KYOWA KIRIN

このサイトは、日本国内の医療関係者(医師、薬剤師、看護師、技師・技士等)を対象に、弊社が販売する医療用医薬品を適正にご使用いただくための情報を提供しています。国外の医療関係者、一般の方に対する情報提供を目的としたものではありませんのでご了承ください。

【鉄則その3】 「副作用の機序別分類」

副作用は、「薬理作用の過剰発現」「薬物毒性」「薬物過敏症」の3つに分類しよう。
そうすれば、くすりのほんとうの姿が見えてくる。

CASE1

患者さんは88歳の男性で、処方せんを持参したのは、付き添いできた娘さんです。2カ月前から来局している患者さんですが、今日初めてベニジピン塩酸塩錠4mg 1錠が加わりました。

[処方内容]

ニセルゴリン錠
3錠
イブジラスト徐放カプセル 10mg
3cap
カンゾウ末配合剤散
3.9g
分3毎食後服用
14日分
チクロピジン塩酸塩錠
2錠
分2朝・夕食後服用
14日分
ベニジピン塩酸塩錠4mg
1錠
朝食後服用
14日分

 「佐藤さんは、血圧が高かったのですか? 今日は血圧を下げるおくすりが出ていますが?」
 「いいえ。血圧は別に高くなかったですよ。130/80 くらいだったと思いますが、どうして血圧を下げるくすりが出るのですか?」
 「そうですか......、どうしたのでしょうね」

 この処方は、見るからに脳梗塞後の後遺症の治療と再梗塞の予防を目的にしていることがわかります。なぜなら、脳循環や脳血管障害の改善に用いられる2剤と抗血小板剤のチクロピジン塩酸塩の併用だからです。私はすぐに電話をとりました。

 「内科患者の佐藤さんの処方について、先生におうかがいしたいのですが?」
 「もうお昼時間ですから、先生はいらっしゃいません」と、内科外来受付女史がおっしゃいます。
 「血圧がそんなに高くないのに、ベニジピン塩酸塩錠4mgが今日から処方されているのですが......」
 「医師が出した処方ですから、そのまま出してください」
 「処方を見ればわかりますが、この患者さんは1回脳梗塞を起こして、今、その後遺症や再梗塞の予防のための治療をしているのですよ。こんなときにベニジピン塩酸塩錠で血圧を急に下げると再梗塞が起きるかもしれませんが、そうなったら、いったいどうするのですか?」と、受付女史を脅しました。
 さすがに、女史は処方医と連絡をとってくれ、手違いによる処方せんの入力ミスとわかって、ベニジピン塩酸塩錠の投与は取り消されました。

添付文書解析

 ベニジピン塩酸塩錠の添付文書の「高齢者への投与」の項には、「高齢者では、過剰の降圧は好ましくないとされていることから、高血圧の高齢者に使用する場合は、低用量(2mg/日)から投与を開始するなど経過を十分に観察しながら、慎重に投与することが望ましい」となっています。これは、ベニジピン塩酸塩錠の薬理作用である降圧作用が過剰に発現すると、そのまま副作用につながってしまうことを心配しているからです。

副作用の機序別分類

 添付文書の副作用の記載は、1)重大な副作用、2)その他の副作用、となっていて、その他の副作用は過敏症を除いては臓器別に分類されています。従来は重大な副作用という分類はなかったので、副作用の重症度分類がなされたという点では、画期的な出来事です。
 しかし、重大な副作用は、発現頻度が小さいアレルギー性の副作用が多いことと、その他の副作用は臓器別分類であることから、"どうやって副作用のチェックをするのか?"とか"副作用が起きた場合にどうするのか?"という観点から見れば不便です。
 そこで、副作用を起きる機序別に分類してみたらどうだろうか? と考えました。つまり、副作用を、1)薬理作用の過剰発現、2)薬物毒性、3)薬物過敏症、の3つに分類するのです。

いつ起きても不思議ではない「薬理作用の過剰発現」

 薬理作用の過剰発現は、もともとそのくすりが備えている薬理作用ですから、発現頻度が大きいという特徴があります。したがって、日常の効果の観察をとおして副作用をチェックできますし、もし副作用が発現した場合には、減量や作用が緩和な同系他剤に変更することで対処できます。
 ベニジピン塩酸塩錠でいえば、めまい、ふらつき、動悸、浮腫や不整脈等が薬理作用の過剰発現による副作用にあたります。この患者さんの血圧を下げ過ぎることによる再梗塞を心配するのも、薬理作用の過剰発現が懸念されるからにほかなりません。また、ベニジピン塩酸塩錠の頭痛や顔面紅潮の副作用も血管拡張の結果ですから、薬理作用の過剰発現であり、これらの副作用発生頻度は高いといえます。

