KYOWA KIRIN

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医療法人 牧野医院[透析施設最前線]

2017年02月27日登載/2017年02月作成

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病院外観
  • ●院長:牧野 順一 先生
  • ●開設:1976年9月1日
  • ●所在地:佐賀県佐賀市日の出1-14-26

より良い透析を目指し全員参加型で改善重ねる
超高齢社会を見据え在宅サービスも視野に

1976年の開業以来、泌尿器科外来診療と人工透析に取り組んできた牧野医院。2000年に牧野順一院長が就任してからは大規模な増改築を行うとともに院内の情報管理システムの構築などに力を入れた。また、透析医療においては、比較的早期から長時間透析、エコーガイド下穿刺、オンラインHDFなどを導入。さらに近年は透析中の運動療法にも着手するなど、透析の質向上を目指し、常に新しいチャレンジを続けている。

目次

  1. 医院の概要と透析医療

    泌尿器科診療所として開業して40年
    早期からオンラインHDF、長時間透析に取り組む

  2. 透析室の概要

    曲線を活かした快適な空間
    豊富な人員配置で待ち時間を短縮

  3. 組織運営

    院内の機能を16の部門・委員会に分類
    全員参加型の運営で組織を活性化

  4. PDCAサイクル

    ISO9001認証取得をきっかけに改善活動が定着
    「課題解決シート」の活用でさらに成長

  5. 情報管理と活用

    独自のシステムで各種データを一元管理
    外出先でも院内同様の活用が可能

  6. エコーの活用

    エコーガイド下穿刺で誤穿刺が大きく減少
    心エコー、腹部エコーで健康管理

  7. 運動療法

    透析中の運動療法とマシントレーニングを開始
    データを重ねエビデンスを示すのも目標

  8. 合併症対策

    ポリグラフ検査、体組成検査、
    心電図検査を定期的に実施

  9. フットケア

    5年前からフットチェックを継続
    ケアの頻度はABI値を指標に設定

  10. 透析食

    調味料の工夫でおいしさアップ
    管理栄養士の資格を持つ看護師による栄養指導も好評

  11. 高齢者対策

    「介護連携部門」を窓口に高齢患者の訪問を開始
    透析患者OKの施設の掘り起こしにも着手

  12. 災害対策・安全管理

    備蓄と訓練で災害に備える
    ミスを前提にチェック体制強化を図る

  13. 患者会

    牧野医院腎友会を中心に患者と交流
    40周年記念行事をも合同開催

  14. 今後の課題・展望

    超高齢社会と向き合うべく
    地域連携や患者指導を強化

1. 医院の概要と透析医療 泌尿器科診療所として開業して40年
早期からオンラインHDF、長時間透析に取り組む

牧野 順一 院長

 牧野医院は1976年9月に泌尿器科診療所として開院、1991年には医療法人になった。牧野順一院長が2000年に就任してからは大規模な増改築を実施した。入院ベッドは最も多かった時期で16床あったが、現在は2床となっている。開業時から人工透析を行っており、腹膜透析や入院透析を行っていた時期もあったが、いまではほぼ外来血液透析に絞られている。入院透析が減った背景には、運動を推奨するなど通院できる状態の維持を目指してきた同院の姿勢がある。

 同院のスタッフは、常勤医が牧野院長1名で、ほかに佐賀大学に籍を置く非常勤医が1名勤務している。看護師は27名、臨床工学技士は6名、看護助手は6名、事務スタッフは6名である。

 牧野院長は同院の透析医療の特徴として、オンラインHDF(Hemodiafiltration:血液透析濾過)に早期から着手し診療報酬で評価される前の2007年から現在まで継続して多くの患者に行っていること、長時間透析を実践していることなどを挙げる。透析患者は2016年11月現在163名で、そのおよそ半数がオンラインHDFを実施。透析時間は4~6時間と幅があり、内訳は4時間の人が3割強、4時間半の人が約4割、残り3割弱が5~6時間だ。ほかに例外的に8時間の人が1名。全体の平均は4.6時間となっている。

 透析患者の診療においてエコーを多用しているのも特徴の1つで、エコーガイド下穿刺の導入によって誤穿刺を大幅に減らすことに成功しているほか、心エコー、頸部エコー、腹部エコーの活用により、合併症の早期発見や予防に努めている。

