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茂木 淳之介 先生 (医療法人社団日高会 日高病院)
[薬剤師紹介Smile & Voice ]

2019年12月25日登載/2019年12月作成

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茂木 淳之介 先生

医療法人社団日高会 日高病院 薬剤部長

茂木 淳之介 先生

薬剤に関する問題を見つけ出し解決策を提案
安全と効率を追求し病院経営にも貢献

日高病院

Interview

【3つのクリニックと2つの病院を経営し、幅広い医療を広域に提供】

 地域の医療機関と連携しながら幅広い医療に取り組む医療法人社団日高会日高病院(理事長:安藤義孝先生、院長:関原哲夫先生・287床)。がん、糖尿病、心臓疾患、脳卒中、腎臓疾患などの分野で専門的医療を提供する一方、24時間365日体制で救急患者にも対応している。薬は一部を除き院内処方で、薬剤部の部長・茂木淳之介氏以下17名の薬剤師は、医療チームの一員として、処方提案や疑義照会を積極的に実施。また、最近は睡眠薬使用における手順書の作成、透析患者の減薬などポリファーマシー問題への対応も積極的に行い、成果を上げている。

髙橋 賢成 先生

茂木 淳之介 先生

「薬剤師だから気づけることは病院内にたくさんあります。その問題を解決することにより薬剤師の存在感は向上するし、病院経営への貢献にもつながります」。茂木氏の取り組みは、薬剤師の能力を高め、活躍の場を広げることにつながっていく。

 日高病院の経営母体である日高会は、1978年8月に設立された医療法人である。前年の1977年7月に開院した日高クリニックをはじめ、現在までに3つのクリニックと2つの病院を運営。また、系列グループとして、特別養護老人ホームを運営する社会福祉法人健生会、主に在宅介護関連事業を営む株式会社エムダブルエス日高を擁しており、グループ全体で群馬県内の広域にわたって医療・介護を提供している。

 日高病院は同グループの中心的存在であり、地域医療支援病院、地域災害拠点病院、群馬県がん診療連携推進病院などの承認・指定を受けている。地域の急性期医療も担い、24時間365日体制で多くの患者を受け入れている。

 得意分野はがん、糖尿病、心臓疾患、脳卒中、腎臓疾患など。腫瘍センター、泌尿器・腹腔鏡ダヴィンチセンター、糖尿病センター、血管内治療センター、ハートセンターなどで集学的治療にあたっている。病床数は287(一般232、HCU4、回復期リハビリ51)床である。

 がんについては、手術や化学療法に加えて最新鋭の放射線治療機器による高度先進医療、免疫療法、温熱療法などを提供し、相談機能も充実。糖尿病分野では、専門医による外来を毎日行い、早期発見、合併症予防に努めながら、糖尿病専門医教育施設として専門医の育成にも取り組んでいる。埼玉医科大学国際医療センター心臓血管外科と連携して提供する低侵襲外科治療、脳卒中発症から4.5時間以内の血栓溶解療法(t-PA治療)にも力を入れる。腎臓疾患関連では、保存期CKDの治療・管理、人工透析、腎臓移植まで実施。移植件数は月1件程度で、全国的にも有数の腎臓移植施設となっている。

【薬剤師17名、業務補助者4名が、病棟業務や院内処方の調剤に対応】

 このように、日高病院では超急性期から慢性期まで幅広い医療を提供しており、薬剤部もこれに準じている。薬剤部の人員は、薬剤師17名、業務補助者4名。4つの病棟すべてに1名ずつの専任薬剤師を配置し、NS(栄養サポート)、糖尿病、腎臓病、褥そう、感染、緩和ケア、認知症の主要7医療チームには、兼任で2、3名ずつの薬剤師を配置している。この2、3名は、経験の浅いスタッフとベテランの組み合わせを基本とし、チーム活動を通した人材育成も行っている。また、糖尿病患者の多い病棟の専任薬剤師は糖尿病チームで活動するなど、効率的な配置がなされている。

 調剤やカルテの入力をはじめとした事務作業などはシフト制で実施している。同院は院内処方を基本としているため、1階にある薬局では1日平均で入院患者分約300枚、外来患者分150枚前後の処方せんに対応した調剤を行っている。常備している医薬品の品目数は約1,300である。

 薬剤部を率いるのは、薬剤部長の茂木氏だ。薬剤師として複数の医療機関で多彩な経験を積んできた茂木氏は、2013年に日高病院に入職。2016年3月から現職を務めている。

 茂木氏によると、一般的な業務のほかに、同院薬剤部オリジナルの手法で取り組んでいる活動としては、主にポリファーマシーへの対応と、ベンゾジアゼピン(BZD)系睡眠薬の適正使用に向けた活動の2つがあるという。以下にそれらの詳細を紹介する。

     

