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聖マリアンナ医科大学病院
[透析施設最前線]

2019年12月25日登載/2019年12月作成

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病院外観
  • ●病院長:北川 博昭 先生
  • ●開設:1974年2月
  • ●所在地:神奈川県川崎市宮前区菅生2-16-1

慢性腎臓病教育入院や腎臓リハビリで予後を改善
超高齢社会における慢性腎臓病診療のあり方を提言

特定機能病院として高度医療の提供、新薬の開発、医療人の育成などに力を注ぐ聖マリアンナ医科大学病院。慢性腎臓病診療においては、初期から末期まで全ステージの患者を対象とし、必要に応じて腎生検などの検査を実施。腎代替療法導入に際しては、血液透析、在宅血液透析、腹膜透析、腎移植のすべてに対応している。近年は、慢性腎臓病教育入院や腎臓病患者へのウォーキング教室などを推進し、予後の改善など成果を上げている。

1. 腎臓・高血圧内科の概要 すべての腎代替療法に対応しつつ
より早期の介入にも力を入れる

柴垣 有吾
教授/腎臓・高血圧内科部長/腎臓病センター長

櫻田 勉
准教授/腎臓・高血圧内科副部長/腎臓病センター副センター長

「生命の尊厳を重んじ、病める人を癒す、愛ある医療を提供します」を理念とし、1974年の開設以来、臨床、教育、研究に力を注いできた聖マリアンナ医科大学病院。31の診療科に加え、疾患別治療センターを中心に21の診療施設を持つ。ベッド数は1,175床。年間の入院患者数は2017年度実績で31万2,457人、同じく外来患者数は60万1,767人という規模である。

透析をはじめとした慢性腎臓病診療を担当するのは、腎臓・高血圧内科医と腎泌尿器外科医が協同運営する腎臓病センターである。その方針や特徴を、教授で同センターのセンター長でもある柴垣有吾腎臓・高血圧内科部長が次のように紹介する。

「慢性腎臓病患者さんが、それぞれの生活に合った治療法を自ら選択できる、ということをとても大事にしています。慢性腎臓病は一生付き合っていく病気ですから、治療そのものの良し悪しだけでなく、治療を受けた後、あるいは受けながら、残りの人生をいかにより良く過ごせるかが重要だと考えているからです。日本では現在、末期腎不全患者さんの約90%が施設での血液透析(HD)を受けておられ、在宅血液透析(HHD)、腹膜透析(PD)、腎移植といったほかの選択肢は、合わせても10%いくかいかないかというのが現状ですが、私たちは、どの治療法にも偏ることなく、医学的検討と説明を十分に行い、患者さんの希望に沿った治療を提供するようにしています」

柴垣部長は日本臨床腎移植学会認定医、日本移植学会認定医であり、腎移植を1つの専門分野としている。また、教授とともに仕事をしている櫻田勉同科副部長(准教授、腎臓病センター副センター長)は、PDやHHDといった透析医療に精通している。柴垣部長、櫻田副部長の指導のもと、多数の講師、助教、医員などが、前述したような幅広い慢性腎臓病診療を展開している。

HDについては導入基幹病院として年間70〜100名の導入を行なっている。PD、HHDについては導入から継続して管理まで行っており、それぞれの患者数は現在、前者が約40名、後者が2名である。腎臓病センター内に透析室(血液浄化療法ユニット)があり、透析ベッドが16床並ぶ。PD外来専用ブースも同じ室内に2部屋設けられている。

柴垣部長は近年の課題として、高齢の腎不全患者を中心に目立ってきている身体機能や認知機能の低下、いわゆるフレイル対策の必要性を挙げる。

「私たちの研究では、血液透析導入時に身体機能の低下が見られた患者さんは、相対的に早く亡くなっていることがわかっています。この現状を漫然と見ていてはいけません。透析導入よりずっと以前から、身体機能、認知機能の評価を行い、適切な介入を行うこと、そのうえでご本人に最も適した腎代替療法を用いることで、予後の改善を目指す必要があります。そのためには腎臓病に関する患者さん自身のリテラシーを高めることも必要です」

こうした考えからチャレンジしているのが、教育入院や運動指導であり、すでに関連学会などで成果を報告し始めている。柴垣部長は、「エビデンスを示しながら、慢性腎臓病診療の新たなあり方を広く提言できればと思っています。それが慢性腎臓病患者さんのより良い人生につながることが願いです」と力説する。

