KYOWA KIRIN

このサイトは、日本国内の医療関係者(医師、薬剤師、看護師、技師・技士等)を対象に、弊社が販売する医療用医薬品を適正にご使用いただくための情報を提供しています。国外の医療関係者、一般の方に対する情報提供を目的としたものではありませんのでご了承ください。

【鉄則その10】 「添付文書が変わるとき」

添付文書が変わるとき、それは何かが起きたとき!そのわけを知ろう。
対策を立てられるから。

CASE1

患者さんはKさん、84歳男性。T内科医院からめまいその他で、ベタヒスチンメシル酸塩錠、ジフェニドール塩酸塩顆粒、ツロブテロール貼付剤等の投薬を受けています。また、前立腺肥大症にともなう排尿障害でA病院泌尿器科から、タムスロシン塩酸塩カプセル0.2mgの投与を受けていましたが、尿が出にくくなり、1カ月前にクロルマジノン酢酸エステル徐放錠50mg30日分が加わりました。今日、再びA病院から下記の処方せんが出されました。

[処方内容]

  1. タムスロシン塩酸塩カプセル 0.2mg
    1cap
    1日1回内服 朝食後
    30日分
  2. クロルマジノン酢酸エステル徐放錠50mg
    1錠
    1日1回内服 朝食後
    30日分

 「Kさん、前回加わった前立腺肥大のおくすりが今日も出されていますが、いかがですか?」
 「う~ん、少しはよくなったような気はするが、まだまだだなあ。これはやっぱり老化だから、しょうがないのかなあ」
 「めまいはどうなのですか? 続いていますか?」
 「いまもときどきあるが、すぐ治まるのでそれほどではない」
 「最近、ごはんはおいしく食べられていますか?」
 「うん。やっぱり3度の飯は楽しみだねえ。去年、天候が悪かった割には、米はよくできたから、おいしく食べられているよ」
 「それはよかったですね。何よりです」
 「そうだね。飯がまずくなったら終わりだもんな」
 「ところでKさん、今日は採血されましたか?」
 「いや、何もなかったよ」
 「最近では、いつごろ血液検査したの? T内科でもやっていない?」
 「うーん、そういえば去年町の健診でやったきり血液検査はしてないなあ」
 「たまには検査した方がいいですよ。泌尿器科の先生に血液検査お願いしておきましょうか?」
 「そうだね。忘れるといけないからお願いできますか」
 「はい、わかりました。じゃあ、連絡しておきましょう」

添付文書解析

 「ご飯はおいしく食べられていますか?」という問いかけには意味があります。それは食欲不振の、つまりクロルマジノン酢酸エステル徐放錠による肝機能障害のチェックです。もちろん、"血液検査の有無のチェック"も重要でした。それには次のような意味があります。
 一例を紹介しますと、クロルマジノン酢酸エステル錠25mgおよびクロルマジノン酢酸エステル徐放錠50mgの添付文書の使用上の注意が2004年1月に改訂されました。従来は、副作用の「(1)重大な副作用の項」に単に「肝機能障害、黄疸(ともに0.1%未満)があらわれることがあるので、肝機能検査値に注意するなど観察を十分行い、異常が認められた場合には投与を中止し適切な処置を行うこと」という一般的な記載があっただけでした。それが次のように具体的な記載になりました。
 「本剤投与1~2カ月後に劇症肝炎(頻度不明)、肝機能障害、黄疸(ともに0.1% 未満)があらわれ、死亡に至った症例が報告されているので、投与開始後3カ月間は少なくても1カ月に1回、それ以降も定期的に肝機能検査を行い、悪心・嘔吐、食欲不振、全身倦怠感等の異常が認められた場合には直ちに投与を中止し適切な処置を行うこと」と。
 "使用上の注意改訂のお知らせ"には、改訂理由として3症例が呈示されています。もう少し詳しい情報が欲しいと思い製薬会社に聞いてみました。すると「クロルマジノン酢酸エステル錠の重篤な肝機能障害は52例報告されていて、そのうちの約90%が3カ月以内に発現している」こと、および「4週で肝機能検査値の異常を示した症例がいくつかあり、それらの症例はそこで気づいて中止したために、重篤にならなかったと考えられたので、3カ月以内は1カ月に1回肝機能検査をすることとした」ことがわかりました。
 Kさんの"血液検査の有無のチェック"の理由はここにありました。つまり"3カ月間は1カ月に1回の肝機能検査が必要"なのに、"検査がないままに2カ月目のクロルマジノン酢酸エステル錠投与に入った"からでした。そしてKさんからは"先生に検査をお願いしても良い"という了解を貰っています。そこで、処方医には"患者さんの服用状況"として"肝機能検査が必要なこと"を情報提供することになりました。

