KYOWA KIRIN

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【鉄則その1】 「薬理作用と効能効果、副作用」

「薬理作用」「効能効果」「副作用」は同一延長線上にある。
したがって、3つの項目を同時に見ながら相互のつながりを探そう。

CASE

大山さんは、53歳の男性、糖尿病。大きな建設会社の盛岡支店長です。II型(インスリン非依存性)糖尿病で、今日は血糖降下剤が変更になっています。

[処方内容]

グリベンクラミド錠 2.5mg
2錠
分2  朝夕食前
7日分
ベザフィブラート徐放錠 200mg
2錠
分2  朝夕食後
7日分

 「大山さん、血糖値高かったのですか? 今日は糖尿病のおくすりが変わっていますよね?」
 「そうなんですよ。ちょっと肥ったせいか先日、朝ご飯を食べないできて測ったときの血糖値とグリコヘモグロビン(HbA1c)が高いそうなのです。先生が"少し強いくすりに変えてみます"と言っていました」
 「そうですか、それで今までグリクラジド錠だったのが、今日からグリベンクラミド錠に変更されたのですね」
 「そのようですが、このグリベンクラミド錠というくすりは強いのですか? 前に一度グリクラジド錠で低血糖を起こし、冷や汗が流れてきて、どきどきして立っていられなくなってしまい、まわりにいる人に迷惑をかけたことがあるのです。このくすりは大丈夫ですか?」
 「そうですね。グリベンクラミド錠は、2.5mgという少量で、グリクラジド錠40mg と同じくらい血糖値を下げます。したがって、低血糖という副作用が発現する可能性は前より大きいわけですから、注意しなければなりませんね。でも、グリコヘモグロビンが高いということは、大山さんが不摂生しているということですよ」
 「先生にもそう言われました。でも、出張は多いし、外に出れば外食ばかりでお酒もつきものですからねぇ~、これは中間管理職の悲哀ですね」
 「仕事のせいにしないで! これは自分のためですよ。意志を強くもってちゃんとコントロールしましょう」
 「ハイハイ、わかりました」と、言って大山さんは帰りましたが、どうもよくわかっていないようです。
 II型(インスリン非依存性)糖尿病の場合には、食事療法、運動療法が行われますが、それで血糖値がコントロールできない場合に血糖降下剤を使います。血糖降下剤は、最初に弱いトルブタミドなどが投与され、次いでグリクラジド錠、そしてグリベンクラミド錠というように、徐々に血糖降下作用が強いものに変わっていきます。
 血糖降下剤の主要な薬理作用である血糖降下作用は、そのまま主要な副作用である低血糖発現につながります。"低血糖という副作用が、薬理作用の結果である"ということは、とても重要な点です。なぜなら、この原則は、すべてのくすりにあてはまるからです。降圧剤の降圧効果は、効きすぎると"低血圧や立ちくらみ"につながりますし、利尿剤は尿と一緒にカリウムも排泄しますので"低カリウム血症"につながります。

5カ月後、再び薬局窓口で:

 「大山さん、少し痩せましたか? でも、元気そうですね」
 「うん! 朝の散歩とスポーツクラブのスイミングで、体重を3kg落としたよ。おかげで体調がとてもいい」
 「そうですか、よかったですね」
 「うん、朝食前の血糖値も110mg/dlだし、グリコヘモグロビンも5.6%(JDS値)と基準値内だそうだ」
 「おや! 大山さん、糖尿病のコントロール状況を、数値で言えるようになりましたね。これはすごい」
 「実は、忙し過ぎて無理をしていた本社の部長が眼底出血を起こしてねぇ。彼も糖尿病なんですよ。私も"これでは駄目だ"と思って一大決心をしたんだ」
 「えらい! 奥さまも喜んだでしょう」
 「うん、ますます"あんまり飲んじゃ駄目"とうるさくなったがね」と言いながら、大山さんはとてもうれしそうでした。

添付文書解析

薬効薬理の動物実験による薬理作用

 グリベンクラミド錠の添付文書の薬効薬理の項を見てみましょう。そこには次のように記載されています。

1)血糖降下作用;健康成人にグリベンクラミド錠を投与したとき、12時間以上にわたって血糖降下作用を示した。
2)脂質代謝に及ぼす影響;ラットを使った実験で、グリベンクラミド錠は、抗脂肪分解作用および血中NEFA(非エステル型脂肪酸)、トリグリセライドの低下が認められている。