2. 慢性腎臓病教育入院の実際 体験型の教育を多職種で支援
あくまで主眼は患者の変容

慢性腎臓病教育入院(以下、教育入院)は2011年1月より、櫻田副部長を中心に多職種がかかわって実施されている。入院期間は1週間で、水曜日に入院し、翌週の火曜日に退院というスケジュールだ。対象者は、外来主治医により教育入院が必要と判断され、本人の同意が得られた患者となっている。対象者のステージは、主にCKD重症度分類の3〜4を想定しているが、主治医の判断によってはこの限りではない。また、長く通院している患者に、時機を見て教育入院を提示することもあれば、他院から紹介されてきたばかりの人に、最初に教育入院をすすめることもある。これまでの8年間に教育入院を体験した患者はのべ約470人を数える。

「外来での十分な指導が難しい食事療法について、体験を通して学んでいただくのが大きなポイントです。また、薬剤師は薬の役割や作用についてくわしく説明しますし、理学療法士による運動指導などもあります。近年は、医師による講義も加わりました。近い将来、腎代替療法が必要となりそうな患者さんについては、選択肢として各種の療法の紹介をし、実際に透析の現場を見ていただいたり、PD患者さん、腎移植を経験した患者さんに会っていただいたりもしています」と、櫻田副部長が教育入院の概要を紹介する。

入院期間中には、心臓疾患や下肢の動脈硬化など合併症について精査し、それらがあれば治療・介入もする。ただし、あくまで主眼は、「入院を通して患者自身が自分の身体に対する理解を深め、その後の生活を改善できること」に置いている。

「慢性腎臓病患者に対する教育入院の仕組みを持つ病院は、私の知る範囲でも全国に80以上あります。ただしその中味はさまざまで、教育というより精密検査を主目的としているところも少なくないのが現状です。そこには、教育入院が診療報酬で評価されておらず、十分な人材が割けないという背景もあるのでしょう」と櫻田副部長。

そこで同院では、より教育的要素を強めるために、2019年9月より、入院前後に患者の理解度を測るテストを実施するようになった。疾患そのものに関する問題から、食事、薬、運動、生活に関する問題まで計20問、◯×形式で答えてもらう。ごく簡単な内容ではあるが、患者に入院の目的が教育であることをあらためて伝えるうえでも、入院の成果を見るうえでも重要なものと位置づけている。

テスト問題の作成などは、多職種からなる教育入院チームで議論しながら行っている。「患者さんへの指導について多職種で意見交換し、ご家族も含めてサポートしていくことは、外来診療の中だけでは現実的に困難です。教育入院というかたちを取ることでそれが可能になる。今後も内容をブラッシュアップしながら続けていきたいと思っています」と、柴垣部長も教育入院の仕組みや内容を高く評価している。

3. 教育入院の成果 慢性腎臓病の進行を有意に抑制
診療報酬上の評価に期待

櫻田副部長は、これまで教育入院を続けてきて気づいたこととして、「患者さんのバックグラウンドがくわしくわかることが、治療を続けるうえで非常に有用」と話す。身体の状態は検査でわかるが、その患者の家庭環境や経済状態、心理的状態、社会的立場などは、入院生活の中で多職種がかかわることでしだいに明らかになってくる。それによって必要な援助や投入すべき社会資源もわかってくる。このように入院生活によって見えてきたことを病棟担当医が整理し、外来の医師に伝えることで、退院後の外来診療のあり方もよい方向に変わってくるのだという。

入院による教育の成果については、対照群(外来で同様の指導をした場合)のデータを取れないため比較評価はできないが、腎機能の低下の速度が緩やかになるなど個人レベルでの改善は明確に出ている。また、ステージ5に入ってから透析導入となるまでの期間は、教育入院を受けなかった人に比べて受けた人は、平均して3カ月長くなっている。こうした効果が、教育入院を受けた時期が慢性腎臓病の初期でも、ステージがかなり進んでからでも同様であることもわかっている。

私たちの研究成果が他施設に波及し、将来的には学会主導で教育入院が推進される時代がくればと思います。そして、できるだけ早期に診療報酬で評価されることに期待しています」と櫻田副部長。柴垣部長も、「教育入院の推進には診療報酬での評価が不可欠です。報酬さえつけば活動は広がります。活動が広がれば腎代替療法の導入の予防、導入までの期間延長につながります。また、仮に導入となっても、まったく予防しなかった人よりも経過が良く、透析以外の時間を有意義に過ごせることが明らかになっています。このように患者さんがより良い人生を送れるようになることこそが、教育の本当の意義だと思います」と続ける。

4. 腎臓リハビリテーション 糖尿病性腎症患者の透析予防目的で着手
講義と実践で運動の意義を伝える

平木 幸治
理学療法士/リハビリテーションセンター技術課長補佐

同院では、慢性腎臓病患者をより元気に、という観点から、腎臓リハビリテーションにも力を入れている。腎臓リハビリは、腎臓・高血圧内科とリハビリテーションセンターとの協力のもとで実施されている。

