KYOWA KIRIN

このサイトは、日本国内の医療関係者(医師、薬剤師、看護師、技師・技士等)を対象に、弊社が販売する医療用医薬品を適正にご使用いただくための情報を提供しています。国外の医療関係者、一般の方に対する情報提供を目的としたものではありませんのでご了承ください。
このサイトのご利用に際しては、協和キリンメディカルサイトのご利用条件が適用されます。

長野赤十字病院
[外来化学療法 現場ルポ]

2019年12月19日登載/2020年9月作成

印刷用PDF

  • ●院長:和田 秀一 先生
  • ●開設:1904年
  • ●所在地:長野県長野市若里5-22-1

職種間の風通しのよさを武器に
安心・安全な外来化学療法を追求

2007年に「地域がん診療連携拠点病院」に指定された長野赤十字病院は、救急医療、周産期母子医療とともに診療の3本柱の一つにがん医療を位置づける。この地域においても、がん患者の高齢化が進み、加えてがん治療薬の増加によって外来化学療法室の忙しさは加速度を増している。限られたマンパワーの中、チーム医療の実践で培ってきた職種間の風通しのよさを武器に、安心・安全な外来化学療法を実施し、なおかつ患者サポートの質を落とさないための工夫を積み重ねている。

1. 病院の特徴 地域医療支援病院として
救急、がん、周産期に注力

長野赤十字病院は、1904年に日本赤十字社長野支部病院として開院した。以来115年の長きにわたり、長野市を中心とする北信地域の医療を支えてきた基幹病院の一つだ。人道・博愛・奉仕の赤十字精神に則った、患者中心の質の高い医療の実践を理念に掲げて急性期医療を展開。近年は「地域医療支援病院」としての機能の充実に努めるとともに、診療の3本柱に据える救急医療、がん診療、周産期母子医療に力を入れている。

三次救急を担う救命救急センターでは断らないことをモットーとし、2018年の救急車応需率は99.68%を達成。救急車・ドクターヘリの搬送件数も6,911件に上る。また、ニーズの高い循環器・脳神経救急では365日24時間態勢で院内に専門医が常駐している。

一方、2000年に指定された地域周産期母子医療センターでは、近隣の医療機関から母体搬送を受け入れ、新生児特定集中治療室との連携によって妊婦と新生児の2つの命を守っている。2018年にはLDR(陣痛・分娩・回復)室の整備・改修を行い、より快適で機能的な環境に生まれ変わった。

さらに、同病院は長野県唯一の基幹災害拠点病院に指定されており、DMAT隊と救護班を編成し、各地で大規模な災害が発生した際には速やかに出動している。2019年10月、台風19号によって千曲川が氾濫したときも、各地から派遣されてきた赤十字病院の救護班と協力し、被災者の救護にあたったことは記憶に新しい。

2. がん診療の特徴 地域の医療機関と連携し
がん診療の質向上を目指す

診療の3本柱の一つであるがん診療においては、2007年1月に地域がん診療連携拠点病院に指定された。長野市内ではもう1カ所、長野市民病院が拠点病院に指定されており、市内の南側を同病院が、北側を長野市民病院が主にがんの診療圏としている。一方で、同病院は新幹線が通る長野駅からのアクセスがよいため、上田市などの近隣地域、さらには新潟県上越市など他県からの患者も多い。また、この地域では、精神疾患を併存するがん患者の治療を受け入れる数少ない医療機関の一つでもある。

2015年には、地域がん診療病院に指定されている北信総合病院(長野県中野市)とのグループ指定も受けた。北信総合病院とは、合同総合キャンサーボード(月1回開催)の場で紹介症例について検討するなど、連携・協力して治療に取り組んでいる。また、同病院の化学療法検討部会に、北信総合病院のスタッフが参加し、レジメンの審査や情報交換を行うなど、地域全体で標準的な化学療法を提供する体制を整備している。

さらに、両病院に併設されるがん相談支援センターのがん専門相談員が日頃から連絡を取り合い、情報交換や情報提供を行うほか、緩和ケアやがん相談に関する事例検討会も持ち回りで開催するなど、両病院の経験を共有することによって、今後のよりよいケアに生かそうとする取り組みも積極的に行われている。

3. 外来化学療法室 職種間の風通しのよさを基盤に
チーム医療を実践

同病院はもともと血液がんの診療を得意とし、骨髄移植では全国レベルの成績を誇っている。「20年前に骨髄移植センターが新設された頃からチーム医療に取り組むようになり、口腔外科、リハビリテーション科、眼科、皮膚科などの関連科と連携して患者さんのサポートを行うようになりました」と外来化学療法室の専従医・上野真由美腫瘍内科副部長は説明する。

