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医療法人社団医心会 中川内科クリニック
[透析施設最前線]

2021年7月12日公開/2021年7月作成

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病院外観
  • ●院長:中川 洋一 先生
  • ●開設:2000年2月
  • ●所在地:栃木県宇都宮市幕田町736-9

自己管理支援プログラムの活用や
テーマを絞った専門的指導で患者の行動変容を促す

新潟大学で身につけた腎臓学の見識と、先代から受け継いだ地域医療の実践を、新たなかたちで市民に還元しようと、2000年に開業した中川内科クリニック。開業当初から毎月2回の院内勉強会を継続しながら、患者の治療アドヒアランスを高める方法を中川院長以下スタッフ皆で模索し、さまざまな工夫を重ねてきた。近年は、「チームフォスフォラス」による高リン血症に特化した指導や、疾病予防・治療や健康に関する自己管理の向上を目指す「 EASE( イーズ)プログラム®」の活用による透析患者の行動変容支援などにもチャレンジしている。

1. クリニックの概要 地域医療に取り組み60年
患者の納得を重視し腎医療に注力

中川 洋 一 院長

中川 洋 一 院長

中川内科クリニックは2000年2月、「ゆったりとした雰囲気のもと、患者様が納得いくまで十分な説明を受けながら診療を受けられるように」という理想を掲げ、中川洋一院長によって開設された。 先代の時代から数えれば、地域医療に尽力して約60年、腎医療・人工透析の歴史は40年以上になる。

「先代、つまり私の父は、腎臓内科医ではなかったのですが、母が腎不全になったのをきっかけに腎医療を学び、実践するようになりました。当時、母は自宅で在宅透析を受けていました。その様子を見ていた私は母を救いたいと思い、当時、腎臓学のメッカといわれた新潟大学医学部に進んだのです」と、この道を志した経緯を振り返る中川院長。開設時にあらためて上記のような理想を掲げたのも、母を含めた腎臓病患者への深い思いがあってのことだ 。

中川内科クリニックの診療は、患者の目を見つめることから始まると院長は言う。「昔ながらの医師と患者様の信頼関係を大事にしています。『ひととひと』として向き合うことこそ、医療の原点だと思うのです」と信念を語る。

標榜科目は、腎臓内科、人工透析内科、循環器科、消化器内科で、外来透析のほかに一般外来診療も行っている。特にCKD診療には力を入れており、腎臓専門医である中川院長を頼って遠方から通院している患者も多い。

透析室は本館と新館に1室ずつあり、本館では主に介助の必要な人、新館では主に自立度の高い患者を受け入れている。透析スケジュールは月水金が午前・午後・夜間の3クール、火木土が午前のみ1クール。患者の希望に応じて長時間透析も行っている。シャントトラブルに対するPTA(経皮的血管形成術)も院内で行っており、症例数は2020年実績で年間63例を数える。CKD診療から透析、PTAまで通して行えることは同クリニックの強みであり、患者の利便性や安心感にもつながっている。

外来透析患者数は90人弱である。透析にかかわるスタッフは非常勤を含めて、医師4名、看護師14名、臨床工学技士4名、看護助手3名、管理栄養士1名、事務5名。開設時からの職員もおり、一番新しい職員でもすでに勤続3年以上。こうした人材の定着率の高さは中川院長の自慢の1つだ。

2. チーム医療 月2回の院内勉強会でスキルアップ
合併症予防を目指すチーム活動も活発

中川内科クリニックでは、開設当初から定期的に院内勉強会を行っている。 毎月第2・4金曜に多職種が集まり、第2金曜は、医師、看護師、臨床工学技士が持ち回りで作成したオリジナル教材を用いた講義が、第4金曜は、薬剤や機材に関する学習が中心だ。院内勉強会は、知識や技術を高めることに加え、職員同士のコミュニケーションの機会にもなっている。

透析患者の合併症予防は、医師や患者担当看護師が個別に行うほか、テーマごとに結成したチーム単位でも取り組んでいる。たとえば、「チームフットケア」では、定期的にABI(足関節/上腕血圧比)、SPP(皮膚灌流圧)を測定し、高リスク群のスクリーニングを実施。足病変の早期発見とケアを通じて患者の足を守ることを目指している。また、「チームVA(バスキュラーアクセス)」では、シャント機能のモニタリングを定期的に実施しPTAにつなげることで、シャントトラブルの予防に努めている。

かつては「チームデンタル」を組織し短期集中的に活動したこともある。近隣の歯科医師・歯科衛生士の協力のもとで定期健診と口腔ケアを行い、合併症を減らす試みだ。この活動を通し、口腔管理に無頓着な人ほど体の管理状態も悪いという相関関係を確認。口腔ケアと同時に患者に合わせた自己管理指導を実践し、栃木県透析医学会で発表して優秀演題賞を獲得した。

