KYOWA KIRIN

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【鉄則その7】 「薬物相互作用の機序別分類」

添付文書にある相互作用が全部起きるのではない。怖いのは「薬物代謝酵素阻害」で、それは肝消失型薬物が代謝酵素を共有する場合および非線形薬物が併用される場合に起きやすい。

CASE1

「大変だ! ニューキノロン系抗菌剤と非ステロイド性消炎鎮痛剤の併用です。痙れんが起きたらまずいので、変えてもらわなければ!」と、興奮しているのは、新人薬剤師の孝典君。患者さんは、28歳の女性で歯科クリニックからの処方せんです。

[処方内容]

トスフロキサシントシル酸塩錠 75mg
3錠
チアラミド塩酸塩錠 100mg
3錠
リゾチーム塩酸塩錠 10mg
3錠
分3 毎食後
3日分

 「どれどれ、ニューキノロン系抗菌剤のトスフロキサシントシル酸塩錠とNSAID (非ステロイド性消炎鎮痛剤)のチアラミド塩酸塩錠ね。これは痙れんを起こした症例報告がないから、大丈夫です。歯科医師もわかって処方していると思いますから、このまま出しましょう」と、ベテラン薬剤師の小川さんは、こともなげに言い切ってしまいました。
 「え! ほんとに大丈夫ですか?」
 「添付文書を見てごらん! トスフロキサシントシル酸塩錠は痙れんが現れることがあるので"フェニル酢酸系とプロピオン酸系の非ステロイド性消炎鎮痛剤だけが併用注意"でしょ」
 「ほんとだ! チアラミド塩酸塩錠は大丈夫なんだ」
 「ニューキノロン系抗菌剤とNSAID Sの併用による痙れんは、出やすいくすりと出にくいくすり、出やすい患者さんと出にくい患者さんがあるのですよ」
 「出やすいくすりって、どんなものですか?」
 「ニューキノロン系抗菌剤では、GABA応答抑制作用が強いノルフロキサシン、シプロフロキサシンなどがありますし、NSAID Sでは過去に痙れんの報告があるジクロフェナクナトリウム、ピロキシカム、ケトプロフェンなどのフェニル酢酸系やプロピオン酸系NSAID Sがあげられますね」
 「チアラミド塩酸塩などの塩基性消炎鎮痛剤は含まれないのですね。ところで、痙れんが出やすい人って、どういう人ですか?」
 「まず、痙れんの既往がある人がそうです。それに、ニューキノロン系抗菌剤はほとんど腎排泄型のくすりですから、腎機能低下者は血中濃度が上がって副作用が出やすくなります。それから、ニューキノロン系抗菌剤を飲んだときに頭重や頭痛、眠気などの副作用を経験した人も注意が必要ですね」
 「なるほど、よくわかりました」
 「そういうリスクが高い人には、痙れんが起きるときの初期症状を伝えておく必要があると思います」
 「はい、わかりました」と、孝典君は薬歴簿とペンをもって、張り切って患者さんのインタビューに向かいました。

添付文書解析

 ニューキノロン系抗菌剤とNSAID Sの組み合わせには、「併用禁忌」「併用注意」「併用可」の3つの組み合わせがあります。例えば、ノルフロキサシンとフルルビプロフェンは併用禁忌ですが、シプロフロキサシンとロキソプロフェンは併用注意で、トスフロキサシントシル酸塩とチアラミド塩酸塩は併用可です。もっとも「併用可」は、そう書いているわけではありません。「併用禁忌」「併用注意」と書いていないだけです。
 「併用禁忌とされた相互作用」は、"重篤な結果をもたらした症例がある"ことを示していますので、もし併用がみられたら、処方医に「処方変更のお願い」を発信しなければなりません。そのときには、できれば併用禁忌の根拠になった相互作用症例報告を用意しておきたいですね。それには、「使用上の注意改訂のお知らせ」や厚労省医薬品等安全性情報が役に立ちますし、DSU解説も有用です。そして、もうひとつとても大事なことは、処方医から「では、何を投与すればいいのか?」と聞かれた場合の準備をしておくことです。
 併用注意の場合には"理論的にそういう恐れがあるが、相互作用に関する報告症例、研究報告はない"ことが多いのです。これは必ずしも起きるとは限らないので、私は処方医に疑義照会をせずに、患者さんに相互作用の初発症状を伝え、薬歴に記載して観察を続けることが多いのです。

