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滋賀医科大学医学部附属病院
[外来化学療法 現場ルポ]

2021年06月11日公開/2021年06月作成

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病院外観
  • ●病院長:田中 俊宏 先生
  • ●開設:1978年
  • ●所在地:滋賀県大津市瀬田月輪町

薬局薬剤師と緊密に連携し
外来化学療法の患者を支える

滋賀県唯一の大学病院として県内全域から患者を受け入れているため、滋賀医科大学医学部附属病院の院外処方は面分業が中心で、薬剤部では患者に不利益とならないよう10年前から地域連携に注力し、さまざまな取り組みを展開してきた。こうした活動は「連携充実加算」の算定体制を構築するうえでも非常に有用であり、また化学療法が外来にシフトし通院患者の負担が増大する中、がん医療に携わる薬剤師にも一層求められていることである。

1. 病院の概要 地域密着型医療を展開しつつ
高度先進医療の充実にも注力

滋賀医科大学医学部附属病院は、1970年代に推し進められた「一県一医大構想」に伴って開院した大学病院で、大学の理念(地域に支えられ、地域に貢献し、世界に羽ばたく大学として、医学・看護学の発展と人類の健康増進に寄与する)を反映し、地域に密着した医療を展開してきた。

滋賀県唯一の大学病院として地域医療においてリーダーシップを発揮する一方、1995年に特定機能病院に指定された後は、その役割を果たすために高度先進医療の整備にも積極的に取り組み、近年は、がん医療、新生児・産科医療、アレルギー医療、難病医療、救急・災害医療の充実に力を入れてきた。

なかでも「滋賀県がん診療高度中核拠点病院」の指定を受けているがん医療については、ロボット支援手術、高精度放射線療法、オーダーメイド医療、ゲノム医療などの先進的がん治療を推進するとともに、希少がんである小児がん、さらには妊孕性温存への取り組みにも注力している。

2. 外来化学療法室の概要と特徴 安全性と快適性を追求した環境で
小児を含め全科のがんに対応

がん治療の一翼を担う化学療法は、各診療科と連携しながら腫瘍センターの専門医療チームによって運営される化学療法室で行われている。腫瘍センターは、がん医療を包括的に支える8部門(化学療法、緩和ケア、がん登録、がん相談支援、診療連携、教育・研修、先進医療推進、がんゲノム医療)で構成されており、関連する5委員会(腫瘍センター会議、化学療法プロトコール審査委員会、化学療法委員会、緩和ケア委員会、がん登録委員会)とともに活動し、がん医療の要ともいえる存在だ。

化学療法の主流となっている外来化学療法は月600~700件のペースで実施しており、その件数はコロナ禍でも平時とほぼ変わらない。消化器がんを中心に全科に対応し、小児科や血液内科の患者が増加傾向にあるのが特徴の一つだ。化学療法室に常駐するスタッフは腫瘍センターに所属する医師1名程度、看護師7名(配属は12名)のほか、薬剤部から7名の薬剤師が配属されており、それぞれの専門性のもと有機的に連携しながら活動している。

化学療法室の治療環境には気を配り、開口部の広い窓を設置して採光を十分に取り入れるほか、患者がリラックスして治療を受けられるようBGMも流す。また、安全性を重視し、自然落下式による薬剤注入法を採用。点滴の状態を監視するための自動点滴装置も導入した。さらにコロナ禍の現在は、感染対策を強化し、患者がベッドやリクライニングシートを使用する度に消毒・清掃を行い、患者とスタッフ以外の入室を禁じている。

3. 外来化学療法室における薬剤師の取り組み すべての患者に服薬指導を行い
化学療法をマネジメントする

廣野 靖夫 がん診療推進センター センター長/通院治療センター センター長/腫瘍病態治療学講座 准教授

寺田 智祐 薬剤部長
[現在の所属]
京都大学医学部附属病院
薬剤部 教授・薬剤部長

外来化学療法における薬剤師の主な仕事は抗がん薬の調製と服薬指導だ。「この業務をしっかり遂行できるようにできるだけ多くの人員を配置しています」と薬剤部長の寺田智祐先生は話す。化学療法室のサテライトファーマシー(化学療法管理室)に配属する薬剤師は7名で、また、他部署よりミキシング応援要員として4名の薬剤師が派遣されている。日々の業務は、午前6名、午後4名の薬剤師、そして助手1名の人員体制で対応している。

