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Dr.Interview

Dr.interview ドクターインタビュー
  • 祖父江 理

    祖父江 理

    香川大学医学部附属病院腎臓内科 講師

    2004年3月に香川大学医学部卒業後,同大学医学部附属病院で臨床研修を修了。2006年4月同大学医学部循環器・腎臓・脳卒中内科に入局。2015 年4月より同大学医学部循環器・腎臓・脳卒中内科講師,同大学附属病院腎臓内科診療科長,血液浄化療法室長を務める。2014年2月より香川県慢性腎臓病対策協議会事務局を兼務。このほか,日本腎臓学会広報委員会香川県連絡委員,香川県臓器移植ワーキンググループ委員も兼任する。

香川大学医学部附属病院腎臓内科の特色

香川県は人口98万人弱,面積1,876km2 強と,47 都道府県で最も狭い1)。同県の医療において中心的役割を果たしているのが,県内唯一の特定機能病院である香川大学医学部附属病院である。そして,同病院で注目を集めているのが,腎臓内科講師の祖父江理氏である。

祖父江氏は香川県東かがわ市に生まれ,「検尿から腎移植まで」を診療のモットーとした,地元愛に溢れる若手医師である。祖父江氏に腎臓内科医を目指した理由を尋ねると,研修当時,腎臓グループ長であった清元秀泰先生への憧れがきっかけという。「腎臓内科医は腎臓領域のスペシャリストでありながら,腎機能が低下した患者さんの肺炎やがんなどの診療もしなければなりません。全身を診ることができ,かつスペシャリストであるというところに魅かれて腎臓内科医を志しました」(祖父江氏)。

祖父江氏は36歳の若さだが,現在,香川大学医学部附属病院腎臓内科診療科長を務める。腎移植を研究の中心としているほか,腹膜透析,血液透析,腎生検はもちろんのこと,シャント手術や腹膜透析導入時のカテーテル手術といった技術にも対応できる医局を目指しており,医局員の指導にも積極的である。「私たちの教室で育った医局員が誇れることは,移植や腹膜透析を怖がらずにできること。それを腎臓内科医が行う当たり前の医療としてやっていける人材を育成していくことに力を入れています」という。

これまでの診療で印象に残っている患者さんについて尋ねると,「末期腎不全のお子さんが運よく臓器移植の機会に恵まれ,進学して社会人になっていくのをみていると腎臓内科医としてとても嬉しく思います。腎不全の子どもたちがQOLを損なわずに成長し,また次世代へつながっていくといったところまでみていけたらと思います」と話してくれた。

CKD患者に対する保健指導・受診勧奨の取り組み

同病院腎臓内科では10代の腎炎患者から高齢の透析導入患者まで幅広い年齢層の患者さんを診察し,腎生検も年間50 件ほど行っている。また,特定機能病院であるため,地域の基幹病院から腎障害の中でも重症度の高い患者さんが紹介されてくるケースもある。「専門医の数が多いですし,外来機能の点から考えると慢性腎臓病(CKD)の病診連携において中心的な役割を担っていかなくてはなりません。また,入院でも最後の砦でありたいと考えています」と祖父江氏は話す。香川県ではCKD対策として,香川県透析医会会長,小児CKD香川県代表,県内の基幹病院の腎臓内科専門医(専門医)などが集まり,『香川県慢性腎臓病対策協議会』を2014 年に立ち上げたが,祖父江氏は同協議会の事務局を務めている。

CKDに対する取り組みとしては,同協議会と香川県国民健康保険連合会(国保連合会)が協力し,2015年度より国民健康保険(国保)に加入している香川県特定健診受診者に対して保健指導や受診勧奨を行っている(図12)

図1

第2版 香川県慢性腎臓病対策協議会 2015. 3. 21

特定健診における腎機能(eGFR,尿蛋白)の評価は日本腎臓学会が作成している「CKD診療ガイド2012」3)に準拠しており,eGFR≧60mL/min/1.73m2で尿蛋白が(-)の方は継続して健診受診してもらう。また,eGFR≧60mL/min/1.73m2で尿蛋白が(+),腎機能が50(70歳以上の場合は40)≦eGFR<60mL/min/1.73m2で尿蛋白が(-)(+)の方に対しては保健指導対象者として「保健指導相談票」を送付する。保健指導対象者に対しては,各市町村が腎臓病サポートのための教室を開いて保健師が集団指導を行うほか,協議会の医師が出向いて講演・指導を行う。血圧測定や味噌汁の塩分測定を行いながら,生活・食事指導を行うほか,CKDに対する理解を深めてもらい,腎機能悪化を防止する。