CASE2

石田さんは53歳の男性です。長年の飲酒がたたり肝臓の機能が若干低下していますが、いまだにお酒は止められません。そして、毎年夏になると足白癬(水虫)に悩まされますが、今年は異常に暑いせいか、爪までぼろぼろになってきたのです。石田さんは今日もドリンク剤を買いに薬局を訪れました。なにやら疲れた感じの石田さんです。

 「石田さん、去年までは愛用のクリーム剤だけですんでいましたが、今年は大変そうですね」
 「うん、足がかゆくてしょうがないので皮膚科に行ったら、イトラコナゾールというくすりをくれて飲み始めたが、爪のほうは一向に良くならないねえ」
 「そうなんですか......今年は爪白癬も合併ですか」
 「おまけに最近はお酒もおいしくなくてね」
 「石田さんは、たしか肝機能も少し低下していましたよね。最近、肝臓の検査は受けていないのですか?」
 「もう1年くらいやってないなあ、ALTやASTの数値を見るのが怖いからなあ」
 「値が高かったら、お酒を節制する決心もつくでしょ! 検査した方がいいですよ」
 「そうだよね。最近、なんかおしっこの色が濃くなってきたような気がするしね」
 「え? おしっこの色が変わったのですか?」
 「うん、少し赤くなったような......」
 「え? もしかしたら石田さん、コレステロールが高くないですか?」
 「あれ? よくわかるねえ。もう大分なるがコレステロール低下剤を飲んでるよ」
 「そのくすりいま持っていますか?」
 「うん、持っているよ ほらこのくすりだ。これはいいくすりだね。あのくらい高かったコレステロールが、今は基準値以内だそうだ」
 「なるほど、やっぱりそうですか......。ところで石田さん、最近手足の筋肉に力が入らなかったり、こわばりやしびれなど感じませんか?」
 「そうなんだよ。それに、なんか疲れやすいんだ」
 「そうですか...。石田さん、もしかしたらこれは水虫のくすりを飲み始めたことによって、コレステロール低下剤が効きすぎているのかもしれませんよ」
 「そうなんですか? くすりの副作用かもしれないのですか?」
 「副作用というよりは"相互作用"といっていますが、イトラコナゾールを飲むことによって、コレステロール低下剤の血中濃度が上がって、筋肉に障害が起きているのかも知れません」
 「そうか......だから、全身がだるいような感じがするのか。どうしたらいいかなあ?」
 「とりあえず、いま飲んでいるくすりは止めて、コレステロール低下剤を出している先生に相談した方がいいと思いますよ」
 「そうか! わかった、ありがとう」
 と、言って石田さんは帰りました。もしかしたら、HMG-CoA還元酵素阻害剤とイトラコナゾールの併用によって"横紋筋融解症"の危険が迫っているのかもしれません。

