KYOWA KIRIN

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【鉄則その2】 腎排泄型薬物と肝消失型薬物

くすりには主に腎臓から未変化体で排泄される腎排泄型薬物と肝臓で代謝されて消失する肝消失型薬物およびその中間の性格を表す肝消失・腎排泄型薬物がある。

CASE

患者さんは、小森さん64歳女性。慢性糸球体腎炎である小森さんは、すでに成人した子供2人がいる元中学の理科教師です。この症例は、昔、腎臓の専門家であるU医師と薬剤師研修センターの仕事で全国講演をしたときに、U医師から教えていただいたものです。

[処方内容]

テモカプリル塩酸塩錠2mg
1錠
ファモチジン錠 10mg
1錠
1日1回朝食後服用
30日分

〈U医師の診察室にて〉

「小森さん、高血圧は糸球体腎炎の合併症だからしょうがないのだけれど、120/80mmHgだから、コントロールはうまくいっていますね」
「はい、ありがとうございます。発症当時はまだ若かったので血圧が上がってショックだったのですが、自覚症状は何もないし今は慣れました」
「そうですね。たん白も(+)と少量だし、血清クレアチニンも、尿素窒素も、そんなに上がってきてはいないからいいと思いますよ」
「ありがとうございます」
「胃の調子はいかがですか?」
「はい、痛くなることもありませんので、大丈夫です」
「それでは、くすりはこのままテモカプリル塩酸塩とファモチジンでいきましょうね」
「はい、わかりました。ところで先生、どうも風邪を引いたのか熱っぽくて、喉が痛くて、咳が出てきたのですが・・・」
「そうですか。熱は37度5分ですか・・・ちょっと、喉が腫れていますね。おくすりを出しておきますので飲んでくださいね」
「はい、わかりました」

2月18日、U医師は、(1)PL配合顆粒2g、(2)エプラジノン塩酸塩錠20mg 2錠、(3)クラリスロマイシン錠200mg 2錠、朝夕の処方をしました。3月17日、咳が続き、(1)ジメモルファンリン酸塩錠10mg 3錠、カルボシステイン錠250mg 3錠が加わりました。それから1カ月半が経過した4月14日、再びU医師の診察室でのことです。

「咳止めをのんでいるうちは、咳は出ないのですが、寝ているときに出ます。風邪は治っているのに、咳が止まらないのですが・・・」
 その言葉を聞いたU医師は、ハッと気がつきました。
「あっ、テモカプリル塩酸塩の咳だ! くすりを替えます。テモカプリル塩酸塩錠2mgを中止してバルサルタン錠40mgに変更!」
 咳は10 日後には完全に出なくなりました。

薬物動態解析

 くすりには腎排泄型薬物と肝消失型薬物、およびその中間型である肝・腎排泄型薬物があります。それを区別するのは尿中未変化体排泄率fuです。fuが1.0に近いのが腎排泄型薬物で、0.0に近いのが肝消失型薬物です。抗生物質を例にとると、アミカシン硫酸塩はfuが0.98で腎排泄型薬物、ミノサイクリン塩酸塩はfuが0.05で肝消失型薬物、エリスロマイシンはfuが0.57で肝・腎排泄型薬物です。

水溶性のくすりは腎排泄型、脂溶性は肝消失型の場合が多い

 尿中未変化体排泄率はデータがない場合も多いので、その代わりとして使えるのが油水分配係数Pです。油水分配係数は、"水に1.0溶けるときに油にいくつ溶けるか?"という値で、油水分配係数が1より大きければ脂溶性薬物、1より小さければ水溶性薬物です。プラバスタチンナトリウム錠は水に1.0溶けるとき、油に0.34しか溶けません。つまり、水溶性薬物です。通常、油水分配係数PはlogP(分配係数の対数)として表わされます。一見難しそうですが、却ってこれはわかりやすいのです。水溶性の場合はマイナス(-)、脂溶性の場合はプラスで表記されるからです。表1に、水のpHが7.0の場合のHMG-CoA還元酵素阻害剤の油水分配係数を示しました。幸いなことに水溶性のくすりは腎排泄型の性格を示し、脂溶性のくすりは肝消失型の性格を示す場合が多いのです。

もっとも大きな違いは腎疾患時および肝疾患時の薬物動態

 同系統のくすりであっても腎排泄型薬物と肝消失型薬物は、異なる態度を示すので区別しなければなりません。例えば、消化管吸収を見ると、腎排泄型薬物は吸収率が低いが一定であるのに対して、肝消失型薬物は吸収率が高いがばらつくことがわかります。
 もっとも大きな違いは腎疾患時および肝疾患時の薬物動態です。腎疾患時には腎排泄型薬物は血中濃度が上昇しますが、肝消失型薬物は変わりません。肝疾患時には腎排泄型薬物の血中濃度に変化はありませんが、肝消失型薬物は上昇したり、変化がなかったりと一定しません。腎疾患時には肝消失型薬物を使用したほうが、血中濃度の変化は少なく、逆に肝疾患時には腎排泄型薬物を使用したほうが肝臓への代謝負荷をかけることが少ないのです。

