KYOWA KIRIN

このサイトは、日本国内の医療関係者(医師、薬剤師、看護師、技師・技士等)を対象に、弊社が販売する医療用医薬品を適正にご使用いただくための情報を提供しています。国外の医療関係者、一般の方に対する情報提供を目的としたものではありませんのでご了承ください。
このサイトのご利用に際しては、協和キリンメディカルサイトのご利用条件が適用されます。

医療法人腎愛会 上山病院
[透析施設最前線]

2021年8月6日公開/2021年8月作成

印刷用PDF

病院外観
  • ●理 事 長:上山 逹典 先生
  • ●院 長:寺口 記代 先生
  • ●開 設:1981年1月
  • ●所在地:鹿児島県鹿児島市宇宿3-17-6

患者個々の状態や環境をくわしく把握
それぞれに合った説明と工夫で治療の質を高める

医療法人腎愛会上山病院は、鹿児島市南部の透析医療を担う中心的な施設として、多くの透析患者を受け入れている。血液透析(HD)だけでなく、腹膜透析(PD)、在宅血液透析(HHD)にも積極的に対応。また、「じんあいキッチン」(※)と名づけた食事療法体験や、「腎臓いきいき教室」(※)をはじめとした患者教育にも力を注ぎ、患者の意識改革や予後の改善に貢献している。さらに、患者・家族への丁寧な説明や指導、患者それぞれの状態や事情、環境などに合わせた個別の対応やオリジナリティ溢れる工夫で、治療アドヒアランスの向上を図っている。
(※2020年以降は新型コロナウイルス感染症の流行のため休止中)

1. 法人の概要 鹿児島で先駆的に透析医療に着手
現在は予防から治療、高齢者の生活まで担う

寺口 記代 院長

寺口 記代 院長

1981年1月、上山逹典理事長が上山内科クリニック(職員数13名、許可病床数19床)を開設。87年4月に上山病院となり、同年10月には法人化して医療法人腎愛会が誕生した。その後は病院の増改築、グループ施設としてのうえやま腎クリニックの開設などを経て成長。2009 年7月には新上山病院(職員数124名、許可病床数40床)へ新築移転。近年は、ケアプランセンター、ヘルパーステーション、サービス付き高齢者向け住宅を擁する高齢者福祉複合施設「光陽」 や、在宅透析センターの開設、訪問リハビリテーションの開始など地域住民のニーズに応えながら、さらなる発展を続けている。

父である上山理事長の背中を見て育ち、同じく医師となった寺口記代院長が、法人の歴史を、あらためて次のように紹介する。

「1970年代の鹿児島では、透析医療をはじめとした腎不全の治療はまだあまり行われていなかったそうです。そこで父は、当時、日本の腎医療の先進地であった新潟に国内留学し、専門知識や技術を身につけました。そして鹿児島に戻って勤務医を続けるうちに、自分の理想の腎医療を実践したいという思いがつのり、開業することにしたと聞いています。以来、腎生検なども数多くこなし、腎臓病の治療に尽力してきましたが、残念ながら末期腎不全に至る患者さんは増え続けました。上山病院を開設したのは、そうした患者さんに、透析を受けながら自らの人生を全うしていただけるようにするためです。さらに増え続ける患者さんを受け入れるために、2009 年に移転し透析ベッドも増床したのです」

寺口院長が上山病院に参画したのはちょうど新病院への移転の頃だ。「現在の上山病院は、透析医療を中心としつつも、一般内科や循環器内科での生活習慣病治療、血管外科による透析シャント管理や腹膜透析治療なども充実しています。透析といえば上山病院、という評価から、より幅広い医療を提供する医療機関として認知していただけるようになってきたと感じています」と寺口院長が言う。

また、グループ施設である「うえやま腎クリニック」は、同じく父と姉の背中を見て医師となった上山菜穗先生が院長を務め、人工透析のほかに、形成外科や「ビューティーコアサポート外来」を開設して、健康で自分らしく生きるための身体づくりをサポートするなど予防医学にも取り組んでいる。以上のように腎愛会は、予防から治療、高齢者の生活までトータルに担うことで、その存在感を増してきている。

