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森 英樹 先生 (岡山赤十字病院)
[薬剤師紹介Smile & Voice ]

2017年05月15日登載/2017年05月作成

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森 英樹 先生

岡山赤十字病院薬剤部部長/がん指導薬剤師/ICD

森 英樹 先生

ジェネラリストとしての力を重視して、コミュニケーション能力向上、保険薬局との"患者連携"など、さまざまな取り組みを積極的に推進

岡山赤十字病院

Interview

【病棟業務に主力を注ぐとともに、医師の負担軽減にも工夫を凝らす】

 岡山赤十字病院(忠田正樹院長・500床)は「信頼され親しまれる病院に」という理念のもと、5疾病(がん、脳卒中、心臓病、糖尿病、精神疾患)5事業(救急医療、災害医療、周産期医療、小児医療、へき地医療支援)を中心に高度医療を提供している。2014年には独立棟の「緩和ケア病棟」を開設、さらに翌15年には別館新病棟となる「南館」を竣工し、外来化学療法センター、放射線治療室、周産期母子医療センターなどを整備し、設備の一層の充実を図っている(写真1)。また、地域の人々を癒し、いたわり、思いやるマザー・ホスピタルのような存在になることをめざし、日々の診療活動に取り組んでいる。

森 英樹 先生

森 英樹 先生

「"みんなが院長、みんなが事務長"というキャッチフレーズのもと、院内でメディカルスタッフの会を立ち上げました。係長以上の職員に声をかけたら70人が集まりました」。森英樹氏は病院を守り支える主要部門の長として医療スタッフ全体を一つにまとめ上げることにも尽力する。

 薬剤部では、このような病院機能をしっかり支える主要部門の一つとして"風通しのよさ"を重視しながら31名(薬剤師25名、助手6名)のスタッフが一丸となって薬剤業務に従事している。近年、主力を注いでいるのはやはり病棟業務だが、全13病棟を25名の薬剤師でカバーしなければならないため、1人の薬剤師が複数病棟を兼務する。そこで、兼務の負担を分散するために1病棟につき3名(主担当・副担当)の薬剤師を置き、さらに新人薬剤師を補助要員として配置する。「新人薬剤師は9月から独り立ちして当直業務と病棟業務を行うため、補助要員の業務はそのトレーニングを兼ねており、主担当の薬剤師が指導係として教育にあたっています」と薬剤部部長の森英樹氏は説明する(写真2)。

 病棟業務を早く担当させるのは人員体制の関係もあるが、「患者さんに接することによって新人薬剤師の仕事に対する向き合い方が本気になってくるからです」と森氏は教育的効果について語る。なお当直業務の際、一人で調剤を行ってもインシデントを起こさないようにするため、どの薬剤師も週2回、中央業務に従事できるようローテーションを組んで調剤技術を維持している。

 さらに薬剤部では病棟薬剤業務の電子化も進め、与薬一覧表は電子カルテに入れて複数のスタッフが同時に閲覧できるようにした(写真3)。「以前は看護師が手書きの薬札を見ながら患者さんに配薬するシステムでしたが、朝の時間帯に麻酔科医が薬札を確認することができず、手術の開始に影響を来たしたことからシステムを改善し電子化を導入しました」(森氏)。新しいシステムでは、薬剤師が確認した持参薬の情報を自ら電子カルテに入力して与薬一覧表を作成し、それを看護師がダブルチェックして自院用の薬剤に変更し医師に確認をする方法を採っている。「これには医師の負担を軽減するとともに看護師の薬剤に対する知識を低下させない目的もあります」(森氏)。

写真1

写真1

2015年には南館を新築し、周産期医療を充実させた。
また、がん医療においても検診から治療、緩和ケアまで幅広く力を入れる。

写真2

写真2

産婦人科病棟(女性病棟)に配属されている新人薬剤師の兼光朝子さん。9月から病棟での活動が本格的に始まり、やりがいを感じている。

写真3

写真3

電子カルテ上に組み込まれている「与薬一覧表」。各病棟を主担当する薬剤師が作成するほか、毎日の更新も行っている。

【横断的に対応できるジェネラリストとしての能力を伸ばすことも重視】

 また、病棟業務の目標として「プロトコールに基づく薬物治療管理(Protocol Based Pharmacotherapy Management:PBPM)」をベースに処方設計まで薬剤師がかかわることをめざしている。「当然のことかもしれませんが、医師とのカンファレンスで薬剤師に質問されるのは専門分野に関する薬剤のことだけではなく専門外のことのほうが多いのです。また、外科系・内科系にかかわらず、処方設計の段階から薬剤師が相談を受けることが多い薬剤は降圧剤、下剤、睡眠剤などです。つまり、薬剤師に求められている役割はミニドクターではなく、症状や疾患に横断的に対応できるジェネラリストなのです」と森氏は指摘する。

