KYOWA KIRIN

このサイトは、日本国内の医療関係者(医師、薬剤師、看護師、技師・技士等)を対象に、弊社が販売する医療用医薬品を適正にご使用いただくための情報を提供しています。国外の医療関係者、一般の方に対する情報提供を目的としたものではありませんのでご了承ください。
このサイトのご利用に際しては、協和キリンメディカルサイトのご利用条件が適用されます。

愛知医科大学病院
[外来化学療法 現場ルポ]

2021年03月10日公開/2021年03月作成

印刷用PDF

病院外観
  • ●病院長:藤原 祥裕 先生
  • ●開設:1974年
  • ●所在地:愛知県長久手市岩作雁又1-1

臨床腫瘍センターを核に横断的に連携
質の高い外来化学療法を専門職チームで実践

愛知医科大学病院の外来化学療法部門は、2007年3月に「外来化学療法室」としてスタートし、2年後には専任医師ほか専門スタッフの揃った「化学療法センター」に格上げされた。さらに2012年に「臨床腫瘍センター・化学療法部門」となり、2014年5月からは新病院3階に設置された新しい外来化学療法室で、がん薬物療法専門医、がん化学療法認定看護師、がん専門薬剤師などが連携しながら診療を行っている。同院独自の患者案内端末「NAVIT(ナビット)」を活用して患者を呼び出し、スタッフによる説明や聞き取りをタイミングよく行ったり、薬剤部オリジナルのシステムを活用して薬剤師外来の充実につなげたりと、限られた人材と時間を最大限活用しながら、安全で質の高い化学療法を追求している。

1. 病院の概要とがん診療 愛知県北西部の地域がん診療連携拠点病院
がんにかかわる部門・事業を「がんセンター」で統括

三嶋 秀行 がんセンター長・副院長

三嶋 秀行
がんセンター長・副院長

愛知医科大学病院は愛知県内に4つある大学病院の1つで、県北西部に位置する長久手市にある。現在の病院は2014年にオープンした新病院で、標榜科目数は31、病床数は900床だ。特定機能病院、地域がん診療連携拠点病院のほか、さまざまな分野で拠点病院やセンターに指定されている。

2019年には長久手市が属する尾張東部医療圏の地域がん診療連携拠点病院に指定された。また、同年10月には、中央診療部門の1つとして「がんセンター」を設置している。「がんセンターとは、院内に多数あるがん診療部門を統括する組織で、診療科の枠を超えた多職種での連携業務をサポートする役割を担っています。バイオバンク事業やがんゲノム診療なども連携の輪の中にあり、特定機能病院である大学ならではの特色を生かした、『がんの総合診療』の実現を目指すとともに、就労支援、がん教育、地域連携などにも力を入れ、多様な患者さんのニーズに対応しています」と紹介するのは、がんセンターの三嶋秀行センター長である。

がんセンターに先がけて2012年にできた組織に、診療部門・臨床腫瘍センターがある。「私が愛知医大に来たのはちょうどこのセンターができた年で、臨床腫瘍センターを拡充しながら地域がん診療連携拠点病院の指定を取ることを目指してきました。約7年かけて目標を達成し、さらに組織運営を円滑にするために、がんセンターという、がん関連部門を統括する組織をつくったというわけです」と赴任後の流れを説明する三嶋センター長は現在、副院長、臨床研究支援センター部長、ゲノム医療センター副部長などを兼務。消化器外科医であり、消化器がんの薬物療法と診療相談を専門としている。

同院では、オリジナルの患者案内端末「NAVIT(ナビット)」を2014年5月から運用しており、これを使った待ち時間対策など診療以外の患者サービスも光る。NAVITは診察状況、診察呼び出し、医療費計算などの情報を文字、音、振動で患者に通知する連絡用携帯端末で、同院の外来患者は出入口や立体駐車場への連絡通路に設置されている再診受付機で手続き後、必ずこれを受け取り携帯する。その後は外来診療エリアであれば自由に移動でき、診療の順番が来れば呼び出されるという仕組みだ。後述する外来化学療法室の活動でも、このNAVITがおおいに活用されている。

