KYOWA KIRIN

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【鉄則その4】 「薬物動態値 その1 血中濃度半減期」

くすりが効いてくるとき、
くすりの効き目や副作用が消失するとき、
それは、血中濃度半減期の4~5倍経ったとき。

CASE1

早瀬さんは59歳の男性。尿酸値が高く高血圧の治療中です。今日は初めて、メチルジゴキシン錠が追加になりました。

[処方内容]

ベニジピン塩酸塩錠 4mg
1錠
ベンズブロマロン錠 25mg
1錠
メチルジゴキシン錠 0.05mg
1錠
1日1回 朝食後 
14日分

 「やあ、こんにちは! 今日は、血圧も少し上がっていて、先生には"働き過ぎだよ、心臓が疲れているのだから、仕事を休まなくてはだめだよ"と言われたが、忙しすぎてとっても休めないよ」
 「仕事を休むのが無理なら、ビールだけでも休んだらいかがですか?」
 「それはそうだろうが、実際はそうもいかない。でも最近、動悸、息切れがして疲れやすく、家に帰ったときにはぐったりで、足もむくんでいるんだよ」
 「それで心臓のくすりが追加になったのですね」
 「先生は"いいくすりを出すから"と言ったのだけれども、このくすりは、すぐに効くのかい?」
 「メチルジゴキシン錠は、ジギタリス剤といってよく効くくすりですよ。昔は最初多めに飲ませて、すぐ効くようにしたのですけれども、いまは副作用を防ぐために、少しずつ出しているのです。だから、だんだん効いてきますよ」
 「だんだんって......いったい、いつころ、効いてくるんだい?」
 「そうですねぇ、1週間くらいすれば、確実に効いてきます」
 「えぇ~、1週間もかかるのぉ。実は週末から出かけるのだが...、1回に2日分ずつ飲んだら3日でよくなる、なんていうわけにはいかないのかなぁ」
 「そういう方法がないわけじゃないですけれども、副作用が出るかもしれませんよ」
 「そっかぁ、じゃあ、1週間、がまんして飲んでみるか!」
 「そうですね。でも、ビールはほどほどにしたほうがいいですよ」
 「う~ん そりゃ無理だよ! 生き甲斐なのだから、ビールがなければ死んだほうがいいくらいだからなぁ」と、相変わらず無茶苦茶な早瀬さんです。

添付文書解析

 なぜ、メチルジゴキシンは「1週間すれば確実に効いてきます」と言い切ることができるのでしょうか? それは、メチルジゴキシンの血中濃度半減期が約36時間だからです。

くすりが効いてくる定常状態到達時間は血中濃度半減期の4~5倍

 多くの慢性疾患では、くすりを連続投与します。かりに投与間隔を血中濃度半減期と同じにして連続投与したとすると、血中濃度は少しずつ上がっていき、4~5回目の投与で入ってくるくすりの量と、消失していくくすりの量が等しい定常状態に達します。
 なぜならば、初回投与後、1半減期を経過したときには、血中濃度は最高血中濃度の半分に低下していますので、体内薬物量も半分になります。2回目の投与後、2半減期を経過したときには、初回投与と2回目の投与の分の残りがありますので、最高血中濃度の75%が残っています。このように、3半減期経過で87.5%、4半減期経過で最高血中濃度の約94%に達し、5半減期目の投与でほぼ100%定常状態になります。

 もし、血中濃度半減期より短い投与間隔で投与したとすると、高い血中濃度で定常状態に達するだけで、定常状態到達時間は半減期の4~5倍であることに変わりはありません。血中濃度半減期より長い投与間隔で投与した場合には、半減期の3倍以内であれば定常状態が達成されます。
 血中濃度半減期は、このようにくすりがいつ効いてくるのか、つまり定常状態到達時間を判断するのに大きな役割を果たします。ですから、添付文書を開いたときには、必ず血中濃度半減期を確認しましょう。そして同時に用法・用量を見て、"投与間隔は、血中濃度半減期の3倍以内か否か?"を確認します。3倍以内であれば、血中濃度は投与するたびに上昇していきますので、必ず定常状態に到達します(Wolfgang A.Ditchel)。

投与間隔が血中濃度半減期の4倍以上だったらどうなる

 ではもし、そのくすりの投与間隔が、血中濃度半減期の4倍以上になっていたとすると、このくすりの血中濃度はどうなるのでしょうか?
 血中濃度半減期の4~5倍の時間がたつと体内のくすりは消失してしまいますので、この場合、何回連続投与しても当然、血中濃度は初回投与のときと同じで上昇していきません。このパターンはよくあることです。例えば、半減期が1.2時間のロキソプロフェンナトリウム水和物を1日3回投与する場合などです。表に血中濃度が上がっていかない投与回数と血中濃度半減期の関係、およびその例を示しました。定常状態到達時間はありませんから、これらのくすりは、初回投与から効果を現すのです。

血中濃度が上がっていかない服用回数と血中濃度半減期

服用回数 血中濃度半減期 具体例
1日1回投与の場合 4.8時間位 トリクロルメチアジド錠
1日2回投与の場合 2.4時間位 シメチジン錠
1日3回投与の場合 1.6時間位 ジクロフェナクナトリウム
1日4回投与の場合 1.2時間位 セファクロル

 現在は持続性製剤がはやっているため、1日1回の半減期が長いくすりが多くなりましたが、効果が持続するくすりは副作用も持続します。したがって、短い半減期のくすりを選んで1日何回か投与する方法は、もっと見直されてもいいように思います。

