KYOWA KIRIN

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【鉄則その5】 「薬物動態値 その2 尿中未変化体排泄率」

くすりは、尿中未変化体排泄率と油水分配係数によって
「腎排泄型薬物」と「肝消失型薬物」に分けられる。

CASE

山田さんは、高血圧を治療中の65歳の男性です。小さな会社を経営していて気苦労が多いせいか、胃潰瘍を合併しています。

[処方内容]

アテノロール錠 50mg
1錠
シメチジン錠 200mg
2錠
分2 朝夕食後
14日分

 「血圧のほうは落ち着いているようですね」
 「はい、おかげさまでなんとか落ち着いているのですが最近、疲れがひどくて......」
 「そうですか......それはよくないですねぇ」
 「うん、日中は眠くて、ときおり少し頭痛もするのです」
 「胃の調子はいかが? シメチジン錠はちゃんと飲んでますよねぇ」
 「はい、胃のくすりを飲みはじめてから、胃の痛みはなくなってきて調子はいいのですが、めまいがします」
 「そうですか......」と言いながら薬歴を見てみると、シメチジン錠を服用しはじめてから、1カ月がたちます。肝機能障害が心配で聞いてみました。
 「山田さん、肝臓は悪くなかったですよね。最近、血液検査はなさいましたか?」
 「はい、今日、結果を聞いてきたのですが、先生は"肝機能は大丈夫だ"と言っていましたが、"少しクレアチニンが高いかなぁ"とも、言われました。クレアチニンってなんですか?」
 「それは腎臓の機能の目安ですよ。腎機能が低下してくると、値が高くなるのです」
 「そうですか。先生は"たいしたことはない"と言っていましたが」
 「とにかく、今のおくすりをしっかり飲んでいきましょう。あとで少し、先生に聞いてみますね」

 その日の5時過ぎに、処方医に電話をしました。
 「先生、山田さんですが今日、薬局に処方せんをもってきて頭痛や眠気などを訴えていましたが、もしかしたら"アテノロール錠かシメチジン錠の副作用かもしれない"と思ったのですが...」
 「う~ん、確かに両方のくすりとも、そういう精神系の副作用はあるが、血圧も落ち着いているし、胃潰瘍も回復に向かっているしねぇ」
 「先生、血清クレアチニンが少し高かったそうですが......」
 「うん、1.3mg/dlだから、少し高いね。年齢の関係もあって、くすりの排泄も若干落ちているかもしれないなぁ」
 「そうですか。アテノロール錠もシメチジン錠も腎排泄型のくすりですから、腎機能の低下で血中濃度が上がっているのかもしれません」
 「そうだなぁ、頭痛や眠気はシメチジン錠のせいかもしれないなぁ。ヒスタミンH2受容体拮抗剤の精神症状はけっこう出るからねぇ」
 「アテノロール錠は、比較的脳には移行しにくいといわれていますからシメチジン錠かもしれません」
 「ところで、肝消失型のヒスタミンH2受容体ってあるのかなぁ」
 「ヒスタミンH2受容体はほとんど腎排泄型なのですが、ラフチジン錠が肝消失型です」
 「それには、頭痛や眠気などの副作用はないのかね」
 「いえ、そうではありませんが、腎機能が低下していても必要以上に血中濃度が上がる心配がありませんので、腎機能低下時には安心して投与できます」
 「そうか! じゃ、次回からラフチジン錠に変えてみようか。データや文献があったら、届けてくれないか」
 「わかりました」

添付文書解析

尿中未変化体排泄率による「腎排泄型薬物」と「肝消失型薬物」

 主に、未変化体で尿中に排泄されるくすりを腎排泄型薬物、肝臓で代謝されて薬効を失うくすりを肝消失型薬物といっています。後者は、肝臓で代謝され、大部分が腎臓から尿中に排泄されたとしても、"肝臓で薬効を失った"ので肝消失型薬物としているわけです。

