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髙橋 賢成 先生 (横浜市立市民病院)
[薬剤師紹介Smile & Voice ]

2019年12月19日登載/2019年12月作成

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髙橋 賢成 先生

横浜市立市民病院薬剤部部長

髙橋 賢成 先生

医療安全への貢献を第一に掲げ全診療科と協力
新築移転に向け薬剤部の組織改革も進む

横浜市立市民病院

Interview

【急性期、政策医療を担う基幹病院で、すべての診療科への貢献を目指す】

 横浜市立市民病院(院長:石原 淳先生・650床)は、横浜市の基幹病院の1つである。地域に根ざして約60年、急性期医療と政策医療を中心に担ってきた。最初に大規模な再整備事業を行ったのが昭和から平成にまたがる約8年間。さらに現在、2020年の移転に向けて新病院の建築工事が進んでいる。薬剤部では「医療安全への貢献」を第一の使命に掲げ、2016年4月に赴任した薬剤部部長の髙橋賢成(まさあき)氏をリーダーに、人員配置、教育制度、システムなど、さまざまな面からの改革が進められている。

髙橋 賢成 先生

髙橋 賢成 先生

「自分たちの役割やできることを積極的に発信し、一人ひとりの薬剤師が主体的に動くこと。そんな薬剤部を目指して日々努力しているところです」。2020年の新病院移転に向けて、スタッフそれぞれの適性を見極めた、髙橋先生の組織改革は着々と進んでいる。

 横浜市立市民病院は1960年10月、内科、小児科、外科、産婦人科の4科42床で開院した。その後、増科、増床を重ね、1963年には総合病院として承認されている。現在の建物は、1983年から1991年にかけて行われた病院再整備事業により整備されたもので、地下3階・地上8階建て。診療科数は2019年10月現在、34科である。650床の病床を擁し、この中にはICU10床、CCU4床、HCU20床、NICU6床、GCU6床、感染症病床などが含まれる。病棟は一般11、小児病棟、緩和ケア病棟などその他の病棟が5つで計16ある。薬剤師はこれら16病棟すべてに配置されている。

 主な施設認定は、救命救急センター、エイズ治療拠点病院、第一種・第二種感染症指定医療機関、地域がん診療連携拠点病院、地域医療支援病院、地域周産期母子医療センター、災害拠点病院など。チーム医療も進んでおり、IC(感染対策)、NS(栄養サポート)、RS(呼吸療法サポート)、緩和ケア、褥瘡ケア、摂食・嚥下など10チーム以上が活動している。

 こんな同院にあって薬剤部では、「医療安全への貢献」、すなわち「薬物療法による有害事象が生じないよう医師や看護師などを支援すること」を第一の使命として掲げている。

 髙橋氏は、「私たち薬剤師の貢献が特定の分野に偏ることなく、全診療科、全チームに行き届くことが大事だと考えています。そのためには医薬品の適正使用を推進し、適切な情報を提供し、他の職種と情報を共有することが基本です。情報共有において薬剤師には、ハブ的な役割を果たすことが求められます」と語る。

 情報共有のための基本ツールは電子カルテである。ただし、既成の電子カルテシステムには、機能の過不足、使い勝手の良し悪しなどがあり、医療機関ごとのカスタマイズがほぼ不可欠となっている。同院薬剤部でも、各種ソフトを活用して部門システムを構築したり、機能をプラスしたりしている。独自に開発した、薬剤部が入院前面談で収集した患者に関する情報を多職種と共有できるシステム(後述)はたいへん便利で好評である。

【「今できることは今やる」を信条とし、大小さまざまな改革を実施】

 髙橋氏は北里大学病院に27年、女子医科大学病院に5年勤めた後、2016年4月に薬剤部長として同院に赴任した。「私の新人時代はちょうど、薬剤師のあり方が変わっていく時代でした」と髙橋氏が言うように、いまから30数年前、先駆的な施設では、従来なかった取り組みが試行錯誤しながら進められていた。

 髙橋氏自身も北里大学病院薬剤部で、新人時代からいまで言う病棟業務を経験したり、薬歴管理システムの活用など業務のIT化を進めたりと、新しい仕事に果敢にチャレンジしながら成長してきた。自ら考え行動する習慣も身についた。その経験を生かし、着任から3年半の間には、職場の整理整頓から、スタッフの拡充、人材育成制度の新設・改革、他部門との連携強化、市中の保険薬局からの研修生受け入れ推進など多くの組織改革を行った。また、診療報酬を常に意識し、加算要件などを整え成果を上げてきた。また、これらの活動すべてに人を育てるための工夫を加えており、薬剤師それぞれの適正を見きわめながら意見を聞いたり、役割を与えたりしながら進めている。

 「最初に行ったのが、室内に山積みになっていたダンボールを片付けることでした。ちょうど、車いすを使っている職員が仲間に加わったので、それを口実に一気に片付けてスペースを広げ、その後の5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)活動につなげました。これだけで室内はだいぶ明るくなり、動きやすくなりました。お互いの仕事が見えやすくなったこともあり、文字どおり風通しの良い職場になったと思っています。(写真1)薬剤師が年に1〜2名ずつ増え、業務補助者が3名から5名に、SPD(物流・管理など)スタッフが3、4名から8名にと、経営者の理解もあってスタッフを増員できたことで、薬剤師が専門業務に専念しやすくなったのも改善点の1つです」と、髙橋氏が改革の一端を紹介する(写真2、3)。

