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渡邊 裕之 先生、南 晴奈 先生 (九州大学病院)
[薬剤師紹介Smile & Voice ]

2021年08月30日公開/2021年8月作成

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渡邊 裕之 先生

九州大学病院
副薬剤部長
(現・福岡徳洲会病院 薬剤部長)

渡邊 裕之 先生

南 晴奈 先生

九州大学病院
がん専門薬剤師

南 晴奈 先生

「連携充実加算」を追い風に
連続性のある薬学的管理を展開

九州大学病院

Interview

【広域医療圏の拠点として先端医療の研究と実践に取り組む】

九州大学病院は、臨床・研究・教育の3つの役割を担い、臨床面では高度医療を主体に診療を展開している。近年は遺伝子治療、細胞免疫療法、再生医療、移植医療などの最先端医療をいち早く導入し、2019年には難治性の白血病、リンパ腫に対するCAR-T細胞療法の実施医療機関に認定された。また、移植医療では造血幹細胞移植、腎移植、肝移植において全国首位(2019年度)の症例数を誇る。

昨年から猛威を奮うCOVID-19感染症に対しては、2005年に設置した「グローバル感染症センター」を中心にこれまでの経験を活かした感染症対策を講じ、関係部署と緊密に連携しながら患者の治療にあたっている。

がん医療の分野においては「都道府県がん診療連携拠点病院」と「小児がん拠点病院」の指定を受けており、地域のがん診療の中核的役割を担うため、福岡県内だけでなく九州一円からがん患者が来院している。小児から高齢者まで全世代のがん患者を受け入れるが、超高齢社会に伴い、高齢者の割合が急増している。

2018年2月には「がんゲノム医療中核拠点病院」(全国12拠点)の指定も受け、全国に先駆けて「がんゲノム外来」を開設。同大学大学院医学研究院に新設された「プレシジョンメディシン研究センター」と有機的に連携しながら、研究から臨床応用への素早い展開を目指している。

【「チーム医療」に貢献するために医薬品安全管理体制の充実を目指す】

渡邊 裕之 先生

渡邊 裕之 先生

薬剤部には21年3月現在、95名の薬剤師(教授・准教授を含む)のほか、事務職員(パートを含む)3名、技能補佐員・事務補佐員8名が在籍する。組織体制は9部門で構成され、病棟にも各階に配置された薬剤管理指導室を拠点に薬剤師を配置する。「3交代勤務のためにグループ制にしており、日勤外勤務や振替休日などのシフトによって薬剤師が不在の病棟が出ないようにカバーし合っています。また、病棟担当者を含めグループ内で中央業務も支援します」と副薬剤部長の渡邊裕之先生は説明する。

日常業務において薬剤部が特に重視しているのが「チーム医療」への貢献だ。医師や看護師らと協力して薬剤師が積極的にチーム医療に取り組めるよう体制を整備するとともに、チーム医療において自分たちに最も求められている役割についても検討を重ねてきた。

「近年、作用機序が複雑な薬剤が多く使用されるようになり、相互作用や多剤併用に関しても高度化・複雑化してきています。医薬品の専門家としてより積極的に薬物療法に関与することが他職種からも期待されていますし、組織的な医薬品安全管理体制の充実を目指していかなければならないと考えています」と渡邊先生は語る。

例えば、薬剤部では、入院・外来を問わず、安全管理が特に必要な薬剤を服用している患者に対して、副作用の早期発見や重篤化防止のための服薬指導・薬学的管理を熱心に行っている。2019年度における薬剤管理指導患者数、算定件数、退院時指導件数は全国の国公立大学病院においてトップクラスの実績を挙げている。

一方、「病院経営の観点においても医薬品安全管理が果たす役割は大きいものがあります」と渡邊先生は指摘する。例えば、術前中止薬の抽出と指導を徹底することは、周術期の薬物療法の安全性を担保するだけでなく、手術の延期を回避し、手術室の効率的な運用に貢献するという。また、病棟における薬物療法の安全性を担保し、最適化を図ることは在院日数の長期化を防ぐことにもつながる。

