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Dr.Interview

Dr.interview ドクターインタビュー

CKD予防連携システムの先駆け

政令指定都市・北九州市の取り組み

CKD予防連携システムの先駆け

政令指定都市・北九州市の取り組み

  • 金井 英俊

    金井 英俊

    一般財団法人平成紫川会 小倉記念病院 副院長

    1984年に九州大学医学部を卒業後,九州大学病態機能内科,福岡赤十字病院腎センター等を経て,2005年より現在の小倉記念病院に勤務し,副院長および腎臓内科部長を兼務。日本内科学会総合内科専門医,日本腎臓内科認定医・専門医,日本透析医学会指導医・専門医・評議員,日本腹膜透析医学会評議員,欧州腎臓学会,アメリカ腎臓学会,国際腎臓学会ほか。

  • 柳田 太平

    柳田 太平

    社会医療法人製鉄記念八幡病院 腎臓内科部長/ 腎センター部長

    1990年に九州大学医学部を卒業後,新日鐵八幡記念病院,九州大学医学部附属病院,福岡赤十字病院を経て,1997年九州大学医学部腎疾患治療部室長,2011年より現在の製鉄記念八幡病院に勤務し,腎臓内科部長および腎センター部長を兼務。日本内科学会 認定医・指導医,日本腎臓学会 専門医,日本透析医学会認定医・評議員,日本腎移植学会,日本公衆衛生学会ほか。

北九州市は全国に先駆けてCKD予防連携システムを立ち上げた

透析患者数増加への対策は全国的に急務の課題であるが,北九州市では特に問題が深刻である。同市は2010年の透析患者数が3,723人/100万人で1),これは全国平均の2,329人/100万人2 )を大幅に上回っている。

その要因と考えられるのは高齢化の進行で,北九州市は全国の政令指定都市の中でも,高齢化率および後期高齢者の比率が最も高い3)。また,もうひとつ注目されるのは生活習慣病の問題で,同市の国民健康保険特定健診データの解析によると,生活習慣病の治療が必要な患者さんの多くが医療機関を受診していない。このような患者さんが未治療のままでいると,生活習慣病が悪化して腎不全を発症する可能性が高くなる。

そこで北九州市は,特定健診の段階でCKD 患者を早期に発掘することを目的として,全国の政令指定都市に先駆けて2011年から「北九州市CKD予防連携システム」の運用を開始した。本システムでは,特定健診の検査項目に加えて血清クレアチニン等を測定し,eGFRまたは検尿に異常がみられた場合はかかりつけ医への受診が勧奨される(図1)。かかりつけ医は所定の検査と生活習慣病の治療を実施するとともに,「CKD 診療ガイド2012」4)に準じて患者さんを腎臓専門医に紹介する。

CKD 検討委員会のメンバーとして本システムの策定に関わった金井英俊氏(小倉記念病院,腎臓内科)は,「腎臓専門医の役割は診療の流れを整理すること。最終的には多くの患者さんが,かかりつけ医の先生のもとにかえるのです」と話した。

図1

見え始めたCKD予防連携システムの効果

北九州市では,CKD 予防連携システムが導入されてから2016 年で5 年が経過するが,徐々にその効果が見え始めている。最大の目的であった透析患者数の抑制については,新規透析導入患者数が頭打ちとなり,減少に転じる傾向がみられた。2012 年に209例だった新規透析導入患者が,2013 年には171 例まで減少したのである5)

このような効果についてCKD検討委員会のメンバーである柳田太平氏(製鉄記念八幡病院,腎臓内科)は,「北九州市と同規模のほとんどの市で新規透析導入率が上昇していることを考えると,増加に歯止めがかかったことは注目してよいと思います」と指摘する。さらに同氏は,北九州市と同様のシステムを導入した近隣都市でも,新規透析導入率が減少傾向を示していることを挙げ,「このシステムが普及していけば,福岡県全体でも透析患者の増加が食い止められるのではないでしょうか」と期待感を示した。