 肝消失型薬物と腎排泄型薬物はその性格が大きく異なります。肝消失型か、腎排泄型かは、尿中未変化体排泄率が目安となります。明確な定めがあるわけではありませんが、だいたい70%以上未変化で尿中に排泄される場合を腎排泄型、30%以下の場合を肝消失型と呼んでいいと思います。中間の40%から60%を肝消失・腎排泄型と呼んでいる場合もあります。腎排泄型薬物と肝消失型薬物の性格の違いを表に示しました。

表1肝消失型薬物と腎排泄型薬物の違い

項 目 肝消失型薬物 腎排泄型薬物
体外への消失 肝臓で代謝 腎臓から排泄
肝疾患時血中濃度 上昇* 変化なし
肝疾患時投与量 減量 不変
腎疾患時血中濃度 変化なし 上昇
腎疾患時投与量 不変 減少
酵素誘導・阻害 影響が多い 影響が少ない

* 理論的には上昇すると思われるが、実際には上がらない場合も多い。

 ヒスタミンH2受容体拮抗剤であるシメチジン錠の"頭痛、眠気、めまいなどの中枢神経系の副作用"は、薬理作用である脳内のヒスタミンH2受容体遮断の結果起きる副作用なので、頻度が高くかつ投与量や血中濃度に依存する副作用です。そこで、「腎機能低下時に血中濃度が必要以上に上がらない肝消失型のヒスタミンH2受容体拮抗剤がほしい」となるわけです。次に、ヒスタミンH2受容体拮抗剤の尿中未変化体排泄率を添付文書から拾ってまとめてみました。

表2ヒスタミンH2受容体拮抗剤の性格づけ

尿中未変化体排泄率(%) 消失・排泄型
経口 静注
シメチジン 59.8 57.8~96.4 腎排泄型
ラニチジン塩酸塩 46.3~48.9 腎排泄型
ファモチジン 21~49 腎排泄型
ニザチジン 62.8~64.9 腎排泄型
ラフチジン 10.9 肝消失型

 ここで、尿中に70%近く未変化で排泄されるものを腎排泄型とすると、シメチジン、ニザチジン、ロキサチジン酢酸エステル塩酸塩は腎排泄型であることがわかります。ファモチジンの経口投与の尿中未変化体排泄率は21~49%で一見、肝消失型に見えますが、静注投与の消失率は57.8~96.4%ですから、腎排泄型です。
 ところで、ラニチジン塩酸塩も尿中未変化体排泄率が46.3~48.9%ですから、肝消失型に見えますね。ところが、ラニチジン塩酸塩錠の添付文書には「腎機能低下患者では血中濃度半減期が延長し、血中濃度が増大するので、腎機能の低下に応じて次のような方法により、投与量、投与間隔の調節が必要である」と記載されています。そして、患者さんのクレアチニンクリアランスの低下によって用量を漸減するように示されています。したがって、ラニチジン塩酸塩はこの記載から腎排泄型薬物であることがわかるわけです。
 つまり、尿中未変化体排泄率は、吸収された薬物のうち、尿中に未変化で排泄されるくすりの割合をいいます。
 以上のデータから、肝消失型のヒスタミンH2受容体拮抗剤は、経口投与による尿中未変化体排泄率が10.9%のラフチジンのみであり、したがって、ラフチジンは腎機能低下者に減量をしないで使えるヒスタミンH2受容体拮抗剤であるということになります。
 尿中未変化体排泄率を添付文書から拾う場合には、"未変化体であること"が大切です。添付文書によっては"未変化体なのか、代謝物なのか、わからない記載"がありますので、注意が必要です。

油水分配係数による水溶性薬物と脂溶性薬物

 ところで、尿中未変化体排泄率は、添付文書に必ず記載されているとは限りません。このようなときに腎排泄型薬物と肝消失型薬物にわける基準がないものでしょうか? 実はあります。それは、油水分配係数による水溶性薬物と脂溶性薬物という分類です。
 最近の添付文書では、「有効成分に関する理化学的知見」の項に油水分配係数が記載されるようになりました。これは油に溶ける割合が多いか、水に溶ける割合が多いかを表したもので、「分配係数が1より大きければ脂溶性薬物で、1より小さければ水溶性薬物」と分類することができます。
 分配係数の対数(logP)をとると水溶性薬物はマイナスになり、脂溶性薬物はプラスでその脂溶性が高いほど大きい値になります。水溶性薬物はほとんど腎排泄型薬物ですし、脂溶性薬物は肝消失型薬物です。右表にヒスタミンH2受容体拮抗剤の、pH7.0におけるn-オクタノール/緩衝液の分配係数を示しました。

