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施設紹介

せいの内科クリニック

「糖尿病は恥ずかしい」と言う患者に,心理面を重視したきめ細かな療養指導を

〒963 - 8851 福島県郡山市開成6 丁目192 - 2 http://seino-clinic.jp/

施設紹介
  • 清野 弘明

    せいの内科クリニック 院長

    1985年金沢大学医学部卒業。1985年岩手県立磐井病院での初期研修の後,1988年東北大学第三内科(糖尿病・代謝科),1992年太田西ノ内病院糖尿病センター勤務。糖尿病センター部長,センター長を経て,2003年より東北大学糖尿病代謝科臨床助教授。2006年にせいの内科クリニックを開設。糖尿病学会専門医,日本糖尿病学会指導医,日本糖尿病協会療養指導医,日本内科学会認定医。

福島県の糖尿病死亡率は,全国ワースト5位1)。糖尿病専門医,腎臓専門医がいまだ不足し,多くの患者に十分な専門診療が行きわたっているとはいい難い状況にある。せいの内科クリニックは郡山市の内外を越え,糖尿病専門医,糖尿病療養指導士有資格者を含む看護師14名,管理栄養士2名という豊富な人材により,専門的な療養指導を展開する。クリニックの外来という,患者の生活や思考が反映されやすい場で行われる療養指導のベースとなるのは,患者の病気への想いや行動に「共感する」姿勢だ。そこから生まれるのは,個々の患者に適したきめ細やかな指導 と,良好な血糖コントロールや合併症の進展防止を維持・達成するための工夫である。せいの内科クリニック院長の清野弘明先生に,同院の取り組みについてお話を伺った。

クリニックで糖尿病専門診療を展開

貴院の診療体制について教えてください。

清野 私は郡山市の太田西ノ内病院で13年間,糖尿病の専門診療を手がけ,約6,000名の患者さんを診療してきました。2006年に郡山市にクリニックを開設した際,集患エリアとしては当初,郡山市のみを想定していたのですが,隣接する須賀川市からも来院される方が多かったのには驚きました。須賀川市からは車で20分以上かかるのですが,同市に糖尿病専門医が1人しかいないのが大きな理由だったようです。

近隣では,太田西ノ内病院(1,086床)に糖尿病専門医が4名在籍していますが,それ以外は病院でも,非常勤として外来診療のみ行っているところが多いのです。

クリニックで糖尿病専門医を有し,専門外来を手がけているのは,郡山市内では当院のみです。2018年のデータでは糖尿病の新患患者数が約500名,そのうち半数が紹介患者でした。この地域における専門診療のニーズの高さを痛感しています。

日々,多くの患者さんの対応に追われていますが,幸いにもスタッフに恵まれ,看護師14名(内 日本糖尿病療養指導士7名,福島県糖尿病療養指導士6名(重複あり)),管理栄養士2名,受付事務5名の体制で専門診療を提供しています。ほとんどのケースは当院で診療できますが,ケトアシドーシスの昏睡など糖尿病の急性合併症は,太田西ノ内病院に紹介しています。

きめ細やかな療養指導のコツ

紹介患者さんが半数ということですが,どのような患者さんが多いでしょうか。

清野 紹介されてくる患者さんは,罹病期間が長く,血糖コントロールがうまくいっていない方が中心です。痩せ型 で,10年以上,3~4剤併用しても思うように血糖値が下がらない場合はインスリン療法の導入を検討しますが,患者さんのなかには「インスリン注射は怖い」「糖尿病でインスリン注射を打つようになったら終わりだ」と誤解している人もいます。

そんなときは,説明にもひと工夫必要です。膵臓を井戸,インスリンを井戸水に例え,「いまは井戸に水が溜まっていないので,井戸水は使わずもらい水をしましょう。そうして井戸水が溜まれば,インスリン注射の回数を減らしたり,飲み薬のみにしたりすることも可能ですよ」と話すと,患者さんはなるほどといった様子で納得されます。

