KYOWA KIRIN

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腎臓専門医,かかりつけ医,行政,それぞれの立場から,
地域におけるCKD対策の現状や課題について解説します。

  • 腎臓専門医の立場から

    山﨑 肇

    長岡赤十字病院副院長/
    腎臓内科部長・
    総合診療科部長

  • かかりつけ医の立場から

    佐藤 毅

    医療法人社団
    佐藤医院院長

  • 行政の立場から

    保坂 淳子

    長岡市福祉保健部健康課
    成人保健係/保健師

腎臓専門医

山﨑先生からの質問

出雲崎町ではCKD対策事業が開始されたことに
よって,地域医療にどのような変化がありましたか。

かかりつけ医

佐藤先生の回答

CKDは怖い病気であるという認識が,
町民の間に広まってきました。

新潟県出雲崎町では2011年からCKD対策事業が開始されました。その背景には,同町の透析患者人口比が新潟県で一番高かったことがあります。しかし当時は,そのように大勢の透析患者さんが出雲崎町にいることに皆気づいていませんでした。透析患者さんは病院で長時間治療を受けなければならないので,町民が患者さんを見かける機会が少なかったのです。

一方,CKDとは対照的に,脳卒中は大変怖い病気であると広く認識されていました。多くの町民の近くには,脳卒中で寝たきりになった患者さんがいたので,病気の深刻さや介護の大変さが理解されていたのです。特に高齢者は,「脳卒中になりたくない」というのが重大な関心事で,年齢を重ねるほど恐怖感が強くなります。つまり出雲崎町では,脳卒中は「見える病気」であったのに対して,CKDは「見えない病気」だったのです。

しかしCKD対策事業が開始され,町民を対象とした啓発活動が積極的に推進されるようになると,「出雲崎町では透析になる人が多い。それは大変な問題だ」という認識が町民の間に広まりました。私も町民の方々に,「腎臓が悪いと,心臓や血管に負担がかかって脳卒中にもなりやすくなる」と説明しています。そうするとみなさんが非常に納得してくださって,「なんだか腎臓病も怖いよね」という雰囲気が定着しつつあります。

日常の診療活動の中でも,たとえば風邪で来院された患者さんが肥満気味の中高年の方だった場合,通常の診察に加えて血圧を測定したり,家庭血圧の測定をお勧めしたりするなど,CKD対策を意識して診療するように心がけています。家庭血圧に関しては,出雲崎町でも大部分のご家庭で家庭用血圧計をお持ちですが,高齢者は置いているだけで使っていないことが多いので,きちんと測定を継続するよう指導しています。

また,普段は医療機関を受診しない中高年の患者さんが来院された場合は,「特定健診を受診してください」とお声がけしたり,CKDに関する講演会への参加をお勧めしています。町民の中にはCKD対策にほとんど興味を示さない方もいらっしゃいますが,ご家族や近隣住民など多くの人を巻き込むことによって,町全体でCKDの撲滅を推進していきたいと考えています。

かかりつけ医

佐藤先生からの質問

患者さんを腎臓専門医に紹介する基準となる
蛋白尿の程度や糸球体濾過量(GFR)の
値について教えてください。

腎臓専門医

山﨑先生の回答

日本腎臓学会の基準(尿蛋白2+以上など)をもとに,
できるだけ早期に一度専門医に紹介してください。

日本腎臓学会は,[1] 高度の蛋白尿[尿蛋白/クレアチニン(Cr)比0.50g/gCr以上または2+以上],[2] 蛋白尿と血尿がともに陽性(1+以上),[3] GFR50mL/分/1.73m2未満(40歳未満の若年者ではGFR60mL/分/1.73m2未満,腎機能の安定した70歳以上ではGFR40mL/分/1.73m2未満)のいずれかに該当するCKDは腎臓専門医に紹介し,連携して診療することを推奨しています1)。しかし,かかりつけ医の先生方の中には,蛋白尿が陽性で紹介基準を満たしていたため腎臓専門医へ紹介したものの,紹介先で実施した尿検査では異常が認められず,患者さんに不安感を抱かせてしまったという苦い経験をおもちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。その原因としては,試験紙法により尿の濃縮度の影響などを受けて尿蛋白が偽陽性を示した可能性が考えられます。そのため長岡市では,健診などの検尿の結果で偽陽性が出やすい項目に異常が認められた場合は,かかりつけ医で再度尿検査を実施することを推進しています。かかりつけ医で検尿再検を行い,蛋白尿と血尿の両方が1+以上であれば,専門医へ紹介する重要な判断基準になると考えます。

また,検尿再検で尿蛋白が陽性の場合には,尿蛋白濃度と尿Cr濃度を測定して尿蛋白をg/gCrで評価することが望ましく,同時に血清Cr濃度を測定し腎機能を推算糸球体濾過量(eGFR)で評価することが推奨されています1)。一方,紹介基準を満たしていない場合でも,各指標が腎機能の低下を示すときには十分注意し,早めに腎臓専門医へ紹介することが大切です。

