医療法人青藍会 大場内科クリニック
[透析施設最前線]
2021年1月27日公開/2021年1月作成

- ●病院長・院長:大場 正二 先生
- ●開設:2004年2月
- ●所在地:茨城県水戸市酒門町275-3
経験・技術を駆使して
「元気で長生きできる透析」を実践
地域連携を推進しCKD進行予防にも尽力
医療法人青藍会大場内科クリニックは2004年の開業以来、幅広くハイレベルな腎医療を提供し続けている有床診療所だ。「元気で長生きできる透析」を基本方針に掲げ、検査、診療、リハビリも含めて透析の質を追求。また、CKDについては食事や運動など生活指導に力を入れ、患者のモチベーションを上手に高めながら、進行予防において高い成果をあげている。さらに、増え続ける高齢透析患者などのニーズに応えるべく、近くデイケアセンターを備えた高齢者専用賃貸住宅を開設予定である。
1. クリニックの概要
専門医を複数擁する腎医療の専門機関
外来透析患者は333名まで増加

大場 正二 理事長・院長
大場内科クリニックは、JR常磐線水戸駅から車で10分ほどの場所にある。落ち着いたベージュ系の外観が周囲の環境によくなじんでいる。駐車場が非常に広く、通院患者の多さを感じさせる。事実、2004年の開業以来、外来透析患者は増え続け、2020年12月現在、333名が通院している。透析ベッドは94床。外来透析は週5クールで行い、「元気で長生きできる透析」の基本方針に則って、長時間透析(最大6時間)や夜間透析にも積極的に対応している。夜間透析の利用者は50名余りである。
一般外来も充実している。腎臓内科を中心に、慢性腎臓病(CKD)、高血圧、糖尿病、高コレステロール血症、高尿酸血症などを主に診ている。法人理事長であり、茨城県人工透析談話会副会長、全国有床診療所連絡協議会常任理事、いばらき腎臓財団評議員など数々の要職を務める大場正二院長は、日本腎臓学会評議員・専門医・指導医、日本透析医学会認定専門医・指導医、日本東洋医学会専門医、日本内科学会認定医などの資格を持ち、高い専門性を誇る。
大場院長のほかに3名いる常勤医のうち3名は同じく腎医療や透析医療の専門医で、院長とともに一般外来と透析医療を担当。もう1人の常勤医は循環器内科が専門で、外来診療に専従しつつ、透析患者の急変時対応なども担っている。また、さまざまな専門性を持つ非常勤医が十数名勤務しており、医師同士の意見交換や複数医師による診療を行うことで、医療の質を高めている。
X線16列マルチスライスCT、超音波診断装置(エコー)、X 線骨密度測定装置など検査診断機器も揃い、随時、最新型に切り替えている。近年はエコー下穿刺を推奨することで、穿刺の失敗をほぼゼロにすることに成功。また、透析患者に骨粗鬆症が目立つことから定期的に腰椎の骨量を測定し、骨密度の低下が見られる患者には薬物療法を行って、転倒・骨折予防につなげている。
入院ベッドが8床あり、透析患者の病状が悪化したときや、合併症を発症したときなどに自院で入院治療ができるのも大きな強みだ。これらのベッドは地域の基幹病院の後方施設の役割も果たしている。また、患者の希望に応じて終末期の入院を受け入れ、看取りも行っている。
腎移植に積極的な施設としても知られる。患者への正確な情報提供に努めつつ、基幹病院との密な連携によって多くの移植を実現している。透析導入前の腎移植や、夫婦間移植も増えている。同クリニックの患者で腎移植に至った患者は開業から15年間のトータルですでに50名を超える。
このほか管理栄養士と調理師によるおいしい透析食の提供、理学療法士(PT)、作業療法士(OT)による腎臓リハビリテーションへの取り組み(詳細は後述)、高齢者ケア、日本透析医学会教育関連施設としての活動なども、同クリニックの特長である。
法人としての基本理念は、「最新の医療技術・専門知識と豊富な経験を生かし、腎臓内科を中心とする質の高いクリニックを目指して」。2016年4月には同理念のもと茨城県行方市に分院として大場内科玉造クリニックをオープンした。こちらは透析ベッド34台で外来透析患者約115名が通院。グループ施設である「介護老人保健施設かすみがうら」と隣接し、協力して高齢の透析患者などをサポートしている。

2015年竣工の新棟の透析室

患者を見守るスタッフステーション

新棟透析室の待合室。イスにはソーシャルディスタンスのサインが

X線骨密度測定装置。骨密度は正確さを重視し腰椎で測定する

検査室に配備された超音波診断装置(エコー)

