KYOWA KIRIN

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【鉄則その3】 定常状態がある薬物とない薬物

くすりにはやがて効いてくる定常状態がある薬物とすぐに効いてくる定常状態がない薬物がある。
それを決めるのは、投与間隔と消失半減期の比である。

CASE

患者さんは、佐藤さん57歳、男性。糖尿病と不整脈です。お菓子職人の佐藤さんは自分も甘いものが大好きですが、食事療法をきっちりとやり、運動療法も取り入れながら、経口剤のボグリボース錠の投与だけで糖尿病をコントロールしていました。しかし、今日の処方に新しいくすりが加わっていました。ナテグリニド錠とビソプロロールフマル酸塩錠です。

難しい微積分の計算なしで「薬物動態学」を服薬指導に活用できる

[処方内容]

  1. ナテグリニド錠90
    3錠
    ボグリボース錠0.2
    3錠
    朝昼夕食直前服用
    14日分
  2. ビソプロロールフマル酸塩錠5mg
    1錠
    朝食後服用
    14日分

「佐藤さん、今日は新しいおくすりが出されていますね」
「そうなのですよ。先生が"くすりを足しましょう"と言っていました」
「どうしたのですか?」
「最近、ときどき動悸がしていたのです。先生は期外収縮とか言っていました。それで、ひとつくすりが加わりました」 「そうですか。このビソプロロールフマル酸塩錠5mgがそうですね。脈を整えるくすりです」
「どきどきするのはすぐに治るのでしょうか?」
「いや~、このくすりはある程度体に溜まらなければ効かないので、少し時間がかかると思います」
「そうですか・・・、それと血糖値が高い状態が続いていて、"血糖値を下げるくすりを出す"と言われました」
「血糖値はどのくらいあったのですか?」
「朝ご飯を食べないで測ったのですが、150mg/dLだそうです」
「HbA1cはどうですか?」
「7.0でした。"間食していませんか?"と言われたのですが、お菓子の試作品を少し味見する程度なのですが・・・最近、秋の展覧会用の新作菓子を作っているので、確かに味見はいつもよりは多いかな、とは思います」
「そうですか。それでボグリボース錠と一緒に飲むこのナテグリニド錠というくすりが新しく処方されたのですね。これは、いいくすりですよ」
「血糖はすぐ下がりますか?」
「比較的早く下がりますよ。ただ、下がりすぎると低血糖になるかもしれないので、注意が必要ですね」
「わかりました。低血糖は起こしたことがないのですが、どんなふうになるのですか?」
「そうですね。まず、すごくお腹が空いたと感じると思います。そして寒気がして、冷や汗が出て、ふるえやめまいが出てきます。こんな症状になったら低血糖ですから、手持ちのブドウ糖や糖分をとってくださいね」
「はい、よくわかりました。気をつけます」

 佐藤さんは糖尿病治療への思いを新たにしたようです。もともとしっかりした病識を持っていて頑張ってきた佐藤さんのこと、きっといいコントロールをとりもどすことでしょう。

薬物動態解析

投与間隔/消失半減期≦3の場合、定常状態のあるくすり

 くすりの投与間隔τを消失半減期t1/2で割ってみましょう。その値が3以下なら、連続投与をするとくすりの血中濃度は徐々に上がっていき、やがて入ってくるくすりの量と出ていくくすりの量が等しい定常状態に達します。つまり、τ/t1/2≦3の場合は、そのくすりは定常状態があるくすりです(*)。定常状態到達時間は消失半減期の4~5倍の時間がかかり、くすりは定常状態に達したときに確実に効果を現します(図1)
 ところで、血中濃度はどうしてどんどん上がっていかないで、一定のふり幅を上下する定常状態になるのでしょうか? それはくすりが体内にいっぱいになればなるほど、いっぱい出ていくという一次消失速度過程を示すからです。

