KYOWA KIRIN

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施設紹介

東京都立

多摩総合医療センター

全国のロールモデルとなる糖尿病医療連携システムを構築

〒183 - 8524 東京都府中市武蔵台2-8-29 http://www.fuchu-hp.fuchu.tokyo.jp

施設紹介
  • 辻野 元祥

    東京都立
    多摩総合医療センター
    内分泌代謝内科部長

    1985年東京医科歯科大学医学部卒業後,同大学第2内科に入局。取手協同病院(現 JAとりで総合医療センター),北信総合病院,多摩北部医療センター勤務を経て,東京医科歯科大学大学院で心筋における一酸化窒素生成の研究に従事。1996年より現在の東京都立多摩総合医療センターに勤務。当初は循環器を専門としていたが,実臨床の現場で血糖コントロールが悪いと循環器疾患の予後が改善されないことを実感し,専門を内分泌代謝に転換した。多摩地区における糖尿病医療連携の構築に力を注ぐ。

  • 清水 英治

    東京都立
    多摩総合医療センター
    外科医長

    2003年千葉大学医学部卒業後,同大学臓器制御外科学教室に入局。深谷赤十字病院,上都賀総合病院,長野県立須坂病院勤務を経て,2009年より減量外科手術習得のため四谷メディカルキューブに勤務。その後2011年より米国クリーブランドクリニックに留学し,アメリカ肥満・代謝外科学会(ASMBS)のトレーニング修了証を得る。2013年に帰国し,現在の東京都立多摩総合医療センターに勤務。2014年より減量手術を行っている。

東京は都会というイメージがある。しかし,多摩地区は都心から離れた東京郊外。いわゆる都会とは,おのずと医療事情は異なる。同じ東京都でも多摩地区と23区部では糖尿病医療資源に隔たりがあり,糖尿病専門医1人あたりの患者数は23区部が約1,000人,全国が約2,000人であるのに対し,多摩地区は約3,400人である。専門医不足を補うため多摩地区では早い時期から糖尿病の医療連携の構築に着手し,多摩総合医療センターは基幹病院として地域の医療連携を主導してきた。さらに同センターは都内で最初に保険診療による減量手術の施設認定を取得し,高度肥満症の外科治療に対応している。内分泌代謝内科部長の辻野元祥先生と外科医長の清水英治先生に,同センターの取り組みについてお話を伺った。

まず目指したのは顔の見える糖尿病医療連携

「武蔵野糖尿病医療連携の会」について教えてください。

辻野 私が多摩総合医療センター(旧 東京都立府中病院)に着任したのは1996年です。当時は外来がパンク状態に陥っており,1日の外来患者数は50~70人,再診の予約は3ヵ月先までいっぱいでした。そこでこうした状況を打開するため,顔の見える医療連携を構築することを目的として,1999年に勉強会を軸とした「武蔵野糖尿病医療連携の会」を立ち上げたのです。

会員は医師とコメディカルの先生方で,勉強会を通して糖尿病診療における最低限の約束事を確認するとともに,メールやFAXで治療について相談し合うなどの活動を続けてきました。この会の最大の特徴は,日常診療に直結した実践的な話題を勉強会のテーマにしていることで,「そのようなお話でしたら是非参加したい」という声が多く寄せられています。

この取り組みの成果は,はっきりと数字に表れました。経年的(2001年,2005年,2011年)に実施したアンケート調査では,「インスリン治療患者が0例の施設」は58%,38%,39%となり,「10例以上の施設」は2%,11%,18%と増加したことがわかりました。アンケート回答者の大半が非専門医であることを考えると,これだけ多くの専門外の先生方がインスリン治療に取り組んでくださっているのは,大変に有り難いことだと思っています。

循環型糖尿病医療連携で地域の診療所を支援

北多摩南部保健医療圏で推進している糖尿病医療連携では,どのような取り組みをされていますか。

辻野 勉強会を中心とした医療連携は,face to faceのつながりで連携が進むという意味で有意義でしたが,勉強会に参加していない先生には連携が広がらないという課題が残ります。そこで北多摩南部保健医療圏では多摩府中保健所がコーディネートし,4つの基幹病院と6市の医師会を中心とした医療連携事業を2005年より開始しました。