さらに腎障害が悪化した,eGFR<50(70歳以上の場合は40)mL/min/1.73m2または尿蛋白(++)の方は受診勧奨対象者となり,「医療受診勧奨票」が送付されるが,すぐに専門医を受診するのではなく,まずは地域の医療機関(かかりつけ医・開業医)を受診する。かかりつけ医がなく,健診を一度受けただけの場合は近隣の内科開業医を受診し,再度検査を受けてもらう。CKDは3ヵ月あけて2回検査を行い,eGFRが60mL/min/1.73m2以下,あるいは尿蛋白が0.15g/g Crもしくは(+)以上の場合に確定診断がつく。かかりつけ医や開業医から県内の専門医に紹介してもらう基準を別に作成し,専門医のいる医療機関リストを協議会で作成してかかりつけ医や開業医に情報提供している。この取り組みは2015年度から県内すべての市町村で同時に実施。昨年は香川県で7.8万人が特定健診を受診し,このうち「保健指導」対象となった者が10,236人,「医療受診勧奨」対象となった者が2,229人であった。高松市で3回保健指導を行ったところ,1回の保健指導で150人ほどが参加したという。「国保連合会とタッグを組んで,県内全域で同時に実施しているのが私たちの特色だと思います。国保連合会も私たちもこの受診勧奨システムを構築したいと考えた時期がちょうど同じだったようです。こうした取り組みは行政に動いていただかないとなかなか進まないものです。医師会と協力して病診連携を進めることも大事ですが,まずは受診勧奨システムを構築することを考えました」と祖父江氏。「最初はどこにかけ合ったらよいのかも分かりませんでしたが,最終的には,国保保険者の医療および特定健診データ等の取り扱いをしている国保連合会と連携することとなりました。香川県では,国保連合会が特定健診データを活用した糖尿病の受診勧奨をするという先駆的な取り組みがありましたので,これを利用してCKDの方を割り出しました」と,国保連のデータベースを活用した。しかし,受診率が上がらないことにはこの取り組みは功を奏さない。そこで,受診率を上げる取り組みとして,2015年度からは世界腎臓デー(毎年3月の第2木曜日)に合わせて市民公開講座を開き,大規模商業施設への懸垂幕の掲示や街頭キャンペーンの実施も予定している。

こうした開業医やかかりつけ医を巻き込んだCKDの取り組みは思わぬ効果をもたらした。システムの対象は国保の被保険者で主に高齢者であったが,社会保険(社保)の被保険者で受診勧奨外,いわゆる働きざかりの40代,50代でGFRが低下したCKD予備軍を拾いあげることができるようになったという。「社保の方は健診の内容を会社が決めています。まして,本社が香川県にない場合,なかなか私たちは介入できません。しかし,開業医やかかりつけの先生にこのシステムをご理解いただくようになってから,高血圧などを指摘された患者さんに血液検査をして腎機能が低下していると,すぐに専門医に紹介してくれるようになりました」(祖父江氏)。

地域の医師(かかりつけ医・開業医)との連携

地域の先生方との連携に関しては, 協議会が非常に精力的で2015 年度には1 年かけて1 郡市を除いたすべての医師会に対し,祖父江氏を中心とした協議会の専門医が講師となってCKDの勉強会を開催している。その際に各郡市の医師会長にかけ合い,かかりつけの医師の勉強会への出席を依頼した。「受診勧奨票を国保の被保険者さんに送りますので,どんな開業医の先生のところにでも,たとえば整形外科の先生のところであっても,受診勧奨票を持った患者さんが来られる可能性はあるわけです。ですから,どういった基準で専門医に紹介してもらうかなどを知っていただく必要があるのです」とのこと。また,国保連合会から特定健診実施施設に専門医リストと受診勧奨基準を郵送してもらうなど,県内の医師会にも協力を仰いでいる。

透析室 2016年8月には移転し,ベッド数を増床する予定。

医療連携において,紹介状を簡略化したパスを採用している地域は多く存在する。香川県でもパスを取り入れるかどうかという議論が持ち上がり,紹介時の手続きを簡略化するためのパスと,その後の病診連携においてかかりつけ医や開業医と専門医とのキャッチボールを円滑にするためのパスの2 通りが検討されたが,後者を優先させることが話し合いで決定した。最初の情報は詳しいほうがよいという結論に至ったのだという。最初は少し面倒と感じるかもしれないが,このパスの採用時に開業医やかかりつけ医の処方を一元化,紹介された専門医は処方された薬がもれなく分かるようになる。