1992年の第2 次医療法改正により薬剤師が医療の担い手として明記されて以来、薬剤師の業務は調剤室から病棟、そして外来へと広がりを見せている。また、近年は「医師の働き方改革」に伴い、医師から薬剤師にタスク・シフティングされる業務も増えてきた。こうした状況の中、渡邊先生は「限りある薬剤師のマンパワーを有効活用するうえで、薬剤師がその業務を行うことが病院の理念の実現に合致するのかという視点から判断することも大切です」と話す。

【安全で確実な治療を提供できるよう化学療法の適正管理に努める】

南 晴奈 先生

南 晴奈 先生

薬剤師の活躍の場の一つである外来化学療法室は多職種が連携しながら運営されており、薬剤師の主な役割は抗がん薬の調製と副作用モニタリングを含む服薬指導である。抗がん薬の調製は前日までに事前監査を行い、当日の診察で実施が確定すると検査値を確認したうえで、前投薬を含めたすべての薬剤の調製を行う。

「事前監査では投与量やスケジュールのチェックだけでなく、必要な検査が実施されていることも確認し、オーダーされていない場合は主治医に連絡して相談・依頼するなど、抗がん薬の適正管理や副作用の早期発見にも努めます」と、がん専門薬剤師の南晴奈先生は調製業務における留意点について話す。

服薬指導に関しては、がん専門薬剤師などの専門資格を持った薬剤師を指導担当者として外来化学療法室に常時2名配置し、点滴中にベッドサイドで患者の面談を実施している(写真1・2)。また、看護師と協働し、副作用を未然に防ぎ、治療継続率を上げるために日常生活に配慮した副作用対策にも取り組んでいる(写真3)。さらに、過敏反応や血管外漏出といった抗がん薬投与中のトラブルにも対応し、発生時にはベッドサイドに駆けつけ、緊急処置などの対応についてアドバイスすることもある(写真4)。

2015年には経口抗がん薬のサポートに特化した「がん専門薬剤師外来」を開設(写真5)。この外来には、がん専門薬剤師、がん薬物療法認定薬剤師、外来がん治療認定薬剤師といった専門資格を持つ薬剤師がローテートで常駐し、年間1,000件を超える患者面談を実施している。

一方、新規にがん化学療法を始める場合は入院して導入するが、その際のサポートは病棟薬剤師が受け持つ。病棟薬剤師は治療開始前に患者および患者家族に対して治療のスケジュールや副作用について説明し、治療導入後は医師、看護師と協働して副作用のモニタリングを行う。また、退院後の日常生活を見据えてライフスタイルの聴取や、副作用への対応を指導するのも病棟薬剤師の仕事だ。

「入院のレジメン事前監査は調製担当と病棟担当の薬剤師が協働で行います。病棟薬剤師は主にレジメン適応の妥当性について評価します。外来化学療法の事前監査と同様にベースラインの確認に必要な検査がオーダーされているかどうかもチェックし、不足している検査値があれば主治医に依頼します」と南先生は説明する。

治療の場所が病棟から外来に移行した後も継続したサポートが行えるように情報共有体制も整備。入院中に実施した化学療法の治療内容や副作用情報は、病棟薬剤師によって退院時の指導記録に記載されて外来化学療法室の薬剤師に引き継がれ、副作用のサポートや患者指導などに役立てられる。

薬剤部では、がん化学療法にかかわってきた経験と実績を生かし、企業と共同でオートメーション型抗がん薬調製支援装置『DARWIN-Chemo』を開発した。この装置は調製後の輸液バックの表面に残存する抗がん薬をオゾン水で洗浄し、エアブローで乾燥させる機能を世界で初めて搭載し、ストックトレイ方式にしたことで長時間自動運転も可能にした(写真6)。「この装置の導入によって、より安全で効率的な調製業務を実現し、削減できる薬剤師のマンパワーを患者さんの服薬指導や他職種との連携強化などに充てることができました」と渡邊先生は効果を語る。

