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Dr.Interview

Dr.interview ドクターインタビュー

地域での機能分化・連携により,
糖尿病患者の透析導入阻止を目指す

大館市における糖尿病重症化予防の取り組み

地域での機能分化・連携により,
糖尿病患者の透析導入阻止を目指す

大館市における糖尿病重症化予防の取り組み

大館市は秋田県の北部に位置し,北境で青森県と県境を接する北東北の拠点都市である。
2005年に田代町,比内町を編入・合併したが,2018年現在の高齢化率は37%と,全国でも飛び抜けて少子高齢化が進展している。大館市内には病院が7施設あり,大館市立総合病院(443床)は中核病院として機能するが,糖尿病の専門医は同院に在籍する2名のみ。腎臓内科の専門医は不在で,開業医は高齢化による閉鎖が相次ぐ。
医療資源に乏しい地域で,どのように糖尿病の重症化を予防していくべきか。今回は,開業医や行政と協力し,連携パスや多職種カンファレンスなどの取り組みで糖尿病重症化予防を展開する池島進先生に現状と課題を伺った。

  • 池島 進

    池島 進

    大館市立総合病院内分泌・代謝・神経内科 部長

    1998年弘前大学卒業,青森県立中央病院にて研修。2000年弘前大学医学部内分泌代謝内科(旧第3内科)入局。2004年北秋中央病院,2005年青森県立中央病院,2007年4月より大館市立総合病院勤務。2013年4月より同病院内分泌・代謝・神経内科部長,同年6月より秋田大学医学部臨床講師兼任。日本内科学会認定医・総合内科専門医。日本糖尿病学会専門医,研修指導医。日本感染症学会専門医・指導医。DMAT登録医。

病院の外来患者診療は地域の開業医とともに

大館市立総合病院では2014年より,糖尿病地域連携パス(以下,連携パス)を導入している。その経緯として池島氏は,同院では外来の糖尿病患者が非常に多く,十分な診療が行えない状況を解決する必要があったことを挙げた。大館市内の糖尿病専門医は同院に在籍する2名のみ。腎臓専門医は不在で,腎生検が必要なケースなどは弘前大学や能代市,秋田市の腎臓専門医のいる施設に紹介している状況である。

「当院における糖尿病の外来通院患者は年間約1,700名ですが,マンパワー不足で,平日午前の診療時間帯しか対応できていません。地域全体で,みんなで診る体制にしないと,中核病院である当院の外来機能が破たんしかねないと危惧されました。そこで,専門的に診るべき患者さんは当院で診て,状態が落ち着いていてそれほど問題のない患者さんは開業医の先生に委ねるべきだと思ったのです」。

開業医には,比較的症状の安定した患者を診てもらうため,連携パスの対象をHbA1c7.0%未満で,合併症がないこととした(図1)。そして,普段は1~2ヵ月に1回,開業医で薬剤の処方や検査をしてもらい,同院では6ヵ月に1回,合併症の進行の有無などをチェックする流れを想定した。「限られた医療資源の中,地域で効率的に医療を提供していくには,こうした『2人主治医制』(図2)が欠かせないと考えました。それをシステマティックに運用するため,連携パスを導入したのです」。

図1
図2

糖尿病地域連携パスはこうして作られた

池島氏は連携パス作成にあたり,全国の連携パスに関する資料を収集し,それらを参考に大館市に適したパスを検討した。そして,医療者用連携パスとしては『糖尿病連携手帳』を活用し,患者用連携パスは手帳に貼り付けるシート状とするなど,運用しやすさに配慮したシンプルな形態とした。そして,地域の開業医に連携パスへの参加を呼びかけ,手を挙げた数施設との間で半年ほど試行して問題点を検証した。

「問題点の多くは,薬剤の処方に関する取り決めでした。たとえば,うちが2ヵ月処方なので,開業医の先生にもなるべくそれに合わせてほしいということや,6ヵ月に1回の受診時に,処方は当院と開業医の先生のどちらで行うのかといった点です。そのあたりは原則,患者さんの希望に合うようにするなど,柔軟な運用を心がけました」。

その後,合同説明会を開いてさらなる協力を呼びかけ,徐々に規模を拡大していった。そして2017年9月,連携パス開始から3年7ヵ月が経過した時点で,参加施設は2病院,15クリニック,対象者は352名に拡大した。ほかにも,大館市内のすべての眼科医と,糖尿病手帳を持参すれば紹介状なしで眼底所見を書いてもらえるという取り決めを交わしており,実質的には連携関係にあるといえる。

患者の受診継続と安心感を確保する「2人主治医制」

連携パス導入後の大館市の糖尿病診療について,池島氏は,同院と開業医における迅速でスムーズな連携の流れができたと感じている。「初回だけ紹介状を書きますが,あとは,処方や検査データの共有は手帳で行い,連絡事項,コメントも手帳に直接記入します。医療用連携パスがあることで,初回を除き煩雑なやりとりはなくなりました」。