逆に専門医は腎機能検査の結果から,開業医やかかりつけ医に対し,薬剤や腎機能障害進展抑制について指導するという,双方にメリットになるよう考慮されている。「病診連携パスを進める中で,パスを用いた臨床研究,多施設共同臨床研究を進めていきたいと思っています。たとえば血圧や尿酸値,貧血の目標達成率など,数字でお示しできる結果を出すことも考えています。また,薬をいかに少なくできるか。腎臓に負担のかかる薬剤を減らすことも専門医の役割です」と祖父江氏は話す。このほか協議会では,医薬品卸業者に対しCKD勉強会を行い,腎性貧血にも対応できるよう,エリスロポエチン製剤を常備する医療機関を増やしてもらうといった取り組みも行っている(図2)。

図2

香川県では国の指定難病であるネフローゼ症候群(尿蛋白>3.5g),IgA腎症・多発性嚢胞腎に加えて,慢性腎不全(Cr>2.0mg/dL)を県の指定難病として指定。祖父江氏は「香川県は人口に対して透析患者さんはそれほど多くないにもかかわらず,専門医は比較的多いです。しかも医療費の補助という面においても恵まれている珍しい県だと思います。必要な患者さんにはエリスロポエチン製剤を適切に使うことができますし,こういった取り組みで末期腎不全の患者さんをどこまで減らすことができるのか。難しい挑戦でもあります」と意気込む。

腎機能が低下した患者に対して各診療科に求めること

腎機能障害がどの段階まで進展すれば専門医に紹介すべきか,あるいはどの段階でかかりつけ医に逆紹介すべきか─ これには,さまざまな見解,意見があるかもしれない。祖父江氏にこの問題について尋ねたところ,「尿蛋白が多く出ている方は専門医で診るべきという考え方もありますが,私たちの考えとしては,診断がついた後はできるだけかかりつけの先生と一緒に診ていきたいと考えています。2 週間に一度はかかりつけ医,1ヵ月から2ヵ月に一度は専門医などというかたちで,徐々に専門医を受診していただく間隔を狭めながら,透析になる直前までかかりつけの先生と連携を取っていくことが大切だと思います」との答えだった。専門医に対しては,患者を囲い込むことがないよう手紙を送付するなどして了解を得ているという。

香川県でも地域による医療格差があり,専門医不在の郡市もある。こうした地域では泌尿器科専門医がCKD 診療に携わっている。たとえば,坂出市医師会では独自のCKD 紹介リストを作成してもらっている。

糖尿病性腎症は最も透析導入の多い原疾患である。香川県は糖尿病の有病率が高いため糖尿病に対する県の取り組みは非常に活発であるにもかかわらず,CKDに関してはあまり協力が得られていないという。このため年2回,糖尿病内科医と腎臓内科医がディスカッションできるような研究会を立ち上げ,腎機能障害患者の紹介基準や役割分担について糖尿病内科医とすり合わせを行っている。また,糖尿病を専門としないかかりつけ医が糖尿病の診療に携わることがあるが,経口血糖降下薬でも低血糖のリスクの高い薬剤は減量もしくは中止,短時間作用型インスリンへの変更をお願いすることがあるという。

一方,整形外科では鎮痛薬のNSAIDs,骨粗鬆症にはビタミンD製剤が処方される。高齢者の場合は蓄積性が高くなるため,急性腎障害(AKI)を引き起こすことがある。「専門医に紹介いただいた際に,まず減らせる薬はないか,紹介していただいた先生方と情報を共有することは非常に重要だと思っています」(祖父江氏)。

CKD 治療の最終的な目標とは

CKD治療の最終的な目標については,「香川県の人口98万人のうち,透析患者は2,500人ほどいます。この透析患者の新規導入を減らしていくことが重要です。ただ,その前に何があるのかといえば,やはりCKDの患者さんのQOLや満足度ですね。それから,1人ひとりの患者さんに対して腎臓内科で還元できるものは何か。CKDになってしまうと腎機能はよくはならないけれども,同じレベルで機能を維持させるために何ができるのか。コストをかけて進めているプロジェクトなので,この取り組みが続けられるかは患者さんから『紹介してくれてよかったよ』,と紹介元の先生に言ってもらうことにかかっているんです。そういう声が増えていかないと続けていくのは難しくなりますね」と祖父江氏は言う。

患者さん本人からたくさんの感謝の言葉が聞かれるようになれば,この取り組みはますます発展し,香川県のCKD増加は食い止められるかもしれない。

引用文献

  1. 1. 都道府県人口・面積・人口密度ランキング(http://uub.jp/rnk/p_j.html)
  2. 2. 第2版 香川県慢性腎臓病対策協議会
  3. 3. 日本腎臓学会編. CKD 診療ガイド2012. 東京 :東京医学社 ; 2012

KK-17-02-17297

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