3. 高リン血症対策 「チームフォスフォラス」を立ち上げ
血中リン濃度が高い患者に集中的に介入

2017年に発足したチームに、「チームフォスフォラス」がある。フォスフォラスの意味は「リン」で、同チームは、高リン血症に特化して患者指導を行うことをミッションとしている。「透析患者さんの予後を良くするための重要なポイントとして、血中リン濃度のコントロールに長年注力してきました。高リン血症治療剤の種類が増え始めてからはより力を入れるようになったのですが、それでもなかなか思うような効果が得られないことから、 高リン血症に集中して指導する専門チームの立ち上げに至ったのです」と中川院長が説明する。

手塚清子看護師長によれば、同クリニックでは透析患者の採血を月2回行い、その結果を患者に返すタイミングで毎回のように、看護師が服薬状況や食生活の状況を確認し、きめ細かな指導を繰り返し行っている 。「それでもなかなか結果に結びつきません。本当にリンのコントロールは難しいと感じます」と、手塚看護師長が実感をこめて語る。

「チームフォスフォラス」のメンバーは看護師3名で、ほかに管理栄養士も協力している。リーダーである、浅川宏美看護師が、活動の概要を次のように紹介する。

「まず、過去の採血データを見て血中リン濃度が特に高い20名余りの患者さんをピックアップし、担当看護師や管理栄養士とも協力しながら、あらためて食生活や服薬状況、病状や薬に対する患者さん自身の意識などをくわしく聞き取り調査しました。それを踏まえて繰り返しコミュニケーションをとり、改善できた点をほめたり、継続できるように励ましたり、できることをアドバイスしたりと介入を続けたところ、数値が改善されるケースが出てきました。」

介入開始後に実際に行った指導内容は図1の通りだ。これを見るとわかるように、まずは高リン血症への理解を進めることを優先している。「多くの患者さんは、カリウムに対しては警戒心が強いのですが、リンについてはあまり気にしていないことがわかりました。そこで、『血管にはりついたコレステロールが石灰化して血管が詰まってしまうこともあるんですよ』とか、『体がかゆくなって困っている患者さんもいますよ』というように、高リン血症の弊害をお話しすると、ほとんどの方が、『気をつけないといけないね』と納得してくださいました」と、浅川看護師が言う。

このように患者の理解を深めたうえで、採血後は血中リン濃度に着目して担当看護師から説明。同時に患者の食生活などを尋ねて、数値が変化した原因を、患者と一緒に探り、改善策を考えた。

服薬指導に際しては、あらかじめ患者にアンケート調査を行い、飲み忘れの頻度や薬に対する意識などを確認した。調査用紙の作成と結果集計はチームフォスフォラスが担当。実際の調査は担当看護師が個別に行った。回答から、チームメンバーが薬の変更が望ましいのではと考えた場合などは、中川院長に直接相談。数を減らす、大きさの小さいものにする、などの対応だけで服薬状況が改善する例も見られたという。

浅川看護師は、「私自身、これは飲みにくいと感じるものもあり、患者さんが抵抗感を抱くことがあるのは無理もないと思いました。また、あの量を見ただけで飲みたくなくなるという気持ちもよくわかりました」と、患者の立場にたってみた感想を語る。手塚看護師長も、「飲みにくいとおっしゃる患者さんが一番多いのがリンの薬。血圧を下げる薬のように、はっきりした効果が見えにくいのも、服薬に抵抗を感じる一因だと考えています」と、患者の心理を分析する。

「それでもしつこく、体系を立てて、地道に働きかけていくことが結果につながると思っています」と中川院長。「チームフォスフォラス」の活動は2017年にトータル3カ月ほど集中的に行い、患者の動向や指導法を一定程度確立し、全看護師に周知した。その後は、日々のケアや指導の中に盛り込むかたちで、個々の患者に合わせた指導を続けている。

4. 「EASEプログラム®」の活用 セルフケアに関する行動変容を支援
看護師がマンツーマンで取り組み成果をあげる

「チームフォスフォラス」の活動を生かし、治療アドヒアランスのさらなる向上を目指して2020年に取り組んだのが、「EASE(Encourage AutonomousSelf Enrichment : イーズ)プログラム®」の活用だ。「EASEプログラム®」とは、群馬大学大学院保健学研究科応用看護分野の岡美智代教授が開発したセルフケアに関する行動変容を支援するプログラムで、岡教授は、「対象者にとって大切なことである生活重要事を前景化させたうえで、保健行動モデルなどを活用しながら、対象者に対するアセスメントと理解を行い、行動や認知の修正に関する基本的原理と方法論は、認知行動療法を活用して構成されたもの」と定義している。

