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Dr.Interview

Dr.interview ドクターインタビュー

行政が医療連携に力を発揮

富士山の自然に抱かれる中核都市富士市の取り組み

行政が医療連携に力を発揮

富士山の自然に抱かれる中核都市富士市の取り組み

富士市にも是非,病診連携のシステム構築を─そんな医師たちの声に押され,準備会設立から「富士市CKDネットワーク」が始動するまでにかかった期間はわずか半年。どのようにして,短期間でのネットワークの立ち上げ・運用を成し遂げたのか。そこには富士市ならではの工夫と関係者の熱意が隠されていた。キーパーソンとなった富士市立中央病院の笠井健司氏を訪ねた。

  • 笠井 健司

    笠井 健司

    富士市立中央病院副院長・腎臓内科部長

    1981年東京慈恵会医科大学卒業。聖路加国際病院レジデントを経て1984年に東京慈恵会医科大学第二内科に入局。1987年より約2年にわたり米国カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)に留学する。1991年富士市立中央病院に腎臓内科部長として着任,2009年より現職。東京慈恵会医科大学准教授を兼務する。日本内科学会総合内科専門医・認定内科医,日本腎臓学会専門医・指導医・学術評議員,日本透析医学会専門医・指導医・評議員ほか。

"高め合い助け合う"富士市立中央病院内科

静岡県富士市は人口約25万人を有する県東部の中核都市である。〝見上げれば富士山″という素晴らしい眺望と豊かな水資源に恵まれ,首都圏へのアクセスもよいことから製紙業をはじめとする工業が盛んな街だ。富士市立中央病院は24診療科・520床を擁する市内最大の総合病院であり,副院長で腎臓内科部長の笠井健司氏が行政と協力して透析やCKDの地域連携システムを構築し,全国から注目を集めている。

笠井氏は,東京慈恵会医科大学第二内科(現 腎臓・高血圧内科)に在籍していた川口良人(よしんど)氏の仕事ぶりに憧れて腎臓内科医を志したという。米国留学を経て1991年,富士市立中央病院に腎臓内科部長として着任した当時の心境を笠井氏は,「卒後10年で腎臓内科の責任者というのは私にとって大きな挑戦でした」と振り返る。同院には現在28名の内科系医師が在籍するが,心臓血管外科とチームで診療する循環器内科の6名を除く,消化器内科・呼吸器内科・腎臓内科・糖尿病内分泌内科・血液内科・神経内科の6グループ22名が協力し補完し合いながら診療を行っている。市内で基幹病院となりうる大規模病院は同院のみ。「診療の要請には必ず応える」が信条だ。「救急や初診の患者さんに対しては,若いレジデントも含めまずは専門を越えて診療を開始します。そのうえで,専門性の高い対応が必要と判断した場合には,柔軟に専門医との連携あるいは専門診療科への引き継ぎが行われます。完全な縦割りではなくスタッフみなが有機的に連携して診療を行っているところが当院内科の特徴です」と笠井氏。内科の統括責任者として診療体制をマネジメントすることは「やりがいのある仕事」だという。

週1回の勉強会では,レジデントが自身の専門領域のトピックスや診療の要点をレクチャーしあう。若手の医師が専門外の発表を聞くことで,さまざまな分野への理解を深める場となっているようだ。「内科医は内科全般について理解したうえで,特定の分野で突出した専門知識をもっているのが理想だと思っています。富士山のように頂上が高くないと裾野は大きく広がりません」。この笠井氏の思いのもと,内科では各医師が高め合い助け合いながら地域医療を守っている。

「富士市透析防災ネットワーク」の取り組みから見えてきた行政が関わることの重要性

富士市のある県東部地域は重症のCKD患者が多く,高血圧患者も他地域に比べて多い。心血管疾患のハイリスクエリアであるにもかかわらず,市内の基幹病院は同院のみという状況だ。そこで笠井氏は,2005年に富士市医師会と「富士市高血圧・腎疾患勉強会」を発足。年2回の勉強会を重ねる中,2011年に「CKDの医療連携」をテーマとした講演が行われた際に,医師会員より富士市でも病診連携の仕組みをつくってはどうかとの声が上がった。そうした地域の医師たちの要請に応えて笠井氏は,早速富士市役所を訪問して保健部長と懇談を行い,協力の同意を取り付けたのである。翌2012年には行政,医師会,基幹病院から代表者を集めた「富士市CKDネットワーク設立準備会」が発足し,その約半年後の2013年4月に「富士市CKDネットワーク」は始動した。