この取り組みにおいて当院では,患者さんを診療所の先生にご紹介した後も定期的なフォローを継続する循環型医療連携を採用しています。連携の課題のひとつとして患者さんが逆紹介に抵抗を感じることが考えられますが,「救急時には私をかかりつけとして来院してください」,「ご紹介するのは私がよく知っている先生です」,「ご紹介後も当院で定期的に診療を継続します」という3つの言葉をお伝えすると,ほとんどの方が安心して逆紹介に応じてくださいます。

図1

図1 連携パス継続例(n=158)のHbA1c

(文献1より引用)

そのほか,連携への参加を表明してくださった近隣の医療機関を掲載した「糖尿病診療マップ」を作成し,患者さんに提示しながらお住まいの近くの診療所を選んでいただく方法なども取り入れています。手を挙げてくださった施設と無理なく連携を進めていくことが医療連携では非常に重要です。今では多くの先生が専門外の糖尿病診療に積極的に取り組んでくださっています。

こうした循環型医療連携が功を奏し,連携先の大部分が非専門医であるにもかかわらず,紹介した患者さんの平均HbA1cは7.0%未満にコントロールされています(図11)。連携の中断率も,一般的には1年間で約2割といわれているのに対して,当院では7年間で約2割にとどまっていました。中断例に関しては,次回の受診予約を確定していなかった場合の中断が多かったため,受診時に必ず次回の予約を確定するとともに,未受診者には私が直接電話で連絡するシステムに改めました。私からの電話に驚かれる患者さんもいらっしゃいましたが,中断率が28.1%/2.5年から4.1%/4.5年へと大幅に減少しました。

患者さんをご紹介した診療所の先生とは,どのような連携をとられているのですか。

辻野 最も多いのは,栄養指導に関する連携です。たとえばHbA1c 6.2%でご紹介した患者さんが,当院再受診時にHbA1c 7.8%になっていた場合に,当院の栄養指導を受けてもらったり,臨床糖尿病支援ネットワーク(http://www.nishitokyo-dm.net/)から管理栄養士を紹介してもらうことをお薦めしたりしています。そのほか,こういう薬剤をこういう順番で上乗せしてくださいと診療情報提供書でお伝えしたり,新しい薬剤の使い方をアドバイスしたりすることもあります。

そうすると連携先の先生から,治療が上手くいってよかったとのお言葉を頂戴したり,副作用で投薬を中止した場合はその連絡があったりと,相互に啓発し合う良好な関係が構築されていきます。受診間隔もできるだけ柔軟に対応するようにしており,最初のうちは3~4ヵ月ごとですが,血糖コントロールが良好で患者さんと連携先の先生が慣れてきた場合などは,10ヵ月~1年ごとへと受診間隔を長めにすることもあります。

糖尿病医療連携がもたらした変化

糖尿病医療連携に対して,どのような声が寄せられていますか。

辻野 患者さんからは,「複数の医師に診療してもらうと安心」という声が多く,受診回数を重ねるにつれ喜んでくださる方が多くなるように思います。連携先の先生からは,私の糖尿病診療のやり方をすべてお伝えしていることに感謝のお言葉を頂戴することがありますが,それはこちらとしても嬉しい限りです。また私にとっても,連携を通してより多くの患者さんにかかわることができますので,非常にやりがいがあります。

振り返ってみますと私が着任した当時は,西田賢司先生と2人体制で救急や外来に対応していたのですが,現在では医師が10名以上,糖尿病療養指導士(CDE)が約30名となり,充実したチーム医療を提供できる体制が整っています。チームの活動も活発で,11月14日の世界糖尿病デーにはCDEが主導して糖尿病啓発イベントを開催していますが,毎年多くの患者さんやそのご家族,さらに一般の方々にご参加いただき大盛況です。医療連携やチーム医療を推進することで,私個人の忙しさが減るわけではありませんが,以前のように孤立した中での忙しさではなく,つながりのある中でフル回転する忙しさに変わってきたというのが,率直な感想です。毎日充実した忙しさの中にあると感じています。

