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Dr.Interview

Dr.interview ドクターインタビュー

糖尿病患者には必ず尿中アルブミン定量の測定を

静岡市地域医療連携における糖尿病性腎症予防の取り組み

糖尿病患者には必ず尿中アルブミン定量の測定を

静岡市地域医療連携における糖尿病性腎症予防の取り組み

静岡県中部に位置し,人口約70万人を擁する静岡市。市内に大学病院はなく,急性期医療や人材育成を静岡県立総合病院,静岡市立静岡病院,静岡済生会総合病院,静岡赤十字病院,静岡市立清水病院,JCHO桜ヶ丘病院などが担っている。これまでも施設ごとに医療連携が行われてきたが,2015年に糖尿病性腎症の予防を掲げた「静岡市糖腎防(とうじんぼう)の会」が発足。糖尿病専門施設・腎臓病専門施設,静岡医師会・清水医師会,行政の連携による糖尿病性腎症の早期発見・早期介入の取り組みが進められている。本会のメンバーである,静岡県立総合病院腎臓内科部長の森 典子氏と静岡市立静岡病院内分泌・代謝内科主任科長の脇 昌子氏にお話を伺った。

  • 森 典子

    森 典子

    地方独立行政法人静岡県立病院機構 静岡県立総合病院
    副院長/腎臓内科部長/情報管理部長

    1980年大阪大学医学部卒業。浜松医科大学,東京医科歯科大学で研修後,1983年より静岡県立総合病院に勤務し,1991年腎臓内科医長,2000年腎センター長,2009年副院長,2011年情報管理部長に就任。徳島大学医学部臨床教授,静岡県立大学非常勤講師,京都大学医学部臨床教授を兼務する。専門は腎臓疾患,透析医学,腎移植。静岡県腎臓バンク副理事長,静岡県慢性腎臓病対策協議会会長,静岡腎セミナー会長,静岡市糖腎防の会会長補佐,ふじのくにバーチャル・メガ・ホスピタルシステム管理責任者を務め,地域医療に貢献している。

  • 脇 昌子

    脇 昌子

    地方独立行政法人 静岡市立静岡病院
    副病院長/内分泌・代謝内科主任科長/教育研修管理室長

    1979年徳島大学医学部卒業。東邦大学医学部附属大森病院,国立循環器病センターで研修後,同センター内科・動脈硬化代謝部門に勤務。徳島大学医学博士号修得,米国コロンビア大学セントルークス・ルーズベルト病院肥満研究センター留学。1996年市立島田市民病院内科医長。2001年静岡市立静岡病院内分泌・代謝内科科長,2014年より同病院副病院長,教育研修管理室長に就任。京都大学医学部臨床教授を兼務する。専門は内科学,特に心血管病予防のための代謝疾患学,栄養・運動療法。

糖尿病で腎症に至る患者を減らしたい
専門施設・医師会・行政の連携システムを構築

わが国の糖尿病患者数は900万人にのぼるといわれている。人工透析導入の原疾患として最も多いのは糖尿病性腎症で,糖尿病患者の約半数で腎機能が低下し,年間約1万5,000人が糖尿病性腎症で新規に人工透析に至っている。静岡市では2013年度の新規人工透析導入者の原疾患の65.6%を糖尿病が占める。また,静岡市の国民健康保険における2014年5月診療分の生活習慣病の疾患別レセプト件数は,高血圧性疾患,脂質異常症,糖尿病の順に多く,腎不全は7番目である。しかし同時期の医療費をみると,悪性新生物に次いで腎不全が2番目に多く,糖尿病は5番目。医療経済的に大きな問題となっていることがみて取れる。

さらに課題となっているのが,患者の生活の質(QOL)の著しい低下である。透析を導入して元気を取り戻し社会復帰できた患者はQOLを維持できるが,糖尿病性腎症の患者は透析導入をしても社会復帰が厳しいことが多いというのが専門医の見解だ。静岡県立総合病院腎臓内科部長の森 典子氏は次のように話す。「病院の腎臓内科に来られるのは糖尿病性腎症の,それも末期の患者さんが多く,そのつらい状況を間近でみてきました。糖尿病で腎症に至っている方は全身の血管が弱っているため,高血圧や自律神経障害,手足の壊疽,心筋梗塞や脳梗塞が生じるなど予後が悪い。また,入退院を繰り返す,在宅復帰できないなど社会的な自立が難しい方も多く,患者さんのQOLは著しく低下します。できるだけ糖尿病の患者さんを腎不全にしたくないと常々考えていました」。しかし,病院を受診するのは重症化した患者がほとんど。健診もしくはかかりつけ医がフォローしている段階で早期に糖尿病患者の腎機能の低下を発見し介入する必要があることから,森氏は地域医療連携の実現に向けて動き出した。「糖尿病性腎症予防のための連携の必要性は,それぞれの立場で感じていました」と森氏。2015年9月に,糖尿病専門施設・腎臓病専門施設,静岡医師会・清水医師会,行政による「静岡市糖腎防の会」を発足し,具体的な取り組みについての検討が開始された。

