KYOWA KIRIN

このサイトは、日本国内の医療関係者(医師、薬剤師、看護師、技師・技士等)を対象に、弊社が販売する医療用医薬品を適正にご使用いただくための情報を提供しています。国外の医療関係者、一般の方に対する情報提供を目的としたものではありませんのでご了承ください。

【鉄則その1】 線形型薬物と非線形型薬物

くすりは投与量を増やすと血中濃度が投与量に比例して上昇する大多数の線形型薬物と血中濃度が投与量に比例しないで急上昇するか、頭打ちになる非線形薬物とがある。

CASE

早瀬さんは54歳の男性。本態性高血圧で脂質異常症を合併しています。製薬会社の盛岡支店長を務める早瀬さんは、いつもの内科クリニック定期受診後に処方箋をどんぐり薬局に持参しました。

[処方内容]

テルミサルタン錠80mg
1錠
アムロジピンベシル酸塩錠5mg
1錠
アトルバスタチンカルシウム
水和物錠10mg
1錠
朝食後服用
28日分

「いや~、なかなか血圧って下がらないものですねえ」
「今日はどのくらいでしたか?」
「上が150(mmHg)で、下は90(mmHg)でした。最近、ず~っと高値安定です」
「高値安定ですか......前回は148/88でしたね」
「はい、確かそのくらいでした」
「くすりは、テルミサルタン錠40mg、アムロジピンベシル酸塩5mg、アトルバスタチンカルシウム水和物錠10 mg各1錠でしたね」
「はいそうです。もう3カ月同じくすりを飲んでいます」
「腎臓も肝臓も異常なしでしたけど、いまも変わりありませんか」
「はい、大丈夫です」
「今日の処方箋で、テルミサルタン錠が1日40mgから1日80mgに増量になっていますが、先生から何か聞いていますか?」
「はい、先生は"血圧のくすりを少し強くする"とおっしゃっていました」
「そうですね。メインの降圧剤のテルミサルタンが40mg錠から、2倍入っている80mg錠に変更になっています」
「はい、これで血圧が下がってほしいです」
「ところで、早瀬さん。4週間でくすりはなくなるはずなのですが、いつも5週間くらい後にくすりをもらいに来ますね? どうしてですか? もしかしたら、飲み忘れとかあるのですか?
「はい、実は、週に1回くらい出張があってホテルに泊まるのですが、翌日の朝は飲み忘れることがあります」
「そうですか。忘れないで飲みましょうね。出張の時は歯磨きにくっつけておいたほうがいいかもしれませんね」

 実は、テルミサルタンが40mg/日から、80mg/日になることによる心配がひとつありました。それは、テルミサルタンは40mg/日を超えると、急速飽和型の非線形消失速度過程を示し、急に血中濃度が上がり効果が強く出る特性があります。

「今度のくすり、すごくいいくすりですね。あんなに下がらなかった血圧が下がりましたよ」
「どのくらい下がりましたか?」
「高い方が120(mmHg)で、低い方が80(mmHg)でした」
「そうですか、よかったですね」
「はい、これで安心です」
「早瀬さん、80mg/日への増量は、血圧が下がりすぎる場合もありますので、注意が必要です。できれば、家庭でも血圧を測ってくださいね」
「わかりました」と、早瀬さんは満足そうに答えてくれました。

薬物動態解析

 多くのくすりは投与量を増やすとそれに比例して薬物血中濃度が上がっていきます。このようなくすりは薬効や副作用の予測がしやすいのです。この場合の速度過程を、線形速度過程あるいは一次速度過程といいます。一方、少数ではありますが、投与量比以上に血中濃度が上がるか、または頭うちになる非線形速度過程を示すくすりがあります(図1)

 血中濃度が上がってくると代謝酵素が飽和してしまい、それ以上代謝されなくなるため、急に血中濃度が上がることがある非線形薬物には、フェニトイン散、パロキセチン塩酸塩水和物錠、テオフィリン徐放錠、プロパフェノン塩酸塩錠などがあります。このようなくすりはいつ薬効が増強されて、副作用がでるのか予測し難いので注意が必要です。逆に投与量を増やしても血中濃度が上がらない薬物もあります。

