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Dr.Interview

Dr.interview ドクターインタビュー

地域一丸,目指すは働き盛りの
患者の受診増

都市部と地方,両方の実情を知る医師の試み

地域一丸,目指すは働き盛りの
患者の受診増

都市部と地方,両方の実情を知る医師の試み

新規透析導入を抑制するうえで,慢性腎臓病(CKD)の早期発見や重症化予防が重要であることは,全国共通の課題である。しかし,こうした取り組みを推進するには,医療資源を効果的に活用することが必須であり,有効な対策は地域によって違いがある。山﨑肇氏は長岡赤十字病院の腎臓専門医として,人口約27万人を擁する長岡市のCKD病診連携を推進するとともに,人口約5千人の出雲崎町のCKD対策事業を支援してきた。山﨑氏に,都市部と地方におけるCKD対策の現状と課題についてお話を伺った。

  • 山﨑 肇

    山﨑 肇

    長岡赤十字病院 副院長/ 腎臓内科部長・総合診療科部長

    1986年に新潟大学医学部卒業後,第二内科入局。1995年にカリフォルニア大学留学。1998年に新潟大学医学部第二内科勤務。2000年より長岡赤十字病院に内科部長として勤務し,2015年に総合診療科部長(兼任),2016年に統括診療部長,2017年に副院長に就任。日本内科学会総合内科専門医・指導医,日本腎臓学会専門医・指導医・学術評議員,日本透析医学会専門医・指導医,日本高血圧学会専門医・指導医,日本プライマリケア連合学会認定医・指導医。

腎臓内科の目標は穴のない診療の実践

長岡市は新潟平野の南端,中越地域のほぼ中央に位置する県内第2の都市である」(図1)。市のほぼ中央部を信濃川が北流し,その川岸にあるのが中越医療圏の基幹病院である長岡赤十字病院。同病院は地域医療支援病院に指定され,医療連携を大切にしながら切れ目のない医療を提供することが,全診療科挙げての重要な基本方針となっている。

腎臓内科部長・総合診療科部長で副院長の山﨑肇氏はこうしたコンセプトを踏まえ,長岡市のCKD病診連携を積極的に推進している。長岡赤十字病院腎臓内科の特徴は,病院に救命救急センターが併設されていることから,ハイリスク患者の治療経験が豊富なこと。「当科ではICUで治療されている患者さんに対して,頻繁に持続的血液濾過透析(CHDF)や吸着療法を実施しています。また近隣の病院から手術が必要な透析患者さんの管理を依頼された場合は,お断わりすることなくほぼ全例を受け入れています」(山﨑氏)。

山﨑氏は腎臓内科の目標を,「腎臓のすべての領域で穴のない診療を実践すること」と説明する。「われわれは患者さんに対して,この治療は得意でないので対応できませんとは,絶対に申し上げないことを心がけています」(山﨑氏)。なぜこうした目標を掲げるのか─背景には,腎臓内科はカバーする領域が非常に幅広いという課題が横たわる。大学病院には大勢のスペシャリストが集結する。そのため,それぞれが細分化された領域の診療にあたっているが,一般病院で同様な診療体制を構築することは難しい。「当院には腎臓専門医が3名在籍していますが,この人数で領域別に担当を分けるのは現実的ではありません。われわれは専門医として腎臓のジェネラリストを目指し,分からない領域をなくすことを基本的なスタンスにしています」(山﨑氏)。

2014年,長岡市はCKD対策の推進に乗りだした

長岡市がCKD対策を開始したのは2014年。対策の必要性が認識されるまでには,次のような経緯があった。まず同市では2011年ごろから,医療費,健診結果,死亡動向などのデータ分析が行われるようになった。その結果,高血圧,糖尿病,大腸癌という働き盛り世代の患者が多い疾患では,市民への啓発やハイリスク患者の重症化予防が有効な対策であることが分かってきた。そこで2012年,「生活習慣病予防対策検討会」が組織された。

その後,2012年と2013年に新規透析導入患者が例年に比べて急激に増加し,同様の傾向が続くことが危惧された。また,同時期に集計された市の医療統計では,1人あたりの医療費が高額な疾患として腎不全が浮上した。こうした状況を総合的に勘案し,2014年に「生活習慣病予防対策検討会」を「CKD予防対策会議」に転換。CKD対策を積極的に推進する体制が構築された。

長岡市全域に病診連携を浸透させたい

長岡市がCKD対策をスタートさせた2014年には,「CKD診療ガイド2012」(日本腎臓学会編)がすでに公表され,CKD患者を腎臓専門医に紹介すべきタイミングが提示されていた1)。しかし,「長岡市では蛋白尿が出ている患者さんを腎臓専門医に紹介するという概念が,なかなか普及しませんでした」(山﨑氏)。低下した腎機能を改善する有効な治療薬がないため,多くの医療機関で,CKDは経過を観察するという対応がとられていたのが要因だった。