 シャントトラブルについてはほぼ100%院内で、PTA(Percutaneous Transluminal Angioplasty:経皮的血管形成術)により対応している。ごく稀に手術が必要なケースが発生すれば外部に委託する。牧野院長のPTA実施件数は年間50~60件である。

 医院全体の特徴としては、IT化の推進や、院内の機能を16の部門・委員会に分割し、それぞれに少人数のスタッフを配置して全員参加型の組織運営を行っていることなどがある。人材育成にも熱心で、学会やセミナーへの参加は医院側が全面的に支援。発表に関しては報奨金制度もある。

2. 透析室の概要 曲線を活かした快適な空間
豊富な人員配置で待ち時間を短縮

 牧野医院は2階建てで、上から見ると扇形と長方形をつなげたような形をしている。透析室は扇形部分の2階にあり、透析ベッドも建物に沿って弧を描くように並ぶ。透析ベッドは51床。うち1床は緊急用として確保し、2床は隔離透析室(陰圧室)に配備している。これら3床には個人用透析装置が備えられている。

 同院ではこうした基本的な透析装置のほかに関連機器も積極的に導入・活用しており、たとえば、通常のモニタリングでは十分でない患者のために、光学的にヘマトクリットや酸素飽和度を測定するクリットラインモニターや、VA(Vascular Access:バスキュラーアクセス)の血流量を測定する透析モニターHD02、ドライウエイト設定の指標として役立つ体組成計測装置BCMなどがある。

 快適な環境づくりにも配慮されており、ベッド間は比較的広く、間接照明や室温が偏らない空調を完備。さらに透析時間を有効に使えるように、全ベッドに液晶12型タッチパネル式モニター、DVD付きのパソコンなどを配備している。室内にはDVDレンタルコーナーもあり、約400本を揃えている。

 透析スケジュールは、月・水・金が午前・午後・夜間の3クール、火・木・土が午前のみのワンクールだ。あえて3クールと1クールに分けているのには、業務の効率化や職員の福利厚生の意味合いもあり、「長時間拘束する日もある一方で早く帰れる日もあるので、時間を有効に使えると思います」と院長が言う。

井手 敏裕 副院長

 人員配置は、月・水・金の日勤帯(8:00~)が22名、夜勤帯(15:00~)が7名、火・木・土の日勤帯が17名である。この人数の中には、臨床工学技士が日勤帯で4名、夜勤帯で1名含まれる。看護師は1名につき患者7~8名を担当する受持ち制をしいているが、透析時間中はこれに関係なく患者のケアにあたる。受け持ちとしては各種相談や病状の経過管理など透析中のケア以外のところで深くかかわる仕組みだ。

 「ベッド数の割に人員が豊富なのは、ベッドを効率的に使用するためであり、これが結果的に患者さんの待ち時間を短縮することにつながっています。特に月・水・金は各ベッドで1日3クール行いますので、毎回20分程度の準備時間で透析開始できるようにしています」と説明するのは、井手敏裕副院長だ。
 井手副院長は看護師と臨床工学技士のダブルライセンスを持ち、2001年に牧野医院に入職。翌2002年に透析室室長となり、さらにその翌年の2003年に副院長を任された。

3. 組織運営 院内の機能を16の部門・委員会に分類
全員参加型の運営で組織を活性化

立部 辰徳 看護主任

柳田 奈美 看護主任

松尾 一隆 看護師主任

中田 祐輔 臨床工学技士主任

 牧野医院の組織は院長をトップに、ナンバーツーとして副院長と事務長が並ぶ。この3名がいわゆる幹部。さらにその下に4名並ぶのが現場のリーダーで、立部辰徳看護主任、柳田奈美看護主任、松尾一隆看護主任、中田祐輔臨床工学技士主任である。

 組織全体は、16の部門・委員会に細かく分けられており、上記4名のリーダーが手分けをして統括している。16の部門・委員会は、大きく教育系と業務系に分類することができ、すべての職員がこの2つの系統の部門・委員会に1つずつ所属して役割を担うことになっている。

 たとえば、松尾看護主任が担当する部門・委員会は、監視システム管理や消耗品管理など主に5つの業務を担う「透析部門A」、書類管理や送迎管理など4つの業務を担う「透析部門B」、「運動療法部門」、「感染対策委員会」の4つで、それぞれに部門・委員会委員長がいて、さらに必要に応じて副委員長も置き、細かく分類した業務それぞれに担当者を1~3名配属している。