表1HMG-CoA還元酵素阻害剤の油水分配係数

薬 剤 油水分配係数(P) Log P
プラバスタチンナトリウム
アトルバスタチンカルシウム水和物
フルバスタチンナトリウム
シンバスタチン
0.47
16.22
55.00
100000.00
-0.33
1.21
1.74
5

水溶性のくすりは腎排泄型の
脂溶性のくすりは肝消失型の性格を表します。
出典:添付文書とインタビューフォーム

テモカプリル塩酸塩錠をバルサルタン錠に替えた理由

 前記の症例で、U医師がテモカプリル塩酸塩錠をバルサルタン錠に替えたのは、テモカプリル塩酸塩錠の発咳が原因です。テモカプリル塩酸塩錠のACE阻害薬(アンジオテンシン変換酵素阻害薬)としての作用が発咳物質としてのブラジキニンの分解を抑制していたのです。つまり発咳は薬理作用による副作用だったのです。テモカプリル塩酸塩錠が腎排泄型なので慢性糸球体腎炎を合併している患者さんのテモカプリル塩酸塩の血中濃度があがっていたのかもしれません。では、U医師はなぜ、テモカプリル塩酸塩錠をバルサルタン錠に変更したのでしょう? それはバルサルタン錠が肝消失型だからです。

尿中未変化体排泄率が低くても腎排泄型のくすりがある

 若干の例外はありますが、ACE阻害薬は腎排泄型で、ARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)は肝消失型となります。それは、表2の、バルサルタン錠の尿中未変化体排泄率が9~14%であることからも明らかです。それでは、尿中未変化体排泄率が3%のテモカプリル塩酸塩錠を、なぜ腎排泄型に分類したのでしょうか? それは活性代謝物を未変化体とあわせて考えて腎排泄型としたからです。つまり、代謝物に十分活性があり、それがそのまま尿中に排泄される場合は、尿中未変化体に含めて考えていきます。代謝物であっても腎排泄型なので、腎機能低下者は用量や副作用症状の発現に注意する必要があるのです。

表2ACE阻害薬とAII受容体拮抗薬の肝・腎排泄型

くすり 活性
代謝物
吸収率 尿中排泄率 肝・腎
排泄型
ACE シラザプリル水和物錠 + 80~100 未20+活性代謝物67%
テモカプリル塩酸塩錠 + 該当資料なし 未3%+ほとんど活性代謝物
ARB バルサルタン錠 + 53.03 未9~14%
テルミサルタン錠 + 約50 未2%以下

未:未変化
出典:添付文書とインタビューフォーム

結論

  • くすりには腎排泄型薬物と肝消失型薬物とその中間である肝・腎排泄型薬物がある。それを決めるのは尿中未変化体排泄率fuと油水分配係数Pである。

  • 尿中未変化体排泄率fuが1.0に近いのが腎排泄型薬物で、0.0に近いのが肝消失型薬物である。油水分配係数Pが1.0未満およびlogPがマイナスの場合は腎排泄型で、1.0以上またはプラスの場合は肝消失型である。

  • 腎排泄型薬物は腎機能低下時には排泄が少なくなり、血中濃度が上がる。従って肝疾患時には腎排泄型薬物を、腎疾患時には肝消失型薬物を選択することは合理的である。

コラム

肝抽出率による薬物動態の違い

 肝消失型薬物は初回通過効果の受けやすさの指標である肝抽出率(E)で分けることがあります。つまり、肝臓を最初に通過するときにほとんど(抽出率E≧0.7)代謝される高肝抽出率のくすりと少量(抽出率E≦0.3)しか代謝されない低肝抽出率のくすりおよびその中間に分けられます(表3)。 
 患者さんが高齢かまたは肝疾患がある場合には薬物の肝抽出率によって薬物動態が異なります。高肝抽出率薬物は最高血中濃度が上がりますが、低肝抽出率薬物は消失半減期が延長します。つまり、肝抽出率が高いくすりはCmaxが上がるので、効果が急に増強したり副作用が出現します。肝抽出率が低いくすりは消失半減期が延長するので、効果や副作用が持続します。図1にその違いを示しました。

表3肝抽出率Eによる肝クリアランス

E≦0.3 E=0.4~0.6 E≧0.7
カルバマゼピン
ジアゼパム
インドメタシン
ナプロキセン
ニトラゼパム
フェノバルビタール
フェニトイン
プロカインアミド
サリチル酸
テオフィリン
トルブタミド
バルプロ酸
ワルファリンカリウム
アスピリン
キニジン
コデイン
ニフェジピン
アルプレノロール
コカイン
リドカイン
ニコチン
ニトログリセリン
ペンタゾシン
プロプラノロール
ベラパミル

「GERONNTOKINETICS」1991、じほう、「分子薬物動態学」杉山他2008、南山堂

図1肝抽出率の違いによって薬物動態は変化する

肝抽出率の違いによって薬物動態は変化する

出典:「老年期の薬物動態学」1991、じほう

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