一方の患者用連携パスには,同院あるいは開業医を受診する予約日や,実施した検査項目,指導内容などが記録される。患者は,自身の受診スケジュールが一目で確認できるうえ,予約日に受診しないと同院から電話が入る仕組みとなっていることから,治療中断の防止にも役立っている。

「パスを介さない一般的な連携では,紹介しても開業医の先生のところに行かない場合もあるでしょう。また,継続的な治療の途中で脱落する患者さんが多い中,それを防止できるのが,われわれの連携パスのよい点だと思います」。

また,パスの参加施設には,大館市から20km以上離れた北秋田市や鹿角市の開業医も含まれているという。同院の外来は常に2時間,3時間待ちで,平日の午後と土曜は休診のため,連携パスの運用により患者の通院負担はかなり軽減されると考えられる。

「風邪や腹痛といった日常的な医療ニーズには近くの開業医の先生が対応し,症状が重くなるなどいざとなれば,当院で専門的医療を提供する,まさに『2人主治医制』を実現しています。患者さんにとっては,いつも身近にいて利便性の高い開業医の先生,いざというときの当院というように,共同で診てもらえることは安心感にもつながっているようです。実際,役割分担が進んだことで,パス導入前に比べ,より手厚い糖尿病診療が実現できていると思います」。

地域全体の糖尿病診療レベルを底上げ

また,連携パスの導入により,地域全体の糖尿病に関する知識や診療技術のレベルアップも生じているという。「連携パスの中には,われわれの薬剤処方などの記載欄があります。開業医の先生方にその都度,説明することはそれほどありませんが,パスを通じて,専門医の考え方や処方のコツなども伝わるのではないかと考えています」。

同院では6ヵ月に一度,尿中アルブミン値測定により早期腎症の診断を実施しているが,池島氏は連携パス導入後,開業医の間でもそうした検査を手がける医師が増え,早期診断への意識が芽生えたと実感しているという。

「連携パスは,大館市全体の糖尿病診療のレベルアップにもつながると期待されます。連携を進めるうちに,研究会に来てくださる開業医の先生も増えて,地域全体で糖尿病に対する関心が高まりつつあるのを肌で感じています。当初は,当院の外来機能の一部を開業医へ移行する狙いもあってスタートさせた連携パスですが,専門医から非専門医への診療技術の移転という効果も生まれていると思います」。

連携パス成功の秘訣

連携パスの対象者は,3年7ヵ月の運用で352名となったが,全員にパスを適用し続けているわけではない。2割強にあたる76名は血糖コントロールや腎症の悪化などを理由にパスから離脱した。しかし,多くの人は同院で治療を継続し,症状が改善すれば再び開業医へ戻っている。

「症状が悪化した患者さんを拾い上げ,当院で重点的に治療できている点で,地域の中での機能分化という連携パス本来の目的が発揮できていると思います」。

そして,大館市での連携パスが軌道に乗っている理由として,池島氏は地域の規模を挙げる。「人口約73,000人で,病診連携を進めるにはちょうどいい大きさだったのではないかと思います。地域に中核病院が複数あると混乱が生じやすいかもしれませんが,大館市では当院のみが中心となるかたちで進めることができました。開業医の先生にとって『あそこに任せればいいんだ』と連携先がシンプルだったことも,連携パスがこの地域に根づいた要因だったと思います」。

多職種による糖尿病性腎症重症化予防の取り組みをスタート

また,池島氏は2015年,大館市とともに,国保データベースから透析導入ハイリスク患者を抽出し,行政と医療の両面から積極介入を行う取り組みもスタートさせている。厚労省が糖尿病性腎症重症化予防プログラムを策定したのは2016年4月。大館市の試みは,それに先駆けた取り組みだった。

「この取り組みは,JMAP(日本慢性疾患重症化予防学会)代表理事の平井愛山先生に,大館市に講演に来ていただいたのがきっかけです。講演の内容は,特定健康診査データからeGFR低下率の高い透析導入ハイリスク患者を見つけ出し,地域連携によって透析導入を阻止するというものでした。そのとき市の保健師も一緒に講演を聴いていて,『うちでも是非やりましょう』となったのです」。

また,2016年からは,大館市が糖尿病性腎症重症化予防事業(いきいき健康プログラム)(図3)に着手したのを機に,同院の外来患者を対象として,透析導入ハイリスク患者への積極介入もスタートさせている。ポイントとなるのは,糖尿病性腎症の臨床経過を踏まえた透析導入ハイリスク患者の抽出と,患者さん個々の透析導入時期の"見える化"だ。

そこで,製薬企業が無償で提供する疾患管理テンプレートを利用し,① 79歳以下,② eGFRを3回以上測定,③ 5年以内に透析導入が予想される,④ eGFR低下が-0.4/月以上(-4.8/年),を透析導入ハイリスク患者として抽出した。