CASE2

ある病院から「産後の子宮収縮促進のため、産婦に麦角アルカロイドのメチルエルゴメトリンマレイン酸塩錠を経口投与して4日になる。メチルエルゴメトリンマレイン酸塩錠の投与を中止して8時間経つが授乳をしていいか?」という電話がありました。孝典君は早速、添付文書でメチルエルゴメトリンマレイン酸塩錠の血中濃度半減期を調べました。

 「小川さん、添付文書には"母乳中に移行する"とだけしか書いていないのですが...」
 「そうなんだけど、アメリカのUSP-DIでは"麦角アルカロイドは、乳児が麦角中毒を起こすので授乳婦には禁忌"になってますよ」
 「そうなんですか! でも、日本の添付文書には雄ビーグル犬の血中濃度半減期しか載っていないけど、これを使っていいのですか?」
 「どうして血中濃度半減期なの?」
 「血中濃度半減期の4~5倍の時間が経てば、くすりは血中から消えてなくなるのだから"乳汁中のくすりも大体そのくらいで消えていくだろう"と思ったからです」
 「なるほど! それはいい考えね。それでビーグル犬の半減期はどのくらいなの?」
 「それが1.5~1.8時間と短いのです。そうすると6時間くらいで血中から消えるので、もう授乳を開始していいことになりますが、ヒトでのメチルエルゴメトリンマレイン酸塩の効果持続時間が経口投与で6~8時間と長いので疑問を感じるのです」
 「メチルエルゴメトリンマレイン酸塩とよく似ているジヒドロエルゴタミンメシル酸塩錠の経口投与の半減期は約2時間とありますが、これはα相の半減期ですね。β相の半減期は約21時間ですよ」
 「α相とβ相の半減期はどう違うのですか?」
 「α相は分布相の半減期ともいわれ、くすりが急激に血液が密なところに分布していくときの半減期、一方、β相はくすりが全身に行き渡って、ゆっくり体内から消失していく過程の半減期で消失相の半減期です」
 「そうすると、メチルエルゴメトリンマレイン酸塩錠はもう4日間も投与して全身に行き渡っているのだから、β相の半減期で消失しているのですね。とすれば、24時間の4~5倍、つまり、くすりが血中から消えるには4~5日間かかることになりますね」
 「そうですよ。だから、麦角アルカロイドが消える4~5日間は授乳を避けると安心できるのですが。でもまあ、半減期の2倍の時間が経過すると体内薬物量の75%が消えることになりますから、そのあたりが目安になるでしょう」

添付文書解析

 体内にあるくすりは連続投与をやめ、血中濃度半減期の時間が経過すると血中濃度は半分になり、体内薬物量も半分になります。次の2半減期でさらにその半分になり、初期体内薬物量の75%が消失します。3半減期で87.5%が消失し、4半減期を経過すると約94%が消失します。実際にはここでほとんど消失したとみなしていいと思います。
 今回のメチルエルゴメトリンマレイン酸塩錠の添付文書には動物の半減期の記載のみだったので、類似の構造のくすりで推測しました。古いくすりの場合には、薬物動態値が記載されていないことも多く、このような工夫が必要です。また、添付文書には、通常は消失相の半減期T 1/2 βが記載されます。
 大事なのは、この鉄則は一次速度過程でしか適応されないということ。普通くすりは体内薬物量に比例して消失していく一次速度過程をとります。
 ただ、くすりが体内にいっぱいになって代謝酵素の働きが限界に達してしまった場合には、体内薬物量にかかわらず一定の量しか消失しないゼロ次速度過程を示します。そうなると血中濃度は高いままでしばらく持続することになり、消失には血中濃度半減期の5倍以上の時間がかかります。
 そのくすりが一次速度過程をたどるか? ゼロ次速度過程をたどるか? を判断するには、添付文書の投与量と血中濃度の比をみればわかります。一次速度過程が成立する場合は投与量と血中濃度は比例するので、投与量が倍になれば血中濃度も2倍になります。ところが、投与量比以上に血中濃度があがる場合があり、そのときはゼロ次速度過程を示します。

結論

  • 一次速度過程が成立する場合に、血中濃度半減期の3倍以内の投与間隔でくすりを連続投与すると、半減期の4~5倍の時間で体内に入ってくるくすりと体内から消失するくすりの量が等しい定常状態に達する。定常状態は、くすりが確実に効いてくるときである。

  • 体内薬物量に比例してくすりが消失していく一次速度過程が成立している場合には、体内からくすりが消失するのに血中濃度半減期の4~5倍かかる。

  • しかし、フェニトイン中毒のように代謝酵素がめいっぱい働いていて、体内薬物量にかかわらず一定量しか消失していかないゼロ次速度過程の場合には、この限りではないので注意が必要である。

演習問題

  • ナウゼリンの添付文書によると経口剤の血中濃度半減期はT1/2α(分布相)が0.89時間、T1/2β(消失相)が10.3時間とあるが、坐剤の血中濃度半減期は単にT1/2が7時間となっている。どうして坐剤は分布相と消失相をわけて記載しないのか?

     経口剤の最高血中濃度到達時間は0.5時間と早いため、吸収されたナウゼリンは、最初は血液が密な心臓や肝臓に行くので、分布相があるのでしょう。
     しかし、坐剤は直接直腸の大動脈から吸収されるので、初回通過による代謝はありません。そして坐剤は水溶性のため、体液で徐々にとけますので、時間をかけて吸収されることから、最高血中濃度時間は2時間と長いのです。この2時間の間にナウゼリンは全身に分布してしまい、最高血中濃度到達後は消失相で排泄されることから、T 1/2 β7時間を示すのだと思います。
     ナウゼリンが連続投与されるときの血中濃度半減期はT 1/2 βで判断しなければなりません。

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