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みなと医療生活協同組合 協立総合病院
[透析施設最前線]

2021年7月5日公開/2021年7月作成

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病院外観
  • ●管理者:尾関 俊紀 先生
  • ●院長:堀井 清一 先生
  • ●開設:1977年
  • ●所在地:愛知県名古屋市熱田区五番町4-33

一人ひとりにじっくり向き合うことが
透析患者の治療アドヒアランス改善につながる

医療生協を母体とする協立総合病院は、全国でもいち早く患者の権利章典を制定し、患者中心の医療を実践してきた。それは透析医療を提供する腎センターにおいても同様で、ここでは一人ひとりの患者にじっくり向き合い、透析医療の質向上および透析患者の治療アドヒアランスを高めるさまざまな取り組みが実践されている。

1. 成り立ちと理念 地域住民による医療生協を母体とし
30年前から患者中心の医療を実践

協立総合病院は、1959年に発生した伊勢湾台風の被害を受けた住民が中心となって設立された「みなと医療生活協同組合」を母体とする。小さな診療所から始まった医療活動は徐々に規模を拡大し、1977年には協立病院を開設。1987年に現在名に名称変更され、2001年に現在地に新病院が建設された。

同病院は、現在も6万人を超える組合員によって運営が支えられており、組合員の地域ネットワークによるボランティア活動が盛んに行われているのも大きな特徴の一つである。また、今日では当たり前になっている「患者中心の医療」の実現にも早くから取り組み、1991年には患者の自己決定権を盛り込んだ「医療福祉生協のいのちの章典」を制定し、患者の参加と協同を基本に医療を提供する姿勢を内外に示した。この章典は今も同病院の医療活動の支柱となっている。

こうした流れを受け、1998年には名古屋市で初めてカルテ開示を実施。「医療情報は患者のものである」という基本スタンスを打ち出し、カルテ開示を通して(1)患者の自己決定権の確立、(2)インフォームド・コンセントの推進、(3)医療への患者参加の促進などに力を入れて取り組んできた。

2. 透析医療の方針 「安心・安全」を診療の基本とし、
CKDに伴う合併症予防にも注力する

山川 正人 腎センター長

山川 正人 腎センター長

同病院の透析医療は、サテライト診療所の一つとして1995年に開設された「クリニックレインボー」を中心に行われている。病院にも11床の血液透析用のベッドを確保しているが、ここでは合併症を発症し入院してきた患者や緊急透析導入が必要な患者に対応している。クリニックの透析室は3階フロアに位置し、血液透析用のベッド30床を確保する。送迎サービスを一部実施しているものの、自力で通院できる人が血液透析の対象となるため、クリニックがある熱田区を中心に近隣の3区(港区、中川区、瑞穂区)が診療圏だ。近年、患者は30~32名を推移し、その大半は高齢者で80歳前後の後期高齢者が多い。

「かつては常時80~90名をサポートしていましたが、ヒューマンパワーの問題と一人ひとりの患者さんにじっくり向き合いたいという診療方針の転換から、現在は他院からの紹介患者は受け入れていません」と山川正人腎センター長は説明する。血液透析のほか腹膜透析(PD)も実施しており、この地域で透析患者が急増した1990年代後半は「PDファースト」を掲げ、40名以上のPD患者をサポートしていた。しかし、2000年以降は透析患者数が安定してきたのでPDは縮小し、現在はPDを希望する数名程度の患者に対応している。

透析医療では「安心・安全」を基本としている。透析中の投薬は患者の治療面における視点と同時に、スタッフの安全面を考慮して経口薬を第一選択薬としている。山川センター長は、その理由として「注射薬の場合は透析日に行いますが、どんなに気をつけていても打ち忘れることがあり、その際は次の透析日を待たなくてはなりません。また、注射薬は観血的処置となるため、ある一定の頻度で血液の飛散、針刺し、血管外漏出などが発生し、スタッフに感染リスクが生じます。なかでも感染症リスクの高い血液の飛散は、ガイドラインに準拠した感染症対策を行っても完全に避けることは難しいと感じています」と説明する。もちろん、骨粗しょう症の治療薬など患者にとってリスクよりもベネフィットが上回る場合は注射薬を選択する。こうした治療効果と安全面のバランスを見極めて治療薬の選択基準を決めており、それは後述する「透析室マニュアル」内の治療アルゴリズムにも掲載し、院内での統一を図っている。

