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高知大学医学部附属病院
[外来化学療法 現場ルポ]

2020年01月31日登載/2020年01月作成

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病院外観
  • ●病院創設:1981年4月1日
  • ●開院:1981年10月19日
  • ●高知県南国市岡豊町小蓮185-1

チーム医療により外来化学療法を支援
医薬品の適正管理で患者および医療従事者の安心・安全の確保とコスト管理を両立

2005年1月、高知大学医学部附属病院に、外来患者に安心・安全な外来化学療法を、チーム医療により提供することを目的として外来化学療法室が開設された。その後、病院の再開発に伴う院内での移転や抗がん剤の調製・運搬システムの変更などを経て、現在はがん治療センターで中心的な役割を担う組織として位置づけられている。年間の利用件数は約5,000件(2018年度)あり、日々限られた病床(14床)において多職種で協力し、効率的に運用を行っている。
近年、問題視されている抗がん剤の医療従事者への曝露対策においても、抗がん剤調製から患者への投与まで、病院内でマニュアルを作成して、全品目を対象に行っている。また、抗がん剤の種類や治療法が多様化する中で医薬品の適性管理を行い、患者の安心・安全の確保を目指している。さらに、バイオシミラー(バイオ後続品)を積極的に採用することや後発医薬品の採用等により、コスト管理を行い、医療経済的効果も視野に入れた積極的な活動を展開している。

目次

  1. 外来化学療法室の概要

    組織・体制の変遷


    外来化学療法室の現状

  2. チーム医療の中での薬剤師の役割

    外来化学療法の流れ


    薬剤師としての使命

  3. 外来化学療法室の重点的な取り組み

    曝露対策


    高額医薬品に対応するコスト管理

  4. 今後の展望

1. 外来化学療法室の概要 組織・体制の変遷

2005年1月、高知大学医学部附属病院の外来化学療法室は、専任医師は設けず、化学療法の必要に応じてタイムリーに診療科医師が対応し、さらに専従看護師1名、調製と患者指導に携る薬剤師4名、ベッド数7床という小規模の体制でスタートを切った。

2006年に都道府県がん診療連携拠点病院に指定されたことにより、同年にがん治療センター組織の中に組み入れられ、外来化学療法室はこのがん治療センターの中心的な役割を担う組織に位置づけされた。さらに翌年の2007年には、病床数が14床に増床された。このとき安全キャビネットは同じ室内にあり、薬剤師が必要時に出向いて抗がん剤の調製を行い、初回患者を中心に指導を行っていた。

2012年に始まった病院の再開発に伴い、2013年には外来化学療法室は一時的な仮施設に移転した。仮施設では抗がん剤調製を行うための場所の確保が困難となったため、安全キャビネットは薬剤部に設置し、薬剤部内で薬剤師が抗がん剤を調製し、外来化学療法室に運ぶ体制に移行したが、患者指導は随時薬剤師が薬剤部から化学療法室に出向き、薬剤師外来として行っている。2022年に予定されている再開発の終了時には、約20床に増床、抗がん剤の調製と化学療法を同じ室内で行う体制に再び移行する計画になっている。このように、現在は、再開発計画中の暫定的な状況にあり、病床数14床に対して専任医師3名、専従看護師5名、薬剤師はがん専門薬剤師1名、その他専任1名、計2名の体制で行っている。

野村政孝
がん専門薬剤師


岡﨑雅史
薬務室長(薬事担当)


薬剤部に設置されている2台の安全キャビネット


外来化学療法室の現状

14床の内訳は、リクライニングチェア12床、ベッド2床であり、ベッドは投与時間の長い患者などに優先的に割り当てられる等の計画的な配慮がなされている。すべてカーテンで仕切られた半個室で、テレビ備え付け、DVDプレーヤーも常備しており、アミューズメントの配慮、仕事、趣味、食事等における患者の自由度も重視されている。

外来化学療法室の利用件数は年間4,000件程度で推移していたが、2017年度は約4,800件、2018年度は約5,000件と、約1.2倍程度に増加している。新しい薬剤が開発されたこと、また長期にわたり化学療法を継続できるようになったことなどが、件数増加の背景にあると分析している。外来化学療法室を利用する診療科は14診療科と多く、特に利用件数が多いのは、乳がんを診る乳腺・内分泌外科、大腸がん、胃がんなどを診る消化器外科、血液がんを診る血液内科、肺がんを診る呼吸器・感染症内科の4診療科である。この4診療科だけで全体件数の約3分の2を占める。化学療法の初回導入は血液内科、呼吸器・感染症内科など一部の診療科は入院を原則としているが、ほかの診療科は初回から外来で行うことが少なくない。外来化学療法室を利用するのはがん患者がメインだが、一部にはリウマチ患者や膠原病患者などもいる。

