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Dr.Interview

Dr.interview ドクターインタビュー

オール市原体制で,きめ細かなCKD診療の提供を

市原医療圏におけるCKD連携構築の取り組み

オール市原体制で,きめ細かなCKD診療の提供を

市原医療圏におけるCKD連携構築の取り組み

千葉県は,都市部の特徴を有する人口密集地域がある一方,太平洋に面した過疎地域が存在し,全国の縮図とも評される。医療機関や医師数などの医療資源は全国平均を大きく下回る。地域による偏在も認められ,市原医療圏では腎臓専門医不足の状況が長く続いてきた。こうした中,地域において基幹病院とかかりつけ医,行政はどのようにCKD対策を講じるべきか。第三内科主任教授で市原市医師会長の中村文隆氏と,2017年に帝京大学ちば総合医療センター腎臓内科に赴任し,市原医療圏のCKD 診療のボトムアップを目指す寺脇博之氏に現状と課題を伺った。

  • 中村 文隆

    中村 文隆

    帝京大学ちば総合医療センター第三内科 主任教授/
    市原市医師会長

    1984年東京大学卒業,医学博士。専門分野は循環器疾患一般,高血圧,カテーテルインターベンション。日本内科学会専門医,日本循環器学会認定循環器専門医,日本脈管学会専門医,日本心血管インターベンション治療学会名誉専門医,日本臨床栄養学会指導医,日本臨床検査学会臨床検査管理医,日本医師会認定産業医,日本医師会認定健康スポーツ医,人間ドック健診情報管理指導士,日本抗加齢医学会専門医,日本人間ドック学会専門医。

  • 寺脇 博之

    寺脇 博之

    帝京大学ちば総合医療センター腎臓内科 教授
    臨床工学室長

    1991年岐阜大学卒業,医学博士。専門分野は高尿酸血症,急性・慢性腎不全,腎代替療法(血液透析・腹膜透析),酸化ストレス,臨床疫学。日本内科学会認定内科医・総合内科専門医・指導医,日本腎臓学会専門医・指導医・評議員,日本透析医学会専門医・指導医,日本高血圧学会高血圧専門医・指導医,日本腹膜透析医学会評議員,日本生理学会評議員。

CKD診療の変遷と現状

帝京大学ちば総合医療センターは,1986年に「帝京大学医学部附属市原病院」として開院。現在は475床を有する大学病院として,高度な医療の実践と先駆的な研究の遂行,教育の実践にたゆまぬ努力を続けている。腎臓内科においては,年間外来患者数7,366人,入院患者数104人であり,透析導入70件,外来透析件数3,842件,入院透析件数2,909件の実績を誇る(2015年度)。

寺脇氏は「腎臓内科に求められる診療については,ひととおり提供できる体制にあります。教育面で目指しているのは1人で活動できる"ワンマンアーミー"の育成。若手のドクターが1人で腎生検,シャント造設,カテーテル挿入ができるようになることを目標としています」と話す。

そして,寺脇氏が2017年5月に同科に赴任した際,まず気づいたのが,CKDの原因疾患として,虚血性心疾患や心機能低下を背景にした腎硬化症が目立つ点であった。「私が医師になった30年前はIgA腎症が圧倒的に多く,加えて糖尿病性腎症が急増し始めていたのを記憶しています。現在はもちろん,透析導入の原因としては糖尿病性腎症が最も多いのですが,糖尿病合併の有無にかかわらず,動脈硬化性疾患が非常に多いと感じます。全国的な傾向かもしれませんが,この地域に来てはじめて気づいたことです」。

CKD診療における留意点

多くのCKD患者を診療する中,留意点として寺脇氏は「CKDは,患者さんによって原因疾患や併存するリスクファクターが異なります。そこをしっかり同定してから,介入する必要があります」と話す。CKDが心疾患のリスク因子として注目される中,単にクレアチニンやeGFRなどで腎機能を評価するだけでなく,血圧や心拍数,尿酸値,体液過剰など,心血管系に影響を及ぼす因子を同定し,より適切な介入を行うことが重要という。

