KYOWA KIRIN

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【鉄則その2】 「適宜増減とは?」

用法、用量の項に示される適宜増減には、「条件付き適宜増減」「無条件適宜増減」「適宜増減不可」の3種類がある。

CASE1

患者さんは、81歳の男性です。
処方を見て、びっくりした新人薬剤師の孝典君は、ベテラン薬剤師の小川さんに聞きました。

[処方内容]

ニフェジピン徐放錠 20mg
3錠
アデノシン三リン酸二ナトリウム
3g
ジラゼプ塩酸塩水和物錠
3錠
分3、 毎食後
14日分
テモカプリル塩酸塩錠 2mg(朝)
1錠
テモカプリル塩酸塩錠 1mg(夕)
1錠
エチゾラム錠 0.5mg
2錠
分2、朝夕食後
14日分
フルニトラゼパム錠
2錠
就寝前
14日分

 「小川さん、このニフェジピン徐放錠は1日2回投与じゃないのですか? この処方は、1日3回投与されていますが?」
 「1日2回投与ではよい血圧コントロールが得られていないようですね。ニフェジピン徐放錠の『薬物動態』にはTmaxが約3時間後、半減期が3~4時間となっています。ニフェジピン徐放錠は飲んで7時間も経つとニフェジピンの血中濃度が最高血中濃度の半分になってしまうことがわかりますね。
 ニフェジピンの普通錠は作用が短いのが欠点でしたが、これは半減期が短いために、すぐに血中濃度が下がってしまうことが原因でした。ニフェジピンは血中濃度と効果がよく相関している薬物です。従って、ニフェジピン徐放錠として効果の持続性を高めたのです。そして3回の投与では2回投与より血中濃度を高く保つことができるのです。
 ただ、保険が適用されるかどうかはわかりません。確認は必要ですね」
 「テモカプリル塩酸塩錠を朝2mg、夕食後1mgという変則的な投与になっていますが?」
 「テモカプリル塩酸塩錠は、添付文書で"4mgまで漸次増量する"となっていますので、添付文書上の範囲の用法用量ですね」
 「こんなに降圧剤を飲んで、血圧が下がりすぎたりしないのですか?」
 「この患者さんは、なかなか血圧が下がらない患者さんなのです。だから医師もいろいろ処方に工夫をしています。添付文書どおりではないから間違っている、と考えるのではなく、処方の目的を理解することが大切ですね」
 「そうですか! わかりました」と、新人薬剤師の孝典君はとても素直です。将来きっと大きく成長することでしょう。

添付文書解析

 添付文書の用法用量を"適宜増減"という言葉に注目して分類してみると、「条件付きの適宜増減」「無条件適宜増減」「適宜増減という言葉がないもの」の3つに分けられます。
 このうち、最も品目数が多いのが「条件付き適宜増減」です。例えば、ナウゼリンドライシロップは、「年齢、体重、症状により適宜増減する」としたあとに、「ただし、1日投与量としては30mgを超えないこと」という"投与量上限の条件"がついています。スルピリド錠は、適宜増減という言葉のあとに、「統合失調症には1日1200mgまで、うつ病・うつ状態には600mgまで」と、適応症別に増量することができる投与量上限を設定しています。
 また、ファモチジン錠には、「年齢、症状により適宜増減する」としたうえで、用法用量に関する使用上の注意として、腎機能低下患者への投与法を記載しています。それは、患者さんのクレアチニンクリアランスを基準にして、半分あるいは1/3~1/4に投与量を減量する方法です。
 このように「条件付き適宜増減」は、最大限度投与量を示すか、減量の条件を示すかの、どちらかの制限がついています。したがって、処方せんに記載されている用法用量がこの制限を超えた場合には、処方医に問い合わせる必要があるでしょう。製薬会社と厚労省は、添付文書に記載された以外の用法用量は認めていないわけですから。ただ、医師が「それで出してください」と言う場合には、患者さんの状況によって医師の責任で決めたことで、医師の裁量権に属するものです。