事前にアンケートを実施してニーズを把握

北九州市CKD予防連携システムが順調に稼働したことによって,今日では多くの自治体がCKD予防対策を推進するようになった。成功の秘訣を柳田氏CKD Liaison No.2 3に尋ねると,「われわれはシステムを開始するにあたって,事前に153施設のかかりつけ医の先生にアンケートを行いました」と話してくれた。その結果分かったのは,腎臓専門医に患者さんを紹介する時期について「血清クレアチニン2mg/dL 以上」または「eGFR30mL/分/1.73m2 未満」と考えられていることであった。

しかし,その段階では患者さんの腎機能を回復させることは難しい。そこで今度は患者さんを紹介しにくい理由を尋ねたところ,「紹介する基準が不明」,「腎臓専門医がどこにいるか分からない」,「紹介時の連絡票に何を書けばいいのか分からない」,「紹介後に患者さんはどうなるのか」といった疑問が寄せられた。

そこで柳田氏らは,紹介の基準を明確にするとともに,腎臓専門医の名簿を冊子やウェブで公開し,簡単に記入できる連絡票の様式やシステムの流れを説明した資料を作成した。そのほかにも,市医師会でシステムの必要性を説明するなど,さまざまな啓発活動を展開したという。

地域中核病院の取り組み

小倉記念病院
小倉記念病院(658床)は,心血管疾患の血管内治療で全国的に有名である。金井氏は腎臓内科が開設された経緯について「当院には重篤な心血管疾患を有する患者さんが多く,心機能が低下している方は腎機能も低下しているということで,2005年に九州大学から私が派遣されたのです」と説明する。 CKD 予防連携システムへの取り組みについては,「かかりつけ医の先生によっては,患者さんを最期まで診たいというケースもありますし,うちにすべてお任せしたいというケースもあります」と金井氏。そのため,薬剤の処方を含め治療の役割分担はかかりつけ医の状況に応じて個別に対応しているが,近年ではCKD 診療に積極的に取り組むかかりつけ医が増えているという。

製鉄記念八幡病院
製鉄記念八幡病院(453床)は,官営製鐵所の附属病院として設立された歴史がある。柳田氏は「北九州市には7つの行政区がありますが,その中でも当院が所在する八幡東区は高齢化率が非常に高く,腎臓内科の患者さんも約3 割が80 歳を超えています」と話す。さらに「全国的にみると腎臓の専門医は専門領域が細分化されていることが多いのですが,当科では一人の医師が患者さんを生涯診療するというスタンスで,幅広い領域に対応しています」という。

CKD予防連携システムへの取り組みに関して,以前は腎臓専門医が治療を主導していたが,それではかかりつけ医が治療内容を把握できなくなってしまうため,「現在は,必要があればいつでも入院で引き取りますというスタンスで,透析導入直前まで併診しています」と話す。このため患者教育や食事指導は主に腎臓専門医が担当するが,薬剤の処方は赤血球造血刺激因子製剤や活性炭を含めすべてかかりつけ医が担当し,腎臓専門医は適宜アドバイスを行う(図2)。さらにかかりつけ医をもたない患者さんが来院した場合は,積極的に逆紹介を実施するという。「このような取り組みによって今では,大勢のかかりつけ医の先生がCKDについて積極的に勉強し,腎機能がかなり悪い患者さんでも診療されています」(柳田氏)。

図2

糖尿病腎症の対策を盛り込んだ改訂を実施

2011年に開始されたCKD予防連携システムは,特定健診から腎臓専門医に至る流れを主軸としていたが,2014年にはこれに糖尿病腎症への対策が追加された。その内容は,HbA1c6.0%以上の症例はかかりつけ医の受診が勧奨され,糖尿病と診断された場合は定期的に眼底検査や微量アルブミン尿測定を実施するというものである(図1)。そのほかにも,糖尿病腎症以外の腎疾患の可能性が高い患者さんや,腎疾患進展のリスクが高い患者さんを腎臓専門医に紹介することが推奨されている。

このような改訂の意義について柳田氏は,「糖尿病腎症は最初から十分治療しないと進行してからは治らないのです」と話し,糖尿病腎症では微量アルブミン尿の段階で介入を行うことが重要であると強調する。この段階で介入すれば寛解率は約50%だが,持続性蛋白尿では約30%に低下し,腎不全を発症すると寛解は非常に難しくなる。「微量アルブミン尿が出始めた時期に発見し,タイミングを逃さない治療を増やすために,本システムに期待を寄せています」(柳田氏)。