 ほかの部門・委員会もほぼ同様の構成で、立部看護主任は「介護関連部門」「教育委員会」「記録委員会」「スタッフ支援委員会」を、柳田看護主任は「フットケア部門」「外来部門」「病棟部門」を、中田臨床工学技士は、「医療安全委員会」「検査管理部門」「SE部門」「ME部門」をそれぞれ束ねている。16のうち「事務部門」だけは事務長直轄で4名が所属し、事務全般を担っている。

 「組織を16に分けたのは2016年度からで、2015年度に経営コンサルタントを入れ、『やりがいある職場環境造りとより良いコミュニケーションが図れる職場風土の構築』を目的に、リーダー研修を実施したり、業務改善委員会を発足したりとさまざまな取り組みを行ってきました。1年間の活動後に成果発表会を行い、それを受けて再構築したのが現在の組織です」と井手副院長。

 2015年のコンサルティング内容には、管理者とスタッフのより良い関係性の構築も盛り込まれており、トップダウンではなく、現場が主体的に動く組織を目指している。こうした組織づくりを進めるための管理者の行動のキーワードは、「承認、感謝、信じる、コミュニケーション」。副院長は、「私たち幹部はこのキーワードを常に意識し、実践するよう心がけています」と語る。

 こうした活動はサーバントリーダーシップ(「リーダーである人は、まず相手に奉仕し、その後相手を導くものである」というリーダーシップ哲学)に根ざしており、牧野院長は、「意思決定権が院長に集中していたのでは、現場は活性化しません。今回の組織改編によって各スタッフがのびのびと活躍できる職場が実現できるよう、私も努力したいと思います」と語る。

4. PDCAサイクル ISO9001認証取得をきっかけに改善活動が定着
「課題解決シート」の活用でさらに成長

 こうした組織運営につながる活動としては、ISO9001の認証取得(2006年1月)を目指した取り組みがある。このとき品質マニュアルと各種業務手順書を作成し、問題が起これば手順書を見直して再発防止を図るというサイクルを回すようになった。その後数年間、更新を重ねたことでISOの基本であるPDCA(Plan-Do-Check-Act:計画-実行-評価-改善)サイクルの概念や考え方が定着。現在は認証の更新をしていないが、是正処置報告や予防処置報告は継続して行っている。

 松尾看護主任によれば、現在、牧野医院をより良くしていくためのツールとして最も活用されているのは、やはり経営コンサルタントから伝授された「課題解決シート」だ。A4判横1枚のシートで、「現状の問題点」「解決策」「未来像」の3項目からなり、記名式で提出する形式になっている。

 「やっていることはPDCAサイクルと同じなのですが、PDCAという言葉よりも、課題解決シートを提示するほうが職員の受け入れが格段に良かったのです。問題点を見つけたら、まずはどうありたいかという未来像を設定し、そのための解決策を考えるのが基本なので、単に目の前の問題を解決するだけでなく、解決することによって理想に近づけるのが利点です」(松尾看護主任)

 上がってくる「現状の問題点」は、「新患の管理ができていない」といった透析室の運営の基本にかかわることから、「記録紙が切れた」といったピンポイントの問題、「輸液ポンプがじゃまで掃除しにくい」といった助手からの報告など多様。これらの指摘に一つひとつ対応していくことが施設や組織全体の改善や成長につながっている。

課題解決シート(フォーマット)

図 課題解決シート(フォーマット)

5. 情報管理と活用 独自のシステムで各種データを一元管理
外出先でも院内同様の活用が可能

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サーバ室。SEが管理している

牧野医院では、院長が医療情報の電子化に力を入れてきたこともあり、さまざまな情報を一元管理するシステム環境が構築されている。院内には大容量のハードディスクを備えたサーバールームがあり、デスクトップパソコンとノートパソコンが各29台、合計58台が稼働。「入力作業などでパソコンの順番待ちになるようなことはまずありません」と、井手副院長が言う。