(*)参考文献:薬物動態を推理する55Question、P.25、2011、南江堂

図1定常状態があるくすりの血中濃度

定常状態があるくすりの血中濃度

患者とくすりがみえる薬局薬物動態学、2008、南山堂

投与間隔/消失半減期≧4の場合、定常状態のないくすり

 ここで、投与間隔と消失半減期の比が4倍以上になったらどうなるのか? という疑問が湧いてきます。その場合、体内にくすりが蓄積されていかないので、最初から最後まで同じ血中濃度パターンが続くことになります。この場合には、くすりが効果を現すのに定常状態が必要ではないということになります。つまり、最初の投与から効いてくるので、比較的薬効は早く現れます。
 例えば、グリメピリド錠は1日2回投与が認められているので、投与間隔は12時間です(図2)。消失半減期は1.47時間なので、投与間隔/消失半減期は8.16となり、定常状態がないくすりです。従って効果の発現は比較的早いと思われます。

図2定常状態がないくすりグリメピリド錠の例

定常状態がないくすりグリメピリド錠の例

患者とくすりがみえる薬局薬物動態学、2008、南山堂

佐藤さんへの服薬指導の根拠は

 ところで、佐藤さんに新しく加わったナテグリニド錠とビソプロロールフマル酸塩錠の投与間隔τ/消失半減期t1/2をみてみましょう。ナテグリニド錠は1日3回なので、投与間隔は8時間とします。消失半減期は1.27時間なので、τ/t1/2は6.3≧4となり、定常状態がないくすりだとわかります。従って、比較的効果の発現は早いのです。ビソプロロールフマル酸塩錠は1日1回なので投与間隔は24時間。消失半減期は8.8時間なので、τ/t1/2は2.73≦3となり、定常状態があるくすりだとわかります。
 以上のことから、佐藤さんへの服薬指導は「血糖を下げるくすり(ナテグリニド錠)は比較的早く効いてくるので、低血糖症状に注意してくださいね。(ビソプロロールフマル酸塩錠は定常状態があるくすりなので)心臓の動悸がなくなるには、3日間くらいはかかると思います。1日1回のくすりだから、忘れないで飲んでください」ということになったのです。
 ところで、3≦投与間隔τ/消失半減期t1/2≦4のくすりの場合はどうなるのでしょうか? これは基本的には定常状態に向けて蓄積していく範囲なのですが、実際は血中濃度が上がっていかない場合もあり、その時によって違うのです。グレーゾーンということで考えていきましょう。

結論

  • くすりは定常状態がある薬物と定常状態がない薬物がある。それを決めるのは、投与間隔と消失半減期の比で、3以下であれば定常状態がある薬物である。

  • 定常状態がある薬物の、定常状態到達時間は消失半減期の4~5倍の時間である。定常状態があるくすりが確実に効果を発揮するのは、定常状態に達してからである。

  • 投与間隔と消失半減期の比が4以上の、定常状態がないくすりの効果発現時間は比較的早い。

コラム

定常状態血中濃度を簡単に推測できる「蓄積率」

 定常状態血中濃度を簡単に推測できる方法があります。それは蓄積率を使う方法です。蓄積率とは、投与間隔τ/消失半減期t1/2の比をもとに推測する値で、定常状態の血中濃度は単回投与時の何倍か? を示す値となります(表1)。
 バルプロ酸ナトリウム徐放錠を例にしてみてみましょう。1回600mgを1日1回投与することにします。投与間隔は24時間で、消失半減期は12.18時間なので、τ/t1/2 は24hr/12.18hrで約2となり、表1より蓄積率は1.3になります。1日1回投与時の最高血中濃度は31.4μg/mLですので、600mgを1日1回連続投与したときの定常状態最高血中濃度は31.4μg/mL×1.3=40.8μg/mLです。バルプロ酸ナトリウム徐放錠の有効血中濃度は40~120μg/mLですから、1日1回600mgの投与では定常状態最高血中濃度がようやく下限の40μg/mLに届いただけなので、継続的な効果発現は期待できないかもしれないと判断できます。

表1蓄積率

投与間隔(τ)/消失半減期(t1/2) 蓄積率
>4.0
3.0
2.0
1.5
1.0
0.7
0.5
1.0
1.1
1.3
1.5
2.0
2.6
3.4

患者とくすりが見える薬局薬物動態学、P.15、2008、南山堂

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