富士市CKDネットワークは行政と連携したシステムであることが最大の特徴。それは先に始動していた「富士市透析防災ネットワーク」の成功体験に基づいている。富士市透析防災ネットワークは,富士市役所と市内で透析医療を展開している同院を含めた7施設すべてが参加するかたちで,東日本大震災の前年である2010年にスタートした。富士市を中心とする地域は南海トラフ巨大地震に備える必要があり,防災を怠ることはできない。また,富士市内の透析患者数が2006年の560人から2015年には906人と,9年間で約1.6倍増加したこと,透析を受けている患者さんの約25%が市外からの通院であることなども背景にあった。

本ネットワークの代表を務める笠井氏は,行政が仕組みに入ることの意義を次のように話す。「富士市透析防災ネットワークでは『災害時行動マニュアル』を作成して改訂を重ねているほか,災害発生時に各施設間で補完的相互支援ができるよう,透析施設の相互見学,透析回路の互換性検討,透析機器研修などを行っています。医療関係者同士の通常の集まりであればお互いの設備を見せ合うことはあまりないと思いますが,『防災』という共通の目的があるうえ,行政が関与したことで,みな協力しやすくなったのだと思います」。このような公的な活動を継続するうえで,行政の関与は大きな推進力になっている。

透析導入・心血管疾患発症の低減を目指し「富士市CKDネットワーク」を構築

2012年に同院が行った調査では,年間70人の透析導入患者のうち,42%が同院の長期通院患者,37%が近隣のかかりつけ医からの紹介,21%は無治療で健康診断も未受診の患者であった。さらに,透析導入時の年齢をみると,長期通院患者では67.6±12.3 歳,かかりつけ医からの紹介患者では63.9±15.1 歳であったのに対し,無治療・健診未受診患者では57.4±14.3 歳と若くして透析導入に至っていることが分かった。「いまだに医療を受けていないCKD患者さんがこんなにおいでになったのか,というショッキングな結果でした。そこで市役所に2011年度の富士市特定健診受診者におけるハイリスクCKD患者(CKD重症度分類ヒートマップの赤に該当)を調べてもらったところ,154人だったことが分かりました。このくらいの人数であれば,医療連携ネットワーク構築後,当院が診療を引き受けることになっても対応可能であるとの見通しが立ちました」と笠井氏。

こうして始動した富士市CKDネットワークの目的は3つある─ [1] CKDに関する理解を深めること,[2] CKDに対する適切な医療体制を整えること,[3] [1][2]を通して富士市における透析導入と心血管疾患発症の低減を図ること。実際のはたらきは,[1]特定健診による患者の掘り起こしと診療所を中心としたCKDのスクリーニング,[2]『CKD診療ガイド2012』に準拠した専門医への患者紹介とかかりつけ医と専門医の併診による医療提供であり,これを市内の医療機関全体に普遍化することを目指している。

ネットワーク運用の流れ(図1)は,特定健診を受診した結果やかかりつけ医の通院患者の検査値が紹介基準にあてはまった場合に腎臓専門医に紹介するというものだ。医師会の要望と市の保健師のはたらきにより,富士市では特定健診の項目にクレアチニン値に加えてすぐにeGFRが追加された。紹介基準は『CKD診療ガイド2012』に準拠しながらも,蛋白尿の評価は定量検査ではなく特定健診における定性検査で判断してもよいなど一部を簡素化した。「蛋白尿がみられればeGFRが正常範囲内でも気軽に紹介していただきたいと思っています。腎臓病は検査の数値だけではなく原疾患や臨床経過などによる総合的な判断が求められます。一度は腎臓専門医が診察して,健診での経過観察でよいのか,普段はかかりつけ医で診てもらいながら半年に1回程度定期的に当院で診察する"2人主治医制"がよいのか,当院で引き受けて専門的な治療を行うべきなのか,その振り分けを行うことが重要です」と笠井氏はできるだけ早期の紹介を期待する。紹介患者は腎臓専門医が必要な検査と指導を行い,2人主治医制が適用される場合には,かかりつけ医に診療指針を提示し,「慢性腎臓病(CKD)連絡手帳」などを介して情報交換を行う。