また,同科では,血液透析だけでなく腹膜透析の選択も可能であり,親族による腎臓提供が可能な場合には待機的腎移植というオプションもある。「患者さんには悲しむばかりではなく,自分に適切な治療法について考えてもらう必要があります。特にCKDのステージが進行してから受診された患者さんの場合,腎代替療法も念頭に置かなければいけない場合が多くなります。情報提供のタイミングを遅らせないことも必要です」。

少ない腎臓専門医で広域をカバー

帝京大学ちば総合医療センターは,千葉ろうさい病院や千葉県循環器病センターとともに,市原医療圏において基幹病院としての役割を担っている。

市原医療圏の医療提供体制について,市原市医師会長でもある中村氏は「47都道府県中,千葉県全体の医師数は下から3番目1)。その中でも市原医療圏は,千葉県の平均を下回り,全国平均に比べて相当低い水準です2)」と説明する。中村氏の専門である循環器領域を例にとっても,隣接する山武長生夷隅医療圏で発生した透析患者の心不全など,緊急例は同院で対応しているという。「千葉県全体の医療資源が乏しい状況で,当院が相当の広域をカバーしているのは間違いありません」。

さらに寺脇氏は「腎臓専門医についても,人口比で慢性的に不足しています」と付け加える。その理由として,「これまで,千葉県に腎臓内科医を育成するシステムがなかったことがひとつ。また,CKD患者さんの増加に見合うだけの医師の補充がなかったこともあると思います」と指摘する。

市原医療圏にある基幹病院のうち,腎臓内科として独立した部門をもっているのは帝京大学ちば総合医療センターのみであり,寺脇氏をはじめ,医師4人体制で地域の腎臓専門医療の多くを担っているのが現状だ。

では,地域のかかりつけ医との連携はどのような状況にあるのか。寺脇氏は次のように語る。「われわれ基幹病院側の責任ですが,かかりつけ医の先生方のニーズに応えられるだけの連携システムはまだできていません。私自身,市原市に赴任して1年の新参者ですが,現在,行政を巻き込み,地域における腎臓領域の連携システムの構築を模索中です」。

システムがない中での連携の現状

システマティックな連携体制が整っていないからこそ,かかりつけ医との連携においては,きめ細かな配慮が必要だと寺脇氏は指摘する。ひとくちに腎機能低下といっても病態はさまざまであり,患者個々の背景に注意を払わなくてはいけない。

「患者さんをご紹介いただいたら,原疾患や腎動脈狭窄の有無,腎臓サイズの左右差,腎後性因子の有無などを評価する必要があります。なかには心機能低下や,心腎症候群的なかたちで腎機能低下を引き起こしている場合もあります。可能な限り病態を明らかにし,紹介元の先生がフォローしやすいよう配慮してお返しするようにしています」。

かかりつけ医からの紹介のタイミングについて,寺脇氏は「かつてはステージG5,もう透析待ったなしの方が多かったです。しかし,CKDについて周知されたこともあり,現在はステージG3a,G3bレベルで紹介いただくことが増えています」と言う。

その背景について,中村氏は「市原市のプライマリ・ケアのレベルが向上していることもあると思います」と評する。「日本医師会では現在,かかりつけ医機能研修制度を設けています。高血圧,糖尿病,CKD,フレイル,寝たきり,認知症などについて講習を受講し,その他一定の基準を満たした医師がかかりつけ医を名乗ることができるというものです。市原市でも2017年度は2名の先生が認定されており,今後さらに増加することが予想されます。CKD領域について勉強熱心な先生も多く,勉強会などを通じて接点が増えるため,基幹病院側とのコミュニケーションも良好です」。

