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てんかんアラカルトvol.2 「キリストの変容」とてんかんの少年 [てんかん診療Q&A]

vol.2 「キリストの変容」とてんかんの少年

けいれん発作を起こしている少年を描いたこの絵は、37歳で夭折したラファエロ(1483~1520)の遺作「キリストの変容」である。新約聖書の福音書に続けて記載されている2つのエピソードが、一つの絵に描かれている。上半分は山の上でイエスの姿が変わる場面であり、下半分は悪霊にとりつかれた少年をイエスが治す場面である。少年は右上肢を挙上し、頭部と眼球はその右手を見るかのように偏位し、上体を強く捻転している。
てんかん学者のヤンツによると、この少年の肢位についてはさまざまな議論があったという。ベル現象やベル麻痺で有名なベル(1774~1842)は詐病説を唱え、シャルコー(1825~1893)はてんかんとヒステリーの両方を否定したという。しかし、ヤンツ自身は焦点性姿勢発作と考え、現代のてんかん学の泰斗リューダースもこれを支持して、補足運動野に焦点をもつ両側性非対称性焦点性強直発作であろうと述べた1)

ラファエロはなぜこの2つのエピソードを同じキャンバスに描いたかについて、これまで作家のゲーテ、哲学者のニーチェ、さらにはヤンツなどによって議論されてきた。最近、W.M.Mannは、てんかん発作が死と復活をイメージすることと関係しているのかもしれないと述べている2)。すなわち、激しい全身けいれんが終わったあと、患者の顔面は蒼白のまま、閉眼し、呼吸を止め、無動状態を呈し、あたかも死んだようになる。やがて呼吸が再開し、顔色が回復し、反応がみられるようになり、ついには立ち上がり、話ができ、生気をとりもどす。このような経過が、キリストの死と復活をイメージするという解釈である。古くからてんかん発作が死と結びつけて考えられてきたこと、少年の体がギリシャ文字のχに似ておりこれはキリストの頭文字を表していることなどをその根拠としている。一つの仮説として、説得力があるように思われるがいかがであろうか。

【参考文献】

  • 篠崎和弘ほか:ラファエロとてんかんの少年.臨床脳波 44: 457-462, 2002.
  • Mann MW: The epileptic seizure and the mystery of death in Christian painting. Epilepsy Behav 17: 139-146, 2010.

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KK-16-05-14322

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