 このように、通常どのくすりでも薬効薬理には、主要な薬理作用につづいて、動物実験によって現れる薬理作用がいくつか示されていますが、この動物実験での作用は、必ずしも臨床で発現するとは限りません。これを明らかにするのが、添付文書の効能効果です。
 グリベンクラミド錠の効能効果は、血糖降下作用に基づく"II型(インスリン非依存性)糖尿病"だけで、脂質代謝作用に基づく"高脂血症"の適応は認められていません。つまり、"人での脂質代謝作用は、グリベンクラミド錠の臨床用量では発現しない"と考えていいでしょう。
 グリクラジド錠の薬理作用には、かつて、血糖降下作用の次に「動物実験による血小板機能抑制作用」という薬理作用が記載されていました。現在は血糖降下作用のみ記載されています。添付文書も進化するのですね。
 脳循環代謝改善剤のニセルゴリンの薬理作用には、かつて血小板凝集抑制作用が記載されていました。しかし、これらのくすりには、血栓・塞栓の治療という適応症はありません。つまり、"薬理作用として書かれていても、臨床用量ではそれらの作用は発現しない"と考えてよいと思います。したがって、その薬理作用の結果である"出血"という副作用は、ニセルゴリンには現れないのです。
 ところが薬理作用として、ニセルゴリンと同じように"血小板凝集抑制作用"をもつ抗血小板剤のチクロピジン塩酸塩やシロスタゾールの添付文書には、出血傾向の副作用はしっかりと記載され、警告が発せられています。ですから、血小板凝集抑制作用が、ほんとうにヒトで、そして臨床用量で発現するのだということがわかります。
 添付文書の"このような薬理作用があります"といういくつかの薬理作用の記載の中から、「臨床で発現する可能性があると思われる主要な薬理作用」を選び出し、その主要な薬理作用の過剰発現である副作用が、ほんとうに添付文書上に現れているかどうかを確認することが必要です。このように、薬理作用、効能効果、副作用は一本の線で結ばれているのです。これを服薬指導の面からいえば、「薬理作用による副作用は、発現する可能性が高いのだから、患者さんにしっかりと伝える」という原則が出てきます。

効能効果になくても効果がある場合

 さて、"薬理作用、効能効果、副作用を結ぶ線は一本である"とお話ししました。けれどもこの線は、実は"まっすぐな線ではなくて、少しだけジグザク曲がった線である"ことを、次にお話ししたいと思います。
 抗血小板剤であるシロスタゾールは、血栓・塞栓の治療に効果があるのですが、シロスタゾールの効能は「慢性動脈閉塞症に基づく、潰瘍、疼痛および冷感等の虚血性症状の改善」であって、血栓・塞栓の治療の適応はありません。もっとも、これは"効果がない"ということではなく、"虚血性血管障害に伴う血栓・塞栓の治療の臨床試験をしていない"ということなのです(2003年4月「脳塞栓(心原性脳塞栓を除く)発症後の再梗塞」の適応取得)。ですから、適応はないのですが作用はありますから、その作用の過剰発現である出血の副作用も出てきます。したがって、シロスタゾールには、重大な副作用として「脳出血、肺出血、眼底出血、消化管出血、鼻出血」が記載されています。
 このように、ときには、適応症としての効能効果が記載されていないことと、臨床的に効果がないということが、実は別物であったりするので注意が必要ですが、迷ったときには、添付文書の副作用を見るとわかります。臨床的に発現する薬理作用をもっているならば、その"薬理作用の過剰発現である副作用が出現している"はずだからです。

結論

  • 臨床的に発現する主要な薬理作用を見つけよう。確実に発現するのは、認められた「効能効果」を示す薬理作用である。

  • 添付文書の薬理作用の項に示された動物実験の結果が、必ずしも臨床に現れるとは限らない。その薬理作用による臨床検査値の変動や副作用が発現していなければ、その薬理作用は臨床上は発現しないものと思われる。

  • 薬理作用の過剰発現による副作用は、最も頻度が大きい副作用であるから、服薬指導時には、効果とともに"効き過ぎによる副作用"を患者さんに必ず伝えよう。

  • 効能効果が取得(記載)されていないから、その作用がないということではない。効能効果の記載は、その疾病の臨床試験を行わないと取得できない。したがって、効果がありながら効能効果が記載されない場合がある。

  • 添付文書に記載された薬理作用の過剰発現による副作用が報告されている場合、その薬理作用は臨床用量で発現する薬理作用である。

演習問題

  • HMG-CoA還元酵素阻害剤の効能効果は、高脂血症および家族性高コレステロール血症とされているくすりと、高コレステロール血症および家族性高コレステロール血症とされているくすりがあるが、これはどのように違うのだろうか?

     HMG-CoA還元酵素阻害剤の効能効果を見ると、プラバスタチンナトリウムとシンバスタチンは高脂血症となっていますが、その他のくすりは高コレステロール血症となっており、適応が異なります。これは、高脂血症に対する効能効果があるものは、コレステロールばかりではなく、トリグリセライドも下げるということを示しています。
     これらの適応は、単に製薬会社の主張で決まるのではなくて、臨床試験結果を厚生省の諮問機関である中央薬事審議会で審議し、製薬会社と質疑応答を繰り返しながら決めるのです。以前は臨床試験をした結果、コレステロールとトリグリセライドが下がっていれば高脂血症への適応も認められたのですが、現在は最初から"トリグリセライドも下がる可能性があるので、臨床試験をします"という宣言をし、一定数のトリグリセライドが高い患者さんを入れて試験をした結果、効果が出ない場合には効能効果は認められていません。

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