初回(2016年)の透析導入ハイリスク患者は,2013年12月~2016年2月の期間における予約外来通院患者2,080名のうち,①~④に該当した119名を1例ずつ検討し,最終的に22名を指導患者とした。そして,これらの指導患者に積極的な介入を行うため,同院では池島氏をはじめ看護師,管理栄養士,保健師など多職種からなるカンファレンスを開始した。

図3

(大館市福祉部健康課)

積極的介入により透析導入回避を実現

月1回のカンファレンスでは,指導患者一人ひとりについて,それぞれの職種が専門性を活かしながら食事指導や生活習慣指導などを多面的に検討する。具体的な取り組み内容として,腎保護作用に配慮した薬剤選択の見直しをはじめ,塩分摂取量や水分摂取量の指導を重点的に行っている。

その中で,保健師の役割について池島氏は,「ハイリスク患者のうち国保の被保険者を訪問して,自宅での様子や病院での指導内容の実践状況について確認してもらっています。その情報をカンファレンスで共有し,病院での指導内容にフィードバックすることで,透析導入阻止の取り組みがより実効的なものになっていると思います」と話す。

そして,介入前後の透析導入予想時期,eGFRの低下速度について比較したところ,『5年以内の透析導入』が想定された22名のうち,1年半の介入により半数以上で透析導入想定時期が先に延び,『5年以内透析回避』となった。eGFRの低下スピードも-11.8v6.4/年から-4.2v8.4/年へと有意に低下した。

医療費削減効果としては,「実際にはそう単純ではありませんが,たとえ5年以内透析導入回避にならなかった群においても,透析導入予想時期を遅らせた月数を全員分合算すると245ヵ月分でした。透析の年間コストを500万円とすると計算上は1億200万円の医療費削減になります」と説明する。

介入効果が徐々に数値で明らかに

一方,各年5月診療分のレセプト分析では,糖尿病性腎症の患者数が2014年頃から徐々に増加している状況がみてとれる。これは,連携パスをスタートし,専門医とやり取りを重ねる中で開業医の意識が変わり,尿中アルブミン値測定が増えたことによると推測される。「連携パスにより大館市全体の糖尿病診療の質が上がってきているのは間違いありません。開業医の先生が,しっかり診断してくださっていることを裏づけるデータだと思います」と池島氏は話す。

さらに,人工透析有病率の推移をみると,全体の透析患者は増え,透析医療費そのものも増加している。ただし,各年5月診療分のレセプト分析(平成29年度以降は未解析)では,糖尿病性腎症による透析医療費は減少に転じている。今後も同様の傾向が続けば,透析患者における糖尿病性腎症の割合が減少しているという,新たなアウトカムにつながると期待される。

「透析導入の阻止においては何よりも,糖尿病性腎症が重症化する前の紹介が課題となります。当院では,連携パスを導入して以降,腎不全期(腎症4期)の紹介が減少し,より早期である顕性腎症期(腎症3期)の紹介が増えつつあります。3期であれば,何とか進行を食い止めることが可能なので,今後も連携パスの活用により,より早期の紹介を目指していきたいですね」。

※大館市国保データより

重症化予防の取り組みがよりよい地域医療を実現

地域の糖尿病診療において連携パスを運用し,透析ハイリスク患者に対し,積極的に介入を行う取り組みは,現在,限られたマンパワーで実施されている。今後,透析導入阻止を図っていくうえで必要なのが,地域における糖尿病の理解の裾野を広げることだと池島氏は指摘する。

「患者さんに身近なところで接する介護・福祉職なども含め,幅広い職種が正しい知識をもち,地域全体に隙間なく連携の輪を広げていくのが理想です。たとえば,ヘルパーさんは利用者の自宅で調理をしますが,その際,減塩,脱水予防の知識があれば,食事指導の効果をより発揮できるはずです」と池島氏は期待する。

その第一歩として2017年7月に同院主催で立ち上げたのが,「糖尿病サポーター制度」である。現在,年4回の研修会を企画し,介護・福祉職を中心とする参加者に,糖尿病の基本知識を学んでもらい,最後に修了証を手渡すことを計画している。

「座学だけでなく,グループワークを盛り込んでいるのがポイントです。参加者同士で気づいたことや問題点を指摘し合い,重症化予防の気運を高める場としたいですね」。

さらに池島氏は,大館市における糖尿病診療の今後を見据えて,次のように展望を述べた。「どのグループにも,やる気のある人が必ず,1人,2人はいるものです。さまざまな職種から重症化予防に向けた新たな動きが派生してくれるといいなと思います。糖尿病対策は,多職種がそれぞれの専門性を活かして取り組みを進めることが大切です。それが地域の中で融合していけば,より理想的なかたちで地域医療を提供できると思います。当院を中心にスタートした重症化予防の取り組みが端緒となり,地域全体に波及していくことを期待しています」。

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