同プログラムは、〈 ステップ1 〉自分についての振り返り、〈 ステップ2 〉困難事と生きがいの明確化、〈 ステップ3 〉できそうな目標設定、〈 ステップ4 〉技法選択、〈 ステップ5 〉自己管理の実施、〈 ステップ6 〉確認、の6つのステップで構成されている。ステップ4の技法には、(1)生きがい連結法、(2)セルフモニタリング法、(3)ステップ・バイ・ステップ法、(4)行動強化法の4種があり、患者それぞれに合ったものが選択される。

中川内科クリニックでは、同プログラムに前々から着目していた中川院長が導入を提案し、看護師が実践。「チームフォスフォラス」に引き続き、浅川看護師がリーダーとなり、坂野真由美看護師と2人で担当した。対象者としては、患者全員に対して行った「服薬についてのアンケート」(図2)により、薬の飲み忘れが比較的多いことがわかった2名を選んだ。そして浅川、坂野両看護師が1名ずつ担当し、ステップ1~6を患者と一緒に進めていった。

浅川看護師が担当した患者は、デイサービスに行く日に昼食後の薬を飲み忘れやすいことに加え、水分管理にも苦労していた70代の女性。坂野看護師が担当した患者は、未成年の子どもがいる40代の医療職の女性で、やはり昼間に職場で飲む薬を忘れがちであった。前者は「ステップ・バイ・ステップ法」、後者は「セルフモニタリング法」を選択。2名は最初から対象的で、たとえば、「〈 ステップ2 〉困難事と生きがいの明確化」では、「もう歳だし、生きがいなんて......」と話す前者に対し、後者は「子どもの成長を見守るのが生きがい。そのためにもまだまだ働きたい」と前向きな姿勢を示したという。

浅川看護師は、最初は無理に目標設定をせず、いろいろな話をしながら簡単な目標を決める、それができたら次というようにステップをふみ、その流れのなかで、「新型コロナウイルス感染症が収束したら娘と買い物に行く」という目標にたどりつき、支援を続けた。坂野看護師は本人の前向きな考えを尊重しつつ、食事指導などに力を入れたという。

結果、前者は月2回の処方日に、デイサービスに持って行くバッグに昼食後の薬を入れる、という方法で飲み忘れを大幅に軽減。水分管理については、「言われたくない」という本人の思いが強く、介入の方法を継続して模索中だ。後者は、本人がもともと治療の意義を理解し客観的な自己評価ができていたこともあり、「子どものために」という気持ちに坂野看護師が寄り添いながら、週に1回ペースで服薬状況を報告してもらうだけで、飲み忘れはほぼなくなった。

坂野看護師は、こうした治療アドヒアランスの向上に加え、「担当した患者さんから話しかけられたり、相談されたりすることが増えました。コミュニケーションにも良い影響があったことを実感しています」と話す。

中川院長は「EASEプログラム®」について、「個々の患者さんに合ったやり方を選択し、上手に介入できれば高い効果が期待できると思います」と評価し、今後も活用していく方針だ。すでに体重管理においては同プログラムを応用しており、体重コントロールがうまくいっていない患者には、朝と寝る前の体重を記録してもらい、看護師と一緒に目標管理をしながら、少しずつ自己管理ができるように促している。

同クリニックの人工透析管理システムには、患者に渡すデータに、Kt/Vや塩分摂取量が自動換算されて印字される機能がついている。今後はそうしたデータも、自己管理支援に活用していきたいという。

5. 今後の課題・展望 透析患者が地域で暮らし続けられるよう
介護事業所などとの連携を強化

手塚看護師長は現在の課題として、患者の高齢化を挙げ、「自己管理が年々難しくなっていく患者さんもいますが、諦めずにサポートしていきます。また、家族がいない方、車いすを使っている方などもできるだけ長く外来透析に通えるように社会資源の活用も進めていきたいと思っています」と話す。

中川院長も「高齢化対策、特にフレイル予防が急務」と言い、できることはしていく考えだ。ただし、本格的に取り組むとなればいま以上のスタッフ数やリハビリのための環境が必要で、「それらを確保するためにも、国をあげた高齢者医療、透析医療の強化が求められます」と言う。また、たとえ環境が整っても患者自身の意識が変わらなければフレイル予防は望めないことから、これまで同様、地道な働きかけを続けていく方針。さらに、「透析患者さんが地域で過ごせる時間をなるべく長くできるような取り組みをしたい」と、介護事業所をはじめとした関係機関との連携を、より強化する計画を進めている。

KKC-2021-00763-1

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