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Dr.Interview

Dr.interview ドクターインタビュー

生活習慣病の初期から透析まで

日立総合病院 腎臓病・生活習慣病センターの取り組み

生活習慣病の初期から透析まで

日立総合病院 腎臓病・生活習慣病センターの取り組み

茨城県北部の日立二次医療圏(日立市,高萩市,北茨城市)で中核病院の役割を担う株式会社日立製作所日立総合病院。2011年3月に発生した東日本大震災により施設は甚大な被害を受け,一時は透析医療を全く提供できない状態に陥ったが,2016年6月には新本館棟が竣工。透析ベッド45床を有する「腎臓病・生活習慣病センター」が開設した。同センター立ち上げを指揮したセンター長の植田敦志氏とチーム医療の一翼を担う栄養科科長の石川祐一氏に,同センターが目指すこれからの医療のかたちについてお話を伺った。

  • 植田 敦志

    植田 敦志

    筑波大学附属病院日立社会連携教育研究センター 准教授
    株式会社日立製作所日立総合病院
    腎臓病・生活習慣病センター センター長/ 腎臓内科 主任医長

    1992年山形大学医学部卒業。筑波大学医学部腎臓内科に入局。1999年より2年にわたり山形県テクノポリス財団生物ラジカル研究所に国内留学。2001年より茨城県厚生連なめがた地域総合病院(現 土浦協同病院なめがた地域医療センター)にて地域医療に携わる。2013年に筑波大学附属病院日立社会連携教育研究センター 准教授に就任。同年,株式会社日立製作所日立総合病院勤務,2016年腎臓病・生活習慣病センター センター長を兼任。日本腎臓学会専門医・指導医。日本透析医学会透析専門医・指導医ほか。

  • 石川 祐一

    石川 祐一

    株式会社日立製作所日立総合病院栄養科 科長

    1985年東京農業大学農学部栄養学科卒業。2014年同大学大学院後期博士課程修了。食品会社研究開発部,個人病院を経て,1989年より株式会社日立製作所日立総合病院栄養科に勤務し,1991年より現職。入院患者の栄養管理や栄養食事指導に携わる。管理栄養士,糖尿病療養指導士,腎臓病病態栄養専門管理栄養士。公益社団法人日本栄養士会常任理事(地域連携・職域担当),日本病態栄養学会理事ほか。

受け継がれた医師のDNA
導かれるように生活習慣病医療の世界へ

茨城県日立市の高齢化率は国や県よりも高く,男女ともに急性心筋梗塞の死亡率が高い。次いで脳内出血,脳梗塞と続き,多くは糖尿病,高血圧症,脂質異常症を基礎疾患として有するため,生活習慣病の発症予防と重症化対策が市の喫緊の課題となっている。

日立市は株式会社日立製作所創業の地としても有名だ。日立総合病院は1938年に日立製作所の企業立病院として開院した。近年は中核病院として第三次救急を担うが,2011年3月,東日本大震災により被災。建物は甚大な被害を受けた。その後,大規模工事を実施し,2016年6月の新本館棟完成により震災の復興計画を完了した。新本館棟の開設にあたり,新たな取り組みとして全国から注目を集めたのが「腎臓病・生活習慣病センター」の設置である。三次救命救急センターと地域がんセンターに加え,3番目の特色のあるセンターとして生活習慣病対策に力を入れた慢性疾患病センターの役割を担う。同センター立ち上げに奔走したのが,センター長を務める植田敦志氏である。

