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松山赤十字病院
[外来化学療法 現場ルポ]

2022年3月22日公開/2022年3月作成

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病院外観
  • ●院長:横田 英介 先生
  • ●開設:1913年
  • ●所在地:愛媛県松山市文京町1番地

患者の生命予後延長のために
あらゆる側面からチーム医療で支える

松山赤十字病院では、化学療法センターのがん専門薬剤師が中心となって、がん薬物療法におけるCDTM(共同薬物治療管理)を実践している。その運用体制において各医師・各科と薬剤部との個別契約というスタイルが多い中、全科と契約している薬剤部は全国でも類をみない。院内で支持療法を統一することによって、どのような効果が期待できるのか。また、こうした運用体制が構築できたポイントなど、同病院の取り組みを紹介する。

1. 病院の概要 総合病院の強みを生かした
地域密着型のがん医療を展開

川口 英俊 乳腺外科部長

川口 英俊 乳腺外科部長

1913年に創設された松山赤十字病院は、1世紀余りにわたり愛媛県の基幹病院として急性期医療を中心に発展してきた。2014年から新病院の建設が始まり、2018年1月には北棟と東棟、2021年3月には南棟も完成し、新病院が開院した。これによりさらに急性期高度医療に対応できる診療体制と最新の設備を備え、同時に救急医療体制、地域医療支援体制の充実も図られた。また、免震装置や自家発電装置などを完備し、災害に強い病院に生まれ変わったことも大きな特徴の一つである。

2007年に地域がん診療連携拠点病院、2020年にはがんゲノム医療連携病院に指定され、地域のがん医療を最前線で担っている。「松山市でがん治療を中心的に担っているのは市内にある四国がんセンターです。当院は総合病院であるため、合併症や既往症があり、全身状態のよくないがん患者さん、例えば透析患者さんや心不全患者さんなどのがん治療を多く引き受けています。また、街中で交通の便がよいこともあり、高齢のがん患者さんも多いです」と川口英俊乳腺外科部長はがん診療の特徴について説明する。

全科にわたってがん診療には対応しているが、なかでも患者が多いのは乳腺外科、臨床腫瘍科、呼吸器センター(呼吸器内科・呼吸器外科)、血液内科、肝胆膵センター(肝胆膵内科)などが挙げられる。乳腺外科では川口部長が赴任してから患者が増加しており、赴任当初は年間60例ほどだった手術件数は現在、120例程度で推移している。また、再発乳がんの治療にも積極的に取り組んでいる。その治療成績は年々向上しており、多い日では1日に20~30人の再発乳がん患者の薬物療法を実施している。

「乳腺外科の特徴は、ブレストケアチームによるチーム医療を重視していることです。週1回行われるチームカンファレンスには、乳腺外科医をはじめ、病理医、看護師、薬剤師、検査技師、医療秘書に加え、地域の診療所医師や検査センターの検査技師なども参加し、その数は毎回20~25名ほどになります」と川口部長は話す。ブレストケアチームの活動は、患者が周術期治療を完遂、あるいは再発治療を継続することができるようそれぞれの専門分野からサポートすることに主眼を置いている。

「患者さんは治療による有害事象だけでなく、治療費、仕事、パートナーとの関係、子どもの教育など、さまざまな理由によって治療の中断や中止を決断します。そのため、経済的・社会的・心理的な面を含め、あらゆる側面からチーム医療で支えていくことが欠かせません。それは患者さんの生命予後の延長に直結することだと考えています」と川口部長は強調する。

2. CDTM運用開始 がん薬物療法における
有害事象対策は薬剤師に一任

村上 通康 薬剤部長・がん専門・指導薬剤師

村上 通康 薬剤部長・
がん専門・指導薬剤師

化学療法センターにおいても周術期治療を完遂、あるいは再発治療を継続する観点から各職種がさまざまなサポートを展開している。2005年に開設された同センターは6床からスタートし、その後に増床を重ねて北棟が新築されたときに最大29床まで稼働できるよう病床を拡張した。現在、稼働しているのは22床前後で、多い日で1日約60件、平均では1日約30件の薬物療法に対応している。2020年度の実績は7,906件に上る(図1)。同センターには、がん薬物療法専門医1名ほか、看護師8名(うち1名はがん化学療法看護認定看護師)、薬剤師4名(うち3名はがん専門薬剤師)が配属されている。