かなりたってから起きる「薬物毒性」

 薬物毒性は、多くは投与量あるいは投与期間依存性ですから、投与初期は発現しにくく、長期および大量投与で要注意となります。したがって、そのようなケースは定期的に検査をすることでチェックは十分に可能です。例えばベニジピン塩酸塩錠でいえば、AST(GOT)、ALT(GPT)、γ-GTP、ビリルビン、AL-P、LDHの上昇やクレアチニン上昇がこの副作用にあたります。
 薬物毒性は、腎毒性、肝毒性が主なものです。くすりは必ず腎臓を通って排泄されるか、肝臓で代謝されて排泄されますので、腎臓や肝臓に対する負荷は間違いなくあります。
 そこで、"このくすりは腎臓や肝臓に負荷を与えるかどうか?"を知りたくなるわけですが、実はインタビューフォーム上に有用なデータがあります。それが「臨床検査値に及ぼす影響」です。添付文書の副作用の項に肝障害がなくても、臨床検査値への影響を示すデータで、AST(GOT)やALT(GPT)、γ-GTP、ビリルビン、LDHの上昇頻度が高かったとしたら、"もしかしたら肝臓に負荷を与えるかなぁ......"と推測できますし、腎障害の記載がなくても、血清クレアチニンやBUN上昇の頻度が他の副作用より高かったら、"もしかしたら腎臓に負荷を与えるかも......"と推測できるのです。

 さて、病棟の患者指導でカルテを見られる場合には、記載されている検査値から患者さんの腎機能や肝機能の低下を知ることができますが、薬局の場合は簡単にはわかりません。そこで、腎臓に影響しそうなくすりが、長期に投与されている場合や投与量が多い患者さんには"自覚症状"を聞くことになります。
 腎機能が低下すると、蛋白尿が見られますので、尿検査をやっているかどうかを聞くのもいいでしょう。また、腎機能低下の初期は自覚症状がない場合が多いのですが、尿量の減少や顔・下肢のむくみなどが現れるケースもありますので、少なくともその有無は確かめておきたいものです。
 一方、肝機能障害も、初期は自覚症状がない場合が多いのですが、なかには倦怠感や食欲不振が現れるケースがありますので、最初にそれらの自覚症状を聞くことになります。さらに、おしっこの色が赤っぽく変わったり、皮膚や白目などが黄色になる黄疸が見られるのは少し進んだケースといえます。そこまでいかない前に、薬物性肝障害はチェックしたいですね。
 ともあれ、患者さんの腎機能や肝機能の低下が心配されたら、添付文書の使用上の注意「腎障害のある患者や肝障害のある患者には慎重投与」の項を根拠に、ぜひ処方医とコンタクトをとってください。

起きたらすぐにくすりをやめなければならない「薬物過敏症」

 薬物過敏症は、投与量に関係なくあらゆるくすりに、あるいはあらゆる臓器に起きる可能性があります。したがって、副作用の可能性をチェックするのは細心の問診やアレルギーテストに頼るほかありませんので、チェックが最もむずかしい副作用といえます。そして、もし薬物過敏症が起きていれば、くすりは即座に、必ず中止しないと重篤な結果を見ることになります。ベニジピン塩酸塩錠でいえば、発疹、掻痒感、光線過敏症がこれにあたります。
 しかし一方で、この過敏性の副作用は多くは6カ月以内に発現してしまうという特徴をもっています。ですから、投与6カ月を過ぎて何も症状がなければ、薬物過敏症は起きないものとしてチェックから除外できます。
 アレルギー性の副作用が起きやすいかどうかの目安としては、先にあげた「臨床検査結果に及ぼす影響」のデータが役に立つ場合がありますので、覚えておくと便利でしょう。それは、好酸球上昇という検査値異常があるかどうかをチェックするものです。病院勤務時代に一度、アロプリノールによる重篤な副作用を経験しました。そのときに、その症例を詳しく調べたのですが、副作用発現の前に好酸球が上昇していることに気づきました。以後、アロプリノールを投与していて、好酸球が上がりはじめたら投与を中止するという基準をつくり、重篤な副作用の発現を防ぐことができました。
 しかし、病棟にいる薬剤師は好酸球上昇をチェックできるのですが、薬局薬剤師の場合はそうもいきません。なんといっても薬局薬剤師にとって、薬剤性アレルギーのくすりの副作用の予知が一番の困りものです。なにしろ、投与してみなければわからないのですから。
 そこで、患者さんの初発症状の発現をチェックすることになります。まず、発熱があるかどうかをチェックしましょう。全身状態がよくて熱があり、とくにくすりを投与してから発熱してくる場合などは、アレルギー性の薬剤熱(Drug fever)であることが多く見られます。この場合は、くすりを中止すると1~2日くらいで、比較的早く解熱します。次いで、発疹やかゆみがあるかどうかです。これは比較的早く現れますので、すぐにわかります。
 このように、発熱、発疹、かゆみを伴う場合には、"おそらく薬剤性だろう"と推定できるわけです。