植田氏は臨床糖尿病の草分けである坂口康蔵氏(元東京帝国大学医学部教授)の門下生だった圷晴行氏(元国立水戸病院院長)を祖父にもち,導かれるように生活習慣病医療の道に進んだ。しかし,その道のりは決して順風満帆ではなかった。「医学部を目指して親元を離れ,東京の予備校に通いました。浪人生活は辛かったですが,受験勉強だけでなく,人々が支え合って作り上げられる社会を見つめ直すよい機会になりました。人生の回り道をした2年間でしたが,人に対する思いやり,やさしさなど医師に必要な人間性を育む貴重な時間になりました」(植田氏)。1992年山形大学医学部卒業後は,故郷の茨城県にある筑波大学医学部の腎臓内科に入局。複数の総合病院勤務を経て,1999年より国内留学先で「活性酸素と腎疾患」をテーマに基礎研究に従事し充実した日々を過ごすが,2001年大学の人事により医療過疎地域である茨城県行方(なめがた)市の茨城県厚生連なめがた地域総合病院(現土浦協同病院なめがた地域医療センター)での勤務を命じられた。「当時は内科医が3人しかおらず,6年間腎臓内科医は1人で365日オンコールでした。忙しい日々でしたが,多くの患者さんが自分の診察を待っていると思うと弱音は吐いていられませんでした」(植田氏)。

結局,12年あまり勤務することになるが,腎センターの設立,腎サポートチームによるチーム医療の取り組み,医師会とは厚労省腎疾患重症化予防のための戦略研究(FROM-J)の臨床研究を共同で行い,地域の慢性腎臓病(CKD)対策に貢献してきた。「医療過疎地域では専門的医療ができず,医療の質が低下することは避けなくてはなりません。しかし,専門医は少なくても,多職種の医療スタッフを育成しチーム医療で患者を支援していく,医師会と協力し"かかりつけ医"と連携を図りながら,地域で患者を治療するシステムができれば,大都市圏と同様の医療を提供できると考えます」(植田氏)。

上流から下流まで一貫して診療
「腎臓病・生活習慣病センター」の開設

日常の臨床業務に追われながらも,海外での学会発表を精力的に行っていた植田氏に転機が訪れる。筑波大学医学医療系腎臓内科学の山縣邦弘教授より,かつて同氏が長年勤務した日立総合病院での勤務を依頼されたのだ。同院は東日本大震災での被災により透析医療の機能を完全に失ったばかりか,腎臓内科の常勤医師不在の状態が続いていた。元々,病院の建て替えが決まっていたことから植田氏は,生活習慣病の初期から透析に至るまで一貫して診療するセンターの必要性を病院と母体である日立製作所に直訴。奥村稔病院長によるセンター開設の約束とともに2013年,同院に着任した。3年の準備期間を経て,生活習慣病外来,腎臓内科外来,代謝内分泌内科外来と指導室(計5室),45床の人工透析室,腹膜透析診療室2室をワンフロアに集めた画期的な「腎臓病・生活習慣病センター」が2016年6月に完成した。

通常は,腎臓専門医が生活習慣病の早期から関わることは少ない。しかし,CKDの上流ともいえる高血圧や糖尿病などの生活習慣病の早期から腎臓専門医が関わることに,植田氏はこだわった。それは,「血清クレアチニン値が5~6mg/dLと腎機能が悪くなってから腎臓内科医が診たのでは,どうしても透析に至るしかない。もっと早期,もっと上流である健診から透析までのすべてのステージを腎臓内科医が診ていくことができたら」という信念からだった。同センターは,まさに「上流から下流まで」。植田氏の信念は現実のかたちとなった。

センターの理念は,生活習慣病に起因する合併症の重症化を予防しながら健康寿命を延ばし,究極的には医療費の節減に貢献することである。日立二次医療圏は約27万人の人口を抱えるが,腎臓内科医は2名しかいない。理念を実現するためには,多職種によるチーム医療の介入が必要だ。「私がまず力を入れたのが,『腎臓病・生活習慣病サポートチーム』の発足でした。患者教育を行える多職種によるスタッフの育成は,当センターに所属する医師の仕事です」と,植田氏は長年の医療過疎地域での経験をもとにその重要性を語る。サポートチームは,腎臓内科医,代謝内分泌内科医,歯科口腔外科医,看護師,管理栄養士,理学療法士,薬剤師,臨床工学技士,臨床検査技師,地域連携室,医療ソーシャルワーカー,日立市保健福祉部からなる。透析療法チーム,腎臓内科チーム,代謝内分泌内科チームなどに分かれており,横断的な編成の栄養チーム,運動チーム,フットケアチームでの活動も行う。月2回は全体のカンファレンスを実施。各チームが年間目標を掲げ,アウトカム評価を行いながら運用される点が特徴だ。