 さて、添付文書にある「投与開始後3カ月間は少なくても1カ月に1回、それ以降も定期的に肝機能検査を行い」という文言について考えてみましょう。薬剤性肝障害で重要なことは、"薬物過敏性肝障害"か? それとも"肝毒性"か? ということです。なぜならば、薬物過敏性肝障害であればなるべく早く中止しなければ重篤な結果を招くからです。それらの区別について下記の表にまとめてみました。

薬物過敏性肝障害と肝毒性の違い

項 目 薬物過敏性肝障害 肝毒性
出現時期 投与開始後1~4週 投与開始後数カ月
初発症状 発熱、発疹、掻痒感 食欲不振、吐き気
検査値 急激なAST、ALT上昇 AST、ALT上昇
末梢血液像 好酸球・白血球増加 変化なし
感受性試験 陽性の率が高い 陰性
薬剤再投与 すぐに肝障害発現 通常はすぐには出ない

2002.8.21 T.Kanno

 クロルマジノン酢酸エステル錠使用上の注意改訂のお知らせにある3症例の比較的急激なALT、ASTの上昇からみてクロルマジノン酢酸エステル錠の肝機能障害は薬物過敏性の疑いが濃厚です。しかし、3例中2例がDLST陰性(1例は不明)であることから、肝毒性の可能性も否定できません。そこで、「それ以降も定期的に肝機能検査を行い」という表現になったのではないかと思われます。

 このように、添付文書が変わるのには理由があります。その理由こそが大切です。また、実際の症例の蓄積があるか、文献報告のみか、副作用はなぜ起きたのか、どのような状況で起こっているのか、などの要素を加味して情報の重要性を判断します。
 もっと詳しい情報が知りたいと思えば、製薬会社の情報室に聞いてみることも有効な手段です。副作用の総合的な情報をもっているのは、やはり製薬会社です。また、掲載時期は遅くなりますが、「日薬医薬品情報」のDSU(医薬品安全対策情報)解説で説明されることもあります。日薬ホームページでは過去のDSU解説が検索できるようになっていますから、利用してみるのもよいでしょう。
 現在、医薬品医療機器総合機構の医薬品情報提供ホームページでは、1カ月に1度の割合で厚労省指示による使用上の注意改訂情報がアップされます。これらは、厚労省から製薬会社に通達した指示内容の情報公開ですが、実際には、製薬会社から医薬品について副作用の集積状況や国内・海外での文献情報が厚労省に提出され、"使用上の注意改訂が必要だと厚労省が判断したもの"について回答が示されています。
 その後、製薬会社により「使用上の注意改訂のお知らせ」と新たな添付文書がユーザーに配布されます。そのほかにも、添付文書は企業による自主改訂などのさまざまな理由で頻繁に改訂されています。しかし、その改訂をいちいち覚えておく必要はなく、いつでも取り出せるように整理しておけばいいのです。
 あとでその副作用を機序別分類で分析する必要が生じたときに大変役立ちます。

CASE2

患者さんはYさん、59歳男性。躁うつ病の躁状態で入院していたYさんは退院後6カ月間炭酸リチウム錠200mgで良好に外来治療されていました。しかし、最近躁状態が続いており、下記処方が出され、Yさんはどんぐり薬局に処方せんを持参しました。

[処方内容]

  1. 炭酸リチウム錠200mg
    3錠
    1日3回内服 毎食後
    14日分
  2. バルプロ酸ナトリウム徐放錠200mg
    2錠
    1日2回内服 朝夕食後
    14日分
  3. ニトラゼパム錠5mg
    1錠
    1日1回内服 寝る前
    14日分