インスリン療法導入時は,実際に私が注射実技を披露しています。自分でお腹に打つところを見せて,笑顔で「それほど痛くないですよ」とお伝えするのです。その後,看護師が補足説明をして患者さんの抵抗感をさらになくすようにしていますが,実演は効果があるようです。

また近年は,さまざまな糖尿病の治療薬が出ていますから,患者さんにどの治療薬が合うのか,適切な判断は専門医でないと難しいことも多いと思います。そのため,治療薬を調整後,しばらく様子をみるため半年ほどは当院への通院を継続していただき,問題がなければ紹介元の先生にお返しするようにしています。

管理栄養士による食事指導について教えてください。

清野 当院では,患者さん1人あたり20~30分かけて,月250~280件の糖尿病栄養指導を行っています。まず私から,患者さんの体重に合わせたカロリー指示や,糖尿病の食事療法の基本について説明します。その後,管理栄養士が,患者さんから聴取した情報に基づき,食習慣を改善するための具体的な提案を行っていきます。

たとえば,朝食を抜く習慣のある場合は,昼食時に急激に血糖値が上昇し,心臓に負担がかかることを説明し,朝に牛乳とビスケット1枚だけでも摂るようアドバイスします。また,いつも昼食で丼物を食べてしまうという方には,定食に変えるだけでもいいですよとお話しますし,逆に極端な糖質制限を行っている方には,LDLコレステロールが上昇する可能性を伝えるなど,患者さんの行動変容を促す伝え方を心がけています。

なかには,ビタミン類などのサプリメントを常用している方もいらっしゃいますが,血糖値に影響せず,患者さん自身が「体の調子がよい」と思っている場合には,否定はしません。ただ,非常に高額で,「飲んでもあまり調子が変わらない」と言うようなら,「やめたらいかがですか」と提案することはあります。医療上,問題がある場合にはもちろん指摘をしますが,基本的な姿勢として,健康でありたいと思う患者さんの気持ちに共感し, それを実現できるようバックアップすることは重要だと思います。

人間は恐らく,自分でいろいろ考えた末に起こした行動のほうが継続できるのではないでしょうか。そうした前向きな気持ちを,食事療法や血糖コントロールのなかでうまく活用していくことも,われわれ医師の役割だと思います。

初診時にまず行う栄養指導.栄養指導室では,リアルな食品サンプルを みながらカロリーや塩分量について考えてもらう.

良好な血糖コントロールを目指すうえで,どのような点に配慮されていますか。

清野 血糖コントロールについては患者さんすべてに共通の目標がありますが,発症年齢や合併症,認知機能な ど,個人の状態に合わせることを重視しています。

同じ75歳の患者さんでも,糖尿病の発症が40歳と早かった方は合併症の進行に注意を払いますが,70歳で発症した方の場合は,むしろ低血糖による転倒に配慮します。また,低血糖を起こさない方ならHbA1c6.5%を目標にしますが,認知症があって虚弱な方は,低血糖により認知症が進行する恐れもあるため,HbA1c 8.0%を目標とします。

血糖コントロールにおいて最も重要なのは,患者さんの暮らしぶりへの配慮です。教育入院の期間中は,厳重な管理により誰でも血糖値が改善します。しかし,外来では患者さんのふだんの暮らしぶりを的確に把握し,それに基づいて指導を工夫しなくてはなりません。

当院では患者さんの初診時に,糖尿病連携手帳,糖尿病眼手帳,お薬手帳と教育資材をセットにしたファイルをプレゼントしています。すべて,受診時に持参していただきたいものなのですが,毎回真面目に持ってくる方と,忘れてしまう方とに分かれるようです。

当院で2013年に208名を対象に実施した調査では,診察時に毎回,糖尿病連携手帳を持参する患者さんはHbA1c 7.0%前後を維持できており,持参しなかった患者さんは8.0%以上が多いという結果となり,明らかな差が認められました。

持参しない患者さんは,恐らく自分の病気に対する関心が薄いのだと思います。そのため,初診時に「手帳を忘れる方は血糖値が高くなることが多いですから,是非持ってきてください。私たちも一生懸命お手伝いしますから,自分の病気と真剣に向き合ってくださいね」 とお話して,どうすれば手帳を持ってきてもらえますかと質問し,モチベーションを維持できるよう働きかけています。