今後,どのような取り組みに力を入れていきたいとお考えですか。

辻野 糖尿病ではインスリン中断が生命の危機に直結することもあります。今後は,臨床糖尿病支援ネットワークで活動の一環として取り組んでいる,災害用の医薬品の備蓄を推進していきたいと考えています。現在,東京都は都や区市町村が倉庫にインスリンを備蓄していますが,災害発生後の超急性期に本当に必要な方にすぐに届けられるか不安もあります。そこでわれわれが提唱しているのは,調剤薬局や診療所の在庫を増やすことでインスリンを備蓄する方式です。府中市ではその枠組みが構築されつつありますので,今後はこの方式を全国に広めていきたいと考えています。

減量手術の適応と効果

図2

図2 減量手術の種類

(文献2より引用)

肥満症に対する減量手術について教えてください。

清水 減量手術は欧米では1950年代から開始され,日本でも1980年代から一部の施設で実施されていましたが,当時は開腹が必要であったため手技や合併症の問題から,広く普及するには至りませんでした。しかし腹腔鏡技術が導入されたことによって世界的に減量手術が拡大し,日本でも2014年に腹腔鏡下スリーブ状胃切除術が保険適用となりました。

減量手術の主な術式には,胃バイパス術,スリーブバイパス術,スリーブ状胃切除術,胃バンディング術の4種類があります(図22)。一番有名なのはKONISHIKI(元横綱小錦)や元サッカー選手のマラドーナが受けた胃バイパス術ですが,この術式は残存する胃に癌が発生すると内視鏡検査ができないため,胃癌の多い日本人には不向きと考えられています。

スリーブ状胃切除術の適応は,「6ヶ月以上の内科的治療によっても,十分な効果が得られないBMI 35kg/m2以上の肥満症患者で,糖尿病,高血圧症または脂質異常症のうち1つ以上を合併している」ことと規定されています。ポイントは内科的治療に対する抵抗性です。BMIが35kg/m2以上になると内科的治療のみで肥満症の改善を維持するのは難しいことから,現実的には手術が有力なオプションになっています。しかし私が強調したいのは,手術が効果を発揮するには土台となる内科的治療こそ非常に重要だということです。当院では辻野先生が術前術後の内科的治療を主導し,患者さんに適切な生活指導をしてくださっています。

減量手術にはどのような効果があるのでしょうか。

清水 体重に対する効果としては,平均すると1年間で総体重が約30%減少し,超過BMI(BMI 25kg/m2を基準とした場合の余剰BMI)は70~75%減少します。手術効果には個人差があり,生活習慣の改善がともなうことでより多くの減量が可能となります。特にBMIが25kg/m2以下に低下する患者さんの特徴は手術がひとつの契機となって,良好な行動変容サイクルが形成されている点です。

また減量手術は,体重だけでなく糖尿病を著明に改善することでも知られています。特に年齢が若く,肥満度が高く,インスリン基礎分泌が保たれていて,罹病期間が短い患者さんでは,寛解(HbA1c<6%で投薬不要)が得られる可能性が高くなります。インスリンを必要とするような重症糖尿病においても術後に血糖コントロールが容易となり,HbA1cの著明な改善,投薬数の減少という効果がみられます。減量手術が糖尿病を改善する機序として,胃を縮小して摂取カロリーを制限する以外に,消化管ホルモン,胆汁酸,腸内細菌叢,中枢神経系などの関与が指摘され,肥満によって生じた「消化管-臓器間ネットワーク」の破綻を手術が回復させる可能性が注目されています3)

減量外科,内視鏡外科の専門的なトレーニングを受けた清水先生をはじめ,胃外科や高度肥満に対する麻酔管理に習熟したスタッフらによるスリーブ状胃切除術。

実際の症例をご紹介しますと,高用量のインスリンが投与されていた高度肥満(BMI 37.9kg/m2)の2型糖尿病の患者さん(47歳,男性)にスリーブ状胃切除術を実施したところ,体重が3割以上減少し,インスリンが不要になりました4)。この患者さんは手術を目指して早くから生活習慣の改善に取り組まれていて,術後は「歩くのが楽しくなった」,「脂っこい食事を好まなくなった」など意識や嗜好に変化が生じたと話していました。