 自らシステム開発を行った牧野院長は、「電子カルテとしては日本外来小児科学会が公開している『ANNYYS』を採用し、データベースソフトウェアである『FileMaker』を用いて独自のシステムを確立しています。FileMakerはJMS社製透析支援システム『ERGOTRI』と連動させていますので、透析条件や各種検査データなどを自動的に取り込み管理することができます。こうしておくと、データのグラフ化などが容易にできますし、また、データの見落としがなく、一度に多くの患者さんのデータを確認できるなど利点が多いのです」と説明する。

 昨年から取り組みはじめた透析中の運動療法(後述)をより安全に実施するための設定や、成果の確認も、蓄積されているデータを活用することで適正に行うことができるという。

 さらに牧野院長は、血圧低下などの異常時には、それを知らせるメールがFileMakerから自動的に院長のスマートフォンに送信される機能も付加した。「私のスマホは、院内のシステムとまったく同じ情報が得られる設定になっています。ですので、院外にいても、たとえ海外にいても院内にいるのと同様の判断が可能です」と、院長がその便利さを強調する。

6. エコーの活用 エコーガイド下穿刺で誤穿刺が大きく減少
心エコー、腹部エコーで健康管理

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透析室中央の作業台に並ぶ最新型のポータブルエコー

 ここからは、いくつかの特徴的な取り組みについて紹介していく。
 まずはエコーガイド下穿刺で、2008年頃から牧野院長が行うようになり、その後、スタッフを指導した結果、いまではほとんどのスタッフが自立してエコーガイド下穿刺を行えるようになっている。現在までにハンディエコーを10台、透析室内に配備し、積極的に活用している。誤穿刺はエコー導入前の2.5%に対し、いまは1%以下まで減っている。

 また、エコーは穿刺だけでなく、評価目的でも用いており、透析中に何かトラブルがあったときにハンディエコーで素早く状態をチェックし、適切な対応を行う。牧野院長は、「何かトラブルが生じたときに、その原因を明らかにすると次のトラブルを予防できます。エコーはこうした意味でも重要です」と話す。

 院長は、各種エコー検査も透析患者の管理には有効と考えており、特に心エコー検査は定期的に実施し、心血管系の合併症の早期発見に活かしている。また、必要に応じて甲状腺機能を計るために頸部エコーも実施。腹部エコーも主にC型肝炎患者の管理のために行っているが、こちらは外部の連携病院に委託している。

7. 運動療法 透析中の運動療法とマシントレーニングを開始
データを重ねエビデンスを示すのも目標

 透析中の運動療法は、2015年に本格的に着手した。透析ベッドにエルゴメーターやゴムバンドを予め備え付けておき、それを利用する患者が来院したときには使用できる状態にセットして、見本の動画を配信する。運動の順序は、(1)準備運動としてのストレッチ、(2)ゴムバンドによる筋力アップ、(3)エルゴメーター、(4)整理運動としてのストレッチ。透析中の運動療法は希望者が対象で、現在は約20名が参加。より安全に行うため、院長の指示で事前に全員がCPX(Cardiopulmonary Exercise Test:心肺運動負荷試験)を行っている。運動療法を希望し、検査待ちをしている患者がすでに10名控えている。

 また、高齢者筋力向上トレーニングマシンとしてウェルトニックシリーズを導入し、透析室とは別の部屋に設置している。松尾看護主任はこれについて、「外来透析を実施している月曜~土曜に、患者さんに自主的に使っていただいています。ただし、トレーニング希望者は事前に各種検査を行って、適正な負荷を設定して患者さんそれぞれにお渡しするカードに入力してありますので、そのカードをセットすれば、その人に合った負荷がかかります。さらに、実施した運動と運動時のデータも自動的にカードに記録されます。こうした記録はスタッフが確認し患者さんにフィードバックしますので、継続して運動するモチベーションの維持につながっていると思います」と説明する。

 同院にはPT、OTといったリハビリ専門職はいないが、看護師を中心に、また多彩な機器をうまく利用しながら、積極的に運動療法に取り組んでいる。今後も継続して筋力の変化などのデータを蓄積し、成果がまとまれば学会などで発信していく考えだ。

8. 合併症対策 ポリグラフ検査、体組成検査、
心電図検査を定期的に実施

 牧野医院の透析患者は、新患として来院したときに、ASO(ArterioSclerosis Obliterans:閉塞性動脈硬化症)などのチェックに有効なポリグラフ検査、ドライウエイトの指標の1つである体組成検査、心電図検査を必ず行う。そしてこれらはそれぞれ年に2回、4回、2回の頻度で定期的に実施し、異常が見つかれば専門の医療機関に紹介することもある。
 採血のスパンは月1回、特に貧血の検査は月2回行っている。定期検査は毎週末に2、3名ずつ行い、担当者に過剰な負担がかからないようにしている。

