KYOWA KIRIN

このサイトは、日本国内の医療関係者(医師、薬剤師、看護師、技師・技士等)を対象に、弊社が販売する医療用医薬品を適正にご使用いただくための情報を提供しています。国外の医療関係者、一般の方に対する情報提供を目的としたものではありませんのでご了承ください。

【鉄則その9】 「妊婦、授乳婦、小児への投与」

妊婦、授乳婦、小児の添付文書は「有益性投与」が原則である。では、"有益性"って、誰のため?もちろん、生まれてくる赤ちゃんのため、幼児のため、小児のためである。

CASE1

患者さんはTさん32歳、とてもきれいな女性でした。結核で下記のくすりを服用していました。

[処方内容]

  1. リファンピシンカプセル
    3cap
    1日1回内服 朝食前
    14日分
  2. エタンブトール塩酸塩錠 250mg
    3錠
    イソニアジド錠 100mg
    3錠
    1日3回内服 毎食後
    14日分

 そして出産したのです。しばらくして、赤ちゃんをつれて薬局にくすりをもらいにきたときのことです。

 「よかったですね。無事に生まれて!」
 「うん、ありがとう。ほんとによかったです」
 「可愛いなぁ、女の子ですね」
 「そうよ。でも......指が欠損しているの」
 「え? くすりのせいですか?」
 「先生は"何とも言えない"って、言ってた」と話す母親に、私は何も言う言葉がありませんでした。

添付文書解析

 催奇形性の有無や妊婦に対する投薬の判断は、極めて難しい問題のひとつです。一般に、妊娠4週に入れば、曝露による流産や死産を免れ、健児を出産できるとされています。
 くすりによる催奇形性という意味では、4週から7週末までが、最も注意が必要ですが、添付文書には型どおりの注意しかありません。このように、妊婦への投与を考えたとき、添付文書はあまりにも無力です。なぜならば、添付文書では、妊婦、授乳婦に対して投与するときに記載する文言が決まっているからです。
 それは、医療用医薬品の使用上の注意記載要領[平成9年4月25日付 薬発607号]で、妊婦、産婦、授乳婦に対する投与について理由、注意対象期間、措置を別表から適宜組み合わせて記載するように指示されたことによります。(表参照)

図1妊婦、産婦、授乳婦などへの投与に関する表現方法

妊婦、産婦、授乳婦などへの投与に関する表現方法 妊婦、産婦、授乳婦などへの投与に関する表現方法

 ただ、添付文書には催奇形性や胎仔毒性の動物実験のデータがありますが、そのデータで異常が認められ、かつ代替のくすりがある場合は、それらのくすりの投与は妊婦には避けるべきです。
 添付文書でデータが得られない場合には、私はまず成書を見ることにしています。『妊娠・授乳女性の薬ハンドブック 第3版 アップデート版』(メディカル・サイエンス・インターナショナル 2008年9月)、『授乳婦と薬』(じほう 2000年10月)、その他、『実践 妊娠と薬 第2版』(じほう 2010年12月)、『薬剤の母乳への移行 第4版』(南山堂 2008年)などをよく使います。
 オーストラリアの医薬品評価委員会では、妊婦に対する医薬品の安全性をカテゴリーごとに分けて公開しています。これが翻訳されて『妊娠中の投薬とそのリスク(第4次改訂版)』として医薬品・治療研究会より発行されています。

CASE2

患者さんはMちゃん。2歳の女の子です。昨夜から全身に蕁麻疹が出てしまいました。
お母さんが処方せんをもってMちゃんと一緒に来局しました。

[処方内容]

チペピジンヒベンズ酸塩シロップ0.5%
6ml
カルボシステインシロップ5%
6ml
ベタメタゾン・d-クロルフェニラミンマレイン酸塩シロップ
5ml
1日3回内服 毎食後
4日分

 ベタメタゾン・d-クロルフェニラミンマレイン酸塩シロップの処方量が"少し多いかなあ"と思ったどんぐり薬局北中山の薬剤師、佐々木さんはどんぐり工房に電話しました。「2歳の幼児の蕁麻疹に、ベタメタゾン・d-クロルフェニラミンマレイン酸塩シロップはどのくらい投与するのでしょうか?」と。電話を取ったのは孝典君、新卒薬剤師も、半年を過ぎてやっとまわりが見えるようになりました。孝典君は早速、添付文書を見ています。
 「ベタメタゾン・d-クロルフェニラミンマレイン酸塩シロップの添付文書の用法・用量は、"通常、成人には1回5~10mlを1日1~4回経口投与する。小児には1回5mlを1日1~4回経口投与する。なお、年齢、症状により適宜増減する。ただし、本剤を漫然と使用するべきではない"と書いてありますが、2歳の幼児についてはなんにも書かれていないですねぇ......」
 「私だって、添付文書を見てから電話しているのよ。"小児等への投与の項"を見てご覧なさい。そこには、"幼児・小児の発育抑制が現れることがあるので、観察を十分に行い、異常が認められた場合には減量又は投与を中止するなど適切な処置を行うこと"と書かれているでしょ」と、孝典君は質問者に教わっています。佐々木さんはさらにつづけています。
 「用量に"小児"と記載がある場合は、学齢以上の子供ですよ。この用量を幼児に服用させると多い場合があります。しかも発育抑制があると記載されていますから、これがどういう状況で発生するのか気になります」と、佐々木さんはなかなか手厳しい指摘です。
 「はい、わかりました。製薬会社に電話して聞いてみます」と孝典君は答えています。