2. 透析医療 HDのほかPD、HHDにも積極的に対応
複数の膜を用いるサンドイッチ法を実践

上山病院で透析を受けている患者は2021年4月現在、252名である。うち18名が入院患者で、外来患者のうち33名がPD、1名がHHD患者だ。うえやま腎クリニックでは、69名が外来HDに通院している。これらの患者の多くは鹿児島市南部在住者である。

全国的に見てもPD患者の比率が高く、また、HHDにも取り組んでいることについて寺口院長は、「PDの場合、通院の頻度が月に1回程度であるため、患者さんの負担がかなり軽減されます。同時に、家庭での食事の管理などがしやすいという利点もあります。HHDも同様です。一方で、HHDでは初期投資の問題などもあり、誰もが受けられる治療とはいえません。常に患者さんの状態や気持ちまで把握し、必要に応じて外来HDと併用するなど、きめ細かな対応を心がけています」と話す。

こうした対応を実現するにあたって、「スタッフの努力が大きな支えになっています」と寺口院長は言う。また、「カテーテル留置やシャント造設、PTAなどを血管外科の医師が一手に担ってくださり、内科の医師がしっかり管理してくださることが、多様なニーズに応えることを可能にしています」と語る。

同院の透析ベッド数は91床で、2階透析室(74床)と3階透析室(17床)に分かれている。スタッフは、2階が看護師23名、ケアスタッフ8名、3階は看護師5名、ケアスタッフ1名、臨床工学技士は2、3階兼務で総勢11名だ。本来は2階透析室が外来患者用、3階が入院患者用であるが、近年は外来患者が増え、3階でも一部、外来患者を受け入れている。特に認知症患者など、比較的見守りやサポートの必要度の高い患者が3階透析室の利用者だ。

透析にかかわる医師は、同院の常勤医師6名、非常勤医師5名の全員で、曜日担当制である。透析室での医師の役割は、採血やその他の検査結果の説明を定期的に行う回診、体調の悪い患者、ケガなどをしている患者の診察など。透析技術に関しては、HDFを早期から導入し、1992年には濾過と逆濾過を交互に生じさせるPush/Pull-HDF(上山式)を開発。その後、一時期は全台をオンラインHDFで行っていたこともあるが、2012年の診療報酬改定によりオンラインHDFの機種が限定されたことから、現在は複数の技術を併用している。

特徴的な取り組みとしては「サンドイッチ方式」がある。これは、「同じ患者に対して複数のダイアライザーを用いることで、より多くの物質を取り除くことができるのではないか」という上山理事長の発案で始まった同院オリジナルの手法で、特に単一のダイアライザーを使い続ける理由がある患者以外には、このサンドイッチ方式を採用している。

透析患者や家族への教育、モチベーションアップを目指す取り組みにも力を入れており、入院患者の家族と外来患者の希望者に、病院の透析食を食べてもらうことで、食事療法への理解を進める「じんあいキッチン」の取り組みを2014年から実施。保存期の患者と家族を対象とした腎臓病教室、「腎臓いきいき教室」を、1回1時間半、年6回のペースで実施している(2020年以降は新型コロナウイルス感染症の流行のため休止中)。

3. 透析患者の治療アドヒアランスと服薬アドヒアランス 平均年齢70.8歳、平均14種類の薬を服用
治療アドヒアランスの向上を阻害する要因はさまざま

寺師 守彦 薬剤科科長

寺師 守彦 薬剤科科長

治療アドヒアランスについて寺口院長は、「重点的に取り組んではいるものの、改善には苦労しています」と実感を吐露。「透析患者さんは服用されている薬が非常に多く、たとえば入院時に、普段飲んでいる薬をすべて持参していただくと、大幅に数が合わないことが多々あります。中には数を合わせるために余った薬を捨ててしまう患者さんもいます。また、私が処方した薬でも、形状によって飲めたり飲めなかったりがあるようで、用量を減らしてでも飲みやすい薬にかえたほうが、結果的に検査値が良くなったりすることも経験しています。治療アドヒアランスを向上させるためには、検査の数値を見て用量を増減するだけでなく、患者さんが薬を飲めているかどうかを常に私たち医師が意識して確認し、患者さんが薬に対して抱いている意識や服用の環境、飲みやすさ、飲みにくさなどまで含めて見ていくことが大事だと実感しています」と話す。