現在、登録されている化学療法レジメンの数は、2019年5月現在約600であり、レジメンには抗がん剤とともに支持療法もセットされている。化学療法レジメン審査委員会の事務局は薬剤部に置いており、レジメン審査にも、その専門性を活かしている。化学療法レジメンに従って適正に施行しても、副作用が強く出る場合等には、現場で対応し、薬剤師を中心に医師や看護師と相談しながら対処法を検討する仕組みとなっている。

リクライニングチェア12床、ベッド2床が並ぶ外来化学療法室


テレビ備え付けのリクライニングチェア。プライバシーが守られ、リラックスできる


待合室に並ぶウィッグや専門誌、各種パンフレット、患者向けのお知らせ


2. チーム医療の中での薬剤師の役割 外来化学療法の流れ

化学療法施行前日に、調製のための薬剤の取り揃えを薬剤部にて行う。薬剤師は、電子カルテ上で前回検査値や副作用の有無等を考慮しながら、薬剤の内容や量をダブルチェック体制で確認する。この時点で、指示内容に疑義があれば、電話や電子カルテのメッセージ機能を活用して処方医に確認し、追加検査が必要な場合は提案する。

外来化学療法を受ける患者は、施行当日に、各診療科で主治医の診察を受け、そこで、当日の検査データ等をもとに再考し、化学療法が実施できると判断されて、はじめて外来化学療法室に移動する。薬剤師が抗がん剤の調製を始めるのは、化学療法が実施できると医師が判断し、実施指示を入力したことを電子カルテ上オンラインで確認し、患者が外来化学療法室に来室した時点である。抗がん剤の調製ができ次第、患者のベッドへ運び、看護師が施行後の血管の確保や投与中管理を行う。

化学療法が初回の患者の場合は、薬剤師から、治療法、抗がん剤の種類や副作用等の説明や指導を必ず行う。また、治療薬が変更となった患者や副作用が心配な患者などにも、薬剤師が直接、説明、指導する。説明内容が主治医と食い違うようなことのないように、事前にきちんと治療方針などのコンセンサスをチーム内で確認する。基本的には、患者への説明や、多職種との意見交換などは、抗がん剤調製業務を担当した者が実施するようにしている。

調製後迅速に投与しなければならない薬剤を使用するケースなどでは、医師や看護師と特に密に連絡をとり、タイムロスがないように注意しなければならない。この場合は、外来化学療法の実施が確定し、それを受けた外来化学療法室の看護師が投与のための準備をすべて終えた段階で薬剤部に連絡が入り、薬剤師は調製と運搬を迅速に行う体制を整えている。

「抗がん剤治療を受ける患者さんとご家族の方へ」や「外来化学療法室を利用するにあたって」など
患者への説明に使う資料はほとんどがオリジナルだ


薬剤師としての使命

こうした流れの中で、外来化学療法室専任薬剤師の外来化学療法に関する責任は重く、毎月1回、看護師とともに行っているカンファレンスにも専任薬剤師が出席し、患者情報の共有と今後の治療方針の確認などにも関与する。

さらに、薬剤部から各病棟に配属されている病棟担当薬剤師や診療科担当薬剤師は、入院患者の持参薬の確認、服用状況の把握や相互作用をはじめとした問題点抽出などを担い、有効かつ安全な薬物療法が実施されるよう、化学療法施行患者に対する支援を行っている。化学療法を入院で導入する場合の説明も病棟薬剤師が行う。また、入院患者が退院後に外来で化学療法を導入する場合も、医師の依頼を受け病棟薬剤師が病棟看護師とともに患者に外来化学療法室利用の事前説明を行っている。

近年は、免疫チェックポイント阻害薬と分子標的薬と殺細胞性抗がん剤を組み合わせて使う方法など、治療が複雑化している。そういった治療法を安全に効果的に行えるようにチェックするのも薬剤師の仕事である。

3. 外来化学療法室の重点的な取り組み 曝露対策

抗がん剤を調製、さらには患者に投与するにあたっては、患者はもとより、医療従事者の安全確保が重要課題となるが、高知大学医学部附属病院では、近年、特にスタッフの曝露対策に力を入れている。2019年には『がん薬物療法における職業性曝露対策ガイドライン』の改訂版が発行され、抗がん薬の調製・投与・廃棄などの場面でCSTD(Closed System Drug Transfer Device:抗がん剤暴露対策閉鎖式システム)の使用を推奨することが明記された。そこで、2019年11月よりすべての抗がん剤にCSTDを採用している。

