は説明する。

この医師訪室型(病棟型)の最大のメリットとして、竹田氏は"診療情報の一元化"を挙げる。「日本の場合、その患者にかかわるスタッフの間で診療情報がしっかり共有されておらず、それが診療効率を低下させる一因になっているのではと考えます」と竹田氏は指摘する。また、複数の医師や看護師で治療方針を検討するスタイルは安全性の向上に加え、教育的効果も高く魅力的だという。さらに米国の外来化学療法室は診察エリアと治療エリアが一体化しているのも大きな特徴の一つで、患者の動線など徹底した効率化が図られている。こうした診療スタイルは患者の利便性を高めることにも貢献している。

自院の外来化学療法をさらに発展させるには医師訪室型(病棟型)の診療スタイルを導入していくことが重要だと確信した竹田氏は、外来治療センターの設計にあたり、そのエッセンスを積極的に取り入れた。「米国のようなカンファレンスルームを診察エリアに作ることを希望したのですが、院内の理解を得ることができませんでした。そこで、従来の患者訪問型と医師訪問型を融合させるコンセプトのもと、診察室と化学療法室を同じフロアに隣接して作ることにしました」と竹田氏は経緯と設計の狙いについて説明する。

副室長を併任する第四消化器内科医長の小島康志氏は、この診療スタイルの利点について次のように語る。「診察前に看護師が患者さんのバイタルサインを確認した際、状態によっては待合で待たせずにベッドがある化学療法室に誘導することが可能ですし、医師も患者さんの様子をすぐに診に行くことができます。患者さんの状況に応じて臨機応変に対応する力が高まったように感じます」。さらに外来治療センターには薬剤相談室や無菌調剤室も配置し、化学療法を実施するのに必要な医療機能を集約させた。「これにより薬剤師が常駐するようになったので、用量変更等があったときに迅速に対応してもらえるようになりました」と小島氏は診療効率が上がったことも指摘する。

小島 康志
外来化学療法室副室長・第四消化器内科医長

外国人がん患者も増えているが、同院には「国際診療部があり、通訳などのサポートも充実しているので現場での対応にも大きな問題はない」という。

従来の患者訪問型と米国の医師訪問型を融合させるコンセプトのもと、診察室(写真手前)と化学療法室(写真奥)を隣接し、診療の効率化を高めた。

3. 外来化学療法室の体制 "病棟"として位置づけ
看護単位も独立した扱いに

こうして竹田氏は化学療法室を"外来における病棟"として位置づけるとともに、看護単位も独立した扱いにし病棟と同レベルの看護管理体制で運営することを目指した。この方針について看護部の賛同を得たものの、病棟と同等数の看護師を配置することは難しいため、看護業務に支障が出ないよう設計の段階から化学療法室の構造や動線に工夫を加えたという。

具体的には「スタッフステーションから各病床を見たときに死角がないように化学療法室の中央に設置し、それを取り囲むように5つの病床エリアを配置しました。また、病床数も13床から27床に倍増されましたが、ベッドとリクライニングチェアを半々の割合にして、患者さんを介助する看護師の負担が増大しないよう配慮しました」と竹田氏は工夫のポイントを示す。

さらに、スタッフステーションには監視モニターを置いて化学療法室から離れた待合・受付、患者サロン、処置室、相談室の様子を看護師が随時確認できるようにもした。

ハード面での工夫に加え、ソフト面では外来では珍しいバーコード管理と担当制を導入した。「2018年現在、外来化学療法室には副看護師長、がん化学療法看護認定看護師を含む13人の看護師(化学療法室経験年数は平均5.4年)が配属されており、実働平均数は11人/日です」と外来看護師長の野中千春氏は人員体制について示す。このような状況のもと、1人の看護師が4~5人の患者を受け持ち、なおかつ経験年数が長い者とそうでない者がペアを組んで治療のサポートにあたっている。

各看護師にその日に受け持つ患者を振り分ける際に最も留意しているのが安全性だ。「複雑なレジメンは経験年数の長い者が担当し、なおかつ同じようなレジメンが重ならないように注意しています。また、患者さんのADL(Activities of Daily Living:日常生活動作)やPS(Performance Status:パフォーマンスステイタス)も確認し、看護ケアの必要度や看護指導にかかる時間も考慮したうえで勤務者の業務量が同等になるよう患者さんを振り分けています」と外来治療センター副看護師長の金谷順子氏は説明する。

病棟レベルの看護管理体制に変わったことで安全性が格段に高まったという手応えを現場の看護師は実感している。「患者誤認のようなインシデントの発生はゼロになりました。また、治療面での充実を図ることにも貢献していると思います」と金谷氏は評価する。

野中 千春
外来看護師長

外来化学療法室を病棟として位置づけ、看護単位を独立した扱いにする新しい考え方は看護界でも少しずつ広まってきている。

金谷 順子
外来治療センター副看護師長

外来化学療法室の看護の質を向上するため、5段階ラダーに基づいた評価を行い、日常の教育に生かす。

スタッフステーションは死角がないように中央に配置(左写真)。それを取り囲む5つの病床エリアもベッドとリクライニングチェアを半々にして、看護師の介助負担が増大しないように配慮されている。

4. 化学療法室の看護師の役割 重要な場面で医師の説明に同席し
患者の意思決定を支援する

治療面における看護の変化を具体的に挙げると、看護師は初回外来治療の際に必ずオリエンテーションを実施するようになった。「このとき看護上の問題を明確化し、アセスメントしたうえで介護保険サービスなど社会資源のサポートが必要だと判断した場合はがん相談支援センターの医療ソーシャルワーカーと連携して社会的・経済的問題にも早めに介入することを心がけています」と金谷氏は語る。