 そのため、森氏はジェネラリストとしての力を伸ばすことにも神経を注ぐ。「関心のない分野にいかに興味を持たせ、勉強するように仕向けるかということがマネジメントのポイントになります」(森氏)。その工夫の一つが「好きなことは自主的に勉強するので、興味のある分野の病棟にはあえて配属しない」というものだ。たとえば糖尿病を専門的にやりたい薬剤師なら循環器病棟に行かせる。そうすることで否が応でも他分野のことを勉強するようになるからだ。一方で興味のある分野においても折に触れてさまざまなチャンスを与え(糖尿病の場合は糖尿病教室の講師を担当させるなど)、その薬剤師が専門性に対するモチベーションを保てるよう配慮する。

【症例報告会を通し患者の生活環境に目を向けることが大事だと気づかせる】

 さらに、森氏が薬剤師の新たな役割として重視しているのが残薬管理を含めたポリファーマシー対策への関与だ。「病院薬剤師は入院中のサポートだけが自分たちの仕事だと思っていますが、残薬管理やポリファーマシーの観点からいえば患者さんが退院してからが勝負になります。入院時に持参薬を鑑別するときから患者さんの性格や生活背景を読み取り、どんな薬をどのような形で処方すれば、退院後もその人が高いアドヒアランス(服薬遵守)を保ちながら使用することができるのかを考えていくことが大切です」と森氏は示唆する。

 そして、そのトレーニングの場として月2回開催する症例報告会を活用する。ここでは毎回3、4の症例について話し合うが、医学的・薬学的な検討に偏ってしまう傾向があるため、森氏はあえて「この患者さんの生活はどうなっているか」と質問するそうだ。すると、なかにはハッとしたような顔つきになる若手薬剤師もいて「アドヒアランスまで意識した適正処方を行うには患者さんの生活環境に目を向けることが大事だとまず気づかせることが重要です」と森氏は言う。

 また、処方を多角的に見る視点を持つように心がけないとポリファーマシー対策を実践していくのは難しいとも感じている。「薬を足し算することはだれでもできるので、これからの薬剤師には薬を引き算する能力が求められてきます。たとえば透析医療では患者さんの腎機能が低下し減薬しなければならない場面も多いので、こうした場での実践を通し、検査値の読み方を含めたトレーニングをしていくのもよいと考えています」と森氏はアイデアを語る。

【さまざまなアイデアを取り入れ、薬剤師のコミュニケーション能力を高める】

 また、森氏は「患者さんのすぐ傍で活動するうえで、絶えず磨いておかなければならないのがコミュニケーション能力です。治療や緩和ケアの場面で患者さんや家族が困っていることを引き出すだけでなく、残薬管理においても上手に働きかけて正しく申告してもらうことが支援のカギとなるからです」と指摘する。こうした能力を磨く一環として、森氏は、新人薬剤師に年3つの無礼講の場(新人歓迎会、県病院薬剤師会総会懇親会、忘年会)で余興を披露することを義務づけている。「これは、どのような場面に遭遇しても動じない度胸をつけること、生真面目な薬剤師のカラを打ち破ることを目的としています」(森氏)。

 そして、自身の苦い経験から薬剤師は"伝える技術"も学ばなければならないと考える。「ある患者さんに"薬剤師から聞くことは恐ろしい副作用の話ばかりだから気が滅入る"といわれて衝撃を受けたことがあります。拒まれても伝えなければ患者さんの安全を守ることはできないし、このときは伝える難しさを痛感しました」と森氏は振り返る。

 一方、森氏は薬剤部内のムードづくりにも気を配る。その理由について「たとえば調剤業務を行っている最中に病棟から応援要請を受けたとき、調剤チームのリーダーが気持ちよく送り出してくれることがとても大事です。応援に向かう薬剤師が嫌な気持ちになると、患者さんとのコミュニケーションに悪い影響を及ぼすからです」と説明する。こうした対策の一つとして薬剤部では電子カルテ上に「ハートラノート」と呼ぶ掲示板を作り、そこにスタッフ同士が普段面と向かって言えないことを書き込めるようにしている(写真4)。

 「ささやかでもよいから、ほめたいこと、ほめられたことを書くのがルールです。新人薬剤師が"初めての当直業務を無事に終えました。ありがとうございます"と書き込むと、先輩薬剤師が"よくやったね"とコメントを返すなどの交流が見られるようになり、個々の壁が徐々に取り払われ、一体感が出てきたように思います」と森氏は手応えを語る。

写真4

写真4

先輩薬剤師と後輩薬剤師の壁を取り払い、薬剤部の風通しのよさを図る目的で設置された「ハートラネット」。森氏も積極的に書き込んでいる。

【切れ目のない薬剤支援を実現するため、保険薬局との"患者連携"に取り組む】

 薬剤部では病院から地域への切れ目のない薬剤サポートに取り組んでいるが、実践するうえで欠かせないのが地域の保険薬局との連携だ。岡山県の喘息死が全国ワースト5位に入ったことから同病院では「吸入指導研究会」を立ち上げ、喘息死ゼロをめざすことになった。「この活動において薬剤師の責任は重大で、地域の保険薬局と初めて力を合わせて取り組むことになりました」と森氏は振り返る。