CASE2

患者さんは、67歳の男性です。トラニラスト、カルボシステインの処方に、今日初めて、ナリジクス酸、ピロキシカム坐剤が加わりました。この処方を最初に見て感じたのは"トラニラストによる膀胱炎様症状のためにナリジクス酸が投与されたのではないか?"という疑問でした。早速薬歴を調べてみると、1カ月と少し前からトラニラストが投与されています。どうやら発熱もあるようで、ピロキシカム坐剤が投与されています。

[処方内容]

トラニラスト
3cap
カルボシステイン錠250mg
3錠
ジピリダモール錠 100
3錠
カンゾウ末配合剤散
3.9g
分3毎食後服用
14日分
ナリジクス酸錠250
3錠
分3毎食後服用
14日分
ピロキシカム
10個
発熱時
1個

 「おしっこが近いのですか?」
 「そうなんですよ。少し熱もあるようです」
 「おしっこの色は変わりないのですか?」
 「えー、別に変わりありません」
 「もし、おしっこが赤くなるようでしたら連絡してください」
 「はい、わかりました」

 そして4日後のことです。再び患者さんが来局されました。
 「おしっこの回数は減りましたか?」
 「はい、おかげさまで熱も下がりました」
 「そうですか、やっぱり軽い膀胱炎だったのですね」

 さらに10日後、ナリジクス酸が再投与されました。
 「どうしたのですか? 膀胱炎が再発したのですか?」
 「えぇ、"血尿が出た"と言われました」
 そこで、"膀胱炎はトラニラストの副作用によるもの"と確信し、集めていたトラニラストによる症例報告の文献も添付して処方医に情報を提供しました。トラニラストはすぐに中止になりました。

添付文書解析

 トラニラストの添付文書には「重大な副作用/膀胱炎様症状:(頻度不明)頻尿、排尿痛、血尿、残尿感等の膀胱炎様症状があらわれることがある。観察を十分に行い、このような症状があらわれた場合には、直ちに投与を中止すること」とあります。また、厚労省から安全性情報も出されており、この副作用は好酸球性膀胱炎でアレルギー性の機序によるものが多いことがわかっています。アレルギー性の副作用は、すぐにくすりを中止しないと重篤な結果を招くことになります。

結論

  • 添付文書の副作用分類は重篤度および臓器別に分類されてある。これを、副作用機序別分類につくり変えてみよう。そうすると、くすりの副作用が見えてきて副作用を体系的に捉えることができる。

  • 副作用をその起きる機序別に分類すると、1)薬理作用の過剰発現、2)薬物毒性、3)薬物過敏症、の3つに分けることができる。

  • 薬理作用の過剰発現は、最も発現頻度が高く日常的に起きる可能性があるので、初発症状を患者さんに知らせておこう。

  • 薬物毒性は抗癌剤などの場合を除き投与初期は起きない。しかし、投与量・投与期間依存性なので、肝機能、腎機能、血液障害などの定期的検査によるチェックが必要となる。

  • 薬物過敏症はめったに起きないが、もし起きた場合には即座にくすりを中止しなければならない。

演習問題

  • 経口用ペネム系抗生物質ファロペネムナトリウム水和物錠の副作用は下痢、軟便の頻度が高くなっている。これはどうしてだろうか? また、どういう対処法が考えられるだろうか?

     ファロペネムナトリウム水和物錠はAUCを他剤と比較してみると、吸収率が低いことが推定されます。したがって、ファロペネムナトリウム水和物は直接糞便中に移行する割合も多く、このくすりの優れた感受性もあって、腸内細菌叢のバランスをくずし、下痢、軟便の頻度が高くなることが予想されるのです。
     つまり、下痢、軟便は薬理作用による副作用ですから、当然その頻度は高くなります。同時に、腸内細菌叢のバランスを整えるための耐性乳酸菌製剤の併用が功を奏すものと思われます。

サイトリニューアルに伴うログインについてのお知らせ

サイトリニューアルに伴い、ログイン用のIDをメールアドレスに変更いたしました。ログインできない場合はこちらのパスワード再設定画面で再設定いただくか、 こちらにお問い合わせください。

おすすめ情報

  • おすすめ情報は、協和キリンのウェブサイトにおける個人情報の取扱い方針に基づき、お客様が閲覧したページのアクセス情報を取得し、一定の条件に基づき自動的に表示しています。
    そのため、現在ご覧いただいているページの情報との関連性を示唆するものではございません。

くすり相談窓口

弊社は、日本製薬工業協会が提唱するくすり相談窓口の役割・使命に則り、くすりの適正使用情報をご提供しています。
弊社医薬品に関するお問い合わせは、下記の電話窓口で承っております。

フリーコール

0120-850-150

受付時間 9:00~17:30
(土・日・祝日および弊社休日
を除く)

※お電話の内容を正確に承るため、また、対応品質の維持・向上等のため通話を録音させていただいております。あらかじめご了承ください。

お問い合わせ