投与量により線形型から非線形型に変化するくすり

 テルミサルタンは40mgまでは線形速度過程を示しますが、投与量が80mgになると、消失速度がゼロ次速度過程を示し、血中濃度が投与比以上に上昇する飽和型非線形速度過程を示します。この症例の場合はその可能性を考えなければなりません。患者さんは、「血圧が30mmHgも下がった」と、喜んでいますが、薬剤師は"投与量が40mgから80mgと2倍になることは、血中濃度は3倍にも4倍にもなることで、急に効果が過剰に発現し副作用がでるかもしれない"と、実は心配しているのです。そこで、家庭血圧の測定を患者さんに指示しました。

 この場合とは逆に投与量が増えると血中濃度の上昇が頭打ちになる場合があります。バルプロ酸ナトリウム錠やサリチル酸メチルがそうです。表1にバルプロ酸ナトリウム錠の濃度別たん白結合率を示しました。

 バルプロ酸ナトリウムの濃度が高くなるとたん白結合率が低下します。そうすると遊離型のバルプロ酸ナトリウムが増えて、それらは血中から組織に移行し、比較的早く体外に排泄されていきます。従って血中濃度が徐々に低下していきますが、遊離型濃度は変わらないので注意が必要です。

図1線形型薬物と非線形型薬物

線形型薬物と非線形型薬物 線形型薬物と非線形型薬物

表1バルプロ酸ナトリウム錠の濃度別たん白結合率

添加濃度(μg/mL) 20 50 100 150 200
結合率(%) 91.39
±0.72
91.36
±0.20
88.63
±0.72
85.52
±0.74
80.03
±0.37

協和キリン(株)デパケンR錠100mg・200mg、2013年6月改定<第16版>添付文書より

結論

  • くすりは血中濃度が投与量に比例する線形型薬物と投与量比以上に上昇、または頭打ちになる非線形型薬物に分かれる。

  • 線形型薬物と非線形型薬物の薬物動態値の最も大きな違いは消失半減期に見られる。線形型薬物は投与量が増えても消失半減期は一定であるが、消失能依存性の非線形薬物は投与量によって消失半減期が変わる。

  • 非線形型薬物の急激な血中濃度の上昇による薬効の過剰発現や副作用には注意が必要である。

コラム

非線形薬物

「線形薬物と非線形薬物とではどちらが数が多いか?」と問われたら、「それは圧倒的に線形薬物である」と答えざるを得ません。それほど数には歴然とした差があります。しかし、「臨床上、どちらの注意が必要か?」と問われれば、「それは非線形薬物である」と答えるのに躊躇しません。つまり、非線形薬物を覚えていなければ、薬局窓口あるいは病棟、在宅での即座の対応はできません。表2に非線形薬物を表示しますので、しっかりと記憶に留めましょう。そして、新薬が出たときには"このくすりは線形型か非線形型かを最初に覚えましょう。

表2非線形型薬物

薬 効 成分名
フェニトイン型 抗てんかん薬
麻薬性鎮痛薬
抗うつ薬(SSRI)

気管支拡張薬
抗不整脈薬


降圧薬
抗生物質
フェニトイン
フェンタニール
パロキセチン
フルボキサミン
テオフィリン
アプリンジン
シベンゾリン
プロパフェノン
テルミサルタン
クラリスロマイシン
バルブロ酸型 抗てんかん薬
NSAIDs


副腎皮質ホルモン

抗不整脈薬
バルブロ酸
サルチル酸
イブプロフェン
ナプロキセン
プレドニゾロン
ヒドロコーチゾン
ジソピラミド

平田純生、薬局Vol.4、No.5、2005

サイトリニューアルに伴うログインについてのお知らせ

サイトリニューアルに伴い、ログイン用のIDをメールアドレスに変更いたしました。ログインできない場合はこちらのパスワード再設定画面で再設定いただくか、 こちらにお問い合わせください。

おすすめ情報

  • おすすめ情報は、協和キリンのウェブサイトにおける個人情報の取扱い方針に基づき、お客様が閲覧したページのアクセス情報を取得し、一定の条件に基づき自動的に表示しています。
    そのため、現在ご覧いただいているページの情報との関連性を示唆するものではございません。

くすり相談窓口

弊社は、日本製薬工業協会が提唱するくすり相談窓口の役割・使命に則り、くすりの適正使用情報をご提供しています。
弊社医薬品に関するお問い合わせは、下記の電話窓口で承っております。

フリーコール

0120-850-150

受付時間 9:00~17:30
(土・日・祝日および弊社休日
を除く)

※お電話の内容を正確に承るため、また、対応品質の維持・向上等のため通話を録音させていただいております。あらかじめご了承ください。

お問い合わせ