健診による早期介入に腎臓と糖尿病の専門医が関与

生活習慣病への早期介入は,日立総合健診センターの特定健診で受診勧奨となり,条件を満たした人を対象とした。条件は,「肥満があり,糖尿病,高血圧,脂質異常症のいずれかを有し,かかりつけ医をもたないこと」(図1)。該当者は,問診票と食事記録,歩数計(貸与)による歩行記録を記入し,専門医の待つ「生活習慣病外来」を受診する。当日は患者の状態に合わせた献立の昼食をとりながら,看護師,管理栄養士,理学療法士などが患者教育を行う。2回目の受診は1ヵ月後に設定し,診察と栄養指導,生活習慣の確認を行い,3ヵ月の教育の後,診療を引き継ぐ地域の診療所に逆紹介する。その後はかかりつけ医への通院を基本に6ヵ月後にセンターを受診してもらい,長期的なフォローも行う。栄養指導の内容を準備期間から検討してきた栄養科科長の石川祐一氏は,早期介入の手応えを次のように語った。「2016年8月からの稼働のため利用者は約半年で30人程度ですが,2回目までの受診でBMIの有意な低下や行動変容ステージの有意な上昇などの変化がみられています。今後は,6ヵ月後の受診時の検査値などをフォローすることで,生活習慣病外来が本当に機能しているのかが明確になってくると思います」(石川氏)。今後,日立市の国民健康保険の特定健診受診者にも範囲を広げ,徐々に対象を拡大する予定だ。

図1

体系的な運動プログラムの提供
連携先は民間のフィットネスクラブ

腎臓病・生活習慣病の重症化予防,合併症対策の鍵となるのが食事療法と運動療法である。栄養指導では,腎機能の低下している患者には塩分やたんぱく質制限,糖尿病患者は食事と運動のバランス,人工透析患者は体重増加を抑制しながら快適に透析を行えるようなQOLへの配慮,高齢者やアルブミン値の低い人には栄養不足に陥らない適切な栄養摂取などステージごとに指導の目的やポイントは変わる。しかし,石川氏は,特に上流である生活習慣病初期からの栄養指導が腎臓病の重症化予防の重要なカギになると指摘する。「生活習慣病の初期の方には,行動変容を起こさせることがキーです。生活習慣病外来での栄養指導が,ひとつの動機づけになればと考えています」(石川氏)。

同センターでは,CKDおよび透析導入以降の患者すべてに24時間蓄尿検査を実施している。これが腎機能を正確に把握するだけでなく,的確な栄養指導にも大いに役立つという。「通常は患者さんの食事記録をもとに摂取カロリーや塩分量などを計算しますが,24時間蓄尿検査からは塩分やたんぱく質の摂取量などの正確な情報が得られます。患者さんの申告とどの程度開きがあるかという点も参考になります」と石川氏。

また従来は,運動をすると腎機能を低下させるおそれがあると考えられたことから,CKD患者には運動療法は勧められてこなかった。しかし,過度な運動は腎臓に負担をかけるが,運動をしないと筋肉量が低下し,身体機能全体が落ち込むことになる。こうした腎臓病患者に対し,病院が体系的なプログラムを提供することは難しいと考えられてきた。しかし,植田氏は民間のフィットネスクラブと連携することで,その問題を解消した。「フィットネスクラブと共同でCKD患者用の運動プログラムを作成し提供しています。患者さんにフィットネスクラブに通ってもらい,自主的に取り組むことで運動習慣も身につけてもらいます。新たな試みですので,月に1回は関係者でミーティングし,全症例の検討を行っています。健康寿命を延ばすためには筋肉量の保持は重要な要素です。栄養不足にならないよう,しっかり栄養を摂りながら運動を行うことが重要です」(植田氏)。

