KYOWA KIRIN

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【鉄則その4】 薬物のたん白結合率

くすりは、たん白と結合して薬理作用を現さない結合型と、たん白と結合していない薬理活性のある遊離型として体内に存在する。

CASE

患者さんは尾形さん、75歳男性。尾形さんは大手企業で技術者として働いていましたが、引退して今は家庭菜園に一生懸命です。尾形さんの病名は脂質異常症、発作性心房細動。今日、合併している前立腺肥大症に伴う排尿困難にタムスロシン塩酸塩錠0.2mgが加わりました。

[処方内容]

  1. ワルファリンカリウム錠1mg
    2錠
    タムスロシン塩酸塩錠0.2mg
    1錠
    朝食後内服
    14日分
  2. ベザフィブラート徐放錠200mg
    1錠
    ピルシカイニド塩酸塩水和物カプセル 50mg
    1P
    夕食後内服
    14日分

「尾形さん、いつも背筋がしゃんと伸びてお元気ですね」
「うん、オレは呆けることなんてないだろうと思っている」 「今回もしっかり2週間単位で飲んでいますね」
「くすりを飲み忘れることはまったくないよ。大切なくすりだもの。飲み忘れる人の気がしれない」
「尾形さん、最近不整脈はいかがですか?」
「不整脈は睡眠中が多かったので、夕食後にくすりを飲むようになってからは、ほとんど起きなくなったよ」
「よかったです」
「でも、まだときどき動悸がしていやな感じになることはある」
「そうですか。でもワルファリンカリウム錠が投与されているので安心ですね」
「うん」
「ところで、尾形さんは肝臓や腎臓を悪くしたことはなかったですよね」
「うん、それはないね」
「中性脂肪が高いのですが、食べ物はなにか注意していますか?」
「ワルファリンカリウム錠を飲んでいるので、納豆は好きだけど食べていないよ。その他の食べ物も注意している。ところでワルファリンカリウム錠の検査値は大丈夫かな?」
「INR(プロトロンビン時間国際標準比)は2.1で、T T(トロンボテスト)22%ですから、血液凝固能は目的を十分果たしていますね」
「そうか! 安心した」
「尾形さん、今日は排尿障害の治療薬が加わっていますね」
「うん、最近おしっこの切れが悪くて、ちゃんと出るのに時間がかかるようになってしまった」
「タムスロシン塩酸塩錠の追加ですね」
「初めて飲む薬だけど、何か注意することはあるのかなあ」
「実は、タムスロシン塩酸塩錠はα遮断剤という系統に属していて、血圧を低下させます。従って、血圧低下に伴う、めまいや立ちくらみが起きるかもしれないので注意が必要です」
「うん、今のところはそういう症状はないが、気をつけよう」

薬物動態解析

 今回加わったタムスロシン塩酸塩錠は尿中未変化体排泄率が13%と低いことから、主に肝代謝によって消失する肝消失型のくすりであることがわかります。また、タムスロシン塩酸塩錠は遊離型分率1%の高タンパク結合率を示す薬物です。さて、尾形さんに投与されたタムスロシン塩酸塩錠は、どんな注意が必要なのでしょうか?

血清アルブミン値から遊離型薬物濃度は推定できるか?

 以前は、血清タンパク結合率が高く遊離型分率が0.2以下の薬物では、タンパク結合率の変動により、臨床上で大きな問題が生じると考えられてきました。すなわち、タンパク結合率50%のくすりが40%へ低下したと仮定した場合、薬効を示して副作用の発現に関連する遊離型(タンパク非結合型)薬物濃度は、50%から60%とわずか1.25倍に上昇するにすぎないため効力にさしたる影響はありません。しかし、タンパク結合率が10%のくすりが20%になった場合、増加の程度は同じく10%ですが、遊離型濃度は2倍に増えて効力も2倍になるという推論から、そうした考えが生まれたのです。
 しかし、薬物動態理論や多くの臨床例に基づいて見直してみると、確かにタンパク結合率は変動するものの、結合型と非結合型を足した総薬物濃度も変動し、互いに相殺されて、遊離型濃度に変動が見られる例は少ないことがわかってきました。
 しかし、重要な問題がひとつ残されています。それは、薬物血中濃度は通常総血中濃度として測られていて、遊離型分率はわからないということです。特に、TDM(治療薬物モニタリング)などで総血中濃度のデータが得られている時には、その解釈に注意が必要です。多くの薬物では、血清中で結合しているタンパクは主にアルブミンであることから、血清アルブミン値を参照して遊離型濃度を推定することが可能です。"血清アルブミン値が低下すると、アルブミンと高度に結合している薬物の遊離型薬物濃度は上昇するのではないか?"という推測ができるからです。
 実際の例でみてみましょう。
(さらに遊離型薬物濃度の変化を推論する方法論がありますが、これは別の機会にアプローチしてみたいと思います)