辻野先生,清水先生と肥満症治療チームスタッフのみなさん。
海外での専門研修を修了したスタッフも。多職種が介入する専門的なチーム医療を実践する。

肥満症治療におけるチーム医療の重要性

肥満症治療のチーム医療について教えてください。

清水 チーム医療はどの領域でも重要ですが,肥満症治療では特に重要度が高く,手術を成功に導く不可欠の要素となっています。その理由として挙げられるのは,肥満症の患者さんが心理的・社会的に多くのストレスを抱えていることが多いという点です。手術はそれ自体大きなストレスをともなう治療であるため,多職種が介入したチーム医療で患者さんを支えていく必要があるのです。

チームでは,栄養科は常に患者さんとかかわり,術前から術後まで栄養指導を行います。臨床心理士は術前術後のメンタルヘルスをサポートし,精神疾患がある場合は精神神経科の医師が関与します。理学療法士は体重が多くてもできる運動の指導を行い,看護師や麻酔科医も安全に手術を実施するうえで非常に重要な役割を果たします。チーム医療ではさまざまなスタッフが患者さんの話を傾聴するので,いろいろな視点による多くの情報が辻野先生や私のところに集約され,最適な治療方針につなげることができるのが,一番の強みであると思います。

減量手術はこれからどのように発展していくとお考えですか。

清水 現在日本では減量手術の適応はBMI 35kg/m2以上と規定されていますが,2015年に開催されたDiabetes Surgery Summitでは,内科的治療で血糖コントロール不十分なBMI 30kg/m2以上の2型糖尿病に「手術を考慮すべき」という見解が示されました5)。さらに本見解は,アジア人ではBMIの基準を2.5差し引くとしているので,BMI 27.5kg/m2以上が手術の対象になりうることになります。

日本人は軽度肥満でも糖尿病を発症しやすく,治療困難な肥満合併糖尿病の患者さんが大勢いることを考えると,将来的にBMI基準が引き下げられると,そうした方々に恩恵をもたらすと思います。また術式に関しても,現在保険が適用されているのはスリーブ状胃切除術のみですが,より効果の高いバイパス系の手術も保険適用となることが期待されます。

CKDを診療している医療従事者へのメッセージ

最後に,CKD診療に従事されている医療者の方々に,メッセージをお願いします。

清水 肥満や糖尿病は透析導入の重大な原因ですが,早期であれば手術によって腎症の進展を抑制することができます。ですからこうした原因による透析導入が予想される場合は,早い段階で患者さんをご紹介いただくか,手術というオプションもあることを時宜をみて患者さんにご提示いただきたいと思います。

辻野 糖尿病を診療している医師にとって腎症はきわめて重要な合併症です。進展を防ぐための手立てを,地域の先生方と協力して構築する必要があると考えています。皆さんにお伝えしたいのは,連携を推進するにあたって一足飛びに連携体制が整ったわけではないということです。当院着任当時の私は日々の業務に忙殺され,ほかのことを考える余裕はほとんどありませんでした。しかし,逆紹介する患者さんのリストを作成するといった地道な作業を空いた時間に一つずつクリアして,現在の医療連携へとつなげてきた自負があります。

医療連携の推進は,医師の資質やモチベーションに依存するといわれることがありますが,私がやってきたのはどれも平易な要素の組み合わせであり,ハードルの高い要素は一つもないのです。どこの地域でもどのように多忙な状況であっても,平易なことを地道に積み上げていくことさえできれば,医療連携の構築には希望がもてると申し上げて,総括としたいと思います。

11月14日の世界糖尿病デーでは,多職種による糖尿病啓発イベントを開催.

Reference

  1. 1.辻野元祥. 糖尿病診療マスター. 2016; 14: 33-7.
  2. 2.日本肥満症治療学会肥満外科治療ガイドライン策定委員会. 日本における高度肥満症に対する安全で卓越した外科治療のためのガイドライン(2013年版).
  3. 3.清水英治 ほか. 実験医学.2014; 32: 386-91.
  4. 4.関根哲生 ほか. 第37回日本肥満学会総会発表.
  5. 5.Rubino F, et al. Diabetes Care. 2016; 39: 861-77.

KK-17-04-18225

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