一方、透析患者が高齢化する中、数年前から予防に診療の軸足を置くようになってきた。「透析導入時期をできるだけ先延ばしすることが重要だと考えています。10年延ばすことができれば透析に至ることなく天寿を全うする可能性も出てきます」(山川センター長)。こうした方針のもと、慢性腎臓病(CKD)の診療にも力を入れており、地域の診療所と連携しつつ、糖尿病性腎症の早期発見・早期治療、腎性貧血のコントロール、CKDによるミネラル代謝異常(CKD-MBD)の予防などに積極的に取り組んでいる。

3. 透析医療の質向上 マニュアルの改訂作業を通して
スタッフの専門性と自主性を高める

透析医療の実施において腎センターのバイブルともいえるのが2008年に作成を始めた「透析室マニュアル」で、これまでに数えきれないほどの改訂を重ねてきた。このマニュアルは単なる業務指針ではなく、透析医療の質を高める3つの重要な狙いがある。

1つ目はマニュアルを通して医師の透析治療に対する方針や考え方を可視化し、それをスタッフ全員で共有することだ。「この過程を経て初めてチーム医療は有機的に動き出しますし、チームで統一した働きかけが可能になるため、患者さんも自分の状態や治療への理解がより深まることで治療アドヒアランスが高まり、医療者とも協働しやすくなります。このマニュアルはチーム医療や患者中心の医療を推進する大事な役割を担っているのです」と山川センター長は説明する。

2つ目は、マニュアルの改訂作業を通してスタッフの専門性を高め、同時に業務改善を図ることだ。山川センター長はスタッフ全員でこの改訂作業を行うことを重視しており、新しい知見が出てきた機会などを捉えて頻繁にマニュアルを改訂する。

「議論を通してスタッフからいろいろな疑問や意見が出てくることを大切にしています。疑問に答える形で治療の狙いや意図をもう一度、丁寧に説明できる場にもなりますし、意見を出し合う中で業務を見直し改善すべき点が明確になることも多々あります」と山川センター長は手応えを語る。そして、スタッフが自分たちの意見をどんどん言えるようになるには専門性を高めることが不可欠で、そのための学習会も定期的に開催している。

3つ目は、マニュアルそのものを学習ツールとすることだ。例えばマニュアルでは透析導入期から安定期までの期間を3期に分類し、時系列で心身の状態と管理方法について示しており、電子カルテ版のマニュアルでは典型的な症例も掲載されている。どの項目もわかりやすく解説されているので、透析室に新しく配属された看護師や臨床工学技士、研修医の教育に特に役立っている。「ただし、"マニュアルに使われている"という感覚に陥らないように新人に対しても学習会への参加を促し、自分で考えられるように働きかけていくことが重要」と山川センター長は指摘する。

4. 治療アドヒアランス改善 患者自らの体力改善意欲を引き出し、
そのうえで運動プログラムを提供

腎センターでは、透析医療を提供するにあたり、あらゆる面において患者の自己決定権を尊重し、患者が治療に参加することで、治療アドヒアランス改善につながる仕組みづくりに力を注いできた。

「例えば、ドライウェイト(透析終了時の目標体重)を設定する際には患者さんに『どうしますか』と必ず聞くようにしています。自分で決めてもらうことによってドライウェイトのコントロールが主体的に行えるからです」と東悦子看護師は説明する。さらに、患者が体重の5%以上の除水を希望する場合は、毎月1回、同意書を用いて患者自身が確認して更新する仕組みを導入している。過剰な「教育的指導」を避けることで双方のストレスを減らし、良好な患者-医療者関係を築くためだ。ここにも「自己決定権」を尊重した医療生協らしさの一端を垣間見ることができる。2021年4月現在、この同意書を提出している患者は全体の2割前後を占めている。

近年、腎センターが重点的に取り組んできたCKD-MBDの予防も、患者自身による運動の実践がその鍵を握るため、患者の治療参加なしには十分な効果が期待できない。そこで、スタッフは運動に対する患者のモチベーションを引き出せるようさまざまなシカケを用意する。その1つが移動機能の状態をチェックするロコモ度テスト(図表)の実施だ。

「下肢筋力を調べる"立ち上がりテスト"と歩幅を調べる"2ステップテスト"を毎年行い、経年変化を"見える化"しています。同時に、ロコモ度テストでロコモ度を数値化して客観的に見てもらいます。今年はコロナ禍による運動不足と加齢のため移動機能や筋力が低下している人が多く、運動の必要性をより認識してもらえたようです」(東看護師)。

こうして患者の意欲を引き出したうえで透析時に取り組んでもらっているのがオリジナル体操だ。「スタッフ自らが考案した"コツコツ貯筋体操"に音楽をつけて自分たちで制作したDVDを透析前に流してベッド脇で体操をやってもらいます。また、透析中もDVDを流してベッドに横になって行える体操に取り組んでもらうなど、運動が習慣化するような環境づくりに努めています」と長尾貴志臨床工学課主任は説明する。