添付文書解析

 イトラコナゾールの添付文書では、イトラコナゾールはHMG-CoA還元酵素阻害剤のシンバスタチンと併用禁忌になっています。添付文書の臨床症状・措置方法には「シンバスタチンの血中濃度上昇により、横紋筋融解症があらわれやすくなる」と記載されており、機序・危険因子には「本剤のCYP3A4に対する阻害作用により、これらの薬剤の代謝が阻害される」と明確に記載されています。
 平成12年12月25日に厚生省医薬安全対策課(当時)から一通の通知が出されました。この通知は大変有意義なものでした。なぜなら「相互作用の発現機序において医薬品の代謝酵素が関与する場合は少なくなく、また昨今の医薬品代謝に関わる酵素の分子種の解明も進歩していることを踏まえ、これらの情報を反映するため、可能な範囲で、代謝酵素の分子種等の情報を記載し、内容の充実をはかることといたしたい」とされたからです。
 この通知以降、相互作用の項には代謝酵素の分子種が記載されるようになりました。また、医薬品が代謝酵素を阻害する場合や誘導する場合もその分子種が記載されることとなり、相互作用が以前よりずっと理解しやすくなりました。

薬物相互作用の機序別分類

 薬物相互作用発生の機序は3つに分けて考えるといいでしょう。第1に重要な相互作用の機序は、"代謝酵素阻害が関係する場合の相互作用"です。従来、この相互作用は"薬物動態型の相互作用"としてひとくくりにされていましたが、これからは、重大な結果を引き起こす可能性が大きい相互作用として、「薬物代謝酵素阻害型相互作用」の項目をつくって取り上げ、注意を喚起しなければなりません。
 第2に、くすりの吸収、分布、代謝、排泄が関係する場合の「その他の薬物動態型相互作用」があります。併用によってくすりの吸収、分布、代謝、排泄に影響して、血中濃度が変化して起きる薬物動態学的相互作用は、ある程度予測が可能ですから対策が立てられます。例えば、ニューキノロン剤と制酸剤の併用によるニューキノロンの吸収阻害は、2時間くらい時間をずらして投与することで防げます。
 そして、第3の薬物相互作用機序は「薬力学型相互作用」で、薬効や副作用の相乗・相加効果が起きる場合です。しかし、この薬力学型相互作用は、必ずしも起きるとは限りません。例えば、肝障害をもつくすり同士の併用でも、片方のくすりの肝障害がアレルギー性であれば、相乗作用が起きる確率はきわめて小さくなります。したがって、この機序に属する相互作用は起きるかどうかわからない場合が多いので、経過を観察するしかありません。

「薬物代謝酵素阻害型相互作用」が起きやすいくすり

 多くのくすりがCYP450を介して代謝されますので、これからは薬物代謝酵素阻害による相互作用は増えてくるはずです。
 したがって、代謝酵素阻害が起きやすいくすりを見極めることが大切になりますが、現在の時点でそれは2つ考えられます。まず第1に、肝臓で代謝されて消失する肝消失型のくすりです。これは腎外クリアランスが高い薬物、つまり尿中未変化体排泄率が低いくすりです。そして第2に、血中濃度が非線形の速度過程を示すくすりです。
 くすりの血中濃度は、ふつう投与量が2倍になれば2倍になり、投与量が4倍になれば血中濃度も4倍になるなど、ほとんどのくすりが投与量に比例して血中濃度が上昇します。このような速度過程を線形速度過程といっています。
 ここで、イトラコナゾールの添付文書の未変化体最高血中濃度を見てみましょう。50mg投与で 37.0ng/ml、100mg投与で 132.2ng/ml、200mg投与で 215.6ng/mlですから、投与量2倍で血中濃度は3.6倍、投与量4倍で血中濃度は5.8倍です。この場合のように、投与量比以上に血中濃度が上昇している速度過程を「非線形速度過程」といっています。
 なぜ、このようなことが起きるのかというと、くすりの代謝酵素の量に限界があり、一定量しか代謝できなくなって血中濃度が高くなるからです。したがって、こういうくすりは、併用されてもし同一の代謝酵素を共有することがあると、代謝酵素阻害が起きて血中濃度が上昇します。ですから、"そのくすりが酵素阻害を起こしやすいか否か?"を判断するためには、添付文書の血中濃度曲線を見て、血中濃度が投与量比以上に上がっていないかどうかを確かめる必要があります。

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