腎臓専門医が少ない地域では,専門医の負担を考慮し,患者さんの紹介を躊躇されるかかりつけ医の先生もいらっしゃると思います。確かに,われわれ専門医の初診患者さんは増えますが,ご紹介いただいた患者さんは,すぐに専門医が治療継続すべき場合以外は基本的にかかりつけ医の先生のもとにお返しし,その後は連携しながら治療を継続していきます。CKD診療ではこうした病診連携が重要となりますので,必要だと判断された場合は遠慮なく紹介していただきたいと思っています。

References

  1. 1.日本腎臓学会 編. CKD診療ガイド2012. 東京: 東京医学社; 2012.
行政

保坂さんからの質問

腎臓専門医の立場から,保健師やかかりつけ医に
期待するのはどのようなことですか。

腎臓専門医

山﨑先生の回答

透析導入が必要になった場合の対応を,適切な時期に
患者さんやご家族と話し合っていただきたいです。

CKDが悪化して透析導入が必要となった場合に,すべての患者さんが必ず透析を選択するわけではなく,尿毒症になっても透析をしないという意思決定がされるケースがあります。こうした意思決定に関して日本透析医学会は,医療チームが維持血液透析の見合わせを検討する状況として,「維持血液透析を安全に施行することが困難」や「患者の全身状態が極めて不良」などを挙げています1)

一方で実地医療の現場では,高齢の患者さんが救急搬送されてきた時に,「この患者さんは認知症がありそうだけれど救命のためには透析が必要」という事態が発生することがあります。こうした場合には,透析を導入することが本当に患者さんの幸せにつながるか悩むのですが,多くのケースでは最終的に透析が選択されることになります。ご家族にご相談しても,急な決断を迫られる中で,透析の見合わせを選択するのは難しいのです。

しかしその後の経過に目を転じると,とりあえず救命はできたけれども透析を続けるための通院が困難であるとか,認知症があって抑制や鎮静をかけないと透析が施行できないといった,解決困難な問題が発生することが少なくありません。こうした結果は,患者さん,ご家族,そしてわれわれ医療従事者に大きな困惑を生じさせ,透析を導入した側も導入された側もきわめて不幸な状況に陥ります。

ですから,かかりつけ医の先生や保健師さんには,万が一透析導入が必要になった場合の対応を,あらかじめ適切な時期に患者さんやご家族と話し合っていただくことをお願いしたいと思います。患者さんとの信頼関係が構築されている医療従事者が介入して,事前に透析に対する準備や心構えをしておいていただければ,急に透析が必要になった場合でも,納得できる選択が行えると思います。患者さんの意志が明確で,周囲の理解が得られるのであれば,90歳以上の高齢者でも透析を施行する方法はいくらでもありますので,事前の準備で最適な選択がなされることを期待しています。

References

  1. 1.日本透析医学会血液透析療法ガイドライン作成ワーキンググループ 透析非導入と継続中止を検討するサブグループ. 日本透析医学会雑誌. 2014; 47: 269-85.
腎臓専門医

山﨑先生からの質問

行政の取り組みから見えてきた
CKD対策に関する課題などはありますか。

行政

保坂さんの回答

地域の医療機関への
CKD重症化予防フローチャートの周知,市民への
普及啓発活動の工夫を進める必要があると考えています。

長岡市ではCKD重症化予防を目的として,特定健診の結果からCKDが強く疑われる方に受診勧奨と保健指導を行う取り組みを2015年度より開始しました。この取り組みは行政と医療機関の協力体制のもと,「CKD重症化予防フローチャート」に基づき受診勧奨対象者(以下,対象者)に対してかかりつけ医または腎臓内科への受診を促し,さらに必要な方に対しては市で保健指導を行うものです。2016年度には精密検査受診率が約58%で,そのうち腎臓内科を直接受診した対象者が約22%,かかりつけ医から腎臓内科を紹介された対象者を含めると約32%という結果が得られました。

CKD重症化予防を目的とした取り組みが始まって3年目を迎えていますが,長岡市内には多数の医療機関が存在しますので,CKD重症化予防フローチャートのさらなる周知が必要であると考えています。対象となったにもかかわらず医療機関を受診していただけない方へは,現在行っている受診を促す通知書の送付や啓発パンフレット類の配布をはじめ保健師が直接訪問する件数を増やすなど,より効果的な方法による働きかけをしていきたいと考えています。

また,2015年度に作成した「長岡市国民健康保険データヘルス計画書」によると,透析患者の54.1%は生活習慣病が透析の起因であり,そのうち97.7%が糖尿病性腎症であることがわかりました1)。同様に特定健診の結果などからも,糖尿病や高血圧の方はCKD治療を進めるにあたって,より注意すべき対象であると認識しています。しかし,腎機能が低下していない方に働きかけても,すぐにはCKDへの理解につながらないこともありますので,生活習慣病とCKDとの関連性を認識していただくための普及啓発活動に,行政として引き続き取り組んでいく必要があると感じています。現在,長岡市ではCKDの普及啓発活動のひとつとして,市民向けの講演会を2014年度より年1回開催しています。興味を引く話題を取り入れながら毎年講演会の内容に変化をもたせて,多くの市民に参加していただけるよう努めています。また,長岡市は10の支所地域から成り立っていますので,各支所地域における普及啓発イベントの実施にも力を入れていきたいと考えています。