2. 臨床腫瘍センター がんセンターの実務者にしてがん診療のまとめ役
外科・内科・化学療法の3部門が結集

三嶋 秀行 がんセンター長・副院長

岩田 崇
臨床腫瘍センター
(腫瘍外科部門、外来化学療法部門)
副部長

臨床腫瘍センターは「腫瘍外科部門」「腫瘍内科部門」「化学療法部門」の3部門からなる。腫瘍外科部門は、主に胃がん、大腸がん、胆膵がんなど手術がかかわる消化器がんの薬物療法や診療相談を担当する。部長は三嶋センター長が兼務し、岩田崇副部長とともに3部門を束ねる役割も兼ねている。腫瘍内科部門は、主に肺がん、原発不明がんなどの薬物療法を担当。部長は呼吸器・アレルギー内科の医師が務める。化学療法部門は薬物療法を実際に行う部門で、岩田副部長が統括している。

キャンサーボードも、臨床腫瘍センターを中心に行われている。同院のキャンサーボードの大きな特徴は、定期的なセミナー形式ではなく、担当医が相談したいと思ったときにオンデマンド形式で行っているという点だ。参加者は、担当医、臨床腫瘍センターのメンバー、放射線科医、病理医、看護師、薬剤師など10~20名。相談内容で多いのは、重複がんや原発不明がん、合併症のある患者の拡大手術などについてのもので、平均して2週間に1回くらいの割合で開かれている。

「がん患者さんについて医師から相談があると、1週間以内に関係者が集まって検討会が持たれます。そこで皆の意見を集約し、カルテに記載し、後日、担当医が、組織全体の見解として患者さんに伝えます。看護師などから聴取した患者さんや家族の本音も反映されていますので、ほとんどの場合、そこで患者さんの納得が得られ、担当医の悩みは解決され、以後の診療はスムーズに進みます」と、三嶋センター長がオンデマンド形式のキャンサーボードの利点を語る。

このほか臨床腫瘍センターの会議が月に1回あり、ここでも情報共有や相談ができる。加えて、精神面を専門的にサポートすることが必要な患者がいたら、すぐに精神科医につなぐことができるのも、精神神経科を持つ同院の良さといえる。「時間はかかりましたが、院内各部門が協力してがん診療を行うベースが整ったことを感じています」と三嶋センター長が力強く語る。

3. 外来化学療法室 関連の深い診療科のブースと同フロアに設置
外科出身のオンコロジストが専門的に対応

外来化学療法室は、病院の主な部門が集まっている中央棟(地下1階・地上5階建て)3階にある。このフロアには30~36の6つのブロックがあり、外来化学療法室があるのは30ブロック。乳腺・内分泌外科ほか、血液内科、造血細胞移植センター、緩和ケアセンターの外来と同じブロックだ。隣の31ブロックには、放射線科、消化器外科、肝胆膵内科、炎症性腸疾患センター、消化管内科の外来が並ぶ。

これらの位置関係には大きな意味がある。30ブロックにある乳腺・内分泌外科は、外来化学療法室の使用状況が、2019年度実績・患者数ベースで1,602人と全診療科でトップ、血液内科は同1,147人で2位なのである。また、31ブロックの消化器外科、肝胆膵内科、消化管内科も外来化学療法室の使用頻度が高い。2019年度に外来化学療法室を使用した患者の総数が7,919人で、ここにあげた5つの診療科だけで全体の3分の2を占めている。このように外来化学療法と関連の深い診療科の外来ブースを近くにまとめることで、お互いに協力しやすくなり、診療の質が上がり、効率もアップしている。

岩田副部長は外来化学療法部門の医師の役割を、「治癒を目的とした術前術後の化学療法や、治癒を望むことが難しい進行再発がんに対するQOLの維持と余命延長を目指した薬物療法を、患者さんの主治医と相談しながら行います。また、外来化学療法中にアレルギーや抗がん薬の血管外漏出など何らかの有害事象が生じた場合にはすぐに対応します」と紹介する。岩田副部長は、日本外科学会専門医と日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医の資格を持つ貴重な存在で、同じく外科出身のオンコロジストである三嶋センター長のもとで、2020年6月から仕事をしている。外科医の心理や手術の内容を熟知したうえで化学療法を提供できるのは、両医師の大きな強みだ。

外来化学療法室の病床は20床(ベッド7、チェア13)。長らくベッド12、チェア6の計18床だったが、患者増に伴い2020年7月に増床した。また、診察室や面談室もあり、ゲノム診療もここで、三嶋センター長の担当で行われている。中央にナースステーションがあり、ここから室内を一望できる。ベッドやチェアを仕切るカーテンは安全面を考慮し、基本的に開けたままにしている。