薬効や副作用を現すのは遊離型薬物濃度である

 タムスロシン塩酸塩錠について考えてみましょう。タムスロシン塩酸塩錠は肝消失型のくすりなので、腎障害時には安心して投与できるはずですが、重篤な肝機能障害がある患者のみならず重篤な腎障害患者についても慎重投与になっています。表1にタムスロシン塩酸塩錠の薬物動態パラメータを示しました。

表1タムスロシン塩酸塩錠の薬物動態パラメータ

F 1.0 完全に吸収される
fu 0.13 主に肝消失
CLtotal 0.62mL/min/kg 消失能依存性
Vd 0.2L/kg 小さい
Pbfree 0.01 血漿タンパク結合依存性

添付文書、インタビューフォーム 他

 添付文書では、腎機能障害患者11名にタムスロシン塩酸塩錠0.2mgカプセルを投与したところ2名に血中濃度の上昇がみられたとあります。上昇の原因としては、血漿中α1酸性糖タンパク(α1-AGP)とのタンパク結合率が増加した可能性が考えられます。α1-AGPは腎障害時に血中濃度が上がる場合があるからです。しかし、実際には、薬効や副作用を発現する非結合型のタムスロシン濃度は上がっていませんでした。この現象は、血清アルブミンだけではなく、α1-AGP等の他の血清タンパクに対する結合に関しても、動態的な考え方があてはまることを示しています。
 添付文書での結論は「タムスロシン塩酸塩錠0.2mg、空腹時、単回経口投与した結果、腎障害患者ではα1-AGP濃度が上昇することがあり、これにより本剤のタンパク質結合型濃度は増加するが、非結合型濃度は変化しなかった」とあります。つまり、実際に薬効や副作用を現すのは総薬物濃度ではなく遊離型薬物濃度であることを認識することが大切なのです。

***

 タムスロシンは99%がタンパク結合型です。このため、血清タンパク濃度の減少により遊離型分率に増加が見られる可能性は高いのですが、遊離型濃度自体の変動に対してはそれほど神経質にならなくてよいと思われます。しかし、高齢のため、α1遮断作用による降圧作用の過剰な発現や副作用の出現に注意すべきことは言うまでもありません。尾形さんは、来局するたびに血圧測定などバイタルサインチェックが必要な患者さんということです。

結論

  • くすりはタンパクと結合した結合型分率と、タンパクと結合しない遊離型分率に分かれて血中に存在する。

  • 薬理効果を現すのはタンパクと結合していない遊離型のくすりである。

  • 血清タンパク濃度の変動によりタンパク結合率は変動しやすくなるが、一部の例外を除いて、遊離型濃度に大きな変化が認められる可能性は低い。

コラム

タンパク結合率

 望ましいくすりの血中濃度を求めるとき、タンパク結合率の変化や遊離型薬物分率の変化に注意が必要です。
 大部分のくすりはアルブミンと結合するので、薬物濃度が遊離型濃度に伴って変化することはありません。なぜならタンパク結合部位数は結合可能な分子数をはるかに上回っているからです。しかし、くすりの血中濃度が25~50mgを上回ると、アルブミンの結合部位が飽和することもあります。その際、遊離型分率は薬物血中濃度に伴って変動します。
 例えば、サリチル酸やバルプロ酸など、高い血中濃度が予想される場合などがそれにあたります。ただ、タンパク結合部位を飽和することがない多くのくすりの場合は、血中タンパク濃度とくすりとタンパクとの結合親和性が遊離型分率を決めます。
 血中タンパク濃度が低下すると、結合型薬物血中濃度は低下します。しかし、遊離型血中濃度は変化を受けません。従って、血中タンパク濃度の低下により遊離型分率は増加します。遊離型濃度が顕著に増加しないのは低タンパク濃度のために、血中に放出された遊離型薬物がただちに組織コンパートメントと平衡になるからです。

参考文献:改訂 ウインターの臨床薬物動態学の基礎、P.14、2005、じほう

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