さらに、近年は福岡県内の複数の医療機関と合同で抗がん薬の曝露防止対策にも取り組み、『SMILES』を立ち上げ、その中心的な役割も担う。「SMILES では米国薬局方(USP800)に準拠したハザーダス・ドラッグ(HD)曝露対策の推進と普及を目指しています」と渡邊先生は説明する。

参加する医療機関の薬剤師や看護師はUSP800の考え方を学んだうえでツールキットを用いてギャップ分析を行い、HD曝露対策を講じていく。また、ギャップ分析で抽出された課題の解決に役立つツールを作成しつつ、施設間の連携を図ってよりよい曝露対策の方法を共有している。最近はWEBセミナーを定期的に開催し、全国に拡大した活動になりつつある。

写真5

写真1 化学療法中の患者のベッドサイドで患者指導をする南先生

写真6

写真2 外来化学療法室はベッド11、リクライニングチェア10の計21床

写真3

写真3 外来化学療法室では看護師と情報共有を欠かさない

写真4

写真4 抗がん薬投与中のトラブル発生時には緊急処置などの対応をアドバイス

写真5

写真5 医師の診察前に実施されるがん認定薬剤師による薬剤師外来

写真6

写真6 入院患者の抗がん薬の3~4割は、「DARWIN-Chemo」が夜間に調製する

【保険薬局との連携を段階的に進め、地域でも適切な薬学的ケアを提供】

薬剤部では2014年に福岡市薬剤師会とともに「薬薬連携協議会」を設立して以来、本腰を入れて薬薬連携に取り組んできた。最新のトピックスは、2020年度の診療報酬改定で新設された「連携充実加算」の運用を開始したことだが、この下地となったのが2019年2月から地域で構築してきたirAE(自己免疫疾患関連副作用)のモニタリングシステム(FRENS)だ。この連携にはICI(免疫チェックポイント阻害薬)治療を実施する福岡市を中心とした10病院と福岡市薬剤師会に所属する保険薬局700店舗が参加し、ICI治療中から治療中止・終了後も継続したirAE のフォローアップが地域全体で実践できる体制を作り上げている。

それ以前より、経口抗がん薬に関しては、がん専門薬剤師外来の患者面談で使用する「副作用確認シート」を保険薬局と協働で作成し、患者が受けている治療のレジメン、投与量、投与スケジュールといった治療の基本情報、2回目以降の残薬に加え、出現している副作用、それに対する支持療法の処方提案の内容など病院薬剤師が行った薬学的介入のサマリーを情報提供してきた。そして、その情報を受け取った保険薬局では、自分たちが投薬時に行った服薬指導の内容と新たに得られた患者情報をがん専門薬剤師外来にフィードバックする仕組みになっていた。

「この連携によって経口抗がん薬を服用する患者にもきめ細かい副作用対策が可能となり、着実に治療効果が出ていました」と南先生は評価する。一例を挙げると、結腸・直腸がんの術後補助化学療法を開始した29名の患者を対象に薬薬連携によるサポートの有無で治療効果を比較したところ、相対用量強度に大きな差は見られなかったが、治療完遂率では介入群は非介入群に対して約2倍の差があった。

「病院と保険薬局の薬剤師がシームレスに連携すれば薬物療法の有効性・安全性が向上することを実感しました。それで注射薬についても同じ仕組みを作りたいと考えたのです」と南先生はFRENS構築の狙いを話す。ICIは治療中だけでなく治療を中止あるいは終了した後も副作用が出現する可能性があるため、お薬手帳に専用のシールを貼り、ICI治療を行っていなくてもirAEモニタリングが必要な患者であることを保険薬局の薬剤師には知らせていた。しかし、病院からの情報提供の内容はこの段階で止まっていたのだ。

そこで、院内の免疫チェックポイント阻害薬適正使用委員会(チームICI)が作成した「irAE モニタリングシート」を使って薬局薬剤師が副作用の出現状況を確認し、病院に情報をフィードバックする仕組みにした。同時に「病院から提供された情報を的確に活用できるようスキルを向上してもらうために薬局薬剤師向けの勉強会を開催するようになりました」と南先生は説明する。