図1

一方,市の保健師・管理栄養士は,特定健診で異常があった未受診の市民宅を訪問し受診勧奨を行う。さらに受診勧奨を行った市民が訪れた医療機関から要請があれば,市民宅を再度訪問して保健指導を提供する。また,腎臓専門医の在籍する同院と一般財団法人恵愛会 聖隷富士病院は,毎月,紹介状況について患者の年齢,性別,eGFR,尿蛋白,紹介のきっかけ,原因疾患,紹介元の医療機関を市に連絡。市はそのデータを集積し年度ごとに集計して評価に役立てている。

いつも笑顔をたやさないスタッフのみなさんと.

ネットワーク稼働後に見えてきたこと

ネットワーク稼働により同院の診療実績は169人から274人へと約1.6倍に増加し,初年度は123人に2人主治医制が適用された。うち40人は同院が長年診療してきたCKD患者であり,定期的に診察できる安心感から同院に通院してもらっていた患者を開業医(かかりつけ医)へ紹介できるようになった。ネットワーク稼働前の2012年度のCKD紹介患者はCKDステージG4~5の症例が全体の約53%を占めていたが,ネットワーク稼働後の2013年度にはそれが約35%に減少し,より軽症なうちから紹介されるようになったことがうかがえる(図2)。加えて,腎生検数は19例から37例に増加し,患者の増加にともなって透析導入は72例から81例に増加した。「腎生検の実施によりIgA腎症などが早期に診断され治療介入できる症例が増えているほか,ファブリ病や家族性アミロイドポリニューロパチーなどが診断され,適切な診療につながりました。また,CKDを契機に悪性腫瘍が診断され,治療に至る症例が多くみられるようになったのです」(笠井氏)。2013年4月から2015年3月の2年間に同院へ紹介されたCKD患者523例中25例(4.7%)に悪性腫瘍が発見されたのである。腎細胞癌が6例と最も多く,次いで前立腺癌が4例であった。CKDで腎・尿路系悪性腫瘍が多いことは,海外の有力な医学雑誌でも取り上げられ始めている。「つまり,CKDネットワークは,透析導入や心血管疾患発症の低減のみならず,さまざまな腎臓病の診断,さらには悪性腫瘍の発見にも役立っています」と笠井氏はその重要性を強調した。

図2

患者も地域医療で重要な役割を果たす主体者

本ネットワークの活動を通して笠井氏は今後の地域医療の可能性が見えてきたという。「以前は医師と患者さんが1対1でつながっていましたが,2人主治医制が展開されることで,患者さんの診療に,かかりつけ医も専門医も無理なく一緒に関わることができるようになります。そのうえ,患者さんは診療を受けるというだけでなく,かかりつけ医と専門医をつなぐ大切な役割も果たしてくれているのかもしれません(図3)」。専門医が得意分野の診療の経験やコツをかかりつけ医に伝え,共有することもあるという

図3

さらに笠井氏は,高齢化にともない地域医療が崩壊しないよう,本ネットワークが他の領域にも広がりさらに強靭な地域医療体制が構築されることを期待している。そこで重要なのが,行政のかかわりだ。「行政と医療機関が連携するこのようなシステムを,糖尿病をはじめ他領域の疾患に広げていくことが可能になるのではないかと考えています。これまでも市役所には市の医療事情をご理解いただき,早くから大変協力的に対応していただきました。行政は広報などにより市民にはたらきかけることができ,市民全体の健康状態の向上にすでに力を発揮しています。地域医療連携においても医療機関と協力することで,医療の提供に不可欠な存在になるのではないかと期待しています」。

高齢化の波が押し寄せる未来を憂いてばかりはいられない。行動を起こし多くの関係者を巻き込みながら,笠井氏は,一人ひとりの尊厳が守られる健全な未来を着実に市民の手に引き寄せている。

KK-17-03-17849

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