KYOWA KIRIN

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序章手に入れよう!添付文書を読み解く技術

薬局窓口で抗癌剤を出されたら

薬局窓口で、患者さんから抗癌剤を出されて「これはなんのくすりですか?」と聞かれたら、あなただったらどうしますか? このエピソードはつい最近、どんぐり薬局たかまつであったことです。

 「炎症を止める目薬と抗生物質の目薬に、痛み止めの飲みぐすりが出ていますが、このくすり以外に、なにかお飲みになっているくすりはありますか?」と、私は型どおりの服薬指導をはじめたのですが.........。
 「胃ガンの手術をして、退院するときに"このくすり"をもらいました。これはなんというくすりでしょうか? 副作用はありますか?」と、眼科クリニックの処方せんを持参した53歳の女性の患者さんが差し出したのは"5−FU"でした。一瞬、"この患者さんは、ほんとうは告知を受けていないのではないか?"と、戸惑いましたが、私はすぐにくすりの説明をする決心をしました。なぜなら、患者さんは実際に"5−FU"を飲んでいるのですから。
 「このくすりは"5−FU"という抗癌剤で、ガンの再発を防ぐために投与されています。まず、ガンという病気は悪い細胞がどんどん増えてしまう病気だということは、知っていらっしゃいますよね」
 「はい! 知っています」
 「細胞は増えるときに合図を出します。この合図をねらって抗癌剤はガン細胞に達します。そして細胞の分裂を止めるのです」
 「なるほどねぇ」
 「ところで、身体の中には活発に細胞分裂をしている正常な細胞があります。骨髄の中の血液の成分をつくる細胞と毛根、つまり毛髪をつくるところです。抗癌剤はこの正常な細胞の分裂も止めてしまうことがあります。すると、血液の成分が減って貧血になったり、髪の毛が抜けたりします。
 髪の毛が抜ける場合は、かつらを使用することができますが、血液の成分が減ってくると貧血や出血が止まらない、感染症にかかりやすくなるなどの弊害が出てきます。そのときにはくすりを減らしたり、一度くすりを飲むのをやめたりしなければなりません」
 「髪の毛が抜けるのは自分でもわかりますが、血液の成分が減ってくるのは自分でわかるのですか?」
 「血液の障害は、なかなかわかりにくいのですが、アザができやすくなったり、バラバラと蕁麻疹のような紫色の出血斑が出たり、歯肉から血が出たりするようでしたら要注意です。他にのどが痛くなるなど、風邪のような症状が出るときがあります。思いあたる節があったらすぐにお医者さんのところへ行ってください」
 「はい」
 「そして、抗癌剤を飲む人にもっとも多く現れるのが吐き気、腹痛などの胃腸障害です。この症状はくすりの量を減らしたり吐き気止めのくすりを使うと楽になることがありますので、お医者さんに相談してみてください」
 「はい、わかりました」と、患者さんは納得した様子でお帰りになりました。

医師の読み方、薬剤師の読み方

 医師のなかには「副作用を教えると、患者さんが怖がってくすりを飲まなくなる」という方がいらっしゃいます。確かにそういう患者さんもいるでしょう。しかし最近は、多くの患者さんが"自分の治療をよく知りたい、納得したい"と感じるようになりました。インフォームド・コンセントの波が、少しずつ浸透し、患者さんの権利意識が向上してきたのですね。社会は確実に進歩しているのです。
 ところで、この5−FUを投与した医師は、きっと患者さんに、くすりの効果を中心に説明したことでしょう。医師がくすりの効果を重視するのであれば、薬剤師は副作用に注目し、医師が人体の特性に合わせてくすりを使うのであれば、薬剤師は物質としてのくすりの特性を把握する必要があります。医師と薬剤師の2つの違う役割が、治療を最善のものにし、患者さんの安全を守ることができるからです。そうであれば、医師と薬剤師の添付文書の読み方は"相対的"に違うものになるはずです。

副作用は3つの型に分類できる

 患者さんから5−FUの「副作用はありますか?」と聞かれたときに、最初に取り上げたのは"脱毛と血液障害"でした。なぜそうしたかというと、これらの副作用は5−FUの薬理作用の延長線上にある副作用であるため、起きる確率が高いからです。次に取り上げたのが"胃腸障害"です。これは、5−FUという抗癌剤の主要な毒性で比較的早期に現れるためです。また胃腸障害は、重要な副作用として添付文書に記載されている"重篤な腸炎や脱水症状"の初発症状でもあるからです。そして今回は、白質脳症やアレルギー性副作用である間質性肺炎などについては、滅多に起きないので取り上げませんでした。患者さんの様子を見ながら必要に応じて説明しても遅くはないと判断したからです。
 これらの副作用分類と情報発信については、「鉄則 その3」に示しました。