ちなみに多職種で構成されるチームICIの活動は、薬剤部からの呼びかけによって始まった。「ほぼすべての職種を網羅し、その人数も60名ほどが参加する勢いのあるチームで、現在は、院内の正式な組織であるがん薬物療法部会(写真7)に発展し、有害事象にターゲットを絞って支持療法をサポートするための研修や院内体制の整備を行っています。チームICIはこの部会の一部門として位置づけられています」と渡邊先生と南先生は説明する。

このように注射薬での薬薬連携に取り組んでいたことで、2021年2月に「連携充実加算」(図表1)の運用に踏み切った際にはスムーズに導入できたという。薬剤部では、これまでの薬薬連携の取り組みを通して"どんなことをフィードバックすればいいのかわからない"といった薬局薬剤師の戸惑う声を何度も聞いていたので、新たにレジメン毎に返信用の「支援シート」を作成し、それをもとに薬局薬剤師がモニタリングやヒアリングを行い、知り得た情報を病院にフィードバックしてもらう仕組みにした。

「連携充実加算においてはまず保険薬局より返信をいただくことが重要です。この返信率を上げるための取り組みとして、当院では返信用支援シートを作成したわけですが、レジメンごとに副作用やフォローアップの時期などを細かく記載したことで返信率がより高まっていると感じています」と南先生は話す。

運用開始から約2カ月経過した21年3月末時点での返信率は約6~ 7割。FRENSの下地があったとはいえ、「注射薬のサポートは初めて」という保険薬局がまだまだ多い中、滑り出しの数字としては順調だ。「実は特定薬剤管理指導加算2の届出をしていない保険薬局からの返信もあります。私たちが積極的に診療情報を提供し、保険薬局における服薬指導をサポートすることで、患者さんにしっかり寄り添える支援につながっていることを実感しています」と南先生は手応えを語る。

今後の大きな課題は対象患者の拡大だ。薬剤部のマンパワーの問題もあり現在は「副作用が発現している人、治療が変更になった人などサポートがより必要な人を優先的に選んでいる状況です。一人でも多くの患者さんを薬薬連携のもとサポートしていけるよう努力していきたい」と南先生は目標を語る。

一方、渡邊先生は「連携充実加算という診療報酬の後押しを受けられるようになった今こそ、福岡市薬剤師会ともさらに緊密に連携しながら、この地域の薬薬連携を加速させていきたいと考えています。病院薬剤部はチーム医療で培った知見やノウハウを"連携"という形で地域に落とし込み、地域のニーズに応えたうえで地域連携を推進させていく役割があるからです」と抱負を語る。

写真7

写真7 がん薬物療法部会の様子

図表1 連携充実加算の運用スキーム

図表1

※九州大学病院薬剤部提供の資料を基に作成

【薬薬連携の先にある世界を目指し、真の医療連携を構築していく】

「病院完結型医療」から「地域完結型医療」にシフトする中、医療の中心は入院から外来・地域を主体とした現場に移り変わっている。「薬剤師はこの変化に柔軟に対応し、自分たちの職能を最大限に発揮することが求められています。すなわち、外来・入院・在宅の流れの中で薬物療法の連続性を念頭に置いた薬学的管理を展開するとともに真の医療連携を構築していくことが重要です」と渡邊先生は説く。

そのためには「高い生命倫理観と薬学専門知識を身につけた薬剤師を育成することが不可欠です。臨床とのつながりを意識しながら薬剤師教育にも積極的に取り組んでいきたい。九州大学病院薬剤部で培った経験を、福岡徳洲会病院で生かしたい」と渡邊先生は意欲を見せる。

地域医療のリーダーとして九州大学病院薬剤部は、薬薬連携のその先にある世界――すなわち患者が療養の場を移り変わっても、薬剤師同士がバトンをしっかり受け継ぎながら、その時々に応じた適切な薬学的ケアを提供し、患者が安心して治療や療養に専念できること――を目指し、これからも地域の薬剤師を巻き込みながら先進的な取り組みに挑戦していくことだろう。

KKC-2021-00793-2

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