しかし,特に若い世代では,蛋白尿が出ている段階で背景にある病気をいち早く見つけて治療することで,腎機能低下が是正されることが少なくない。そこで長岡市は,患者紹介の基準をかかりつけ医に周知し,蛋白尿が出ている患者を重点的にすくいあげることをCKD対策の重要な柱に据えた。山﨑氏は,現状と今後の方向性について「長岡市は面積が広く,一般診療所の数も多いので,病診連携の浸透には時間がかかっていますが,これからも積極的な取り組みを推進していきたいと思います」と語る。

出雲崎町のCKD対策は長岡市の先行事例

長岡市に先駆けてCKD対策に取り組んでいたのが,隣にある出雲崎町である。出雲崎町は人口約5千人の海辺の町で,2010年末の透析患者数人口比(1/272人)が新潟県で最も高かった2)。そこで出雲崎町では2011年に,5年計画で新規透析導入患者半減を目指すCKD対策事業をスタートさせ,町を挙げてCKDの撲滅に取り組んでいる。

出雲崎町のCKD対策で注目されるのは,町民が腎臓専門医を受診する際に,保健師が受診予約を手配したり,家族が付き添えない場合は患者と一緒に来院するなど,病診連携の調整役として活躍していることである。

山﨑氏は,「出雲崎町のよいところは,佐藤医院と磯部医院のお二人のかかりつけ医の先生が,大部分の町民を診療されていることです」と指摘する。「お二人ともわれわれ専門医にCKD患者さんを積極的に紹介してくださるので,病診連携が完璧に浸透している典型的な地域です。出雲崎町ではCKD対策を開始して以降,病診連携システムに登録された人の中からは,新規透析導入となった患者さんはいらっしゃいません」(山﨑氏)。

患者紹介基準は蛋白尿の出現を重視

話題を長岡市のCKD対策に戻す。長岡市はかかりつけ医が腎臓専門医に患者を紹介する基準を,[1] 尿蛋白2+以上,[2] 尿蛋白1+かつeGFR<45mL/分/1.73m2,[3] eGFR<30mL/分/1.73m2,[4] 尿蛋白,尿潜血ともに1+以上,[5](40歳未満)eGFR<60mL/分/1.73m2としている。この基準は,「CKD診療ガイド2012」が推奨する患者紹介基準[[1] 高度の蛋白尿(尿蛋白/Cr比0.50g/gCr以上,または2+以上),[2] 蛋白尿と血尿がともに陽性(1+以上),[3] GFR<50mL/分/1.73m2(40歳未満の若年者ではGFR<60mL/分/1.73m2,腎機能の安定した70歳以上ではGFR<40mL/分/1.73m2)]1)に準じて設定されたが,GFRの基準が一部緩和されている。

山﨑氏は基準を緩和した理由を,「出雲崎町の経験でもそうだったのですが,『CKD診療ガイド2012』に従うとG3bA1の患者さん,つまり蛋白尿が出ていない腎硬化症の高齢者がものすごく大勢紹介されることになります」と説明する(表11)。このため長岡市は人口規模も踏まえ,40歳以上で蛋白尿が出ていないケースでは,eGFR<30mL/分/1.73m2を患者紹介の基準とした。

一方で蛋白尿が出ているケースでは,背景に治療介入すべき疾患が潜んでいる可能性が高いことを考慮して,尿蛋白1+かつeGFR<45mL/分/1.73m2を患者紹介の基準とした。さらにこうした基準を満たしていなくても,かかりつけ医の判断により紹介したほうがよいと思われる場合や,患者が希望する場合は,積極的に腎臓専門医に紹介することを呼びかけている。

文献1より引用

見直しが行われたものも

長岡市はCKD病診連携の推進に向けてさまざまな対策を打ち出してきたが,なかには見直しが行われた内容もある。そのひとつが紹介状の書式で,当初はかかりつけ医が腎臓専門医に患者を紹介するための紹介状に関して,市が一定の様式を定めていた。かかりつけ医から専門医へ送る情報を統一化するためである。しかし,多くのかかりつけ医がすでに独自の書式を使用していたため,慣れているものを使いたいという声が多かった。

山﨑氏は,「出雲崎町では統一された書式の紹介状が使用されていますが,長岡市では一般診療所の数が多いので,書式の統一が難しかったのだと思います。当院では紹介状の書式の問題で診療に支障が生じたことはありませんが,どのような薬剤が処方されているかは重要な情報ですので,かかりつけ医の先生には,必ずお薬手帳を持参することを患者さんにお伝えいただけるとありがたいです」と話す。

かかりつけ医との役割分担は柔軟に対応

かかりつけ医から腎臓専門医に患者が紹介された後は,どのような流れで連携が進むのだろうか。山﨑氏は,「当院では患者さんをご紹介いただいた場合に,病状を検査して何か専門医が治療介入すべきことがないかを調べた後は,基本的に患者さんをかかりつけ医の先生にお戻ししています」と説明する。その後は,「CKD診療ガイド2012」に提示されている受診間隔に準じて,患者は半年から1年に1回くらいの頻度で腎臓専門医を受診する。

