KYOWA KIRIN

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【鉄則その6】 「警告、禁忌、慎重投与の背景」

「警告」は守らなければならない。しかし、「禁忌」は絶対禁忌でない場合もある。そして、「慎重投与」であっても投与しなければならない場合は多い。

CASE

患者さんは60歳の女性で、緑内障です。かなり進んでいて、文字はよく見えませんし、まわりもぼんやり見える程度です。
眼圧が高く、前回チモロールマレイン酸塩点眼液0.5%に変更になりましたが、点眼後眼痛あり、従来のベタキソロール塩酸塩点眼液0.5%に戻りました。今回、ブロチゾラム錠が追加になりましたが、ブロチゾラム錠は、急性閉塞隅角緑内障には禁忌になっています。

[処方内容]

メコバラミン錠 500μg 3錠
7日分
分3 毎食後
メフェナム酸錠 250mg 2錠
7回分
疼痛時
ブロチゾラム錠 0.25mg 1錠
7日分
就寝前
ベタキソロール塩酸塩点眼液 0.5%
5ml
両眼 1日2回 朝夕

 「小野さん、眠れないのですか?」
 「頭と目が痛くて、なかなか眠れないのです」
 「今日出たブロチゾラムという睡眠薬は、眼圧に影響することがありますが、小野さんの場合は大丈夫ですので、くすりを飲んでゆっくり休んでくださいね」と、過去にもベンゾジアゼピン系の睡眠導入剤やかぜ薬が投与されていることを、薬歴から確認しながらお話ししました。
 そして5日後のことです。小野さんがまた、処方せんをもって来局されました。

5日後、再び保険薬局窓口で:

[処方内容]

エスタゾラム錠 1mg 1錠
7日分
就寝前
塩酸ロメフロキサシン点眼液0.3%
5ml
両眼 1日3回 朝昼夕
フラジオマイシン硫酸塩・メチルプレドニゾロン眼軟膏             1日 1回 就寝前

 「小野さん、睡眠薬がブロチゾラムからエスタゾラムに変わっていますね。どうかしたのですか?」
 「あれ? 眼科の先生から連絡がありませんでしたか?"睡眠薬は眼圧に影響するかもしれない"と、薬局の先生から言われたと話したら、"それはよくないわねぇ、くすりを変えておきましょう"と言われたのです」
 「そうですか。じゃあ、前に出ていたブロチゾラムはやめて、こちらにしてくださいね」
 「はい」と言って小野さんは帰りましたが、私は"そんなこと言っていないよなぁ、大丈夫だと言ったのに"と思ったのでした。

眼科医からの電話:

 「小野さんのことですけれど」と、70歳を過ぎてなお現役の素敵なレディからのお電話です。
 「はい」
 「小野さんは、緑内障の急性発作ではないし、虹彩切開術もしているからブロチゾラムでも大丈夫なのですが、本人が心配しているので、エスタゾラムに変えておきましたから」
 「そうですか、ありがとうございます。先生、ところで、どうしてエスタゾラムなのですか?」
 「あら、知らなかったの?"睡眠剤で唯一、エスタゾラムだけ"が緑内障禁忌になっていないのよ」
 「あれ? そうでしたか? まったく知りませんでした」ということになってしまいました。

 さらに1週間後、小野さんは、いつものように薬局にやってきました。処方は、今回もエスタゾラム錠とベタキソロール塩酸塩点眼液0.5%です。

 「小野さん、エスタゾラムで眠れましたか?」
 「はい、やっぱり、前のくすりよりは弱いようで、眠るまで3時間くらいはかかったのですが、あとは朝までぐっすり眠りました」
 「そっかぁ、よかったですね。眼圧のほうはいかがですか?」
 「今日、眼圧は23(mmHg)でした。おかげさまで、眼痛や頭痛もよくなってきました」とのことでした。ともあれ、まずは一段落です。

添付文書解析

「禁忌」は禁忌でない場合がある

 エスタゾラムの製薬会社に問い合わせたところ、「エスタゾラムは、理論的には閉塞隅角緑内障発作の可能性はあるのだが、実際の症例は報告されていないことと、抗コリン作用もごく弱いことから、禁忌にも慎重投与にもしませんでした」とのことでした。
 向精神剤、鎮痙薬、抗ヒスタミン剤など抗コリン作用をもっているくすりは、ほとんど緑内障に対して「禁忌」になっています。しかし、私は緑内障の患者さんに、これらの禁忌とされているくすりが処方になっていても、処方医に問い合わせすることは稀です。
 緑内障は、開放隅角緑内障と閉塞隅角緑内障があって、後者はくすりによって急性緑内障発作が誘発される可能性があります。しかし、このような患者さんには、すでに眼科でレーザー虹彩切開術という緑内障急性発作の予防処置が済んでいるはずですし、最近ではこれらの抗コリン作用の眼圧上昇作用はかなり弱いことが定説になっているからです。このように「禁忌」となっていても、実際は投与できる場合や投与されている場合があります。