「当院では、がん薬物療法における有害事象対策はすべて薬剤師に一任しています(図2)。これは医師からの発案ではなく、薬剤師自ら『有害事象対策は薬剤師の専門分野である。私たちにまかせてほしい』と申し出てくれたのです」と川口部長は振り返る。

村上通康薬剤部長によると、がん薬物療法にかかわる薬剤部の取り組みは2010年から本格的に始まったという。「私は2008年に日本病院薬剤師会が認定を開始したがん専門薬剤師の第1期生です。資格取得後、米国のがん薬物療法の現場で研修する機会を得、有害事象対策における薬剤師の役割と専門性について感銘を受け、自院でも同様の取り組みにチャレンジしたいと考えるようになりました」と村上部長は経緯を説明する。

そして2010年4月に厚生労働省から「医療スタッフの協働・連携によるチーム医療の推進について」の医政局長通知が発出されたことを機に、支持療法に関するCDTM(共同薬物治療管理)の業務を提案したが、最初は医師たちに「処方権を持たない薬剤師が処方してよいのか」と難色を示されたという。

そこで、村上部長が中心となり、各科が実施した薬物療法の有害事象例(悪心・嘔吐)を集め、それらが制吐薬適正使用ガイドラインに基づいた方法で行われているかどうかを調査。そのうえで、全科で支持療法を統一した場合、有害事象が減少することを具体的に示した。この成果に対し、川口部長を含めた3名の医師たちが賛同し、その強力な後押しもあって、院内で統一した支持療法を行うこと、薬剤師が有害事象の評価に必要な検査オーダーを出すことが承認され、全科でCDTMが開始されることになった。

「他院で行われているCDTMは各医師・各科と薬剤部との個別契約が多く、当院のように全科と契約している薬剤部は全国でも類をみません。このような快挙を成し遂げられたのは、化学療法部会を含めがん医療にかかわる組織体制がしっかり構築されていたこと、薬剤師の専門性に対して理解のある医師が複数いたこと、そして意欲のあるがん専門薬剤師がいたこと。この3つの要素が挙げられます。現場が新しいことにチャレンジしようとすると上司にストップをかけられることも少なくない中、前薬剤部長の仙波昌三先生に自由に活動させてもらえたことも大きかったと思います」と村上部長は成功要因について語る。

3. CDTMの実際 支持療法を院内で統一して
がん診療の質向上を図る

「M-CDTM(松山赤十字版CDTM)」と名付けられた同病院のCDTM運用体制は「処方」と「検査」の2種類で構築されている(図3)。いずれも特定のレジメンに対してエビデンスに基づいた最適な支持療法を薬剤師が検討し、アルゴリズム化してプロトコルを作成する。そして、プロトコルを記した「CDTM申請願」にサマリーと参考資料となる文献を添えてがん化学療法部会に申請。その後、各科部長で構成される審査委員会で回覧され、各委員の承認をもらったうえで最終的に審査委員長の承認を得る。承認を受けたプロトコルは電子カルテ上に支持療法セットとして作成され、オーダリングにもセット処方として登録される。

「あらかじめ決めた条件に合う患者さんが現われると薬剤師がCDTMを実施します。頻度の高いパターンとしては化学療法センターで点滴中の患者さんへの適用です。『先ほどの診察では医師にいわなかったけれど、実はこんな副作用に困っている』と患者さんが看護師に訴え、その情報が薬剤師に伝えられて患者さんと面談を行い、プロトコルの条件に合致したら医師に報告し、医師が診察等で対応できなければ薬剤師が処方や検査を代行入力するといった流れです。オーダーはプロトコルでセット化されたものを使用します」と化学療法センターに専任する橋本浩季がん専門薬剤師はCDTMの実際について説明する。

村上部長によると、薬剤師がCDTM業務に従事するのもさることながら、より重要なのはCDTMを通して支持療法の内容を全科・全スタッフで統一できることだという。「医師も看護師も処方内容や検査内容を理解していれば、患者さんにより注意深く対応できるようになりますし、薬物療法に対する全体のレベルも上がっていきます」と村上部長は強調する。CDTMの件数はスタート当初に比べて年々減ってきており、その理由について橋本薬剤師は「薬剤師から疑義紹介を何度も受けているうちに若手医師も処方のポイントを掴めるようになるようです」と、多様化する支持療法への医師の理解がCDTMの運用を通して深まる点を挙げる。