このように,基幹病院とかかりつけ医の間で信頼関係ができ上がっていることは,今後,市原医療圏において連携システムを構築していくための強固な基盤となりそうである。

地域連携パスは,いかに運用するかが重要

今後,腎臓領域における連携システムを構築していくにあたり,どのような青写真を描いているのか。中村氏は「市原市医師会としては,最初に地域連携パスの作成を目指しています。地域連携パスによってCKD患者さんの紹介基準と手順を明確に定め,かかりつけ医と共有する。それにより,逆紹介後のフォローアップもうまくいくのではないかと思います」と話す。

寺脇氏も「まずは,他地域でうまく稼働しているパスを参考にすることから始めます。そして,市原市の現状に合わせた取捨選択を行いながら,行政やかかりつけ医の先生方にも入っていただき,臨床現場で使いやすいものを作成していこうと考えています」とした。

中村氏は,過去に心筋梗塞の地域連携パスを作成しているが,逆紹介後,アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬やβブロッカー,抗血小板薬など特定の薬剤の使用が中止されていた経験があるという。薬剤の中止や変更は,場合によっては患者さんが不利益を被ることもありうるため,薬剤の処方などについても相談できるシステムをつくりたいと考えている。

地域連携パスは作成するだけでなく,継続して運用することが重要であるとして,2人とも「パスを作って,後はこの通りにやってくださいというのではダメ。適宜こちらからかかりつけ医の先生方にアドバイスを行い,フォローアップの頻度についても具体的に提示する。とにかく,臨床現場で役立つものにしたい」(中村氏),「パスは作成して終わりではない。いかに地域でうまく運用していくかが課題」(寺脇氏)との認識で一致している。

「パスの目的は,患者さんが地域のどの医療機関に行っても,標準的なCKDの診療を受けられることにあります。当院とかかりつけ医の先生方だけで完結するパスでは,真のパスではありません。周囲の基幹病院を巻き込み,市原医療圏全体で腎臓専門医と糖尿病専門医,かかりつけ医の先生方が使える連携パスを作成すべきでしょう。運用してうまくいかない点があれば,その都度修正すればよいのです」。

さらに中村氏は,地域連携パスにこう期待を寄せた。「たとえば院内のパスでも,導入したことで医師によって抗生物質の処方や入院期間が違っていたところが標準化され,在院日数が短縮されました。地域連携パスも,軌道にのれば必ず地域医療に貢献する有効なツールになるはずです」。

CKD重症化予防への介入効果

さらに中村氏は,市原医療圏におけるCKDへの取り組みの重点課題として,国民健康保険保健事業実施計画(データヘルス計画)に基づく「CKD重症化予防事業」の実施を挙げる。

「国として,第3期特定健康診査等実施計画(2018年度~2023年度)において,血清クレアチニン検査による腎機能の評価が追加されましたが,市原市では3年前から,血清クレアチニン値と尿蛋白の測定を行っています。ただ,そこで腎機能に問題ありとした住民に対し,どのような介入を行うかの具体策があいまいでした」。

そこで,2年ほど前から市原市CKD重症化予防推進会議を設け,特定健康診査の腎機能の判定値が要精密検査の判定区分にある人に対し,個人通知による早期受診の働きかけを行っている。その結果,どれだけの人が医療機関で精密検査を受けたのか,国民健康保険のデータベースと照合して把握できるシステムも構築したという。

対象となるのは,特定健診の受診時にこの事業への参加を承諾した住民で,「40~69歳でeGFRが49.9mL/分/1.73m2以下」「70~74歳でeGFRが39.9mL/分/1.73m2以下」に該当する,医療機関未受診者である。

まず,対象者には,保健センターから「特定健診腎機能検査結果のお知らせ」「受診済連絡票」が送付される。対象者は医療機関を受診した結果を「受診済連絡票」に記入し,保健センターに返信する。また,特定健診(個別健診)を実施するかかりつけ医が腎臓専門医に紹介を行った場合や,対象者が直接腎臓専門医を受診した場合は,腎臓専門医が「腎機能精密検査結果報告書」を保健センターに送付する流れとなっている(クリニカルパス・その他ツール 参照)。