 例えば、副作用が比較的少なくて、緩和な解熱・消炎・鎮痛剤として一般薬も発売されている"イブプロフェン錠"の添付文書を見てみましょう。「消化性潰瘍のある患者、重篤な血液の異常のある患者、重篤な肝障害・腎障害・心機能不全・高血圧症のある患者」が「禁忌」になっています。これらの疾病をもっている患者さんには、解熱消炎鎮痛剤を投与できないとすると、医師は大変困ることになると思います。
 たしかに、消化性潰瘍や腎障害患者に対しては、"イブプロフェンのプロスタグランジン合成阻害という薬理作用が影響を与えるので要注意"といえるでしょう。しかし、イブプロフェンの血液障害や肝機能障害は"毒性"ではなく"アレルギー性"ですから、イブプロフェンに過敏症の既往がなければ、血液障害者や肝障害者にも投与できるはずです。
 イブプロフェン錠にはさらに、「本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者」、「アスピリン喘息またはその既往歴のある患者」、「ジドブジンを投与中の患者」は「禁忌」となっています。これらの禁忌は、具体的な指示であり、過去にその症例があったことを示していますので、当然"処方医に連絡し、投与するか否かを相談しなければならない禁忌"です。

「慎重投与」はその背景を知ろう。投与できる場合もあるのだから

 イブプロフェン錠では、「胃潰瘍のある患者、重篤な血液の異常のある患者、重篤な肝障害・腎障害・心機能不全・高血圧症の患者」が「禁忌」になっていて、"重篤な"という形容詞を除くとすべて「慎重投与」になっています。非ステロイド性消炎鎮痛剤はすべてこう記載されているのです。しかし、イブプロフェンの場合は、過敏症がなければ、血液障害者や肝障害者には投与が可能でした。
 このように、慎重投与には必ずその背景がありますから、それを理解することで個別の対処が可能になります。そのためには、慎重投与になった症例を検討することです。これには、日本薬剤師会が作成している「DSU解説」や製薬会社が作成する「使用上の注意の解説」、本webサイトの「 鉄則 その4 」で示した"副作用機序別分類"が大変役に立ちます。

「警告」が発せられるときは、必ず重篤な症例がある

 「警告」は"致死的または極めて重篤かつ非可逆的な副作用が発現する場合"に発せられます。その場合には"緊急安全性情報"が発信され、警告の基になった症例が明らかになり、同時に対応の仕方についての指示が出ます。
 「ベンズブロマロンによる劇症肝炎が8例あって、そのうち6例が死亡した」として緊急安全性情報が出されました。そして、そこには、1)6カ月間は定期的な肝機能検査をすること、2)食欲不振、全身倦怠感等に注意-患者に注意の徹底を-という具体的な指示が出ています。同時に、添付文書に「警告」の欄が設けられ、同様の注意が記載されました。チクロピジン塩酸塩の血栓性血小板減少性紫斑病、無顆粒球症、重篤な肝障害の場合も同様で、「2カ月間は、原則として2週に1回検査を行い、副作用の初発症状の発現に十分注意をすること」を促しています。これらの情報は、副作用チェックや服薬指導に生かさなければなりませんね。

 ベンズブロマロンの緊急安全性情報が出されたときのことです。患者さんが「こんな怖いくすりは飲めないから、くすりを返します」と言ってきたのです。「あなたは、もう1年も飲んでいて大丈夫だったのだから、副作用の心配はないのですよ」とお話ししても、納得しないのですね。
 患者さんの気持ちはよくわかります。では、ほんとうに、6カ月を過ぎると大丈夫なのでしょうか? 十中八九大丈夫なのです。なぜなら、ベンズブロマロンの副作用もチクロピジン塩酸塩の副作用も、アレルギー性の副作用だからです。ですから、前から飲んでいた患者さんのチェックは必要ではなく、これから投与される患者さんにチェックが必要なのです。

結論

  • 「禁忌」は禁忌でない場合もある。それは"アレルギー性副作用のための禁忌"で、もしそのくすりにアレルギーがなければ投与できることも多い。

  • 「慎重投与」の背景を知ろう。それによって対策を立てることができるから。

  • 「警告」は守ろう。実際の症例があったのだから。

演習問題

  • アスピリン喘息に禁忌ではない解熱消炎鎮痛剤はあるのか?

     アスピリン喘息の発症機序は、シクロオキシゲナーゼ阻害活性の強い非ステロイド性消炎鎮痛剤の投与後に起きることから、シクロオキシゲナーゼ阻害という薬理作用が、その発症機序と考えられています。したがって、シクロオキシゲナーゼ阻害活性を欠くチアラミド塩酸塩錠、エピリゾール錠、エモルファゾン錠などの塩基性消炎鎮痛剤は、アスピリン喘息を誘発しないことが知られています。
     しかし、チアラミド塩酸塩錠、エピリゾール錠は添付文書上禁忌になっており、唯一ペントイル錠のみがアスピリン喘息には、禁忌でも慎重投与でもありません。
     また、アセトアミノフェン錠のシクロオキシゲナーゼ阻害活性は弱いのですが、添付文書上は禁忌です。

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