 この薬薬連携では、最初に病院薬剤師が吸入ステロイド薬の手技について患者に予習的に指導し、その内容と指導の重点項目を薬剤管理指導依頼書に記載して患者に手渡しし保険薬局に提出してもらう。依頼書を受け取った保険薬局薬剤師は吸入ステロイド薬を手渡す際、重点項目を中心にもう一度、患者にじっくり指導したうえで、その内容や患者の様子を記載してファックスを送り返す仕組みになっている(写真5)。

 「患者さんには手技を指導するだけでなく"なぜ、この薬が必要なのか"という動機づけをきちんと行うことが重要だと考えています。薬剤師がこのような情報を付加することによって初めて薬の効果が期待できるからです」と森氏は示唆する。また、「自分の目の前にいる患者さんが困らないように薬剤師同士が協力し合うという姿勢で臨むと、どのような連携もうまくいきます」とも。薬剤師が常に患者の存在を意識しながら取り組めるよう、森氏は"薬薬連携"を"患者連携"と呼び換えるのがよいと提案する。

 現在はリウマチ、インスリン、成長ホルモンの各自己注射薬でも吸入ステロイド薬同様の連携が地域の保険薬局との間で行われている。「保険薬局との連携はさらに強化していきたいので、症例報告会でも積極的に取り上げ、よりよい連携のあり方について検討しています。また、これからは薬剤師同士も共同診療体制をいかに構築するかということが重要になってくるため、私たちが提供することに限界がある検査値などの情報については、病院の電子カルテや画像などの診療情報を、登録した保険薬局が閲覧できる"医療ネットワーク岡山 晴れやかネット"を活用するなどの対応を図っていきたいと考えています」と森氏は語る(写真6)。

写真5

写真5

地域の保険薬局との間で交わした薬剤管理指導依頼書の束は、切れ目のない薬剤サポートを提供した患者数を表している。

写真6

写真6-1
写真6-2

薬薬連携の取り組みの一貫として保険薬局からの疑義照会は薬剤部が対応する仕組みに。疑義照会の内容は毎月取りまとめ、医局会で報告。プレアボイドの基礎資料にもなっている。左写真は電子カルテにまとめられた疑義照会の内容と返答・変更内容、右写真は各医師ごとにまとめられた疑義照会不要確認票

【日赤のスケールメリットを生かした研究を行う目的で「研究推進委員会」が発足】

 近年、全国の病院では院内活動における薬剤師の重要性を認識しつつあるが、同病院も例外ではない。16年8月、森氏は病棟運営管理室の副室長に抜擢され、副看護部長とともに就任した。「収益を左右するベッドコントロール業務に薬剤師も積極的にかかわる時代になりました。たとえば午後も新規の入院患者を受け入れて病床稼働率を上げるために、退院する患者が持って帰る薬剤を午前中にすべて調剤して渡すなど、薬剤師にもベッドを中心とした業務のあり方が今後は求められてくるでしょう」と森氏は予測する。

 このように薬剤師の仕事が変化する一方で、一人ひとりにかかってくる負担も年々大きくなっている。「どこの薬剤部もスタッフを増やすことが喫緊の課題となっているものの、薬剤師の活動に対する診療報酬の評価がないと難しいのが現状です。しかし、中医協で検討してもらえるような研究成果を出すには一病院の薬剤部の努力だけでは限界があります」と森氏は指摘する。そこで、全国に93施設ある日本赤十字病院のスケールメリットを生かした研究を行うことを目的に16年6月、薬剤部に特化した「研究推進委員会」が発足した。森氏はその活動においても中心的役割を担っている。「名古屋第一赤十字病院薬剤部長の森一博先生、伊勢赤十字病院薬剤部長の谷村学先生といった重鎮も応援してくださっている委員会です。まずは年3回の会合開催を定着させ、この活動から診療報酬で評価されるようなエビデンスを見出していきたい」と森氏は意欲を見せる(写真7写真8)。

 そして、薬剤師への期待がますます高まる中、足元を固めることも大事だが、攻め続けていきたいとも考える。それが医師や看護師など他職種に認められることに確実につながると確信するからだ。森氏は攻めの姿勢の先に拓けてくる薬剤師の未来をしっかり見据え、岡山赤十字病院の薬剤部を牽引していく――。

写真7

写真7

2016年3月には、各地にある日本赤十字病院の薬剤部が連携し、団結力を高めることを目的に日赤キャラクターに「ファーマシスト」の看板を持たせたオリジナルバッジを作った。

写真8

写真8

「研究推進委員会」の活動の手始めとして、学会発表する際に使うスライドやポスターの帯を統一することを決定。この帯を徐々に使用する薬剤部が増えている。

KK-17-02-17287

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