医療機関の受診勧奨のほかにも,上記の対象者に腎臓専門医や管理栄養士による講演会を年3回実施し,CKDに関する知識の普及啓発に努めている。2017年度の受講率は20%,そのうち生活改善に取り組むようになった人の割合は90%という成果も得られた。

地域住民の健康課題に対する介入効果を検証

さらに中村氏は,データヘルス計画の導入により集積されつつあるデータから,CKDに限らず,地域住民の健康面に関するさまざまな知見を見出せる可能性を指摘する。たとえば,市原市は千葉県や国と比較して,外来・入院ともに1件あたりおよび1日あたりの医療費が高い傾向にあり,医療費支出の1位が腎不全という状況にある(2014年4月~2015年3月)(表13)

「重症化予防事業における地域住民への直接的介入により,今後,どのような変化が生じていくかを検証すべき段階にきています。私も大変驚いたのですが,市原市は老衰による死亡率が全国でも上位にあるという報告があります4)。これには,健康な高齢者の割合の多さや周辺の医療機関の対応の違いが影響している可能性が考えられますが,その要因についても得られたデータを活用して理由を探り,CKDをはじめ,市原医療圏の地域住民の健康向上に役立てていきたいと考えています」。

文献3より引用

オール市原体制で健康課題の解決へ

最後に寺脇氏に,市原医療圏におけるCKD診療の展望について伺った。寺脇氏からは「人口の高齢化が進む中,CKD患者さんのQOLを重視すると,腎代替療法においては腹膜透析の比重をもう少し高めてもよいと思います」という答えが返ってきた。

2018年度の診療報酬改定においても,腹膜透析を推進する点数評価がされており,その背景として,寺脇氏は「高齢者で腹膜透析を導入すると透析液の使用量が減り,医療費の削減が見込めるためではないか」と推測する。また,それだけでなく,腹膜透析は血液透析に比べ,高齢者の認知機能低下が抑制できるというエビデンスも得られている5,6)と補足する。

実際,寺脇氏は臨床において,「血液透析はかなり短時間で血行動態を変化させます。動脈硬化が進んだ高齢患者さんが,血液透析を繰り返すたびに認知機能やADLが低下するのを目の当たりにしてきました」と言う。

日本は腹膜透析の歴史は長いものの,欧米に比べ使用頻度は圧倒的に低いのが現状である。「高齢患者さんに腹膜透析を増やした場合,認知機能やADLの低下をどこまで抑制できるかは重要なクリニカルクエスチョンです。そして,市原医療圏において,単にCKDの連携のみならず,末期のCKDである腎不全の診療体系においても新しいモデルを構築し,全国に発信していきたいと考えています」。

さらに寺脇氏は,地域の中でCKDに関するさまざまな取り組みを実現させていくコツを述べた。「とにかく院内にとどまらず,いろいろな機会を見つけてかかりつけ医や薬局,保健所,市役所などを巻き込んでいく必要があります。目指すは,"オール市原"体制。関係機関みんなで協力して,市原医療圏の健康課題の改善に貢献していきたいと思います」。

引用文献

  1. 1. 厚生労働省. 2016年医師・歯科医師・薬剤師調査の概況.
  2. 2. 日本医師会. 地域医療情報システム(JMAP).
  3. 3. 市原市国民健康保険保健事業実施計画(データヘルス計画). 市原市. 2016年.
  4. 4. 厚生労働省. 人口動態保健所・市町村別統計. 標準化死亡比, 主要死因・性・都道府県・保健所・市区町村別(平成20年~24年).
  5. 5. Modern Physician. 2013; 33: 14-7.
  6. 6. Kidney Int. 2018; 93: 430-8.

KK-18-07-22941

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