ほかの地域がん診療連携拠点病院に勤務した経験もあり、2020年4月に入職した櫻井美保看護師(がん化学療法看護認定看護師)は、愛知医科大学病院の外来化学療法室について、「はじめて来たときは、意外に狭く、カーテンを開けたままなのも少し驚きました。でも実際に働いてみると、私たち看護師が患者さんのちょっとした動きや変化に気づいてすぐにそばに行けたり、ナースコールを押していただくまでもなく、手を上げて合図していただけたりするのがとてもいいと思うようになりました。お互いを身近に感じるこの距離感が、患者さんにとっても私たちスタッフにとっても安心感につながっていると思います」と話す。

4. 看護師の役割 患者の身近で心身をサポート
認定看護師の持ち回りで「看護外来」も実施

外来化学療法室には専従看護師が2名いる。池田幸代看護師(主任、がん化学療法看護認定看護師)と、櫻井看護師(前出)だ。同室にはこの2名を含めて通常、血液内科所属の看護師が7名勤務しており、患者の多い曜日のみ8名に増員する。「はじめて当室を利用される患者さんにオリエンテーションを行うことと、日々の投与管理が私たち看護師の主な役割です。特に、その日のリーダーは、患者さんが来られたときにご希望を聞きながらチェアかベッドに案内したり、オーダー元の医師と連絡を取り合ったり、全体を調整する役割も担います」と池田看護師が紹介する。

看護師たちはその日に外来化学療法を行う患者の名前や人数については事前に把握してはいるものの、完全予約制ではないため10:00以降の2時間程度は患者が集中しやすい。そこで待ち時間が生じたときに役立つのが、前述したNAVITである。外来化学療法室の患者もこれを活用し、検査などを受けながら、余った時間は外来エリア内で自由に過ごしている。

待ち時間のある患者の中で、特に補足説明やコミュニケーションが必要と感じる患者がいる場合は、看護師がその患者の持つ端末に呼び出し通知を送り、個別に対話をする機会を持つこともある。外来化学療法室に出入りをすることも多い乳腺外科の椿原久美子看護師(乳がん看護認定看護師)は、「くわしいお話をしたい患者さんには、NAVITを使ったり、主治医の診察に立ち合わせてもらうよう手配したりして、積極的にかかわるようにしています」と話す。「乳がん患者さんは年代が幅広く、術後、治療を受けながら仕事や子育てをする人も多くいますし、術後から終末期までのお付き合いになることも多々あります。そんな患者さんそれぞれの事情や背景を十分理解したうえで、安心して治療を受けられるようにサポートしていくのが乳がん看護認定看護師の役割だと思っています」と話す椿原看護師は、外来化学療法室の看護師たちにとっても頼れる存在となっている。

3名の看護師は外来化学療法室で連携するとともに、がん性疼痛看護認定看護師、緩和ケア認定看護師らと、それぞれ週1回、2時間の枠を持って「看護外来」を行っている。完全予約制で、患者1名につき30分程度を目安に、面談室で専門的に相談に応じている。

5. 薬剤部の役割 独自のシステムで業務全体を効率化
「対物から対人へ」の流れを促進

愛知医科大学病院では、外来患者の処方に院内調剤で対応している。そのため、総勢約80名いる薬剤師のマンパワーを外来調剤に割かれる部分が多く、外来化学療法室とのかかわりも、以前は調製やレジメン管理に限られがちな状況だった。そこで近年は対人業務を強化すべく、江尻将之薬剤師(主任、がん専門薬剤師)を中心に工夫を開始。たとえば「薬剤師外来」を開設し、医師の診察の前に実施するようになった。

薬剤師外来を行うにあたってもNAVITが役に立った。「医師の診察の時間に合わせて少し前にNAVITで患者さんを呼び出し、副作用の有無や支持療法の効果などについてあらかじめ確認し、医師に伝えるようにしています」と江尻薬剤師。同外来の対象となる患者は、主に化学療法をはじめたばかりの人、内服の抗がん剤を服用している人などだ。薬剤師は個々に合ったアドバイスができるよう、日頃から医師や看護師と患者情報を共有するようにしている。