4. 薬剤師の診察前面談 処方提案の承認率はほぼ100%
医師のタスクシフトにも寄与

一方、薬剤師の活躍は医師の業務負担の軽減にも役立っていると川口部長は評価する。「1日50名近くの患者さんを診察し、多い日で20~30名の薬物療法を行っているので、一人ひとりに時間をかけることは物理的に不可能です。こうした状況の中、薬剤師と協働するようになり、診療時間を1時間も早く終了することが可能になりました。診療の質を向上させながら医師の負担を軽減することにも効果があったのです」(川口部長)。

この背景には「薬剤師による診察前面談」を実施していることも大きい。同病院では医師の診察前に薬剤師が患者に面談し、有害事象について聞き取ったうえで必要に応じてその対策にかかわる処方提案も行う。「薬剤師の有害事象対策のレベルは我々医師をはるかに超えるものです。また、薬剤師をチーム医療の重要な一員であると認めて協働していくならば、責任をしっかり持ってもらうことが大事だと考えたのです」と川口部長は診察前面談を開始した狙いを明かす。

診察前面談の実施にあたり、川口部長は薬剤師の方針を極力変えないことを心がけており、処方提案の承認率もほぼ100%だという。「薬剤師自らが検討して実践した結果がどうなるのか知ってほしいからです」(川口部長)。そのため、診察前面談は一度では終わらず、自分たちが拾い上げてきた問題が解決するまで薬剤師のサポートは続くことになる。

このように診察前面談の目的は治療完遂・継続のための有害事象対策の推進が第一義だが、思わぬ副産物もあった。それは患者の満足度の向上である。「ある本に"男性は問題が生じたら洞窟にこもって一人で解決するが、女性は人に話して解決する"と書いてありました。まさしくこの書が示している通りで、乳がんの患者さんは医療者に有害事象対策のみを求めているわけではなく、前回の治療から今日の診察までどれくらい大変だったのかを聴いてほしいのです。しかし、我々医師にはその時間が十分に取れない。そのため年2~3回程度は『あの先生は話を聴いてくれない』というクレームが来ていました」(川口部長)。

ところが診察前面談を開始すると薬剤師が患者の話をじっくり聴いてくれるようになったので、どの患者も診察室に入ってくるときは笑顔だという。患者との会話の内容は電子カルテで共有され、問題点もすでに抽出されているので、医師も患者の大変さに共感しやすい。「診察室で『薬剤師さんとこんな話をしたのだね。大変だったね。薬剤師さんと相談した薬を出しておくよ』と声をかけると、患者さんは『先生、ありがとう』とお礼を言ってくれて満足気に化学療法センターに向かいます。診察前面談が始まってから話を聴いてくれないというクレームはまったくなくなりました」と川口部長は患者の変化について語る。

薬剤師が外来で活動することに対してさまざまな効果が期待される一方、病棟に手厚い診療報酬体系の関係から多くの医療機関では外来に多くの人員を割けない実情がある。この課題について村上部長は次のように語る。「当院においても化学療法センターに4名の薬剤師を専任で配置することは人員的に非常に厳しいです。支持療法において薬剤師の専門性を発揮できるか否かは人材確保にかかっているといってもいいでしょう。しかし、"人がいないからやらない・やれない"ではなく、薬剤師が必要とされる場所には優先的に人員を配置し実績を出していくことが薬剤部の増員に対する経営層の理解を得るうえでも重要だと考えています」

5. 薬薬連携 保険薬局との連携を強化し
地域における治療継続性を支える

化学療法センターの薬剤師が今、注力しているのが免疫チェックポイント阻害薬の有害事象(irAE)対策だ。2018年に村上部長が中心となって専用の検査オーダーセットを作成し、全科統一で運用している。「検査前日に電子カルテで検査項目をチェックし、不足などがあれば医師に報告・確認し、必要に応じて検査項目の追加をします」(橋本薬剤師)。irAEが疑われる場合は、irAEマネジメントチームで検討した流れに沿って、適切な対策がとられる。