 ところで、医師の裁量権を完全に認めた「無条件適宜増減」は、一番多いように感じられるのですが、実は意外に少ないのです。無条件適宜増減は、まず、安全性が高いと思われるビタミン剤や類似のくすりがそうですし、テプレノンなどの胃粘膜保護剤がこの範囲に入ります。そして、医師の判断と裁量で大量投与が必要なプレドニゾロン錠やレボチロキシンナトリウム錠、フロセミド錠などが、無条件適宜増減の範囲にあります。また、ペニシリン系やセフェム系抗生物質も使い方の制限はありますが、用法用量に関しては無条件適宜増減です。
 これらのくすりは、患者さんの症状の重症度によって投与量・投与法を医師が決める、いわば、用法用量は医師に任せられたくすりで、よほど常識から逸脱していない限り、"投与量に関する疑義照会"は見合わせてもいいくすりであるといえます。無条件適宜増減のくすりは、"この投与量は、常用量の2倍を超えているので、疑義照会をしなければならない"というようなものではないのです。ちなみに、プラゾシン塩酸塩錠の常用量は「1日1.5~6mgまで漸増する」とされていますが、添付文書には「まれに1日15mgまで漸増することもある」と、常用量の2.5~10倍量の使用例が記載されています。また、統合失調症などに対する向精神薬の投与量はかなりの幅があることが知られています。

 さて、実は添付文書上では、この範囲のくすりが最も数が少ないのですが、問題なのは、"適宜増減という表現がとられていないくすり"です。例えば、ドネペジル塩酸塩、メチルジゴキシンなどがそうです。ドネペジル塩酸塩は「1日1回3mgから治療を開始し、1~2週間後に5mgに増量する」と、明確に定められていて適宜増減は認められていません。メチルジゴキシンは急速飽和療法と維持療法に分け、0.1mg~1.8mgの投与量の範囲で用法用量が細かく定められていて"適宜増減"という言葉はまったくありません。
 このように、"適宜増減"という表現がとられていないくすりは、製薬会社から見れば「用法用量を厳しく守ってほしいくすりである」ということがいえます。いわば、「適宜増減不可」のくすりといっていいでしょう。したがって、このようなくすりが処方されて、その用法用量が添付文書の範囲を超えていたら、当然処方医に問い合わせる必要があります。

 不整脈治療剤のメキシレチン塩酸塩カプセルに「糖尿病性神経障害に伴う自覚症状(自発痛、しびれ感)の改善」の適応が追加承認されました(2000年7月)。このときの用法用量は「1日300mgを1日3回に分割し、食後経口投与する」となっており、「適宜増減不可」です。しかし、頻脈性不整脈(心室性)では、用法用量は「年齢、症状により適宜増減する」となっています。したがって、同じくすりでも適応によって「適宜増減型」だったり「適宜増減不可型」になりますので注意が必要です。

 用法用量の表現は、実は絶対的なものではなく変化していきます。例えば、ベザフィブラート徐放錠の過去の添付文書は、「通常、成人には1日400mgを2回に分けて、経口投与」となっていて適宜増減不可だったのですが、現在は、そのあとに「なお、腎機能障害を有する患者及び高齢者に対しては、適宜減量すること」と記載され、さらに、用法用量に関する使用上の注意を設けて減量基準を示しています。これは、腎機能の低下者には横紋筋融解症が現れやすいという事実がわかってきて、それが添付文書上に反映されたものです。
 その減量基準には、血清クレアチニンからクレアチニンクリアランスを推定する"安田の推定式"が最適だとして、年齢と体重を加味した 計算方法を示し、投与量を半分にする提案をしています。その際、添付文書で"適宜減量"という新しい用語を用いています。このように、用法用量の記載も変化発展していきますので、新しい添付文書に基づいて逐一確認していく必要があります。

コラム

[安田の推定式]

 ベザフィブラートの添付文書に記載がある安田の推定式と投与量の目安を下記に示しました。

男性:(176-年齢)×体重/(100×血清クレアチニン値)
女性:(158-年齢)×体重/(100×血清クレアチニン値)

血清クレアチニン値 クレアチニン
クリアランス
投与量
Scr ≦ 1.5mg/dl 60ml/ 分≦ Ccr
(200mg×2)
400mg/日
1.5mg/dl<Scr<2.0mg/dl 50ml/ 分<Ccr<60ml/ 分
( 200mg×1)
200mg/日

 これは、東京大学医学部老年病学教室の安田兵衛先生が、患者さんの糸球体濾過値、血清クレアチニン値、尿中クレアチニン排泄量の加齢による変化を観察した結果、導き出したものです。
 高齢者では腎機能検査を行わなければならない場合が多いのですが、腎機能の指標であるクレアチニンクリアランスの測定には、1日の蓄積尿が必要です。しかし、外来ではできないため簡易法として使われています。
 例えば、59 歳で70 ㎏の男性の血清クレアチニンが1.2 ㎎だとすると、クリアチニンクリアランスは、

   男性=(176-59歳)× 70kg/(100×1.2mg/dl)= 68.25ml/ 分

 この患者さんのクレアチニンクリアランスは、68.25ml/ 分ですから、ベザフィブラートの投与量は400mg/ 日でいいわけです。

CASE2

患者さんは83歳の男性です。
"昼食後のタムスロシン塩酸塩カプセル投与"に、疑問を感じた新人薬剤師の孝典君が、ベテラン薬剤師の小川さんに聞いています。

[処方内容]