 「ベタメタゾン・d-クロルフェニラミンマレイン酸塩シロップの小児薬用量を年齢と体重の両方を参考に考えられるような表があります。あくまで参考ですが、その表をファクシミリしましょうか?」と、孝典君の電話に製薬会社の担当者は答えています。
 「ところで、ベタメタゾン・d-クロルフェニラミンマレイン酸塩シロップの添付文書に発育抑制があると書かれていますが、そのような報告があるのでしょうか?」
 「ベタメタゾン・d-クロルフェニラミンマレイン酸塩のシロップでは報告はないのですが、錠剤で報告があります。そのときのベタメタゾン・d-クロルフェニラミンマレイン酸塩錠の1日量は1錠から3錠で、投与期間は1年から2年間です」とのことでした。

 孝典君は、早速製薬会社からもらったベタメタゾン・d-クロルフェニラミンマレイン酸塩のシロップの投与量表を佐々木さんにファクシミリしました。そして孝典君は、そのファクシミリ用紙に「発育抑制は、短期間の投与であれば、問題はないそうです」と書き加えました。初めて支店へ医薬品情報を発信した孝典君は、ちょっと興奮気味ですが、とても満足そうでした。

添付文書解析

 小児に対する投与では、用法・用量が承認されていないが、小児等に用いられる可能性のある医薬品であって「小児等」に対する臨床試験データが十分でない場合には、原則として「未熟児、新生児、幼児又は小児に対する安全性は確立していない」と記載することになっています。そして薬物動態に関して製薬会社は厚生省から、できるだけ添付文書に情報を記載するよう求められていますが、通常、薬物動態は、成人健常者のデータしかないのが現状です。
 ですから、「未熟児、新生児、幼児又は小児に対する安全性は確立していない」と書かれていても「小児に投与できない」という意味ではありません。「安全性が確立されていない」、「有益性が危険性を上回る場合にのみ投与する」などと書かれていても、多くのくすりは実際に投与されています。

 私たちが、乳幼児や小児のことを聞かれるのは、たいてい赤ちゃんを抱いた母親、小さな子供をつれた母親が、「本当に大丈夫でしょうか?」と不安な面持ちで聞いてくる場合です。真剣なご家族や患者さんを前に添付文書を棒読みするわけにはいきませんね。医師から小児薬用量を聞かれることも多く、「特別な害は出ないか?」とたずねられることもあります。なぜなら、年齢や体重で計算できるくらい小児用量は単純ではないからです。例えばジギタリス製剤は、乳幼児、小児には比較的多量を用います。
 薬用量については、まず『新小児薬用量 改定第6版』(診断と治療社2012年6月)を見ることにしています。これは実際に臨床で使われているデータですから参考になります。また、世界的に流通しているような薬であれば、PDR(米国処方医薬品集)に妊婦や小児について詳しい情報が記載されていることがあります。

 自分で調べること、調べられるように準備をすることは私たちの義務ですが、製薬会社に聞かなければわからない場合は多々あります。なるべく多くのことを聞き出すためには、害があったかどうかだけではなく、投与して安全だった例はあるかをもあわせて聞いてみることです。
 しかし、製薬会社であっても、実際には妊婦、授乳婦、小児についての情報量はそう多くはありません。そこで、もうひとつ大切な私たちの役割が浮かんできます。患者さんの中に妊婦や授乳婦がいれば、薬歴から投与量も投与期間もわかります。妊娠の経過や出産が正常であったか、新生児に障害はなかったのかを、患者さんから聞いて記録として残すこと、これが今後の私たちに課せられた課題であると思います。
 私たちはいつも"情報がない"と嘆くことが多いのですが、"自分たちがもっている情報のひとつひとつが、重要なくすりの情報となる可能性を秘めている"という事実を意識することがあまりありません。けれども、私たち自身が情報を蓄積していくことにより、多くの患者さんのくすりの選択の幅が広がるとすれば、こんなにうれしいことはないと思います。妊産婦の患者さんの協力を得て、「妊産婦への投薬情報」を集めましょう。みんなでやれば、膨大な情報が集まります。

結論

  • 添付文書に催奇形性や胎仔毒性について記載がある場合は、妊婦への投与は避けよう。

  • 「未熟児、新生児、幼児又は小児に対する"安全性は確立していない"」と書かれていても "投与できない"という意味ではない。

  • 妊産婦の患者さんの協力を得て、「妊産婦への投薬情報」を集めておこう。とくに"飲んでも安全だった"という情報が大切である。

サイトリニューアルに伴うログインについてのお知らせ

サイトリニューアルに伴い、ログイン用のIDをメールアドレスに変更いたしました。ログインできない場合はこちらのパスワード再設定画面で再設定いただくか、 こちらにお問い合わせください。

おすすめ情報

  • おすすめ情報は、協和キリンのウェブサイトにおける個人情報の取扱い方針に基づき、お客様が閲覧したページのアクセス情報を取得し、一定の条件に基づき自動的に表示しています。
    そのため、現在ご覧いただいているページの情報との関連性を示唆するものではございません。

くすり相談窓口

弊社は、日本製薬工業協会が提唱するくすり相談窓口の役割・使命に則り、くすりの適正使用情報をご提供しています。
弊社医薬品に関するお問い合わせは、下記の電話窓口で承っております。

フリーコール

0120-850-150

受付時間 9:00~17:30
(土・日・祝日および弊社休日
を除く)

※お電話の内容を正確に承るため、また、対応品質の維持・向上等のため通話を録音させていただいております。あらかじめご了承ください。

お問い合わせ