 前述した通り、医療情報をすべて電子化して一元管理していることは、こうした検査結果を活かす意味でも有効で、たとえば検査値はすべてグラフ化し、経時的な変化を重視するようにしている。すると、年単位で少しずつ低下しているケースなどが見つかりやすく、その後の予測もたてやすいので、悪化する前の対応が可能になるという。

9. フットケア 5年前からフットチェックを継続
ケアの頻度はABI値を指標に設定

 フットケアは、「異常の早期発見と下肢切断ゼロ」を目的に実施している。前述したポリグラフ検査や、ABI(Ankle Brachial Index:足関節上腕血圧比)測定などを足病変の早期発見のために行っている。ABI値は、フットケアの頻度を決める指標としても用いており、状態に応じて1カ月、3カ月、6カ月、1年に設定している。

 5年ほど前に立ち上がった「フットケア部門」を統括する柳田看護主任によると、このフットケア部門ができて以来、専用のチェックシートを用いたフットチェックを行っている。
 「チェック項目は大きく分けて皮膚、爪、知覚、変形、血流です。また、患者さんが普段履かれている靴や、足の手入れの方法なども確認し、必要に応じて改善をアドバイスしています。最近は、巻き爪、足白癬、タコなどの見られる患者さんも増えているので、そうしたもののケアも積極的に行っています」
 リスクの高い人のチェック項目は増やし、低い人については簡易チェックに留めるなどの工夫もしている。フットチェックやケアは基本的に透析中に、ベッドサイドで行う仕組みだ。

10. 透析食 調味料の工夫でおいしさアップ
管理栄養士の資格を持つ看護師による栄養指導も好評

 牧野医院の透析食は「おいしい」と評判で、全透析患者の半数以上にあたる88名が利用している。日中透析の人には透析前後に提供し、透析室に隣接する食堂・談話室で食べてもらう。夜間透析の人については、透析中にベッド上で食べてもらうのが基本だ。

 柳田看護主任は、「塩分、カリウム、リンなどの栄養管理を栄養科で行っています。少しでもおいしく召し上がっていただけるように、特に調味料を工夫して、できるだけ味を濃く感じるように作っています。寒い時期には透析患者さんが普段あまり召し上がれない温かい汁物を提供することもあります」と紹介。ほかにも、季節の食材の活用、患者のリクエストに応えたメニュー設定なども行っているという。

 栄養指導は、新規の患者と家族を対象に行ったり、患者会(後述)と合同で行う勉強会や調理実習を通して行ったりしている。同院の管理栄養士が外部のイベントなどに参加して栄養指導を行うこともある。
 「もう1つの特徴として、管理栄養士の資格を持つ看護師の存在があります」と柳田看護師。この看護師は、透析中の患者に栄養に関する説明や指導を行うなど、その資格を発揮している。

11. 高齢者対策 「介護連携部門」を窓口に高齢患者の訪問を開始
透析患者OKの施設の掘り起こしにも着手

 前述の通り同院では看護師による患者受持ち制で、成人期から高齢期の患者を透析室でサポートしてきたが、「これだけでは対応しきれないケースが目立つようになりました」と立部看護主任が言う。
 特に高齢患者への対応に関して、看護師個人の考えやスキルによってばらつきが大きくなったことを問題視した立部看護主任は院長に提案し、2015年に「介護連携部門」を立ち上げ、高齢患者の自宅訪問、施設訪問を行うようになった。ここでは生活状況や生活の中での困りごと、今後についての希望の確認などを行っている。

 一方で、地域の施設の個別調査も継続しており、透析を受けている高齢者でも受け入れてもらえる施設をピックアップしている。これはゼロではないが少ない状況。そこで患者の受け入れの可否に関係なく、施設の職員や地域のケアマネジャーに声をかけて情報交換を行う機会をつくった。テーマは「地域の透析患者様の現状と今後について」で、牧野医院側からさまざまな情報提供を行うことで、透析患者を受け入れてくれる施設を増やす意図もある。「具体的な患者さんについて話し合った結果、受け入れに至ったケースも出てきています」と立部看護主任。「まだ始まったばかりで、小さな一歩ですが、将来的には地域全体を巻き込んだ連携づくりにつなげていきたいと思います」と意欲を見せる。