透析室には下穿刺用のエコーを2台配備している
2. コロナ禍での対応
PCR検査を7月から実施
陽性・陽性疑い患者の隔離用透析室も用意
大場院長は、「専門医療機関としてハイレベルな医療を提供すると同時に、地域に貢献することも当クリニックの大切な役割だと思っています」と語る。その一環として2020年の新型コロナウイルス感染症の流行に際しては、7月下旬から、院内でPCR検査ができる体制を構築した。スタッフや、患者、家族など関係者が新型コロナウイルスに感染していないかを迅速に確認することで、日々の診療や患者の移送をスムーズに行えるようにしたのである。
「ここでPCR検査をしているという情報が口コミで広がり、他の医療機関の患者さんからの検査依頼も舞い込むようになりました。また最近は、水戸市のPCR検査センターのフォローもしています。インフルエンザの流行期を迎え、国も検査体制の強化を図っています。当院でもできる限り国の方針にしたがい、協力していきたいと思っています」と大場院長が使命感をこめて語る。
コロナ対応としてはほかに、透析患者に陽性者、あるいは陽性の疑いが生じた場合を想定し、従来からある個室とは別に、隔離のための透析室を設けた。普段はスタッフの休憩室として使っている部屋に2台の透析ベッドを設置し、隔離できるようにしたのである。2020年10月現在までに透析患者に陽性者は出ていないが、しばらくはこの体制を維持する方針だ。

新型コロナウイルス対策で急遽設けた隔離用の透析室
3. 腎臓リハビリテーション
広々したリハ室にPT5名、OT1名を配置
外来リハ、訪問リハで腎不全患者を元気に
先にも触れた通り、大場内科クリニックでは腎臓リハビリテーション(以下、腎リハ)にも精力的に取り組んでいる。「運動は腎機能に良い影響を与える」と考え、腎リハがまだそれほど注目されていなかった頃からPTを採用して運動療法を提供。2015年6月にはリハビリテーション室を完備した新棟を新設し、さらに2017年4月からはPTを3名体制にして、本格的に取り組むようになった。リハビリスタッフはその後さらに増え、現在ではPT5名、OT1名の6名体制となっている。
腎リハに力を入れる理由について大場院長は、「高齢者の間では近年、フレイル(虚弱)やサルコペニア(筋量・筋力の低下)が問題になっていますが、年々高齢化するCKD患者さん、透析患者さんについてもまったく同じで、これらを予防することが、私たちが目指す"元気で長生きできる透析"につながるものと考えています。そのためには、積極的なトレーニングがとても大切ですから、当クリニックではリハビリ部門を充実させて、患者さんたちに安全に運動していただける環境を整えました」と説明する。
リハビリテーション室は開設からしばらくの間、あまり使われない期間があり、「ずっとこのままだったらどうしようと少し心配していました」と院長は言う。それが5年経ったいまでは利用者で溢れるほど活用されている。
「透析前、透析後、非透析日と、患者さんそれぞれの体調や体力に合わせて使っていただいています。また、通院での腎リハが難しい患者さんには訪問リハビリも提供しています。運動習慣が身についた患者さんは、以前とは歩く姿勢から変わってきます。そういう前例があるから、新しく来られた患者さんにも、運動すると足腰の状態が良くなると、はっきり言うことができます。患者さんが元気になっていく様子を見ることができるのは本当に幸せです」と、大場院長は満面の笑顔で語る。
PTの1人として腎リハに力を入れる須藤一樹リハビリテーション室副主任によると、同クリニックの腎リハの内容は、基本的には日本腎臓リハビリテーション学会のガイドラインに則っている。同学会が推奨する有酸素運動と筋トレを組み合わせて40分または60分のコースで行う患者が多く、そのほかにマッサージなどを個別に行っているという。
現在、外来で腎リハを行っている患者は35名ほどで、うち3~4割が透析患者だ。同じく訪問リハビリの利用者は12~13名で、透析患者は約3割である。透析患者のリハビリは、リハビリスタッフ6名中3名が透析チームとして担当し、透析室スタッフとの情報交換なども責任を持って行っている。訪問リハビリは、1名の専従者を中心に実施している。
須藤副主任は、もともと県内の一般病院で急性期のリハビリに従事していたが、大場内科クリニックで本格的な腎リハが始まると知り、「自分の経験を慢性期疾患の患者さんや、複数の疾患を持つ高齢患者さんに生かしたい」と、2017年4月に同クリニックに入職した。「今後も、当クリニックの基本方針である"元気で長生きできる透析"の実現に、リハビリスタッフとしてかかわっていきたい。さらに、地域包括ケアの一翼を担う法人として、地域の高齢者の皆さんの健康維持に貢献できるように、仲間と一緒にがんばりたいと思います」と意欲的だ。