リハビリテーションセンター技術課長補佐である平木幸治理学療法士(PT)によると、リハビリスタッフが腎臓リハビリにかかわるようになったのは2006年、糖尿病性腎症の外来が開設されたのとほぼ同時期で、すでに13年ほどの歴史がある。「糖尿病性腎症の患者さんが透析導入になるのを予防するために集学的治療をしようと、多職種が集まったときに私たちも参加したのが始まりです」と、平木PTが経緯を語る。

当時は、慢性腎臓病患者は運動を控えるべきという考え方が主流だったが、明確なエビデンスがなかったことから研究も含めて着手。慢性腎臓病患者の体力測定や、運動によって悪影響が出ないことの確認などをしながら、リハビリの方法を考えていったという。

「外来の慢性腎臓病患者さんの身体機能を測ってみると、握力、脚力、歩行速度、バランス機能など、すべての身体機能が、慢性腎臓病のステージが上がるごとに低下していくことがわかりました。特にステージ4、5の患者さんは本当に弱く、ADLも落ちていて、透析導入後の状態も思わしくないのは明白でした。そこで、保存期からなんとか身体機能の低下を防がなければと考え、集団指導、個別指導ともに実施するようになりました」と平木PT。

集団指導には講義形式と実践形式があり、前者は市民公開講座が主で、年に3回、大学の講堂で行っている。実践形式の指導の中心は、年に2回、5月と11月に開催している、「腎臓病・高血圧の方のためのウオーキング教室」である。これは、腎臓・高血圧内科の外来に通っている患者と家族、約30名を集め、多摩川河川敷を、休憩をはさみながら約1時間、歩数にして5,000歩前後歩くというもの。ウオーキング前には運動に関する講義も行う。「運動を始めたり、続けたりするきっかけになってくれればうれしい」と、柴垣部長も参加。ほかにも慢性腎臓病診療に携わる多職種が参加している。

広く一般の慢性腎臓病患者に、リハビリテーション室で行う個別指導は実施していないが、日常生活の中でなるべく運動をするように折に触れて指導している。また、研究目的で、特定の患者群に1年間にわたり有酸素運動やレジスタンス運動を指導、併行して体力測定を実施し、その効果を測った実績がある。

「有酸素運動は歩行が主で、歩数計を貸し出し、普段の歩数を1,000歩くらいずつ増やすよう指導しました。レジスタンス運動は、背伸び運動やスクワット運動など、特別な道具や場所がなくても自宅で簡単にできるメニューをプリントにまとめてお渡しし、自主的に行っていただきました。36名で開始して1年間続いた患者さんが28名、平均年齢は67歳。この研究により、日常生活の中での簡単な運動でも、継続することで筋力がアップし、腎機能も維持できることがわかりました」と平木PTが成果を語る。

こうした成果は、前述した教育入院に応用している。ポイントは、リハビリ職が筋力測定など身体機能の評価をしっかり行い、一人ひとりに適正な目標を設定すること。これにより患者のやる気が格段に変わってくるという。

5

リハビリテーションセンター。医師6名、PT20名、OT7名、ST4名が所属している

5. 今後の課題・展望 教育入院や腎リハの効果を立証し
多職種による活動を広めたい

来る2020年2月22、23日には、東京都新宿区のベルサール新宿グランドにて「第10回日本腎臓リハビリテーション学会学術集会」(日本腎臓リハビリテーション学会)が予定されており、柴垣部長はこの会長を、櫻田副部長は事務局長を、平木PTは副会長を務める。テーマは「多職種による腎リハで患者に希望と幸せを!」。ここには、「慢性腎臓病患者さんに、身体的、精神的健康を回復するだけでなく、家庭や社会にコミットし続け、人間らしく、サクセスフルに生きてほしい。そのためには医師だけでは不十分。あらゆる職種が参加して、多面的にサポートする必要がある」というメッセージがこめられている。柴垣部長、櫻田副部長と平木PTは、このことを広く呼びかけ、関係者のモチベーションアップにつなげたいと考えている。

慢性腎臓病診療に携わる大学病院としての課題は、今後も教育入院や腎臓リハビリテーションに経済的、人的投資を惜しまず、有用なデータを蓄積して発信することだという。「これらの効果を国に認めてもらえるように頑張りたい。これからも、患者さんに生きる価値を感じていただけるような慢性腎臓病診療のあり方を示していきたいと思います」と語る柴垣部長をリーダーに、腎臓・高血圧内科の挑戦は続く。

KK-19-11-27458

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