治療アドヒアランスの中でも、特に服薬アドヒアランスに関する取り組みをリードしているのは、寺師守彦科長他2名の薬剤師が所属する薬剤科である。寺師科長は同院の患者の服薬アドヒアランスを高めることを難しくしている要因の1つとして、透析患者の平均年齢が70.8歳と比較的高いことを挙げる。また、高齢であるがゆえに複数の疾患や障がいを抱え、多種類の薬を服用しているケースがほとんどであることも少なからず影響していると指摘する。

こうしたことから、患者個々の事情を知らない限り、服薬アドヒアランスの向上はあり得ないと考えた寺師科長は、入院患者の初回面談の際に、服薬に関する問題を探る試みを入職以来5年間継続している。そんな中、見えてきたのは、患者の病状、身体状況、家族の有無など置かれている環境、年齢、患者自身の性格やライフスタイル、食事の回数などさまざまな要因が服薬状況に影響しているということだ。

「入院透析患者さんが服用されている薬の数を調べたところ、平均14 種類でした。これでは用法も複雑になり、高齢患者さんが正しく飲むのは至難の業であると納得がいきました。これらをなるべく減らしたり、用法用量を単純化できるよう考えることも私たち薬剤師の役割です」と寺師科長が言う。

また、「どんなに検査値が悪くても、自覚症状がない、薬を使っても改善した実感がない場合は、治療する必要はないと考えてしまう患者さんも多いとわかり、意識改革の必要性も感じています」と寺師科長。さらに、透析患者の場合、一生治療を続けることの心理的負担も大きいと考え、そうした気持ちに理解を示すことも心がけているという。

4. 服薬アドヒアランスの改善 信頼関係をベースに的を絞って説明
視覚が不自由な患者に提供した「4連服薬BOX」も好評

透析患者が抱えるさまざまな問題を受けとめたうえで薬剤科では、服薬アドヒアランス改善への取り組みを、副作用予防の取り組みと平行して行っている。薬剤管理指導の対象は原則として全入院患者(平均年齢74.1歳)だが、重い認知症などで理解が難しいと判断される場合は除外される。

寺師科長が考える入院透析患者への薬剤管理指導のポイントは、(1)自分の現在の状況を知ってもらう、(2)透析、腎機能低下時の症状に理解を深めてもらう、(3)治療、服薬を積極的に行おうという気持ちにもっていく、の3点だ。「薬剤だけの説明ではなく、患者さんの生活、家族との関係に踏み込んだ指導が必要で、私たち薬剤師が患者さんと親密に話すことのできる関係を築くことが大事だと思っています。そのためにも薬剤師は頻繁に病棟に出向き、患者さんと顔を合わせ、寄り添う気持ちを持ち、それを伝えることを心がけています。当然ながら、相手によって表情、話し方、話す内容を変え、的を絞って説明するようにしています」

患者個々の事情に合わせた工夫もさまざま行っている。たとえば弱視の患者の場合は、服用する時間ごとに色分けしたマジックで、薬袋に大きく「アサ」「ヒル」「ユウ」などと上書きする。完全に失明している患者の場合は、薬の服用時間を1日1回にまとめてしまうこともある。食事時間が不規則な患者の場合は医師に相談し、その食事時間に合わせて服用できる処方に変えてもらう。副作用が強いために患者が服用をためらっていることが疑われる場合にも、医師に相談して対応する。副作用だとわかれば、原因となっている薬を特定し処方変更を提案する。また、あらかじめ副作用について患者や家族に説明し、気づいたらすみやかに連絡してもらえるようにしておくことも忘れない。

寺師科長によれば、同院では最近、薬剤師が治療アドヒアランスを向上させるための活動をするのによりよい環境ができつつあるという。2020年から、多職種による「入院前カンファレンス」が行われるようになったのがその大きな理由だ。参加職種は医師、薬剤師、病棟看護師、外来看護師、管理栄養士、ソーシャルワーカーで、このカンファレンスによって個々の患者の情報、たとえば「服用薬剤が院内に確保されているか」「特殊薬剤、麻薬、特殊用法薬剤、血中濃度測定が必要な薬剤を服用していないか」「副作用履歴はあるか」などを把握できるため、入院後、速やかに適切な薬剤管理指導ができるようになったという。