 スタッフの増員に際しては適正人数をしっかりと算出している。薬剤師一人ひとりに1日のスケジュールを提出してもらい、それを集約して必要なマンパワーをはじき出した。薬剤師の業務内容は医療制度改革や診療報酬改定によっても、他部門との関係によっても変わってくる。それを見越して毎年計画的に人材採用を進めている。

 教育制度にも手を加えた。もともと専門薬剤師、認定薬剤師の取得を推奨してはいたが、それを支援する制度は十分でなかった。そこで、薬剤部に割り当てられている研修費を資格取得や学会参加費用に活用するようにしたのである。関心のある分野があれば手挙げをしてもらい、できる限り希望を受け入れている。近年はがん、緩和、感染などの資格取得を望む薬剤師が多いが、中には老年医学、栄養、糖尿病、HIVなどの分野に興味を示す人材もいる。「何でもできるジェネラリストとしての力を十分つけたうえで、エキスパートとして活躍してくれたら」と髙橋氏は言う。なお、独自のクリニカルラダーを現在、作成中である。

 髙橋氏は、「今できることは今やる」を信条とし、自身を含めて41名いる薬剤師(常勤36名、非常勤5名:2019年現在)には、「気づいたことはとりあえず口に出すこと」を課している。「なんか雑然としてるよね」と誰かがつぶやけば整頓が始まり、「この書類書くの面倒だよね」とつぶやく人がいれば簡素化やペーパーレス化が進む、といような変化に期待しているのだ。「気づくためには常に考えていなければなりません。一人ひとりが頭を使い、行動することが、組織を活性化させ、成長させるためには必要です」と指摘する。

 「いまのところ私の呼びかけで始まった取り組みが多いのですが、ちょっとつぶやくと素早く動いてくれるスタッフも出てきて、手応えを感じています」と髙橋氏。2020年の新病院への移転に向け、新しい薬剤部づくりは着々と進んでいる。

        

写真1

写真1

薬剤部の様子。ワンフロアのためお互いの仕事が把握しやすい

写真2

写真2

SPDスタッフの活躍が薬剤師の負担軽減につながっている

写真3

写真3

ピッキングマシンを操作するSPDスタッフ

【16病棟に担当薬剤師を配置し、担当者不在時のフォロー体制も完備】

 ここからは同院薬剤部の主な取り組みを紹介していく。

 まずは病棟業務だが、同院では病棟薬剤業務実施加算1、2ともに算定している。すべての病棟に担当薬剤師を基本1名、特に薬物療法に関する業務が煩雑な病棟には複数名配置。担当者が不在の場合もほかのメンバーがフォローできるよう、病棟ごとにチームを組んでいるのが特徴だ。

 病棟業務の中心は、入院患者一人ひとりに対する薬の効果、副作用、相互作用のチェックであり、持参薬については病棟担当薬剤師が鑑別を行い、医師と協議して使用する。病棟では医師のほか看護師とも連携。薬に関する相談や処方提案なども行いながら、安全な薬物療法の実施を目指して活動している。

 薬剤管理指導は、服薬指導管理システムを用いて患者情報を把握したうえで行っている。理解を深めてもらうために説明書をわたすほか、患者からの質問や疑問にもていねいに答えている。

【PFMに積極的に参画。入院前個別面談の情報を独自システムで共有】

 同院ではPFM(Patient Flow Management:入退院管理システムの一種)を推進しており、退院に向けた情報収集とそれに基づく支援を入院前から進めている。PFMには薬剤部も積極的に参画している。具体的には、患者の入院前に薬剤師が個別面談を行い、処方歴や手術・検査を予定している患者の休薬指示の確認のみならず、服薬状況や効果・副作用歴など、入院後の薬学的管理に特に注意が必要な内容を予め行っている。(写真4)。

 入院前面談は基本的には経験豊富なベテラン薬剤師が担当し、確認事項の漏れや間違いがないようにしている。この時点では「事前服用薬確認受付用紙」(写真5)に手書きで記入。後にあらためて業務補助者に入力してもらっている。対象は入院予定日の決まった全患者である。

 入院前面談の薬剤師記録は、統一したフォーマットに記入する手順になっている。このフォーマットこそ、前述した「薬剤部が入院前面談で収集した患者に関する情報を多職種と共有できるシステム」である(写真6)。このシステムを使用することで、経験豊富なベテラン薬剤師以外での入院前面談を実施することが可能となった。システム開発にあたったのは五十嵐文薬剤師(写真7)。「以前は記録の書き方が薬剤師によって違い、入力時間や入院後の初回面談に要する時間にも個人差がかなりありました。そこで統一を試みたのです。フォーマットづくりに際しては、手術に携わる麻酔科医や病棟担当薬剤師の意見も取り入れました」と経緯を語る。