CKD予防連携システムがもたらした変化

CKD 予防連携システムは,北九州市のCKD 診療にどのような変化をもたらしたのだろうか。金井氏は「最も大きな変化は,腎臓専門医への患者さんの紹介時期が早くなったことです」と話す。同氏が小倉記念病院に赴任してきた当時は,紹介される患者さんの大部分が高度腎障害で,紹介の主目的は透析の実施であった。しかし近年では,腎機能が低下したから紹介するというケースが増え,「これはかかりつけ医の先生が,CKDの進展を阻止するためには早期の紹介が必要だと,意識を変えてくださったことのあらわれだと思います」と金井氏。

さらに金井氏は,CKD予防連携システムを推進することにより,患者さんの状況を最も理解しているかかりつけ医のもとで治療を継続できる重要性を指摘する。「特に高齢者は風邪などで体調変化をきたすことも多いので,その際に診療してくれるかかりつけ医の先生は,患者さんの生活を支えるうえで非常に重要な存在なのです」(金井氏)。

北九州市におけるCKD 診療の今後の課題と展望

北九州市では,医療と行政が力を合わせてCKD予防連携システムを推進してきたが,その先にはどのような課題があるのだろうか。金井氏は高齢化の問題を挙げ,「老老介護や独居高齢者で透析が必要になった場合,そのサポートは大きな問題になってくると思います」と懸念する。その対策として小倉記念病院では,特に心血管合併症を有する高齢者に対して,腹膜透析(PD)を積極的に導入しているという。PDは循環器への負荷が少なく,在宅での治療が可能であることから,患者さんはかかりつけ医の治療を受けながら自宅で生活を続けることができる。「今後は終末期医療にも,PDが活用されるようになることを期待しています」と金井氏は話す。

第1回北九州腎栄養研究会.柳田氏は「地域で幅広く対策を行うためには,栄養士の先生方の協力が不可欠」と呼びかけた.

柳田氏は,CKD 診療の底上げを今後の課題と捉え,「CKDでは食事や生活習慣の指導がとても重要ですが,北九州市ではこれを実践する人員が十分ではありません」と話す。糖尿病は療養指導士(CDE)の制度があるので,幅広い職種でチーム医療を支えているのに対し,腎臓病ではそれぞれの職種がバラバラに資格を設けているので,チーム医療を支える基盤が十分とはいい難い。そこで柳田氏らは「北九州腎栄養研究会」を立ち上げ,2016年4月に第1回研究会を開催した。同氏は「今後は幅広い職種の方にCKD診療に興味をもっていただき,透析や心血管イベントに至る患者さんを減らしていきたい」と抱負を語った。

最後に,CKD診療における今後の展望を金井氏に尋ねた。同氏によると,今日におけるCKD診療の最大の問題は,低下した腎機能を改善する薬剤がないことであるという。しかし貧血をはじめとするさまざまな合併症に対しては治療薬の選択肢が広がっており,透析のクオリティーも日々向上している。このような状況を総括して金井氏は,「CKD診療に携わっている医療従事者の方々には,常に最新情報を収集して,患者さんに還元することを心がけていただきたい」と語り,「そうすればCKDの未来にも,希望が見えてくるのではないでしょうか」と結んだ。

引用文献

  1. 1. 金井英俊. jmed mook. 29 ; 2 1- 7 : 2013.
  2. 2. 図説 わが国の慢性透析療法の現況 2014 年12月31日現在(http: //docs.jsdt.or.jp/overview/)
  3. 3. 第一章 人口 高齢者人口・高齢化率(http://www.city.kitakyushu.lg.jp/files/000696691.pdf)
  4. 4. 日本腎臓学会 編. CKD 診療ガイド2012. 東京 : 東京医学社 ; 2012.
  5. 5. 北九州市国民健康保険の医療費の現状(https://www.city.kitakyushu.lg.jp/files/000691905.pdf)

KK-17-02-17297

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