山川センター長は、「透析技術が向上しているので以前ほどではないものの、透析後のだるさが続く人も少なくありません。また、足腰に痛みがある場合も多い。このような状況に置かれた患者さんたちの運動意欲を引き出すためには、一方的な押し付けではなく、どのような運動なら可能なのか寄り添う姿勢が必要です」と指摘する。そして、運動に取り組む意義と根拠を明確に示すことがモチベーションの原動力になるとも示唆する。

「透析患者さんの場合はCKD-MBDの観点から説明することも重要です。『骨を刺激することで血液中のカルシウムとリンを骨に取り込めるので動脈硬化の予防と骨を丈夫にすることの両方に役立つ』と説明するほうが、単に『筋力を維持できる』と言うより運動意欲が高まります。運動にかぎらず、患者さんの治療アドヒアランスを向上させるうえで大事なのは、その人の治療や健康に対する関心事がどこにあるのかを探ることです」(山川センター長)。

5. 患者中心の医療 生活スタイルや生き方に注目し、
患者が取り組めることを提案する

山川センター長は、患者の治療アドヒアランスを高め、その効果を得るためには「患者さんの趣味・嗜好を含めた生活スタイルや生き方に注目したヒアリングを行い、患者さんの背景を知ったうえで、患者さんが取り組めそうなことを提案していくことが大切です」と話す。

例えば、こんな実例がある。70代なのにアルブミンが著しく低下している患者がいた。その理由を探っていくとベジタリアンだということがわかった。敬虔な仏教徒で殺生を好まず牛肉や豚肉が食べられないという。そこで、山川センター長は、患者が宗教上の想いもあってベジタリアンであるという背景を理解したうえで、たんぱく質を摂取する必要性と重要性を説明し、「鶏肉はどうですか?」と提案してみた。患者はそれなら食べられそうだと取り組んでくれた結果、アルブミン値が改善された。

このような働きかけは食事面にかぎらず、服薬に関しても同じだ。例えば、処方変更が必要になった場合、患者の生活背景をよく聞き取ったうえで、患者の要望を尊重しつつ、患者が確実に服用できるよう剤形や服用回数なども考慮して治療薬を選択する。そして、実際の薬剤を見せながら、その効果や服用方法などを患者が理解できるまで説明する。患者には高齢者が多いが、こうした過程を大切にし、認知症の場合でも同様の対応を行う。

「私は、こんな患者さんとのやりとりの過程を"ネゴシエーション(交渉)"と呼んでいます(笑)。医学的に正しいことが患者にとってベストとはかぎりません。医療者がよかれと思って勧めたことが患者を苦しめることもある。何を選ぶのかは医療者が決めることではなく、患者さんと交渉の過程を共有しながら、最終的には患者さん自身が決めることなのです。そして、どのような状態や状況におかれていても、患者さん自ら治療に参加してもらうことが重要です。それにより治療に対する納得感が得られるため、治療アドヒアランスの改善効果もより高まります」と山川センター長は強調する。

山川センター長は、主に回診の場を利用してこうした患者とのネゴシエーションを行っている。「プライバシーに配慮しつつ患者さんとは会話しますが、そのやりとりを周りにいる患者さんやスタッフにも聞いてもらって、参考にしてほしいという思いもあります。ポイントは、患者さんが話しやすい雰囲気を作り、患者さんから質問が出るように仕向けること。そのタイミングを逃さず、質問に答える形で周囲の人にも知ってほしい医学的な解説を交えながら話します」と狙いを明かす。

そのほか特筆すべき活動として、職員全体で取り組む透析後の「フットケア」が挙げられる。これは足浴により保清を図りPADや足壊疽を予防早期発見するためだが、目的はそれだけにとどまらない。「自分で処置できない陥入爪や白癬で変形した爪を削ってあげながらいろんな話をします。このスキンシップは患者さんと私たちの距離をぐっと縮めてくれるので、安心安全な透析を実現する方法論として大切にしています。」と、東看護師や長尾主任は語る。

腎センターでは、健康寿命を延伸していくことを目標に掲げ、一人ひとりの患者にじっくり向き合う。「腎機能を失うとささいなダメージでも体にさまざまな変調を来たします。透析患者さんはいうなれば敏感なアンテナを手に入れた"選ばれた人"たちなのです。患者さんにもスタッフにもこんな前向きな発想で透析医療を受け止めてほしい。そして、その人らしく健やかに幸せに生きることに、ともにチャレンジしていきたい」と山川センター長は語り、"患者中心の医療"を展開してきた腎センターの未来を描く。

KKC-2021-00776-1

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