免疫チェックポイント阻害薬による治療が終了し、経口薬による治療となった場合は化学療法センターのサポートを離れることになる。「irAEは投薬中いつでも起こり得ますし、投薬が終了して時間が経ってからも起こるので、注意深く観察して早期発見することが重要です」と川口部長は指摘する。そのため、化学療法センターでは地域の薬局薬剤師がirAE対策にかかわってくれることが望ましいと考える。橋本薬剤師は、今後の重点課題としてirAE対策における薬薬連携の強化を挙げる。そして、「この連携には、これまで培ってきたホルモン薬での薬薬連携の仕組みやノウハウも活かしていきたい」と抱負を語る。

化学療法センターの薬剤師は、2017年より乳がんの手術後あるいは進行・再発患者におけるホルモン療法(経口の分子標的薬との併用を含む)を対象に薬薬連携を開始している。「手術後5~10年行う必要があるホルモン療法は治療期間が長いだけに患者さんのアドヒアランスがだんだん落ちていきます。中断すると再発予防の効果が低下するというデータもあるので、治療の意義を含め、最初にしっかりサポートしておくことが生命予後の点においても重要なのです」と橋本薬剤師は目的を語る。

ホルモン療法における薬薬連携の仕組みは次のとおりだ。ホルモン薬などが処方されると、担当医から保険薬局向けのシート(ホルモン療法指導依頼書、ホルモン療法指導報告書:図4)を手渡されるので、患者は薬を調剤してくれる保険薬局に処方せんとともにそのシートを持ち込む。薬局薬剤師は「ホルモン療法指導依頼書」の項目に従って服薬指導を行い、治療に対する患者の理解度や2回目以降は副作用の状況を評価し、「ホルモン療法指導報告書」のコメント欄に気づいたことを書き込んだうえで、FAXで薬剤部に服薬情報をフィードバックする。

「このシートは化学療法センターに届けられ、がん専門薬剤師が内容を確認し、サポートすべき患者さんを拾い上げて診察前面談の予約を入れます。面談の結果、必要があれば処方や他科受診の提案も行います」(橋本薬剤師)。

この服薬サポートは初回投与から3カ月(3回)に限定されているが、薬局薬剤師にはやりとりを通して服薬指導のポイントを把握し、引き続き同じようなサポートが行われることを期待する。「当院では2021年10月より連携充実加算の算定を始めました。これによりホルモン療法以外の薬物療法においても緊密な薬薬連携が可能となりました。連携充実加算の制度を大いに活用していきたいと思います」と橋本薬剤師は意欲的だ。

また、irAE対策では、2021年8月からスタートした専門医療機関連携薬局(がんなどの専門的な薬学管理が必要な利用者に対してほかの医療機関と緊密な連携を行いつつ、より高度な薬学管理や服薬指導などを行える薬局)との連携も視野に入れる。

6. 治療費計算ツール がん専門薬剤師の知識を駆使して開発
外来診療時間の短縮効果も

「薬物療法の治療費が高額となる一方、度重なる高額療養費制度の改正で中所得層の人たちが治療を継続できない時代になってきています。今や治療選択・決定の場面において費用の見積もりや相談は避けて通れません」と川口部長は打ち明ける。

こうした状況の中、化学療法センターの薬剤師は早くから治療費に関連する取り組みにもかかわってきた。それが「治療費計算ツール」の開発だ。橋本薬剤師が乳がん看護認定看護師から「薬剤が高額のため、患者さんたちからどのくらいの費用がかかるのか尋ねられるが、医師や事務でもすぐに回答できないため困っている。簡単に計算する術はないものか」という相談を受け、エクセルを駆使して治療費計算ツールを作成したのだ(図5)。

川口部長によると、この治療費計算ツールはとてもよくできており、3つほどのレジメンの治療費比較であれば、ほんの1分ほどで行うことができるという。「外来診療時間の短縮にもつながり、とても助かっています」と高く評価し、積極的に活用している。因みにこの取り組みは学会で発表され、その後にある企業が製品化したので、今日誰でもインターネットから使用することができる。

「よく考えてみると、がん治療に使われるレジメンのこと、薬剤のこと、価格のこと、すべてに精通しているのは薬剤師しかいません。臨床だけでなく、我々薬剤師が患者さんの治療継続のために役に立てることはまだまだあるのだと痛感しました」(橋本薬剤師)。

患者の生命予後の延長のために、あらゆる側面からチーム医療で支える。松山赤十字病院は化学療法センターを牽引役に、地域の薬局も巻き込みながらこの目的に向かって突き進んでいる。

KKC-2022-00119-2

外来化学療法 現場ルポ

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