このときの活動がベースとなり、がん診療連携拠点病院に指定されて以降、がん診療におけるチーム医療はさらに発展し、職種間の風通しは非常によい。また、組織上も腫瘍内科、外来化学療法室、緩和センター、がん相談支援センター、がん診療連携科を一つの単位として扱っており、これによりきめ細やかながん診療体制の構築を目指している。

2006年に8床から始まった外来化学療法室は、がん薬物療法のめざましい発展とともに増床を重ねてきた。2019年10月現在、病床数は21床(ベッド13床、リクライニングチェア8床)となり、手狭ながらも外来化学療法室のレイアウトは安全性と快適性を優先して設計されている。

例えば、各病床はカーテンではなく120㎝程度の高さのパーテーションで仕切り、患者のプライバシーを守りつつ安全面も考慮している。「点滴中、一人で静かに過ごしたい患者さんもいますが、カーテンを閉め切られると有害事象に早めに気づくことができません。そこで導入したのがベッドにいる患者さんが見えそうで見えないくらいの高さのパーテーションです。お互いにストレスがなく、患者さんからもスタッフからも好評です」と山田恭子看護係長は説明する。

また、窓側に面した病床はベッドを大きな窓のほうに向け、治療中も外の景色が楽しめるよう配慮している。「見回りの看護師にとって動線がやや悪くなりますが、患者さんに少しでもくつろいだ気分で治療を受けていただくために効率より快適さを大事にしました」(山田係長)。

こうした治療環境の中、専従医1名(がん薬物療法専門医)、専任薬剤師2名(うちがん専門薬剤師1名)、調剤担当薬剤師1~2名、看護師7名(うち化学療法認定看護師1名)の総勢11~12名のスタッフで患者の日常的なサポートを行っている。また、各診療科の医師(主治医)に加え、がんサポートセンターの認定看護師、口腔外科の看護師とも緊密な連携体制を取り、必要に応じて専門的なサポートに入ってもらっている。

上野 真由美
腫瘍内科副部長

山田 恭子
看護係長

各ベッドやチェアはパーテーションで仕切って患者のプライバシーを確保。しっかりした造りなので、高齢者がふらついたときの支えにもなる

窓側は一面のガラス張り。外の景色を楽しんでもらえるようベッドの頭を窓側に向けて配置している

抗がん剤の有害事象として多い、口腔粘膜炎や口腔乾燥などに対応してくれる口腔外科は、同じフロアにあり緊密に連携する診療科の一つ

4. 患者サポートの工夫 個別支援が必要な患者に
認定看護師のラウンドを活用

「がん種は全科にわたりますが、なかでも乳がん、血液がんが多いのが特徴です(図表1)。また、患者さんの高齢化が進んでおり、65歳の高齢者が全患者の3分の2を占め、80歳でがん薬物療法を受ける人も珍しくありません」と上野副部長は患者の背景について説明する。また、年間実施件数は2018年に8,000件を超え、その数は2019年も増え続けている(図表2)。「現在1日平均の実施件数は約40件で多いときは60件にも上ります。ベッドを3回転させなければならない日もあり、患者のキャパシティは限界に近づいています」と上野副部長は明かす。

さらに現場の忙しさを加速させているのが治療薬の増加だ。同病院が採用する多剤併用療法のレジメンは300余りとなり、免疫チェックポイント阻害剤は全体の5%を超えた。そのため、投与法が複雑化しており、看護師や薬剤師たちの作業量も著しく増している。「とにかく事故のないよう安全第一を心がけ、日々の業務に取り組んでいます」と山田係長は実情を語る。

こうした患者と治療薬の増加は、患者サポートにも影響を及ぼし、「安全性を優先するのに伴い、患者さんとの会話がだんだん減ってきました」と山田係長は打ち明ける。この問題を解消するために、がんサポートセンターの認定看護師との連携強化に努めた。「がんサポートセンターには、緩和ケア認定看護師、がん性疼痛認定看護師など4名の認定看護師が配属されており、院内のサポートが必要な患者さんのところにラウンドしてくれています」(山田係長)。そこで、外来化学療法室の看護師が患者の様子を観察し、個別の支援が必要だと判断した場合は、がんサポートセンターに連絡を入れ、認定看護師のラウンドを頼むことにした。認定看護師は、患者が化学療法の点滴を受けている時間にやってきて、ベッドサイドで患者の話をじっくり聞き、必要なサポートを提供する。「その患者さんが治療に来るたびにラウンドをしてくれています。スタッフ間で情報を共有することで継続的な支援にもつながっています」と山田係長は評価する。

図表1 外来化学療法室 利用疾患別内訳(のべ件数)