12. 災害対策・安全管理 備蓄と訓練で災害に備える
ミスを前提にチェック体制強化を図る

 災害対策については、「いつどこで何が起こるかわからない」という意識を常に持ち、資材の備蓄や、ハード面の整備を進めている。中田臨床工学技士主任によれば、有事に備えた備蓄は約3週間分。ほかに自家発電の設備や、停電時の使用を想定したランタンなどもある。水はワンクール分を常に確保してあり、それ以上必要な場合は自治体などの給水を利用する方針だ。

 また、避難の必要が生じたときに自立歩行が困難な人が逃げやすいように、車いすに乗って階段を昇降できる非常用階段避難車スキッドも購入した。この機械は職員全員が体験しており、いざというときに操作する準備も整えている。
 「災害対策に関する情報は関連学会やセミナーなどに参加することで得ています。それらをふまえて院内の会議で地震や火災などの災害シミュレーションを行い、必要と判断された設備を揃え、訓練を行うというのが当院での災害対策の流れです」と中田臨床工学技士主任は言う。

 九州では周知の通り、2016年4月14日、最大震度7を観測する熊本地震が発生し、大きな被害が出た。牧野医院は被災さえ免れたものの、熊本地震の衝撃は大きく、あらためて災害への意識を高めるきっかけになったという。松尾看護主任が「あれ以来、当院ではしばらくの間、地震対策の話題が尽きず、頻繁に会議を開いて設備・備品から連絡体制まで見直しを行いました」と、身近に起きた災害を機に危機意識が強化された様子を語る。

 一方、日頃の医療安全については、「人間は必ずミスをするという認識のもとでのルールづくりと気づきが大事」(中田臨床工学技士主任)と言い、チェック体制の強化に力を入れている。さらにチェックがルーチン化することで見方が甘くなることを防ぐ対策も講じようと、そのための会議も立ち上げている。

13. 患者会 牧野医院腎友会を中心に患者と交流
40周年記念行事をも合同開催

 患者との交流は、開院当時から組織している患者会、「牧野医院腎友会」を中心に行っている。同院の患者の約7割がこの会に入っており、年1回の総会、旅行などをはじめ、国会への嘆願などにも取り組んでいる。
 言うまでもなく牧野医院と牧野医院腎友会とはまったく別の組織であるが、2016年にともに40周年を迎えたことから、その記念企画を共同で行うことになり、10月に市内の体育館を借りてスポーツレクリェーション大会を開催した。牧野医院の職員も30名弱が参加し、総勢90名の大きな会になった。

 「高齢の方や障がいのある方でも楽しめるニュースポーツを、学生ボランティアのサポートを受けて行いました。競技中はもちろん、お弁当の時間なども職員と患者さんが一緒に過ごすことで、日頃はできないお話をしたりできました」と松尾看護主任が成果を語る。
 地域の腎友会の現在の会長、事務局担当者がたまたま牧野医院の患者ということもあって、こうした行事は比較的活発だという。

14. 今後の課題・展望 超高齢社会と向き合うべく
地域連携や患者指導を強化

 今後について井手副院長は、「透析そのものよりも、老老介護や外出困難など、ますます進む高齢化にまつわる問題が増幅していくと思います。ですので、地域の介護施設との連携や、高齢化に伴う身体機能低下を補完するシステムの強化が大きな課題になっています。大事なのは、私たちの取り組みや地域のあり方を高齢化に合わせて変えていくということ。高齢化対策はどうしても後手に回りがちですが、さまざまな社会資源と協力して対応していきたいと思っています」と話す。

 牧野院長は、「透析患者さんに長く元気でいていただくためには、つまるところ、質の高い透析を継続し、食事や運動など生活面の改善を行っていくのが基本だと思います。私たちは引き続き透析医療の向上に努力すると同時に、患者さんへの啓発活動にもっと力を入れていきたいと思っています」と、超高齢社会と向き合うためにも基本に立ち返り、地道な努力を重ねていく姿勢を語る。

KK-17-02-17486

透析施設最前線

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