対人業務を強化するにあたって効率化されたのが、いわゆる対物業務である。ここで活躍したのが、コンピュー
タープログラミングが得意な黒瀬優輔薬剤師(主任)である。「地下にある薬剤部と3階にある外来化学療法室、この物理的な距離を近づけることをまず考えました。幸い、当院にはもともとTeams(チームズ;Microsoft社が提供しているクラウドサービス)が導入されていたので、これを使って調製部門と外来を接続し、常時、顔を見て会話ができる状態をつくりました。これにより人員配置の変更などが臨機応変にできるようになり、効率化が進みました」と黒瀬薬剤師が説明する。

ほかに、レジメンの審査も江尻薬剤師が中心に担っているが、1人では手に負えないときなどはTeamsでファイルを共有し、複数の薬剤師で検討するので作業が速く進む。また、Teamsのチャット機能をつかって打合せを行うなど、時間の有効活用もできている。「タスク管理アプリも連動させたので、仕事の担当や流れが明確になり、漏れもなくなりました。時間短縮だけにとどまらない、本当の意味での効率化ができたと思っています」と黒瀬薬剤師が自ら構築したシステムの効果を語る。

調製業務は、江尻薬剤師、黒瀬薬剤師の後輩である春日井悠司薬剤師と近藤雅薬剤師が担っているが、以前からの努力と、Teams活用の効果で業務が効率化されたことで、この2名が対人業務にかかわる時間も増えている。特に春日井薬剤師は薬剤師外来に積極的に取り組み症例を重ねることで、外来がん治療認定薬剤師の資格を取得することができたという。

「当院にはオリジナルの調製シートがあって、レジメンごとに何をチェックすべきかがリストアップされているため、初心者でも正確に調製ができます。患者さんごとに集積された情報が一覧できる仕組みや、検査値シート、鑑査システムなど、調製担当者にとって便利なツールが整っていることも、調製業務と対人業務を兼務できることにつながっていると思います」と春日井薬剤師。近藤薬剤師も、「私たち薬剤師は担当を決めて、投与内容のチェックを前日までに行っています。チェックを担当した薬剤師は、当日の外来化学療法室でのモーニングカンファレンスに出席しますが、このときに必要なデータも簡単に検索できるのでとても便利です」と続ける。これらの仕組みも黒瀬薬剤師のオリジナルというから驚きだ。

Teamsによる情報共有は、現在のところ外来化学療法室の業務に携わるメンバー内に限っているが、ゆくゆくは他の薬剤師にも広げていきたい考えだ。江尻薬剤師は、「今後もできるだけ時間をつくり、多くの患者さんのお役に立ちたいと思います。そして、患者さんを介して部門間や職種間をつなぐ役割を担えるようになることが私たちの目標です」と語る。

6. 今後の課題・展望 いまこそ正しい情報の発信が必要
外来化学療法の目標は「安全・安心・安楽」

赴任から7年かけてがん診療の体制を構築したいま、三嶋センター長は、「あらためて一般の人々の教育に力を注ぎたい。これだけ多くの人ががんにかかる時代になったいま、人々はがんについてもっと知り、自分で選択できるようになる必要があると思います」と言い、効果的な啓発活動の方法を考案中だ。

外来化学療法の課題は「安全・安心・安楽に尽きます」と一言。これを共通目標に、がん診療に関連する部門、部署、職種の連携をさらに強化していく。

KKC-2021-00095-2

外来化学療法 現場ルポ

おすすめ情報

  • おすすめ情報は、協和キリンのウェブサイトにおける個人情報の取扱い方針に基づき、お客様が閲覧したページのアクセス情報を取得し、一定の条件に基づき自動的に表示しています。
    そのため、現在ご覧いただいているページの情報との関連性を示唆するものではございません。

くすり相談窓口

弊社は、日本製薬工業協会が提唱するくすり相談窓口の役割・使命に則り、くすりの適正使用情報をご提供しています。
弊社医薬品に関するお問い合わせは、下記の電話窓口で承っております。

フリーコール

0120-850-150

受付時間 9:00~17:30
(土・日・祝日および弊社休日
を除く)

※新型コロナウィルスの感染予防・感染拡大防止を全社方針として徹底していくことから、お電話が繋がりにくい可能性があります。

※お電話の内容を正確に承るため、また、対応品質の維持・向上等のため通話を録音させていただいております。あらかじめご了承ください。

お問い合わせ