【医師、看護師と協力して持参薬に介入。平均1.5種の減薬に成功】

 日高病院薬剤部では、1泊2日入院などの患者を除き、ほぼすべての入院患者の持参薬に介入している。院内のプロトコルに基づいて、入院後に持参薬チェックを行い、1日分はその薬を使用する。患者の同意が得られれば、2日目以降の薬は基本的に薬剤師が代行処方を行って日高病院の処方に置き換える。ポリファーマシーの可能性のある患者はこの段階で抽出する。対象となるのは、「75歳以上で6剤以上服用しており、過去のアンケートで"内服薬が多い""飲み忘れがある"と回答した患者」と定めている。

 「私たち薬剤師が代行処方の過程で処方精査を行い、対象薬を選定し、多職種カンファレンスを経て主治医に提案します。対象薬選定にあたっては、安全性を担保したうえで、提案に説得力を持たせる意味もあって、主に『高齢者の安全な薬物療法ガイドライン2015』(日本老年医学会)を参照しています。また、減薬後は病棟看護師を中心に経過観察をしっかり行うこととしています」と、茂木氏が減薬までの流れを説明する。

 この一連の作業については「減薬に至るまでの流れ」(図1)に従うことで各職種が明確に役割分担し、過不足なく作業が行われるようになっている。

 なお、薬剤師による代行処方や減薬提案は退院時にも同様に行われる。入院中に追加された医薬品、たとえば胃腸薬などがその後も必要かどうかを症状の有無に照らし合わせて判断し、主治医と相談のうえで可能であれば減薬する。「この作業を行わないと、そのまま外来での漫然投与につながってしまいます。必ず入院時と退院時に薬剤師が介入することで、医薬品の適正使用を推進しています」と茂木氏は介入の意義を語る。

 減薬を目的としたカンファレンスを行った患者は、2018年8月〜2019年5月の10カ月の実績で67名(男性41名、女性26名)であり、平均年齢は77.7歳±9.1歳。服用薬剤の種類数は、介入前の9.0±2.6錠から、介入後には7.5±2.5錠に減っている。本活動の成果もあって、同院では毎月20〜30件、薬剤総合評価調整管理料を算定できている。

        

図1 減薬に至るまでの流れ

図1

※日高病院薬剤部提供の資料を元に作図

【透析患者を対象に1日あたり2種・3.7剤を減薬】

 こうしたポリファーマシーへの取り組みは、透析患者を対象とした実践にも発展している。茂木部長によれば、「透析患者さんにも多くの薬を服用している人が多い。中には減らせるものもあるのではないか」との気づきから、この取り組みは始まった。

 減薬の検討を目的とした透析患者についてのカンファレンスは、週1回、20分、1回につき2名の患者について実施している(写真1)。出席者は透析担当医、透析室看護師長、担当薬剤師の3名と、全体に非常にコンパクトなカンファレンスである。同院の透析患者は約160名で推移している。薬剤師は、この中から毎回2名のカンファレンスの対象者を抽出し、その患者を選んだ根拠を示さねばならない。

 実践の傍ら、調査も行っている。調査期間は2018年8月〜11 月。この間に75歳以上で6剤以上服用している外来維持血液透析患者168名について減薬の可否を検討。25名(男性17名、女性8名、平均年齢83.6歳)に介入した。その結果、服用している薬の数は、種類にして1日あたり平均8.8から6.8に、剤数にして同じく14.5から10.8に減少した。また、減薬の対象となった薬は、消化器官用薬、ビタミン補給剤、鎮痛薬、抗ヒスタミン薬が多いこともわかった(図2)。

 「中止後も症状が再燃することはありませんでした。つまり、漫然処方であった可能性が高いと考えられます。また、配合剤に切り替えることができた症例も多かったことから、薬剤師の介入により処方を適正化する余地は、透析患者さんにおいてはかなりあると見ています。減らせる薬が想像と違っていた部分も少しあり、調査の意義を感じています」

 このように透析患者のポリファーマシーに着目した調査・実践は、全国的にもほとんど報告されておらず、2019年6月に行われた「第64回日本透析医学会学術集会・総会」で「維持血液透析患者の処方適正化の取組みと現状」と題して口演し、反響を得た。同調査結果は、今後も多くの透析施設で、処方の再検討を行う際の参考になるに違いない。

写真1

写真1

週一回行われる透析患者を対象としたカンファレンス

        

図2

図2

※対象:75歳以上で6剤以上服用している外来維持血液透析患者168名
※日高病院薬剤部提供の資料を元に作図

        