多職種カンファレンスにはもう1つ、「合同カンファレンス」もある。こちらは、外来患者、入院患者で、身寄りのない患者、認知症患者、家族の援助の得られない患者、服薬アドヒアランスの悪い独居患者など、何らかの問題のある患者が対象で、入院前カンファレンスと同じメンバーが参加して行われている。

「合同カンファレンスで薬剤師は、外来患者さんに関しては、服薬アドヒアランスを改善するための提案を、入院患者さんに関しては、退院後の在宅での服薬継続を念頭に入れた服薬方法を提案しています」と寺師科長が紹介する。これまでには、降圧薬の錠剤をうまく飲め込めず、口腔内に錠剤が残ってしまって血圧がコントロールできていなかった患者の薬をOD錠(口腔内崩壊錠)に変更するなど、剤型をかえることで結果が改善した例は多々あるという。また、退院後に訪問薬剤管理指導を依頼することで、在宅での服薬アドヒアランスの維持ができた例もある。

ユニークな工夫としては、失明した患者に、オリジナルの「4 連服薬BOX」を提供した例がある。「朝・昼・夕・眠前で高さの異なる大きめの箱を4つつなげたものです。服薬のタイミングを箱の高さで識別できるので、これなら間違わないと患者さんにも喜ばれました。我ながらヒット作だと思っています」と、寺師科長がうれしそうに語る。また、認知症の患者には「あせらず、根気強く、ゆっくりと、時間をかけて、気長に接する」をモットーに、服薬カレンダーへの薬のセットと服薬の方法を時間をかけて指導するなどして成果を上げている。

「とにかく服薬アドヒアランスの良くない患者さんには根気よくヒアリングを行い、事情を理解して、それを解決する方法を一緒に考えるのが一番だと思います」と寺師科長は言う。

5. 今後の課題・展望 地域連携と人材育成を重視
在宅での服薬アドヒアランス向上を目指す

寺師科長は服薬アドヒアランスに関する現在の課題として、「独居の高齢患者の服薬アドヒアランスをどう改善するか」「患者の在宅での様子を病院薬剤師はどう把握すべきか」「後発医薬品に抵抗を示し先発医薬品を希望する患者にどう対応するか」などを挙げ、それぞれ、「訪問サービスの活用」「薬局薬剤師との連携」「根拠に基づく説明」などにより対応している。「今後は地域連携をさらに進め、使える資源を最大限活用して服薬アドヒアランスの維持・向上をより確実なものにしていきたいと思っています」と使命感を強く持って語る。

寺口院長は、喫緊の課題として合併症対策を挙げ、「心血管系の疾患、特に足病変への対応や治療をしてくれる他病院との連携を強化したいと考えています。そのためにも院内勉強会などを進めて、患者さんに何かあればスタッフの誰もが気づくことができるようにしていきたい。スタッフの見る目を養うことが、結果的には治療アドヒアランスの向上にもつながると思います」と語り、人材育成に一層の力を入れていく方針だ。

KKC-2021-00741-2

透析施設最前線

おすすめ情報

  • おすすめ情報は、協和キリンのウェブサイトにおける個人情報の取扱い方針に基づき、お客様が閲覧したページのアクセス情報を取得し、一定の条件に基づき自動的に表示しています。
    そのため、現在ご覧いただいているページの情報との関連性を示唆するものではございません。

くすり相談窓口

弊社は、日本製薬工業協会が提唱するくすり相談窓口の役割・使命に則り、くすりの適正使用情報をご提供しています。
弊社医薬品に関するお問い合わせは、下記の電話窓口で承っております。

フリーコール

0120-850-150

受付時間 9:00~17:30
(土・日・祝日および弊社休日
を除く)

※新型コロナウィルスの感染予防・感染拡大防止を全社方針として徹底していくことから、お電話が繋がりにくい可能性があります。

※お電話の内容を正確に承るため、また、対応品質の維持・向上等のため通話を録音させていただいております。あらかじめご了承ください。

お問い合わせ