さらに最近は意思決定支援にも積極的にかかわるようになってきた。がん化学療法看護認定看護師の渚幸恵氏はこの支援における看護師の役割について次のように説明する。「告知時、治療方針の決定時、検査結果の説明時、治療方針の変更時など治療の重要な場面での医師の説明(IC:インフォームド・コンセント)には、看護師が同席し患者さんと一緒に話を聞いた後に面談します。そして、患者さんの理解の程度を確認し、不十分な部分は再度説明したり、勘違いしていることは正したりしながら、患者さんの疑問や不安にも答え、意思決定の過程を支えていきます」。当初、この役割はがん化学療法看護認定看護師が一手に引き受けていたが、2017年からスタッフの看護師も少しずつICに同席するようになり、現在では経験年数にかかわらずほぼ全員で取り組んでいる。

この活動について竹田氏は「重要な場面で医師だけが対応すると、患者さんは説明の内容を理解できなかったときに誰に相談してよいのかわからず一人で不安を抱えることになります。看護師が同席し、医師の説明を補ってもらえるのは患者さんの安心感につながり、自分が受けている治療内容のすべてを知りたいというニーズも満たせます」と評価する。

一方、金谷氏は「重要な場面後の精神的ケアは看護師に求められる大事な仕事の一つですが、どこまで介入してよいのか戸惑うことが多いのも事実です」と打ち明ける。しかし、同席することで患者が医師からどのような説明を受け、その際にどんな反応や理解を示したのかをじかにわかるようになったため、その後の精神的ケアに取り組みやすくなったと手応えを語る。また、「患者さんをサポートするうえで自分に足りない知識や技術も明確になり、学ぶ意欲が高まったように感じます」と金谷氏は教育的効果が大きいことも指摘する。

渚 幸恵
がん化学療法看護認定看護師

「看護界においても意思決定支援に積極的にかかわる機運が高まっていますが、外来化学療法室だからこそかかわれるチャンスも多いし、かかわっていかなければならない」という。

外来化学療法室では重要な場面で行われる医師の説明に看護師が同席することは日常的な光景に。患者の治療に対する安心感や満足感が高まっている。

5. 今後の課題と抱負 サポートをさらに拡大するために
院内スタッフとの連携強化が課題

新設計画が持ち上がった際、外来治療センターはワンフロアに600m2もの広いスペースを確保することができた。また、採血室、放射線科、病棟、医師室などへのアクセスもよく、院内ロケーション的にも抜群の場所だったので、竹田氏はがん患者にとって必要な機能をすべて集約することにした。つまり、「このエリアに来てもらえば患者さんやご家族が安心してがんの治療や療養を受けてもらえるような場所にすることを目指したのです」とその狙いを語る。

この方針のもと、外来治療センターの診察室の中には緩和ケアのブースを設け、医療ソーシャルワーカーやがんを専門とする看護師が療養中のさまざまな悩みに随時対応できるよう相談室も設置した。化学療法室の北側には多目的室を作り、そこでは2カ月に1回のペースで患者・家族向け勉強会を開催する。「患者アンケートで多かった悩みをテーマに取り上げ、これまでに口腔ケアやアピアランスケアなどの講習を行って来ました。」多目的室に隣接する患者サロンでは、月1回、患者や家族の茶話会も持たれる。

このエリアは相談予約なし・出入り自由にしているので、入院患者が相談に来ることもよくあるそうだ。「困ったときにどこに行けばいいのか、そのフラッグシップとして外来治療センターの存在が患者さんやご家族にずいぶん浸透してきたように思います」と竹田氏は当初の狙いが達成されつつある手応えを得る一方、院内のスタッフにもこのエリアの資源をもっと活用してもらえるよう働きかけていく必要性を感じている。

また、外来治療センターの機能については「自宅で発生した有害事象に迅速に対応するためにホットラインの整備を急ぎたいと考えています」と竹田氏は課題を示す。金谷氏はこの点に対し、医療スタッフとの連携強化を挙げ、「化学療法室には管理栄養士も配属されているので、医師の栄養指導の指示を待つだけでなく、主体的に食事・栄養の支援にかかわれる仕組みを検討していきたいと思っています」と語る。

さらに、金谷氏は同センターを看護外来の拠点として体制を確立したいとも。認定ナースの一人である渚氏は、「化学療法室が関与しない経口抗がん剤の患者にもサポートを拡大するために一般外来の看護師を支援し、そのケア内容を充実させることも必要です」と指摘する。

欧米型の病棟スタイルを運営の基本に掲げて約4年。外来治療センターは着実に成果を上げている。「外来での治験も随時対応できるような構造にしています」と竹田氏は進歩が著しいがん治療の未来も見据える。同病院のがん医療の中核を担う存在として外来治療センターはこれからも進化を続ける。

外来治療センターの受付。がん患者にとって必要な機能が揃い、「相談予約不要・出入り自由」というルールで運営されているので入院患者が相談に訪れることも多い。

さまざまな療養の悩みにいつでも対応できるよう相談室のスペースも充実。看護師だけでなく医療ソーシャルワーカーや管理栄養士も患者家族の相談に応じる。

外来化学療法室の北側に設けられている常設患者サロン。がんに関する冊子を置いたり、茶話会を開いたりしながら情報提供の面から患者・家族の生活や心を支える。

外来化学療法室のスタッフ。医師4人、看護師13人の人員体制で年間9700人余りの治療を実施する。病棟と同等の環境は、スタッフ間のコミュニケーションにもよい影響をもたらしている。

KK-18-05-22274

外来化学療法 現場ルポ

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