血糖値が改善されない患者さんとは,どのように向き合っていますか。

清野 外来の短い診療時間においては,患者さんと会話を交わせるのは3~5分程度です。短い時間で患者さんの心に響くような説明が必要です。

たとえば,Kumamoto Study2)の解析から,HbA1c(NGSP)6.9%未満に血糖コントロールすることで腎症の発症や進展を抑制するという結果が示されていますので,そのことを説明しながら,「いまHbA1c 9.9%なのは,かなりの高熱があるのと同じです。平熱に下げるには1剤では難しいので,2剤で治療しましょう」などと話をしています。

しかし,なかにはなかなかHbA1cが10.0%を下回らない方もいらっしゃいます。そのようなときは,説明に終始するのではなく,あらためて患者さんの想いを確認し,われわれがどのように介入すべきかについてスタッフで再検討を行います。

そこでは看護師が,糖尿病の否定的認知を整理するためのDNC 尺度(Diabetes Negative Cognition Scale)を用いて,患者さんの感情的な負担は何か,その負担を軽減するにはどうすべきかを一緒に考えていきます。また,糖尿病関連の心理負担度を評価するPAID(Problem Areas In Diabetes)を用い,現在の介入の方法が適切かなども見直します。

*論文表記は6.5%(JDS)

感情・心理面へのアプローチも重要ということですね。

清野 食事療法でも運動療法でも,患者さんは,病気に対する否定的な感情があると行動には移せないものです。以前,たまたま空港で,人前で手際よくインスリン注射を打っている方を見かけました。糖尿病と潔く向き合う姿に感服したものですが,指導がうまく行かない方は感情的な問題や心の負担が大きいのかもしれません。

なかには,「自分の生活習慣が悪かったために糖尿病になった」などと自責の念が強い患者さんもいらっしゃ ます。病気に対する否定的感情が強く,「恥ずかしい」「他人に知られたくない」「薬を使うことに抵抗がある」という方には,DNC尺度やPAIDなどのツールを用いて,認知のゆがみを少しずつ解きほぐしていきます。

また,患者さんの感情面へのアプローチという点では,患者さんにとって"大切な存在"の力を借りることも有用です。以前,75歳の男性患者さんで,脳梗塞で入院中,回診のたびにインスリン療法の導入を提案してもなかなか首を縦に振らない方がいらっしゃいました。 ところが,3歳くらいの可愛いお孫さんがお見舞いに来られていたので,「お孫さんのためにもインスリンを打って,元気で長生きしましょう」と話をすると,一晩,いろいろ考えられたのでしょう。翌日,明るい顔で「先生,インスリンやるよ」と言ってくださいました。

血糖コントロールの指導においては,未来志向的な会話をすることが大切です。患者さんの過去の失敗を問うのではなく,「今後よくしていくにはどうしましょうか」といった質問を重ね,"これからでも血糖値が改善できる"という前提で指導を行うことが重要だと思います。

療養指導室では,看護師が糖尿病全般や合併症などのテーマで療養指導を行う. 実際にフットケアを行いながら説明を行うことも.

地域における糖尿病の合併症対策

郡山市は腎臓専門医も非常に少ないとお聞きしました。連携はどのような状況ですか。

清野 糖尿病専門医も決して多くはない状況ですが,腎臓専門医は,太田西ノ内総合病院に2名しかいません。そのため,当院にも,近隣内科から糖尿病性腎症の3期(顕性腎症期)の患者さんなどが紹介されてくることがあり,いったん私のほうで診てから,最終的には腎臓専門医に紹介して併診するようにしています。

将来的に透析導入のリスクが高いのは,蛋白尿が出ている場合です。当院では受診時に毎回,尿検査を行い,腎機能や尿中アルブミン量の結果を把握しています。そこから経過をみて,糖尿病性腎症2期(早期腎症期)なら,患者さんには看護師と一緒に,これ以上悪化させないためにはどうすればよいか考えていただき,尿蛋白3+,eGFR<45なら太田西ノ内病院(腎臓専門医)に紹介しています。