【不眠と不穏を明確に区別し、睡眠薬、抗精神病薬の選択手順を明確化】

 BZD系睡眠薬適正使用に関する取り組みは、病棟看護師からの相談を機に始まった。

 「『眠れない患者さんに睡眠薬を使ってもらうと、かえって興奮してしまう。どうしてだろう?』という相談が寄せられたのです。話をよく聞いてみると、単なる不眠ではなく、不穏の患者さんにBZD系睡眠薬を使用していることがわかりました。そこで、不眠の場合の薬の使い方、不穏の場合の薬の使い方、それぞれの指標をつくることにしたのです」

 ちなみに不眠と不穏の区別は専門知識がないと難しいが、茂木氏は心療内科医などとも相談したうえで、「入院前から眠れないという症状があった患者さんは不眠の可能性が高く、入院後に何らかのイベントがあって一時的に眠れなくなった高齢患者さんは不穏の可能性が高い」とわかりやすく説明することにして、看護師などにも伝えた。

 不眠に対する睡眠薬の使用指標は、アルゴリズムになっている。それまで同院では、病棟によって種類も剤型も使い方もまちまちのまま、BZD系睡眠薬が配置されていたが、まずはこれを非BZD系の3種類に集約し、その選択法や使用法を示したのである。統合失調症治療薬や抗精神病薬の服用歴の有無、BZD系睡眠薬の併用の有無、転倒などのリスクの有無などが判断のポイントだ。

 同アルゴリズム導入にあたっては、各診療部の部長クラスが集まる診療部会で繰り返し説明し、理解を得た。新たに先発品を採用するなど、コストより質を重視したが、大きな反対がないまま導入できた理由を茂木氏は、「BZD系睡眠薬の副作用が大きな問題になっているといった社会的背景を紹介したり、薬剤部主導でありながら、認知症サポートチームのメンバーを巻き込んで実用的なアルゴリズムをつくり上げたこと、精神科医に監修してもらったことなどが大きい」と分析。

 さらに、患者が不眠を訴えた際の睡眠薬処方の選択肢を電子カルテに盛り込み医師の負担を軽減。病棟に置く睡眠薬の種類が減ることで、看護師の業務が簡素化され、リスクが軽減されることなども強調した。

 2019年3月に運用開始して以降、クレームはまったくないという。「まさにWIN-WINの取り組みといえます。運用期間がまだ短く、はっきりとはいえませんが、転倒が減るなどの効果も病棟スタッフの実感としては耳に入っています」と茂木氏が手応えを語る。

 不穏の問題は、このように不眠に対する対応を考えているうちに浮上してきたという。不穏についてはアルゴリズムにはせず、文章で示した。作成の段階から心療内科医に参加してもらい、3種類の抗精神病薬を順序立てて使う方法を示した。こちらも2019年3月に運用を開始。電子カルテへの登録も同様に済ませている。具体的な成果の検証は今後の動向を待つことになるが、病棟看護師からは、「夜間に呼ばれることが減って楽になった」といった声が届いているという。

写真2

写真2

病棟看護師とは密に情報交換を行っている

【最大の課題「人材育成」を促進し、チーム医療、病院経営にさらに貢献】

 茂木氏は2016年の着任時、チーム医療への参画、専門性を生かすなど部としての目標を明確に掲げた。そのためには人材教育が重要と考え、従来の教育システムの見直しも行った。大きな変化としては、部長の茂木氏を含め職位の高い者が行っていた新人対象の現場指導を、1年上の先輩に担当してもらうようにしたこと。茂木氏はこれを「屋根瓦方式」と呼び、その利点として、メンター(指導者)とメンティー(被育成者)の関係を築きやすいこと、メンター自身の成長を期待できること、組織の活性化などを挙げる。

 「毎年、新人が入職することが前提の考え方ですが、中途採用者も含めてこの屋根瓦方式で育ててみたいと思っています」と抱負を語る。

 薬剤部スタッフに身につけてほしい能力としては、「問題を見つけ出し、解決する能力」を第一に挙げる。前述した透析患者のポリファーマシー問題へのアプローチなどもその好例で、「薬剤師だから気づけることが病院内にはまだまだあるはずです。それを皆で見つけて、うまい解決法を探っていきたい」と力を込める。

 専門薬剤師、認定薬剤師、各種認定資格の取得も推奨しており、簡易懸濁法認定薬剤師、認定実務実習指導薬剤師などを輩出。現在はがん、腎臓病、栄養、感染などの資格取得を目指しているスタッフがいる。茂木氏自身も群馬県初の日本褥瘡学会認定薬剤師(2009年取得)として活躍。いまでは同学会評議員として、院外での啓発・教育活動も担う立場にある。専門性を身につけて活躍する薬剤師が多数出てくることを期待している。

 「生産性向上、患者さんへのより良い対応など、課題を挙げればきりがありませんが、どれも皆、人材があってこそできること。その観点からも、しばらくの間は人を育てることに重点を置いていきたいと思います」と茂木氏。薬剤部スタッフの成長が、チーム医療や病院経営にさらに貢献していくことだろう。

KK-19-11-27484

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