薬剤師は、薬剤部における抗がん剤調製において、安全キャビネットを使用し、手袋、マスク、ガウンなどで防護したうえで行っている。また、看護師も、患者への抗がん剤投与に際して、防護用ガウンなどを身につけているが、より安全性を高めるためにCSTDを使用している。しかしながら、どんなに優れた道具を採用しても、使用者が使用目的・方法等に対して理解不足であれば、安全・有効に使用することはできない。そのため、関連職種に対するCSTD使用に関する教育・指導も徹底的に行っている。

※【参考資料】「がん薬物療法における職業性曝露対策ガイドライン」内のCSTDに関する記載

  • CQ5
    BSCなどの使用状況下において、すべてのHDの調製に対してCSTDの使用が推奨されるか
  • 推奨
    BSCなどの使用状況下においても、すべてのHDの調製に対してCSTDを使用することを強く推奨する。【強い推奨、合意率94%(17/18)】
  • CQ11
    HD静脈内投与時のルートにCSTDを使用することは推奨されるか
  • 推奨
    HD静脈内投与時のルートにCSTDを使用することで、HDによる環境汚染が低減される。HD静脈内投与時のルートにCSTDを使用することを、強く推奨する。【強い推奨、合意率94%(16/17)】
  • CQ13
    HDの腔内注入において、CSTDやPPEを使用することが推奨されるか
  • 推奨
    HDの腔内注入時に、投与者、介助者は、CSTDを用いた場合は二重手袋、ガウン、CSTDを用いない場合は、二重手袋、ガウン、眼・顔面防護具、呼吸器防護具を使用することを強く推奨する。【強い推奨、合意率100%(16/16)】

「がん薬物療法における職業性曝露対策ガイドライン 2019年版(金原出版株式会社)」より引用

高額医薬品に対応するコスト管理

抗がん剤が多様化し、高薬価の薬剤も増えていることから、医薬品の選択や在庫管理にも熟慮が必要である。また、適正に抗がん剤を使用するためには、当該診療科医師、看護師等と薬剤部との情報交換が不可欠である。そこで、新規に化学療法を行うことになった患者についての、外来化学療法室や病棟で活動する担当薬剤師からの薬剤部に対する医療経済面も含めたあらゆる情報伝達が迅速に行われる体制を構築している。その情報をもとに必要な薬剤の種類や量を吟味し、医薬品の発注業務、在庫管理業務を行っている。2回目投与以降は、投与スケジュールを電子カルテでチェックしながら過不足がないように準備を進め、在庫管理を行う。2018年、購入した抗がん剤の中で、使用患者が1名のみのような希少で高価な薬剤が7種類あった。これらの薬剤の調製や投与に際しては、コスト管理を含め、より細心の注意が必要となる。

さらに、コスト管理策としては、バイオシミラー(バイオ後続品)の積極的な採用がある。薬剤部から各診療科の医師などに働きかけて、問題点を解決しながら少しずつ導入している。検討するのは薬効など医薬品そのものの特徴や先発品との比較だけではなく、高額療養費制度適用の有無により、患者の負担が増えてしまうケースについては医事課等と連絡を取り合い、使用薬剤を決定する医療経済面でのフォーミュラリーを策定している。

4. 今後の展望

外来化学療法室ができて14年が経過し、同時に薬剤師によるが抗がんの調製も同様の歴史・変遷の中で成り立っている。それ以前は、病棟で医師と看護師が調製していたため、薬剤師に全面的に移行したことにより、安全対策は、格段に向上した。今後も、抗がん剤にかかわるあらゆる情報収集、さらには情報発信を、絶えず意識し、丁寧に化学療法に対応していく姿勢を継続したい。

薬剤部では、学位取得を含め薬剤師が専門資格をとることを全面的に支援している。がん専門薬剤師、がん認定薬剤師等においても、5年以上の実務経験など、取得要件を満たしていない新人薬剤師などでも、本人が希望すれば学会や集中講義などへの参加を支援し、専門性の強化や資格取得につなげている。近年は有資格者が行うことで加算のつく業務なども出てきている。

また、今後は、高齢患者など複数の疾患を持つ人への対応、特に高齢者・超高齢者への抗がん剤治療に対する安全対策への評価、入退院支援などを強化する必要がある。加えて、がん化学療法に関するかかりつけ薬剤師への情報提供・共有、さらにはかかりつけ薬剤師からの情報発信能力の強化等、地域連携も大きな課題である。

高知県内全体の薬剤師不足も悩ましい状況ではあるが、患者の動向や地域の状況を分析しながら、大学病院ならではの役割を果たしていきたいと考える。

●取材日:2019年

KK-20-01-27867(1904)

外来化学療法 現場ルポ

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