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杏林大学医学部付属病院
[外来化学療法 現場ルポ]

2019年12月24日登載/2020年9月作成

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  • ●病院長:市村 正一 先生
  • ●開院:1970年
  • ●所在地:東京都三鷹市新川6-20-2

多職種が有機的に連携しながら
高齢がん患者の治療と生活を支える

超高齢社会の到来とともに、がん医療の現場でも高齢の患者、特に後期高齢者の占める割合が増加している。それは杏林大学医学部付属病院がんセンターにおいても例外ではない。大学病院でなければ行えない"がん診療と総合的医療の両立"を目指してきた同がんセンターは、これまでの経験と実績、そして多職種連携をベースにさまざまな併存疾患を有する高齢がん患者の治療と生活を支えるサポートに積極的に乗り出している。

1. 病院の概要 多摩地域を守る基幹病院として
高度急性期医療を提供

杏林大学医学部付属病院は、1954年に開院された三鷹新川病院を前身とし、70年に杏林大学医学部が創設されたのに伴い開設された。以来、東京・多摩地域唯一の大学病院本院として高度急性期医療を中心に提供してきた。なかでも東京都の人口の3分の1が集中する多摩地域の命を守るために、70年代後半から救急医療に取り組み、現在、都内に4カ所しかない高度救命救急センターを有する。また、総合周産期医療センター、脳卒中センターも併設し、高い専門性を必要とする救急患者にも迅速に対応している。

一方、一般診療においても特定機能病院の役割を担う大学病院として、全科にわたって高度な医療を提供することにも取り組んできた。各診療科の専門性を高めるとともに診療科を横断するセンター化を推し進め、現在は7つの分野でセンター化による診療を実施している。

がんセンターはそのうちの一つで、2008年2月に地域がん診療連携拠点病院に認定されたことを契機に、同年4月に開設された。同センターは、がんを取り扱うすべての診療科、薬剤部、看護部、緩和ケアチーム、がん相談支援センター、院内がん登録室などから組織され、最新かつ最適ながん医療を提供している。

2. がんセンターの概要 "がん診療と総合的医療の
両立"を目指す

がんセンターの診療目標について、同センター長の古瀬純司腫瘍内科学教授・診療科長は、次のように説明する。「大学病院の中に開設されているがんセンターでは、高血圧症、糖尿病といった生活習慣病をはじめ併存するさまざまな病気も考慮しながら、がんの治療を行っていく必要があります。すなわち、当センターでは大学病院でなければ行えない"がん診療と総合的医療の両立"を目指しています」。

そのためには院内での緊密な連携と情報共有が欠かせず、同センターでは月2回、各診療科・関連部署のスタッフが集まって運営委員会を開催し、さまざまな診療情報を共有している。また、必要に応じて診療科の枠を超えた「包括的カンファレンス」を実施し、多角的な視点から個々の治療やサポートの内容を検討する。

さらに2018年4月には国から「がんゲノム医療連携病院」の指定を受け、同センターに新たな役割も加わった。「当院は、国立がん研究センター東病院と連携して、がんゲノム医療を行っています。がん遺伝子パネル検査の一部は保険診療になり、患者さんのニーズも今後高まってくることが予想されます。カウンセリングを含め、人材の育成を早急に図り、当院においてがんゲノム医療を実施できる体制を整備することが喫緊の課題となっています」と古瀬先生は語る。

古瀬 純司
腫瘍内科学教授・診療科長

3. 外来治療センターの概要 カンファレンスを活用し
緊密な連携と情報共有を図る

がんセンターでは、外来・入院ともにがん薬物療法を充実させるために「外来治療センター」と「化学療法病棟」を設置し、がん治療に詳しい看護師と薬剤師を配置している。外来治療センターは30床を有し、小児科を除き、全科から患者を受け入れる。その実施件数は右肩上がりで増え続けており、2018年度は年間9,824件だった。

「日常的にベッドは3回転していて、多いときには1日に50件に達します」と外来治療センター所属の新田理恵がん化学療法看護認定看護師は説明する。また、患者の半数を高齢者が占めており、近年は後期高齢者が増えている印象だという。

こうした状況の中、外来治療センターに配置される看護師は1日10人ほどで、一般外来や化学療法病棟に所属し交代で勤務する看護師も含まれる。また、この中にはがん化学療法看護認定看護師が2人いる。