薬物相互作用をどうとらえるか

 2つ目のエピソードは、どんぐり薬局材木町でのできごとです。65歳の女性の患者さんから電話があったのは、メチルジゴキシン錠 0.1mg、20日分を調剤した翌日でした。
 「昨日いただいた心臓のくすりの説明書に"他のくすりを飲んでいる方は、必ず医師または薬剤師に知らせてください"と書いてありますが、実は胃腸科クリニックから、トリメブチンマレイン酸塩製剤、ジアスターゼ配合剤、タカヂアスターゼ・生薬配合剤散をもらって飲んでいるのですが?」と、心配そうです。
 「あー、その程度でしたら大丈夫ですよ。心配しないで一緒に飲んでください」
 「実は、10年前に甲状腺の摘出をやりまして、いま甲状腺科から、レボチロキシンナトリウム 25μg1錠をもらって飲んでいるのですが、こちらも大丈夫でしょうか?」
 「ちょっと待ってくださいね。添付文書には"レボチロキシンナトリウムとの併用によって、ラメチルジゴキシン錠の血中濃度が低下するかもしれない"という記載がありますが、それは"いまは、心配いらない"と思います」
 「え? どうして"いまは"なのですか?」
 「メチルジゴキシン錠の血中濃度が効いてくるくらい上がるためには、飲みはじめてから7日間はかかりますので、血中濃度がちょうどよいか、低いかは、そのときにしかわからないからです」
 「そうですか! そうすると動悸や不整脈がおさまるのも、7日間くらいはかかるのですね」
 「そうです。ですから、いまはレボチロキシンナトリウム もメチルジゴキシン錠も飲み続けることが必要です。どちらも大事なおくすりなのですから。7日間経ってからまた考えましょう」
 患者さんは一応、納得して電話を切りました。

 "メチルジゴキシン錠と制酸剤およびレボチロキシンナトリウムは、メチルジゴキシン錠の血中濃度を下げるかもしれない"ということで「併用注意」になっています。おそらくこの患者さんへの、タカヂアスターゼ・生薬配合剤散の影響は微々たるものであるとは思いますが、その確信はないし、レボチロキシンナトリウムのメチルジゴキシン錠に対する影響もどの程度かわかりません。また、添付文書の相互作用の併用注意はやたら多くて、それが臨床的に起きるかどうかは、添付文書の記載だけでは判断できません。
 したがって、この患者さんには、レボチロキシンナトリウムもメチルジゴキシン錠も必ず飲むように勧めました。それは両方とも飲まなければならないくすりだし、代替品がないくすりだからです。
 薬物相互作用をどう判断するかについては、「鉄則 その7」に示しました。

薬物動態値は臨床判断の根拠になる

 血中濃度半減期の4~5倍以内の投与間隔でくすりを投与するとき、くすりがほんとうに効いてくる定常状態に達するのには、半減期の4~5倍かかるのです。メチルジゴキシン錠の半減期は36時間ですから約180時間、すなわち7.5日かかることになります。したがって、レボチロキシンナトリウムとの相互作用で、血中濃度が低くて治療効果が上がらないのか、それとも、それでも十分効果が上がるのかは、その時点まで待たないとわからないのです。この判断の根拠である薬物動態値の応用に関しては、「鉄則 その4」に示しました。
 「添付文書を読む」という行為は、ただ単に言葉の意味を読み取るというだけではありません。なぜその内容が書かれたのか、どのような背景をもつ記述なのか、治療にどう影響するのかを理解したうえで、今、自分の目の前にいる患者さんの状況と照らし合わせながら、添付文書を読む必要があります。
 ですから「添付文書の読み方 10の鉄則」は、添付文書を項目ごとに説明していくという方法ではなく、大まかな項目ごとに添付文書の中のどこの記述を、どのように参考にすればいいのか、添付文書に書かれていないことはどのように見つけ出せばよいのか、添付文書の中も、参考資料も縦横無尽に読んでいこうというスタンスで成り立っています。

 添付文書を医薬品情報の宝庫にするには、添付文書の読解技術が必要です。これからその読解技術を、「添付文書の読み方 10の鉄則」として展開いたします。どうか、楽しんでください。「10の鉄則」を読み終わったとき、あなたは毎日仕事であつかっているくすりが、これまでよりずっと身近なものになっている事実に気がつき、きっと驚くことでしょう。

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