References

  1. 1.長岡市. 長岡市国民健康保険データヘルス計画書. 2016.
かかりつけ医

佐藤先生からの質問

長岡市CKD対策事業のモデルとなった地域や事業を
始めた経緯,今後の目標について教えてください。

行政

保坂さんの回答

出雲崎町,呉市,荒川区,熊本市などの
取り組みを参考に地域資源を活用したCKD対策事業を
立案し,新規透析導入患者の減少を目指して対策を進めています。

出雲崎町では,新規透析導入患者半減を目指したCKD対策事業が2011年度から開始され,一定の成果をあげていました。このことは,長岡市においてCKD対策委員会を立ち上げるきっかけのひとつになったといえます。また,長岡市CKD対策事業を策定した当初は,新規透析導入患者が年間約35人と例年に比べて15人ほど増えていたことから,将来的な医療費への影響が懸念されていました。透析の医療費は1人あたり年間500~600万円を要し,医療費の公的助成制度利用にともなう負担は国や自治体などが行うため,透析患者の増加は自治体の負担増につながります1)。そこで,医療費負担軽減策としても有用であるとの考えから,長岡市CKD対策事業を始動することになりました。

長岡市がCKD対策事業を開始した2014年度には,当時の担当者が糖尿病性腎症等重症化予防事業に取り組む広島県呉市に足を運び,6ヵ月間かけて行う患者指導の取り組みを伺ってきました。呉市以外にも,全国に先駆けて糖尿病性腎症等重症化予防事業やCKD対策事業を展開していた東京都荒川区,熊本県熊本市の取り組みを参考にしながら,長岡市にすでにある社会資源を活用したCKD対策事業を立案して進めてきました。そのひとつが2015年度より開始したCKD栄養指導事業です。2年間でおよそ100人の患者さんと関わりをもつことができましたので,これを継続していくことで,5年後には新規透析導入患者の減少につながる結果が得られるのではないかと期待しています。長岡市は新潟県の中でも透析導入患者が増加傾向を示している地域です。その推移を横ばいまたは減少へと導くことが,長岡市におけるCKD重症化予防に向けた取り組みの目標です。

References

  1. 1.日本腎臓学会 編. CKDの発症予防・早期発見・重症化予防に向けた提言作成委員会 発行. 生活習慣病からの新規透析導入患者の減少に向けた提言~CKD(慢性腎臓病)の発症予防・早期発見・重症化予防~. 2016.
行政

保坂さんからの質問

CKD対策事業に関して,かかりつけ医の先生が
行政に期待するのはどのようなことですか。

かかりつけ医

佐藤先生の回答

医療機関を受診せずにCKDが
進行してしまう患者さんを減らすための対策を
推進していただきたいです。

出雲崎町は人口約5千人という小規模な自治体ですので,住民の多くが顔見知りの間柄です。ですから患者さんの来院が途絶えた場合は,保健師さんに「あの方が最近来院されなくて心配」とお伝えすると,すぐに家庭訪問を実施してくださいます。これは非常に心強いことですので,これからも続けていただきたいと思います。

一方で特定健診を受けていないとか,健診は受けたけれどもその後の対応を放置している方について,どのような状況かを把握するのは医療機関では困難です。特に若年や中年の男性ではこうしたケースが多いので,ご本人が気づかないうちにCKDが進行してしまうことが懸念されます。

医療機関を受診しないCKD患者さんを減らしていくには,行政による啓発活動に期待が寄せられます。講演会もひとつの方法ですが,出雲崎町では,これまで6~7回開催したCKDの講演会をみると,参加者がいつも決まったメンバーになっていることが課題になっています。こうしたメンバーの大部分は高齢者で,一番啓発が必要な若い方に情報が届いていないのです。

そこで,対策として,町民への広報の方法を工夫していただくことが必要だと思います。講演会の開催に際しては,町役場がお知らせを全戸配布していますが,なかなか参加者が増えません。私も患者さんに参加をお勧めすると,「そんな会があるのですか」と返されることが少なくないのが現状です。患者さんがお知らせを見ていないのか,見ても忘れてしまうのか,それとも興味がないのかは不明ですが,印刷物を提供するだけでは不十分なようです。

また,講演会の内容を見直すことも必要だと思います。医療機関を受診しない方は,病気に関する講演会にも参加しません。こうした方に足を運んでいただくには,講演会を「病気に興味がある人が参加する内容」と「病気に興味がない人でも参加する内容」のセットにするのがよいのではないでしょうか。アイドルや歌手を招くようなイベントは難しいかもしれませんが,食のイベントや演劇祭を一緒に開催すれば,子育て世代や若い参加者が増えることが期待できるのではないかと思います。

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