※長野赤十字病院作成資料より

図表2 外来化学療法室 利用件数の推移

※長野赤十字病院作成資料より

5. 連携による安全対策 救急外来担当医と治療情報を共有し
有害事象に備える

一方、有害事象対策については薬剤師が中心となってサポートを行っている。外来化学療法室の中にミキシングルームが併設されていることも特徴の一つで、がん薬物療法に詳しい薬剤師が常駐していることは看護師にとっても心強い。

化学療法の点滴中に看護師が患者から有害事象の出現状況を聞き取り、グレード的に問題がある場合は専従医や薬剤師に報告する。「支持療法の内服薬管理は薬剤師にまかされています。追加あるいは変更が必要なときは、電子カルテ上で主治医と患者情報を共有したうえで処方提案を行い、それをもとに患者が点滴を終えるまでに主治医が処方せんを発行する仕組みです」と桜井孝薬剤師は説明する。薬剤師が処方提案する薬剤は、制吐剤、下剤、軟膏が多く、その提案のほとんどは採用されるという。

また、自宅で有害事象が起こった場合に備え、外来化学療法室では緊急受診の目安となる症状(脱水、発熱、疼痛、呼吸苦)を事前に伝えておき、患者に早めの受診を促すとともに、時間外受診に対応する救急外来担当医への情報提供にも力を入れている。

「とくに免疫チェックポイント阻害剤を導入した際は、これまでの薬剤とはまったく異なる有害事象が出現するおそれがあったので、「救急外来用マニュアル」を作成しました。このマニュアルでは、症状ごとに必要な検査や具体的な治療法を記載し、入院やがん治療薬投与の適応を判断する目安などをフローチャート化しました」と上野副部長は話す(図表3)。

この救急外来用マニュアルは、電子カルテの掲示板の最も目立つ場所にも掲載し、緊急時に救急外来担当医が必要な治療情報に速やかにアクセスできるよう工夫されている。

さらに、各診療科やがん患者の支援にかかわる部署で構成される「がん化学療法有害事象サポートチーム」には、がん診療にかかわっていない診療科にも参加してもらっている。「免疫関連有害事象は多様なので、さまざまな診療科と情報を共有する必要があるのです」と上野副部長は指摘する。ちなみに情報発信は、用紙にプリントした情報をファイルにまとめた回覧板で行っている。アナログな方法だが、次の部署に早く回さなければならないという心理的プレッシャーによる閲覧効果は高いという。外部のサポートも上手に受けながら安心・安全な外来化学療法を目指す工夫がここにも垣間見える。

桜井 孝
薬剤師

外来化学療法室に設置されたミキシングルーム。調剤担当薬剤師が配置されているので、専任薬剤師は服薬指導や有害事象の対応に集中できる

図表3

※長野赤十字病院作成「救急外来用マニュアル」より

がん化学療法有害事象サポートチーム回覧板。薬剤による有害事象だけでなく、前投与薬やインフューザーポンプなど物品に関するアラート情報も発信し、病院全体でがん薬物療法の情報を共有する

6. 今後の課題と展望 新病院着工に向けて
設計段階から体制を再考

「2025年には新病院の着工が始まります。増床を重ねてきた経緯から現在は本館から離れた場所での診療となっていますが、新病院では中心部への外来化学療法室の設置が望ましいと考えています。限られたマンパワーで高齢がん患者の急増に対応するためには、設計段階から合理的な体制について考えていかなければならないと感じています」と上野副部長は気を引き締める。

差し迫った問題が山積しているものの、長年にわたるチーム医療の実践で培ってきた職種間の風通しのよさを武器に、長野赤十字病院の外来化学療法室はきっと乗り超えていくことだろう。

KK-19-11-27370(1904)

外来化学療法 現場ルポ

おすすめ情報

  • おすすめ情報は、協和キリンのウェブサイトにおける個人情報の取扱い方針に基づき、お客様が閲覧したページのアクセス情報を取得し、一定の条件に基づき自動的に表示しています。
    そのため、現在ご覧いただいているページの情報との関連性を示唆するものではございません。

くすり相談窓口

弊社は、日本製薬工業協会が提唱するくすり相談窓口の役割・使命に則り、くすりの適正使用情報をご提供しています。
弊社医薬品に関するお問い合わせは、下記の電話窓口で承っております。

フリーコール

0120-850-150

受付時間 9:00~17:30
(土・日・祝日および弊社休日
を除く)

※新型コロナウィルスの感染予防・感染拡大防止を全社方針として徹底していくことから、お電話が繋がりにくい可能性があります。

※お電話の内容を正確に承るため、また、対応品質の維持・向上等のため通話を録音させていただいております。あらかじめご了承ください。

お問い合わせ