リハビリテーション室

有酸素運動のための機器が並ぶ

リハビリスタッフ仲間に囲まれる須藤一樹副主任
4. CKD対策
患者との二人三脚で検査値を大きく改善
地域連携や啓発活動も推進
「できる限り透析導入に至らないようにCKDの進行を止めること」も、大場院長のポリシーである。「腎機能に応じた食事療法を中心に、薬物療法、生活指導などを駆使して治療にあたり、患者さんとともにCKDの進行予防を目指しています」と大場院長。クレアチニン値が4.0~5.0程度で紹介されてきた患者が、同クリニックの治療・指導を受けた結果、1.0~2.0くらいまで下がるなど、その成果には目を見張るものがある。
クレアチニン値は一度上がると下がりにくいとよく言われるが、大場院長は、「適切な治療を行えば、数値は大幅に改善します。私たちはそういう患者さんを何人も見てきています」とさらりと言う。
食事指導のポイントは減塩だ。「タンパク質を減らす方法を患者さんに身につけていただくのは難しい。だからもっとシンプルに、とにかく塩分を減らすように指導します」と院長が食事指導のコツを話す。ただし、塩分を減らそうとすると結果的にタンパク質が制限されることも多いようで、減塩に成功した患者はクレアチニン値が改善するケースが多いという。
血圧の管理も厳格に行っている。朝の血圧で、収縮期血圧125 mmHg以下、拡張期血圧75mmHg以下という基準を満たすことを目標に、腎保護機能のある血圧降下剤でコントロールしている。同時にヘモグロビン、コレステロール、尿酸などの数値も薬剤で適正に維持する。「腎臓そのものを改善する薬はありませんが、関連するデータを薬剤でコントロールし、生活改善と併行して行うことで、腎機能の改善は十分可能です。それを早い段階で患者さんにわかっていただき、患者さん自身にも努力していただくことが非常に大事です」と大場院長は言う。
「患者さんのやる気を引き出すポイントはほめること」と大場院長。大場内科クリニックでは、院長はじめスタッフが、優しい笑顔で穏やかに患者に接することも、やる気の支えになっているようだ。CKDの診断と治療計画、指導のために他の医療機関から紹介されてきた患者に対しても、「ここでの指示通りに頑張れば絶対に良くなれる」と精一杯励ましてから、紹介元に戻すという。
紹介患者を預かる期間は通常は1~2カ月だが、患者の理解や改善の度合いによっては3~4カ月、十分な指導ができるまで預かることもある。紹介元に戻した患者の腎機能が、再度下がるようなことがあれば、再び検査や指導を引き受ける。
CKDに関するこうした地域連携は、水戸市やその周辺地域では以前から比較的スムーズになされており、近年は連携の範囲が広がりつつある。また、特定健診・特定保健指導にかかわる保健師向けにCKDについて啓発する講演会なども実施し、保健師から腎臓専門医の受診を促すような取り組みも進んできているという。
5. 今後の課題・展望
透析患者を受け入れる高専賃の建設を予定
最期まで透析を行い、看取りにも対応
大場院長はいま、クリニックの近くにデイケアセンターを備えた高齢者専用賃貸住宅と新しい透析施設の建設を計画している。前者は16戸、後者は透析ベッド30床を配備する予定だ。計画の1つのきっかけになったのは、「最期まで透析を受けたい。大場先生に看取ってほしい」といった患者たちの言葉だ。
「独居の患者さん、家族のケアが受けにくくなってきた患者さんなどから、こういう言葉を聞くことが増えたのです。患者さんがそう思っているなら、私が施設をつくって、そこに入っていただいて、自由に生活しながら最期までここで透析を受けていただこうと思いました。これまでにも病棟で何名かの透析患者さんを看取ってきましたが、増え続けるニーズに応えるためには新しい住まいをつくるのが一番だと思うようになりました」と大場院長が計画に至った経緯を語る。
開業して15年。まだまだ新しいチャレンジを続ける大場院長。その根底には、「患者さんのためになることをしたい」という医師としての思いがある。新施設の竣工は、2021年度中を予定している。地域の透析患者を支える新しい試みとしておおいに注目される。
KKC-2021-00003-2
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