 ところで、尿中未変化体排泄率と分配係数の大きな違いは、前者は生体内(in vivo)から得られた値であり、後者は試験管内(in vitro)から得られた値であることです。生体内から得られた値である尿中未変化体排泄率は、患者さんやくすりの性格をよく反映している値だと思います。

表3ヒスタミンH2受容体拮抗剤の分配係数

分配係数 logP 油/水
シメチジン 0.67 -0.17 水溶性
ラニチジン塩酸塩 0.03 -1.52 水溶性
ファモチジン 0.15 -0.82 水溶性
ニザチジン 0.70 -0.15 水溶性
ラフチジン 2.48* 0.39* 脂溶性

*pH6

結論

  • くすりの尿中未変化体排泄率に注目してみよう。尿中未変化体排泄率によって、くすりの性格が見えてくる。

  • 尿中に未変化で排泄される割合が高いくすりは腎排泄型薬物である。尿中に代謝物で排泄される割合が高いくすりは肝消失型薬物である。

  • 腎排泄型薬物を腎機能低下者に投与すると血中濃度が高くなり、効果が強く出すぎたり、副作用が発現する場合がある。肝消失型薬物は腎機能低下者の血中濃度を上げることがないので安心して投与できるが、逆に肝機能障害者には注意が必要である。

  • 肝消失型薬物は酵素阻害、酵素誘導の影響を受けやすい。

  • 油水分配係数が1より大きいくすりは脂溶性薬物で肝消失型薬物の性格を現し、1より小さい薬物は水溶性薬物で腎排泄型薬物の性格を現す。

コラム

[尿中未変化体排泄率 fu とは?]

 代謝などで変化することなく、元のくすりのまま尿中に排泄するくすりの割合を"尿中未変化体排泄率 fu"といい、投与されたくすりの100%が未変化で排泄された場合を1.0とします。
 例えば、第3世代セフェム系抗生物質の注射剤セフォテタンは fu0.70~0.91で、未変化体で排泄される割合が多い腎排泄型薬物ですが、同様のセフォペラゾンナトリウムはfu0.23で代謝物として排泄される割合が多い肝消失型薬物です。
 注射剤の場合は、このように単純でいいのですが、経口剤の場合は吸収率が問題になります。吸収率が50%で、吸収されたくすりがほとんど未変化で排泄される場合の未変化体排泄率は0.5ですが、そのくすりはすべてが未変化で腎から排泄されますので腎排泄型薬物です。また、代謝物に活性がある場合には、未変化体と活性代謝物を併せて、薬効や副作用の大きさ、持続時間等を検討しなければなりません。

[油水分配係数Pとは?]

 正確にいうと、n-オクタノール/水分配係数です。プロプラノロール塩酸塩のpH7.4における分配係数は20.2ですが、同じβ遮断剤アテノロールの分配係数は、0.02です。つまりプロプラノロール塩酸塩は、水にとける20倍もの量がオクタノールにとける脂溶性薬物で、アテノロールは水にとける量の1/50しかオクタノールにとけない水溶性薬物であることを示しています。
 脂溶性薬物は、吸収はよいのですが初回通過効果を受けやすく、かつ組織に移行しやすいなどの特徴があります。水溶性薬物は、吸収は悪いが初回通過効果を受けにくく、血液・脳関門を通過しにくいなどの特徴があります。脂溶性薬物は肝臓で代謝されることにより、体外に消失し、水溶性薬物は腎臓から主に未変化で尿中に排泄されますので、前者は肝消失型薬物、後者は腎排泄型薬物の性格を引き継ぎます。

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