また,糖尿病の罹病期間が約20年と長く,血糖値が悪化していれば糖尿病性腎症を疑いますが,糖尿病罹病期間が5年以内で,糖尿病網膜症を認めない,微量アルブミン尿が陰性,eGFRが60mL/分/1.73 m2未満,血清クレアチニンが1.3 mg/dL以上などの場合は,他の腎疾患を疑う必要があります。

高血圧の罹病期間が長期で微量アルブミン尿陰性の場合は腎硬化症,血尿があって蛋白尿が軽度の場合は糸球体腎炎が疑われるため,腎臓専門医へ紹介し,腎生検を行ってもらいます。糸球体腎炎,特殊な血管炎,ANCA(anti - neutrophil cytoplasmic antibody:抗好中球細胞質抗体)関連腎炎,膠原病からくる慢性腎臓病などもあるので,腎臓専門医との連携は非常に重要です。

また,eGFRが45mL/min/1.73m2以上の段階で紹介しておけば,定期的に腎臓専門医に診ていただくことで,透析導入になる場合でも導入のタイミングについて適切な提案を受けることができます。緊急透析を回避することができ,大変助かっています。

糖尿病性腎症重症化予防プログラムの取り組みは,どのように受けとめていらっしゃいますか。

清野 糖尿病や腎臓病の専門医が少ない状況で,重症化するリスクの高い患者さんをいかに早期に発見し,合併 症の進展を抑制するか,糖尿病性腎症については腎不全,人工透析への移行を防止できるかは,郡山市に限らず全国的な課題といえます。

こうした取り組みを体系的に行うことを目指し,現在,国のレベルで糖尿病性腎症重症化予防プログラムの普及が進められています。私も,福島県の重症化予防プログラムに関与していますが,そのなかで感じるのは,自治体によって進捗スピードに違いが生じている点です。

要因はいろいろあると思いますが,こうした取り組みにおいては,やはり行政の力が欠かせないと痛感しています。糖尿病専門医がイニシアチブをとって連携を強化しようとすると,地域のかかりつけ医の先生方は,自院の患者さんが戻ってこなくなるのではないかと心配になるようです。そうしますと,われわれも立場的に,連携推進を言いづらい状況になってしまいます。

重症化予防プログラムでは,行政の役割として,地域の医療機関における連携体制のあり方や,医師会等関係団体との協議に関する対策を立案することと定められています。連携システムのなかで,専門医が3ヵ月,あるいは6ヵ月診療したら紹介元にお返しする,あるいは腎臓専門医が3~4ヵ月に1回併診をしていくと明言していれば,かかりつけ医の先生方も安心だと思いますし,地域における取り組みもより円滑に進むのではないでしょうか。

クリニックでの専門診療が拡がることも必要ではないでしょうか。

清野 糖尿病の専門診療の裾野を広げる意味で,現在,日本医師会,日本糖尿病学会,日本糖尿病協会の三者が協同で設立した日本糖尿病対策推進会議の活動の一環として,登録医・療養指導医制度が整備されています。

この制度では,糖尿病が専門でなくても,多くの患者さんを診ている先生や糖尿病に関心をお持ちの先生であれば,登録後,受講など一定要件を満たせば日本糖尿病協会のデータベースで糖尿病に詳しい施設として検索対象となります。

実際に,それを受診の参考にされる患者さんも増えてきているようです。こうした新たなシステムの構築も,糖尿病専門診療のレベルアップにつながるのではないかと期待しています。

日本糖尿病療養指導士,福島県糖尿病療養指導士をはじめ,糖尿病の療養指導に精通したスタッフが充実. 患者さんの気持ちに寄り添いながら,チームで一体となって患者さんの日常生活をサポートする.

References

  1. 1.厚生労働省. 平成29年(2017)人口動態統計月報年計(概数)の概況.
  2. 2.Ohkubo Y, et al. Diabetes Res Clin Pract. 1995 ; 28 : 103 -17.

KK-19-09-26600

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