 「Yさん、今日はおくすりが2つ増えていますね」
 「うん、最近眠れなくなってしまってね。"入院していたときの睡眠薬を出します"とのことでした」
 「そうですね。ニトラゼパム錠という睡眠薬が出てますから今夜からぐっすり眠れますよ」
 「うん、あれはいいくすりだね。ただ、翌日も眠かったりしたときもあったなあ」
 「でも、朝までぐっすり眠れるでしょ」
 「うん、少し安心したよ」
 「ところで、バルプロ酸ナトリウム徐放錠が追加されていますが...」
 「先生が新しいくすりを出してみるとお話ししていましたが、この新しいくすりって副作用が心配ですが、大丈夫なのでしょうか?」
 「"新しい"と言っても、30年以上前からてんかんのくすりとしてよく使われていたのでよく分かっているくすりですから、大丈夫でしょう」
 「てんかんのくすりが私に効くのですか?」
 「そうなんですよ。Yさんのような症状に"効く"ということは世界中でよくわかっていて使われていたのですが、日本ではこのくすりではてんかん以外の臨床試験が行われなかったので、使えなかったのですよ」
 「そうですか!」
 「それが学会から "使いたい"という要望書が出されていて、このくすりを作っている製薬会社から厚生労働省へ申請があって認められたのです」
 「そうすると、かなり高いくすりなのですか? 最近は医療費がかかって大変なのですが」
 「いや、Kさんの投与量での1日薬価は炭酸リチウム錠より少ないので、そんなに大幅に支払いが増えることはありませんよ」
 「そうですか! 安心しました」

添付文書解析

 未知のあるいは重篤な副作用や相互作用が発現して、使用上の注意が改訂されるとき以外に添付文書が変わるのは、適応症が追加になったとき等です。新しい適応症の承認は、新たに臨床試験を追加しなければなりませんので、膨大な費用と時間がかかります。
 適応症の追加は、製薬会社にとっては大きなメリットを得たわけですから、その情報は比較的詳細に医療機関に伝達されます。

 ここで、新たに取得された適応症とともに、注目したいのが薬価です。薬価は、"類似薬効比較"といって、通常は治療上同等の効果をもつくすりの薬価と同じくらいの薬価がつきます。
 葉酸代謝拮抗薬のメトトレキサートは、関節リウマチに使われるオーラノフィン錠との類似薬効比較により、オーラノフィン錠の1日あたり薬価を基準にし、さらに有用性加算もあって高薬価になりました。もっとも、メトトレキサートは新たに臨床試験を行って、慢性関節リウマチの適応を獲得しているわけですから、さらに開発費はかかっていますので、薬価が上がるのはわかります。
 バルプロ酸ナトリウム等の躁うつ病の躁状態に対する適応は、新たに臨床試験を行うことなく、"有効性が医学薬学上公知である"と判断されて効能・効果が認められました。したがって抗てんかん薬と同等になりました。
 これからは、くすりの価格が注目されていきます。なぜなら、各国とも増大する医療費には頭を抱えているほかに、患者さんの負担も大きくなるからです。すでに薬価を意識して、患者さんに負担がかからないようにくすりを選ぶ医師もたくさんいます。このように、治療学的に同等であれば、薬価が低いくすりを考慮することは必要なことです。私たちもくすりの選択に積極的に発言していきましょう。
 WHOでは、1985年にケニアのナイロビで開かれた会議において、くすりの合理的な使用基準として、従来の品質、安全性、有効性と並び経済性と情報をあげています。
 このように経済性、つまり薬価はくすりの大切な評価ファクターなのです。くすりの重要な属性のひとつである薬価が、添付文書に記載してあれば便利ですね。

結論

  • 添付文書が変わるときには必ず理由がある。その理由を知ろう。なぜなら、有用な対策が必ず立てられるから。

  • "使用上の注意改訂のお知らせ"は、添付文書と一緒につづりこんでおこう。とくに、実際に起こった症例が記載されている場合は、副作用機序別分類で分析してみるときに役立つから。

  • 適応症の追加があったときには、薬価にも注目しよう。薬価はくすりのもつ属性として重要である。

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