抗がん剤の調製は、トレーニングを積んだ薬剤師がサテライトファーマシーで一手に引き受け、一般的な点滴剤のほか、膀胱内注入療法や肝動注化学療法に用いられる薬剤の調製も行っている。また、投与内容の決定にもかかわり、ほかの病気の治療で併用する薬剤との相互作用なども検討したうえで総合的に判断する。さらに生涯投与量の上限が決まっている薬剤の投与管理も行い、必要に応じて主治医に情報
を提供する。

須藤 正朝 化学療法管理室室長(日本医療薬学会 がん専門薬剤師)

須藤 正朝 化学療法管理室室長
(日本医療薬学会 がん専門薬剤師)

「新型コロナウイルス感染症の感染防止対策のために中止となっていますが、いわゆる薬剤師外来(診察前面談)にも取り組んでいました。しかし、コロナ禍の今も外来化学療法室で治療を行う全患者を対象にすべての回において服薬指導を実施しており、副作用もしっかり拾い上げて薬学的視点から化学療法のマネジメントができていると思います」と化学療法管理室室長の須藤正朝先生は話す。

4. 地域連携の取り組み カンファレンスの場を利用した
情報交換から連携がスタート

一方、この10年来、薬剤部が積極的に取り組んできた活動の一つに地域連携がある。「当院には県内全域から患者さんが受診してくるため、院外処方せんが面分業となっており、患者さんの不利益にならないようにするには広域にわたる保険薬局との地域連携を強化していく必要がありました」と寺田先生は動機について説明する。

地域連携が始まったのは2010年のことだ。週1回、薬剤部で実施しているカンファレンスに同病院前に開設されていた滋賀県薬剤師会 会営薬局の薬剤師にも参加してもらうことから取り組んだ。「入院患者さんの支援をする際、外来で行われていた薬物療法の実態がわからず困ったことがありましたし、薬局薬剤師からも病院でどのような治療が行われているのか不明なので医師とのコミュニケーションがうまくとれないといった相談も受けていました。そこで、カンファレンスの場を利用して情報交換をすることにしたのです」と寺田先生は振り返る。

また、カンファレンスを通して会営薬局が得た医療情報などを、滋賀県薬剤師会に所属する保険薬局薬剤師に情報提供してもらったことが、地域連携の土台づくりにもつながった。

まもなく外来化学療法でも地域連携を開始。経口抗がん剤が処方されるようになり、副作用マネジメントを行ううえで、薬局薬剤師とも治療内容を共有することが欠かせなくなったからだ。「この連携にはお薬手帳を活用しました。レジメン名、薬剤名、投与量、副作用の発現状況、副作用への対処法、患者の病態など外来化学療法を安全に確実に実施するための医療情報を提供することに努めました」と須藤先生は話す。

年を追うごとにお薬手帳の内容はブラッシュアップされ、現在は「連携充実加算」を算定するうえで必要な文書の役割も果たしている(図1、2)。「薬局薬剤師が当院のホームページでレジメンの検索・閲覧ができるようにWEB環境を整備し、初回とレジメン変更時には化学療法を担当する薬剤師の直通連絡先もお薬手帳にも記載して伝えるようにしています」(須藤先生)。

このような連携を進める中、2011年には腎機能が低下した患者のお薬手帳に「CKD(慢性腎臓病)シール」を貼り、医師・薬剤師間での情報共有を図る取り組みが同病院を中心に始まった。「この活動は県全体で地域連携に対する一体感を持つことに大いに貢献しました」と寺田先生は評価する。

そして、薬剤部と保険薬局が連携しながら腎機能低下患者の服薬支援をする中で出てきた問題点を解消するために院外処方せんへの検査値の記載、施設間情報連絡書の運用開始といった対策が次々に行われ、それが外来化学療法の地域連携を促進することにも役立った。「既存のプラットフォームを活用し、抗がん薬にかかわる症例であった場合、化学療法管理室の職員にも内容を伝えるように制度を整えたので、薬局薬剤師からの情報を踏まえたうえで、より適切な服薬指導ができるようになりました」(須藤先生)。因みに施設間情報連絡書の様式は滋賀県薬剤師会と滋賀県病院薬剤師会との3者で協議し、県内で統一した。