 同システムでは、最初に患者のID、名前を電子カルテよりコピーペースト。これにより以前の記録があれば表示され、変更のみで済む。なければ一から記録する。入力する手間をなるべくなくすように工夫されており、薬剤名はもちろん、備考欄に記入するコメントなども選んだ選択肢により自動で各種定型文が挿入される。

 また、薬剤名と入院日から、標準的な休薬期間を自動計算する機能もついていて、手術や処置までに十分な休薬期間が取れないなど不適切な場合はアラート表示される。適切であれば「期間問題なし」と確認できる。適切でなければ必要な休薬期間が表示され、その時点で疑義照会を行うことができる。薬剤名はモニタリング項目とも紐づいていて、病棟担当薬剤師による入院時初回面談の聞き取りの際に、PFM時と相違ないかを確認するだけで面談記録の流用ができ、病棟業務や服薬指導に対する業務の標準化および効率化につながる。

 「ご自宅で薬の管理をどなたがされていたかについての選択肢もあります。ご家族の場合は、病棟で看護師による管理が必要と判断できます。服用薬が6剤以上あるかどうかといった、薬剤総合評価調整加算の算定につながる情報も、一目でわかるように記載できます」と五十嵐薬剤師。記録が済んだら丸ごと電子カルテにはりつけると、重要項目は赤字表示で強調される。関係者がこの画面を閲覧することで患者情報が共有できるというわけだ。

 もちろん、システム開発は本来なら薬剤師の仕事ではない。部内に能力とやる気のある人材がいたからできたことだ。今後はこのシステムを活用しつつ、ベンダーの協力を得るなど薬剤師に負担をかけないでブラッシュアップしていきたいという。ゆくゆくは希望があれば他の医療機関に提供することも考えている。

        

写真4

写真4

薬剤師による入院前面談の様子

        

写真5

写真5

事前服用薬確認受付用紙

        

写真6

写真6

独自に開発した薬剤師記録システムの一画面

        

写真7

写真7

麻酔科医や看護師の意見を聞きながら開発を担当した五十嵐文薬剤師

【すでに10種類以上のフォーミュラリーを運用。災害時の使用も視野に】

 フォーミュラリーへの取り組みは、臨時採用薬を減らせないか、という素朴な思いから始まった。もともとの採用薬は約1,400品目。これに対し、以前は臨時採用薬が月に30〜50品目発生し、そのたびに薬剤部に新たな作業が生じていた。この手間とコストを削減したいと考えたわけだが、「どうせ減らすなら、これを機に、使う薬と使わない薬をしっかり分けて、切り替えの仕組みも明確にしよう」と発想を前向きに転換。院内でこの方針を発表したところ、率先して賛成してくれたのが泌尿器科だった。

 こうしてまずは、前立腺肥大症治療薬と、過活動性膀胱治療薬のフォーミュラリーが出来上がった。同様に、ACE阻害薬、抗ヒスタミン薬、抗HIV薬などについても作成が進み、すでに10種類以上のフォーミュラリーを運用している。

 「このフォーミュラリーの有効性を見るために、過去1カ月間の当院の救急患者さん、他院の患者さん、それぞれの記録に照らし合わせて集計したところ、約80%に適応できることがわかりました。救急患者さんに対応できるなら、災害時にも有効と考えられます」と髙橋氏。地域貢献を使命とする同院にとって、地域全体での活用が可能なフォーミュラリーができたことの意義は大きい。

 横浜市では、横浜市薬剤師会、横浜薬科大学と提携し、モバイルファーマシー(災害対策医薬品供給車両:MP)を稼働させている。髙橋氏は、「将来的には、MPに乗せる薬にも、当院のフォーミュラリーを活用してもらえればうれしい」と期待している。

【機械化を推進し24時間調剤へ。リスク軽減とコストダウンも同時に実現】

 2020年の移転に際し、薬剤部は面積にして現在の1.5倍に広がる。ピッキングマシンは現在の1台から2台に。在庫管理システムも新しく導入する。通路は人がすれ違うのに十分な80cmを確保し、室内のレイアウトも動線を研究して設計し、働きやすい環境づくりを追求したものとなっている。

 こうした工夫により実現しようとしているのは、効率化である。「すでに機械で調剤している錠剤やカプセル、注射薬は、機械を24時間動かすだけで、切れ目のない処方せん対応が十分可能になります。しかも、機械なら薬剤師でなくても動かせます。水剤や粉剤だけは薬剤師がいないとできませんが、当院ではこれらの処方が出ることは比較的少ないので、それほどの負担ではありません。機械化のメリットは時間的制約がなくなるだけでなく、病棟に薬を配置したり、看護師が薬を準備したりする必要がなくなることによるリスクの軽減、コストダウンなどさまざまあります。結果的に薬剤部の人員削減につながる可能性も高いでしょう」と展望を語る髙橋氏。

 目指しているのは、より充実した仕事を、よりコンパクトな組織で行う体制づくりだ。これからもスタッフの成長をサポートしながら、薬剤部としての活動の幅を広げていく方針だ。

KK-19-12-27643

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