一方、薬剤師は4人が交代で勤務し、2人が専門資格を持つ。抗がん剤の調製は中央部門で行っているため、外来治療センターでの業務は治療内容の説明、副作用の予防方法と対策など患者指導が中心だ。しかし、1人勤務なので、すべての患者に対応しきれず、ともに活動する看護師に頼らざるを得ない。そこで、外来治療センターにおいても、あらゆる場面でカンファレンスを活用し、多職種で緊密な連携と情報共有を図っている。

なかでもシステム化して有効活用されているのが、外来化学療法を初めて受ける患者を対象とした「初回カンファレンス」だ。これは、原則すべての患者に実施されるもので、初回治療前に担当医、薬剤師、看護師の3者で患者情報を共有したうえで治療上の注意点などを確認し合う。「薬剤師の場合、事前にカルテから患者の病状をはじめ生活背景や全身状態、レジメンの情報などを収集し、疑義があればカンファレンスを通じて担当医に確認します」と吉田正薬剤部科長は説明する。最近は医師の診察から化学療法開始までの期間が短くなっているため、カンファレンスの場は患者に再確認しなければならないリスク項目を洗い出すよい機会となり、医療安全の向上にも役立っているという。

また、初回カンファレンスでは高額療養費制度の申請を含め、患者に対する経済的なサポートの状況についても確認される。「患者さんは、自身の身体のことや治療内容、副作用など病気に関すること、今後の生活や経済的なことなど様々な不安を抱きます。患者さんの不安や疑問点を出来るだけ解消し、患者さん自身が治療内容を理解し、納得した上で治療に臨むことが、がん治療には大切なことです。そのために医師の説明に加え、薬剤師が補助的に説明をすることは、重要なことだと考えています。また、経済的な不安を抱えることのないようサポートするのも外来治療センターのスタッフの役割の一つだと考えています。そのため、薬剤師が作成する患者指導書の中には治療内容や副作用の説明のほかに、薬剤費の概算を記載しています」と吉田科長は説明する。

新田 理恵
がん化学療法看護認定看護師

吉田 正
薬剤部科長

外来治療センターでは右肩上がりで増えるがん患者を一人でも多く受け入れるために、オープンフロアにしてすべての病床をリクライニングチェアで対応する

4. 高齢がん患者への支援 チーム医療で患者の生活を
支えることを重視する

外来治療センターでは、高齢がん患者の増加に伴い、そのサポートにも注力し始めている。「併存疾患がある高齢患者さんの場合、急激な体調変化が起こったり、治療と並行しながら療養環境を調整しなければならないことも多かったりするので、これらに関しては力を入れていくべき部分だと認識しています」と新田看護師は言う。

まず日常的には化学療法による有害事象の早期発見に努めている。「これは高齢者にかぎったことではありませんが、外来で薬剤を投与した5分後には必ず観察を行うほか、初回治療、薬剤アレルギーがある、ハイリスク薬を使用する場合は投与15分後、30分後も観察することをルール化しています。また、高齢者では移動の介護が必要な人や認知症状がありルートを触ったり点滴棒を持たずに歩いたりする人は看護師の目が届く場所で点滴を行うなどの工夫を行っています」(新田看護師)。

また、薬剤師が自宅での緊急時の対応について説明する際には、患者本人と一緒に介護者にも聞いてもらう。薬剤師は個々の治療に応じて病院に連絡すべき具体的な症状を書いた紙を患者や家族に渡しており、看護師とも情報を共有する。患者や家族が外来治療センターに緊急連絡をしてきたときに、どのスタッフも同じ対応ができるようにするためだ。

このような日常診療の工夫を行うと同時に、看護師は初回カンファレンスにおいてキーパーソンとなる人物、治療・療養の際の介護者、介護保険の申請状況、社会資源の利用状況など患者の生活を支える情報をより重視して収集している。しかし、院内だけでは情報が不足し、患者の全体像を掴みにくいことも少なくない。

「特に後期高齢者に安心して治療を続けてもらうには、がん相談支援センターをハブに、在宅療養支援診療所、訪問看護ステーション、地域包括支援センターなど地域の医療・介護の拠点となる施設とも連携や情報共有を深めていく必要があると感じています」(新田看護師)。