腎代替療法は腎機能保持に焦点を当て健康寿命を考慮した選択を行う

透析導入にあたっては,患者が納得して開始することを重視している。「透析導入に最初から前向きな方はほとんどいらっしゃいません。患者さんには,納得しているかをあらためて尋ね,もう少し自力で頑張りたいという場合には栄養指導や生活指導,内服治療の見直しを行い,『透析をしてください』と言われる時期が来るのを待ちます」(植田氏)。生涯にわたって続く治療だからこそ本人の納得を何より大切にしている。

また,植田氏は,治療のゴールは何かを意識することが重要だと話す。生命予後の改善か,それとも健康寿命か─。保存期腎不全の早期から治療介入することができた末期腎不全患者は,残存腎機能が比較的保持されていることが多い。「導入期の腎代替療法は,残存腎機能を保持することはもとより,心血管疾患の合併症の発症を抑制し,生命予後を改善しながら健康寿命の延伸に寄与する治療法を選択すべきです」(植田氏)。必ずしも血液透析から始めることだけが選択肢ではない。腹膜透析から始める,腹膜透析と血液透析のハイブリッド療法を行うなど,腎代替療法にはいくつもの選択肢がある。患者さんには腎移植を含めそれぞれのメリットやデメリットを丁寧に説明し,身体的状況やライフスタイルに合った治療法を選択する。植田氏は,腎代替療法の仕組みと特徴をわかりやすく解説した患者向け冊子もオリジナルで作成(図2)。患者に納得して治療を受けてもらえるよう心を砕いている。

図2

地域医療連携の一環としてかかりつけ医の通院患者に栄養指導を提供

植田氏は着任時から生活習慣病の重症化予防と合併症対策には地域全体での取り組みが必要と考え,日立市医師会および日立保健所と連携し「CKD対策推進委員会」を発足。さらに,県とは「日立保健所管内地域・職域連携推進協議会」で連携を図っている。その中で生まれた取り組みが「地域連携栄養指導」である。独自に栄養指導を提供できる診療所は少ないことから,かかりつけ医に通院する患者のうち,生活習慣の改善を必要とする人には,同センターが生活習慣病外来で栄養指導を提供している。

病気を治すのは患者さん自身 それを支えるサポーターとしての医療者
新しい日立モデルの構築に向けて

最後に,開設から1年を迎える同センターの今後の課題や展望についてお二人に伺った。石川氏は,管理栄養士の活躍の場が今後さらに拡大することを期待している。「生活習慣病早期の段階から透析導入に至る一連の流れに栄養士が関われることは,若手の育成にも役立っています。国が地域包括ケアを推進する中,CKDをはじめ低栄養や嚥下障害のある患者対応など栄養士の活躍の場は,今後,ますます広がっていくと期待しています」(石川氏)。そして,「再生医療,遺伝子医療が花形の時代になりましたが,国民一人ひとりの食事や運動習慣を支援し,健康を守ることも医師の重要な役目だと考えています。生活習慣病への早期介入と重症化予防は,国を挙げて行うべき一大プロジェクトですが,国の制度を待っていては手遅れです。数多く患者さんを診療することも大事なのですが,私の使命は病院から地域や社会に出向いて,若き医師,医療者を育て,チーム医療や地域連携によって支えられる新しい診療システム"日立モデル"を作り上げることだと思っています。このモデルでは,生活習慣病を治す主役は患者さん自身です。われわれ医療者は,医師を含めてサポーターですね。患者さんのやる気スイッチを入れる優秀なサポーターになりたいです」と笑って話す植田氏。

日立モデルは医師不足に悩む地域の福音となるか─今後も同センターの独創的な取り組みから目が離せない。

KK-17-07-19376

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