メチル ジゴキシン錠 0.1mg
1錠
アゾセミド錠 60mg
1錠
朝食後服用
14日分
タムスロシン塩酸塩 0.1mgカプセル
1cap
昼食後服用
14日分
ニトログリセリン経皮吸収型製剤 25mg/10㎠
14枚
入浴後
1枚添付

 「タムスロシン塩酸塩は、なぜ昼食後投与なのですか? 普通は夕食後または就寝時投与ではないでしょうか?」
 「この患者さんは、薬歴でわかるとおり、最初は夕食後の投与だったのです。それが、途中から昼食後になっています。"夕食後だと忘れるから"という理由でした」
 「昼食後でもいいのですか?」
 「添付文書では"1日1回0.2mg食後投与で、年齢、症状により適宜増減"ですから、昼食後でもかまわないことになります」
 「それで、夜間や明け方でもタムスロシン塩酸塩の効果はあるのでしょうか?」
 「タムスロシン塩酸塩は、最高血中濃度到達時間は7~8時間で、血中濃度の立ち上がりが遅く、かつ血中濃度半減期は9~ 11.6時間なので、昼食後に飲んでも夜間は十分に血中濃度は上がっていることが推測されます。それから、定常状態到達時間は、添付文書上では4日間ですので、1日1回の投与で4日目以降は1日中、十分な有効血中濃度を保つことができます。ですから、投与はいつでもいいのですね」
 「なるほど! 患者さんが最も飲みやすくて、忘れない時間を探してあげるのですね。よくわかりました」と、今日ものみ込みがいい孝典君です。

添付文書解析

 くすりをいつ飲むか? というのは、薬の効果を高めるうえでとても大事なことです。胃腸障害が強いくすりは食直後に、食事で吸収が阻害されるくすりは食間に、などはよく知られていますが、そのくすりの薬物動態でくすりの効果的な服用時間を検討する作業は、これまであまり行われてきませんでした。
 そこで、そのくすりが一番効く時間を狙って投与するにはどうするかですが、その時間を割り出す方法が"最高血中濃度到達時間"という目安なのです。また、そのくすりの効果の持続を期待するときには、血中濃度半減期によって投与時間、投与回数を検討する必要があります。

結論

  • 「条件付き適宜増減」のくすりで、処方せんにその条件を超える、あるいは条件が守られていない用法用量の記載があった場合には、処方医に確かめる必要がある。

  • 「無条件適宜増減」のくすりの用法用量は、医師の判断に任せられたものなので、大きく違わなければ、問い合わせは見合わせてもいい。

  • 添付文書に"適宜増減"という表現がない場合には「適宜増減不可」と解釈すべきである。この場合、もし処方せんに記載された用法用量が、添付文書の範囲を超えていたら、当然処方医に問い合わせる必要がある。

  • 用法用量の記載も変化、発展していく。最新の用法用量を確認しよう。

  • いつくすりを飲んでもらうかは、"患者さんの状況"と"薬物動態"から考えて積極的に処方医や患者さんに提案しよう。

演習問題

  • セファクロル細粒小児用は、「体重kgあたり1日20~40mg(力価)を3回に分割して経口投与する。なお、年齢、体重、症状等に応じて適宜増減する」とあるが、セファクロルカプセル250mgでは、「成人および体重20kg以上の小児には1日750mg」となっており、kgあたり投与の記載はない。どうしてこのように違うのだろうか?

     小児用量にkgあたりの投与が多いのは、小児の場合、比較的体重差が大きいので、体重差によって投与量を決めるのが合理的だからでしょう。
     もし、成人にkgあたりで投与すると、肥満患者さんの場合には投与量が大きくなってしまいます。しかし、成人の場合は"くすりの性格によって、肥満患者さんに増量しなければならないくすりと、増量してはいけないくすりがある"ので、一律に体重に応じて「適宜増減する」とはならないのです。
     例えば、ハロペリドール錠やノルトリプチリン塩酸塩錠などのような脂溶性のくすりの場合には、脂肪組織のほうにどんどん分布してしまうので、肥満の患者さんは、同じ身長の筋肉質の患者さんより血中濃度が低くなるため効果は出にくくなります。一方、メチルジゴキシン錠やテオフィリン徐放錠のような水溶性のくすりの場合には、肥満だからといって投与量を増やすと、血中濃度が上がって副作用や中毒の危険が迫る、という理屈になるのです。

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