外来治療センター内のスタッフステーション。見守りや移動介助などを必要とする高齢のがん患者は看護師の目が届くスタッフステーションに近い場所で化学療法を受ける

5. 高齢者総合的機能評価 客観的評価をもとに
過不足のない化学療法を実施する

さらに、患者本人、家族、医療者ともに、どこまで化学療法を行うのか悩ましい選択を迫られる場面も増えている。こうした課題に対して、腫瘍内科の外来では長島文夫腫瘍内科学教授を中心に「高齢者総合的機能評価(Comprehensive Geriatric Assessment:以下CGA) 1)に着目し、高齢者の身体状態に加え、精神的・社会的状態を評価することを早くから試みてきた。

腫瘍内科では、CGAを実施すべきか否かを簡便に評価するために、同外来を受診した高齢者にスクリーニングツールを用いている。スクリーニングツールで異常が見つかれば臨床心理士または医療面接を担当する事務員が時間をかけてCGAを実施する。これまでスクリーニング検査を受けた高齢者は約1,000人余りで、そのうちCGAに至った人は全体の約15%だった。

腫瘍内科で長島教授とともにCGAの研究に取り組む水谷友紀腫瘍内科学講師は、その目的について「日常診療では評価しづらい部分を、CGAで総合的に評価することで高齢者に対する化学療法の過剰治療および過少治療を防ぎたいのです」と話し、その具体例として次の患者を挙げる。

後期高齢者の患者は、診察の様子では正常に見えたが、CGAを行ったところ、認知機能障害があることが判明し、治療法について再検討することになった。この場合、家族のサポート体制が重要になるが、CGAを通して、家族のサポート体制は十分であることが分かった。これらを踏まえ、患者本人・家族・医療者で話しあった結果、積極的な治療を選択することになり、経過も良好である。

「ここで理解していただきたいのは、CGAの点数だけで治療方針を決めているわけではないということです」と長島教授は指摘する。がんの医療現場では、CGAをスコア化し"何点以下ならこの治療は行わない"といった判断基準として使うことを期待する声は根強いが、現時点ではそのような活用の仕方はできないという。

「高齢がん患者さんの状態を総合的に評価するのがCGAの利点であり、この客観的評価をもとに患者本人・家族・医療者で話し合って治療方針を決めることが重要なのです。つまりCGAはコミュニケーション・ツールの一つだといってもいいでしょう」と水谷講師も補足する。

  1. 1) Mohile SG, et al. Practical Assessment and Management of Vulnerabilities in Older Patients Receiving Chemotherapy: ASCO Guideline for Geriatric Oncology. J Clin Oncol. 2018;36:2326-2347

長島 文夫 腫瘍内科学教授
高齢がん患者研究の第一人者で、日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)が2016年に「JCOG高齢者研究ポリシー」を作成した際には責任者(JCOG高齢者研究委員会委員長)を務める

水谷 友紀 腫瘍内科学講師
長島教授とともに高齢がん患者の研究に取り組み、JCOG高齢者研究委員会事務局長を務める

6. 今後の課題と抱負 外来の段階から
治療と生活を支える仕組みづくりを

「当院でも2019年から対象となる入院患者全員にCGA7のスクリーニング検査を実施するようになりました」とがん相談支援センターに所属する小林夏紀MSWは説明する。このスクリーニング検査の実施は病棟看護師が担当している。

小林MSWは、これまで積極的な治療が難しくなった入院患者の支援を中心に行ってきたが、高齢者の背景および取り巻く環境が多様化する中、外来の段階から早めに治療と生活を支える仕組みづくりが必要であることを痛感している。

「在宅支援が行われるタイミングも10年前より早くなってきました。在宅医療(訪問看護ステーション)、ケアマネージャー等地域の皆さんに協力いただきながら、治療を継続している患者さんも増えてきています。院内外の関係機関、職種と連携しながら、患者さんやご家族が安心して治療を受けていただけるよう、また個別性の高い支援が行えるよう努めていきたいと思っています。将来的にCGAが当院の医療スタッフ、地域の医療・介護スタッフとのコミュニケーションツールとなることも期待しています 」(小林MSW)。

後期高齢者のがん患者が増加していく中、杏林大学医学部付属病院がんセンターでは、大学病院の中のがんセンターとして活動してきた経験と実績をもとに、多職種がそれぞれ有機的に連携しながら、さらに一歩踏み込んだ支援のあり方を模索し続けている。

がん患者支援センター所属の小林夏紀MSW

杏林大学医学部付属病院がんセンターでは、さまざまな専門職が有機的に連携しながら、診療科の枠組みを超えた包括的がん治療を提供している。

KK-19-12-27605(1904)

外来化学療法 現場ルポ

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