CKDが進行して合併症が出現した場合は,かかりつけ医の希望に応じて治療の役割分担を決めることになる。「かかりつけ医の先生の状況によって,貧血の治療はすべて当院で実施することもありますが,薬の導入を行った後はかかりつけ医の先生が対応されたり,治療開始の基準をお伝えするだけのケースもあります」と山﨑氏。薬剤の処方も,個々の医療機関の体制に合わせて柔軟に対応する。

一方,薬物療法とは対照的に,食事療法は腎臓専門医サイドが担当するケースが多い。山﨑氏は,「当院ではすべての患者さんに蓄尿検査を実施して,塩分摂取量と蛋白摂取量を算出します」と話す。検査数値を見て必要と判断した場合は,栄養士が食事指導を実施する。「蛋白摂取量を算出するには,随時尿でなく蓄尿が必要になるので,病院でないと対応が難しいのではないかと思います。必要な検査や指導をどのように分担するか,かかりつけ医の先生方のご希望を聞きながらご相談しています」(山﨑氏)。

薬剤性腎障害を見落とさない

山﨑氏は,患者を紹介された際に最も気をつけていることとして,「CKD以外に腎機能悪化の原因となる病態のオーバーラップを鑑別すること」を挙げる。こうした病態として一番多いのは薬剤性腎障害であり,降圧薬,鎮痛薬,骨粗鬆症治療薬などが,腎機能低下を引き起こしている可能性に注意が必要である。

長岡市には多くの一般診療所が開設され,患者は症状に応じて整形外科や婦人科を重複受診している。当然,各診療科で薬剤を処方されるため,これが薬剤性腎障害の一因となっている面がある。「患者さんに服用しているお薬を確認すると,かかりつけ医の先生に知らせないまま,いろいろな診療科を受診していることが判明することがあります」と山﨑氏。

これは出雲崎町とは対照的な状況で,医療資源が豊富な都市部に共通する問題である。山﨑氏は,「現在われわれの診療活動の中で,患者さんが服用しているお薬を整理して,必要な場合は中止していただくことが,非常に重要な位置づけになっています」と話し,患者の全身管理の責任者が判然としなくなっている事態に警鐘を鳴らす。

CKD対策の推進がもたらした変化とは

長岡市は3年にわたりCKD対策を推進してきたが,地域医療にどのような変化をもたらしたのか。目に見えて明らかになっているのは,かかりつけ医が腎臓専門医に紹介する患者が増え始めたことだ。しかし,それが透析導入の抑制につながるか否かを評価するには,もう少し時間が必要である。山﨑氏は,「CKD対策を開始して1~2年で透析導入が抑制されるということは,あり得ません。効果をみるには,もっと長いスパンが必要です」と話し,腰を据えた長期対策の必要性を強調する。

CKD病診連携の推進は,かかりつけ医と腎臓専門医の関係にも影響を及ぼしている。「病診連携を開始してからはかかりつけ医の先生に,『こんなに高齢の患者さんを紹介してもいいのですか』などとお気遣いいただくことが多くなりました。もともとかかりつけ医の先生方も,患者さんに必要な検査を受けていただきたいという意識はあったのだと思いますが,腎機能の改善が見込めないケースでは,紹介を躊躇していたのではないでしょうか」(山﨑氏)。

かかりつけ医のこうした懸念を払拭するために,山﨑氏はどんなに高齢であっても条件を満たしていれば,患者を紹介されることに何の問題もないことを,講演会などで繰り返し話している。「ご紹介いただいた患者さんに介入すべき病気があって,それを見つけて治療することができた場合は,かかりつけ医の先生は勉強になったと喜んでくださいます。それはわれわれ専門医にとっても嬉しいことです」(山﨑氏)。

さらなる透析導入の抑制を目指して

長岡市ではCKD重症化予防の取り組みを推進する中で,さらなる透析導入の抑制を目指すための,新たな課題が見えはじめている。「病院に来てくださる患者さんを診ているだけでは不十分ではないか,と思うようになりました」と山﨑氏。透析導入が必要になる患者の中で最も多いのは,実際には通院中のCKD患者ではなく,特定健診を受診していなかったり,治療を中断してしまった患者であるという。特に若い働き盛り世代の患者は,多忙のため治療をドロップアウトしてしまうことが多い。

こうした現状を踏まえて山﨑氏は,「今後の課題は自ら来院しない患者さんを,何とかして医療現場に連れてくることです」と指摘する。それには,行政と医療機関が協力して新たな体制を築いていくことが必要だが,もし実現できれば期待される成果は大きい。「こうした取り組みが上手くいけば,透析導入が大幅に抑制されると思います」と山﨑氏。来院しない患者にどうやって足を運んでもらうか,全国共通の難題に地域一丸となって挑む。

引用文献

  1. 1. 日本腎臓学会 編. CKD 診療ガイド2012. 東京: 東京医学社; 2012.
  2. 2. 山﨑 肇 ほか. 日赤医学. 2012; 64: 172.

KK-17-10-20313

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