尿中アルブミン定量測定の重要性を周知

2型糖尿病は糖尿病を発症してすぐに気づいて診断がつくことはきわめて少なく,血糖値が高めという状態が数年続いてから診断に至るケースが多い。糖尿病性腎症病期分類の「第1期:腎症前期」といわれるのは糖尿病発症から約5年ぐらいだが,すでに腎臓に変化が起こり始めている。そして発症12~13年頃から微量アルブミン尿が検出されるようになり(第2期:早期腎症期),健診で異常値として指摘される顕性蛋白尿が出る頃,あるいは推定糸球体濾過量(eGFR)が低下し始める頃(第3期:顕性腎症期)から,腎機能は急激に低下し始め,そのまま治療しなければ糖尿病発症からおよそ20年で人工透析導入に至ると考えられている。

静岡市立静岡病院内分泌・代謝内科主任科長の脇 昌子氏は,糖尿病性腎症の早期発見と早期介入の重要性を次のように指摘する。「腎機能は微量アルブミン尿がみられる第2期に治療介入を行えば,進行を遅らせる,あるいは回復することが可能と考えられています。近年は第3期でも回復が見込まれる場合もありますが,それは急速に何らかの原因で悪化した方の治療がうまく行えた場合が多く,時間をかけて徐々に悪化した方は回復となるとやはり難しい。できるだけ早期に発見し介入することが腎臓の長生きにつながります」。医師はそれぞれ出身の専門科が異なり,糖尿病や腎臓疾患を専門とする医師はほんの一握り。対して糖尿病患者の数は多いため,多くは一般内科や整形外科など近くのかかりつけ医にかかっている。検尿はせずに血液検査のみで長年フォローされているケースも多く,重症化してからようやく病院に紹介されるのが実情だった。「そこで静岡市糖腎防の会では,糖尿病患者の尿中アルブミン定量測定の推進を基本方針としました。そして,微量アルブミン尿を確認したら,一度は専門施設に紹介することを原則としたのです」と脇氏。静岡市糖腎防の会では,非専門の医師に尿中アルブミン定量測定の重要性を理解してもらうため,講演会を開催した。また,各立場でWin-Winの関係を築けなければ連携は継続しないとの考えから,紹介された患者は原則として逆紹介でかかりつけ医に戻す,もし病院で継続して診る必要がある場合にはその理由をかかりつけ医に丁寧に伝えるというルールを策定。非専門の医師会員に理解を求めた。

「静岡市糖尿病性腎症重症化予防プログラム」を策定し連携の流れを明確化

静岡市糖腎防の会発足から半年後の2016年4月,厚生労働省により「糖尿病性腎症重症化予防プログラム」が策定され,都道府県に対し地域に根差したプログラム策定要請が通知された。静岡市にとっては渡りに船。静岡市糖腎防の会と静岡市との共同で「静岡市糖尿病性腎症重症化予防プログラム」を策定した。

プログラムの概要は 図1の通り,まず各保険者(健康保険事業の運営主体)が健康診断結果をもとに,対象者となる糖尿病患者と糖尿病性腎症ハイリスク患者を抽出する。基準はHbA1c 6.5%以上で医療機関未受診者や医療機関の受診を中断している人。また,HbA1c 6.5%以上かつ尿蛋白定性1+以上,あるいはeGFRの腎機能低下者に該当する人である。保険者は対象者に受診勧奨と保健指導を行い,「受診報告用はがきa」「専門施設受診報告用はがきb」(クリニカルパス・その他ツール 参照)などの書類を渡す。

対象者の受診を受けた一般医は,蛋白尿(-)(±)の人は尿中アルブミン定量測定を行い,陽性の場合は「医療機関(一般)より糖尿病/腎臓病専門施設への紹介のめやす」に沿って専門施設へ「専門施設受診報告用はがきb」を紹介状に同封して紹介する。また「受診報告用はがきa」を市に返送。紹介された糖尿病専門施設・腎臓病専門施設は検査,療養指導,栄養指導などを実施し,原則として逆紹介を行い,「専門施設受診報告用はがきb」を市に返送する。