5. 薬々連携 薬局を対象とした研修会を実施し
同時に"顔の見える関係"も築く

2012年には薬局薬剤師の専門性を高めるために研修会をスタート。抗がん剤治療を中心にさまざまなトピックスを取り上げた「地域のがん薬物療法を支える薬剤師養成コース」を設け、年2~3回のペースで開催してきた。毎回100~150名ほどの薬局薬剤師が参加し、2019年8月には20回を重ねた。「なかでも"合併症を有するがん患者へのアプローチ"をテーマにした回では261名もの参加者となりました。こうした参加人数からも地域の薬局薬剤師が学ぶ場を求めていたことがよくわかります」と寺田先生はいう。

さらに2015年には臨床薬剤業務研修も開始した。がん医療に関しては2日間の「緩和ケアコース」を設け、注射剤の無菌調製、病棟薬剤業務、多職種による地域連携、褥瘡対策・感染対策の実際といった実地研修に取り組んでもらった。各回の定員は2名で、2015年4月~2017年3月までの実施期間中に75名の薬局薬剤師が研修を受けた。「病院薬剤師の役割や業務を理解してもらうことで、以前にも増して緊密な連携体制が構築できるようになったと手応えを感じています」(寺田先生)。

コロナ禍の現在は対面セミナーができなくなってしまったが、「薬局薬剤師の学ぶ意欲とその機会を奪いたくない」とオンライン研修会を企画。2020年7月30日にzoomを活用した第1回のオンライン研修会を開催し、県内各地および県外から80名の薬局薬剤師が参加した。「参加者数の制限があったため、第1回の直後の8月に第2回を開催し、その参加者は87名と第1回の人数を上回りました。期待されていることもよくわかったので、定期的に開催できるよう取り組んでいきたいです」と須藤先生は抱負を述べる。

さまざまな研修会を通して県内の薬局薬剤師と"顔の見える関係"を地道に築いてきたことで困ったことを相談してもらえるようになったともいう。「滋賀県医療情報ネットワーク協議会が運用する"びわ湖あさがおネット"では患者登録をすると患者の診療情報を見られるようになります。当ネットの機能として秘匿性の高いメールのやりとりができるため、このシステムを利用して地域の保険薬局から治療に難渋している患者さんの相談を受けることもあります」(須藤先生)。

6. 展望と課題 地域で支援できる薬剤師を増やし
通院するがん患者の負担を減らす

がんの化学療法が入院から外来にシフトする中、高齢患者を中心に通院しながら治療を受けることに大きな苦痛や負担を感じる人が増えている。こうした患者の訴えを聞くことの多い須藤先生は「患者さんの自宅近くに外来化学療法をサポートしてくれる薬局薬剤師がいれば患者さんの苦痛や負担は今よりも減らせます。そのためには地域における薬薬連携をいっそう強化していかなければならないと思っています」と課題について語る。

一方、寺田先生は「この地域に根づいている近江商人の"三方よし(売り手よし、買い手よし、世間よし)"の心得のように自分たちの行動が地域社会の発展や福利につながることを意識できるようになると地域連携は着実に進んでいくでしょう。しかし、実際はメリットがなければ人は動いてくれないので、どの様に動機付けを行うのか、そこに地域のリーダー的な役割を任せられている我々の存在価値があると考えています」と話す。

そして、「地域連携加算をはじめ、診療報酬も充実してきて地域連携に取り組む機運は高まっているので、人が動く仕組みをうまく作りながら地域のリーダーとなる薬局薬剤師を育成していくことが重要です」と寺田先生は地域連携の道筋を示す。

最後に寺田先生はすべての薬剤師に対するメッセージとしてこう締め括る。「薬剤師が今すぐ行動を変えても、大きな効果が出始めるのは5~10年先のことです。私たちも2011年に開始したCKDシールの取り組みの成果がようやく現われ、医師の処方が腎機能低下に考慮した内容に変わっていることを肌で感じています。長い道のりですが、自分たちの行動変容がその先のよりよい薬物療法に必ずつながることを信じて、自ら変わることを厭わないでほしいと思います」。

KKC-2021-00637-2

外来化学療法 現場ルポ

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