保険者は返送されたはがきから,受診率や紹介率,尿中アルブミン定量測定の実施率などのアウトカム評価を実施。将来的に,糖尿病性腎症によって新規に人工透析を導入する患者の数が減少することを期待してデータ解析の役割を担う。

図1

国民健康保険以外の保険者も巻き込み若い世代の掘り起こしをねらう

本プログラムで特筆すべき点は,国民健康保険だけでなく他の保険者を巻き込む方針を掲げたことである。脇氏はその重要性についてこう話す。「早期介入というのは,若いうちに発見することが重要と言い換えることもできますが,国民健康保険は退職後の方を多く含むため年齢層が比較的高いのです。そのため,2017年4月よりまずは国民健康保険の保険者から始め,それをモデルケースとして他の保険者にも実施を促したいと考えています。静岡市は,一部の保険者にアプローチしており,前向きな反応をいただいていると聞いています」。森氏は本プログラムの副次的効果をこう続ける。「本プログラムで糖尿病性腎症の地域医療連携の流れが構築され,この枠組みに入らない方や健診を受けていない方についても,一般医の先生方が積極的に病院に紹介してくださるようになることにも期待を寄せています。かかりつけ医に通っている患者さんの中には,他の病院に行くことに抵抗のある方もいると思いますが,『市を挙げた取り組みだから』ということが後押しになればよいですね」。

積極的に尿中アルブミン定量測定を行う医師会員も出始めているが,すべての一般医にこの取り組みを広げるには,今後も地道に広報を継続する必要がある。静岡市では,本プログラムで策定した専門施設への紹介のめやすをA4サイズ両面にまとめラミネート加工したもの(12ページ参照)を約1,000部作成し,医師会報に同封したり,講演会の際に配布する準備を進めており連携の輪の拡大に努めている。さらに啓発活動として,連携の対象となる1つ手前の境界型糖尿病の段階にある市民向けに,静岡市糖腎防の会と静岡市とで協力してチラシを作成中。糖尿病を放置することの危険性,日常生活での注意点などを読みやすくまとめ,健診でHbA1c 6.2~6.4%の市民に案内する予定となっている。

地域の医療レベル向上と予防も含めた健康な社会づくりを目指して

最後に,今後さらなる広がりが期待される糖尿病性腎症予防の地域医療連携について,お二人に抱負と展望を伺った。脇氏は今後ますます患者数の増加が見込まれる糖尿病に対し,地域全体の医療レベル向上への貢献を誓う。「静岡市は糖尿病患者さんの死亡率は決して低くありませんが,基幹病院同士の連携がとりやすい点で恵まれた地域といえます。糖尿病は作用機序が異なり,安全性もより高い,新しい治療薬が次々に登場し,選択肢は広がっていますが,非専門の先生方は,効果や安全性に不満足なままでも使い慣れた薬剤を処方されていることが少なくありません。今後は,地域全体で糖尿病診療の質を上げていくために,糖尿病治療に対する新しい考え方をお伝えする機会を増やし,糖尿病性腎症をできるだけ予防するとともに,低血糖による救急搬送数も減らしていきたいと考えています」。

森氏は地域の医療の質を均一化するために,連携時のツール開発にも意欲的である。「当院では紹介いただいた患者さんについては『糖尿病性腎症連携チャート』 (図2)を用いて,検査数値や実施した指導内容,今後の連携の必要性,紹介元への治療の助言を記入してお戻しするようにしています。現在,いくつかの施設が本チャートを採用されていますが,今後は病態説明用の冊子を作成するなど共通のツール作成に力を入れていきたいと考えています」。そして,森氏は将来についてこう語る。「今後は,予防医学の段階から地域全体が連携していくことで,より健康な社会づくりに貢献できると考えています。たとえば,健診データを含むパーソナル・ヘルス・レコードを一元管理し,住民がどの医療機関を受診しても医療の履歴が確認できるようになれば,住民には個人に適したきめ細かな医療が受けられるメリットがありますし,収集したデータを分析することにより,健康維持のための提案を行うことも可能です。静岡市ではすでに『ふじのくにねっと』を開設し,静岡県内の病院や診療所で患者さんの診療情報を共有するICTを活用した取り組みを行っていますが,今後は健診センターなども巻き込み,健康関連の情報を集約する方向性を模索していきたいと考えています」。

専門施設,医師会,行政,三者の連携から始まった取り組みは,他の保険者を巻き込み,国家的な課題である「健康寿命の延伸」の実現に迫ろうとしている。

図2

KK-17-11-20665

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