KYOWA KIRIN

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【鉄則その5】 薬物総クリアランス

薬物総クリアランスは、単位時間当たり薬物を完全に除去することができる血液あるいは血漿の理論的な容量で、生体から薬物を消失する能力を表す。

CASE

武田さんは54歳の女性で、体重は50kg。専業主婦ですが、子供たちがみな成人したのでスーパーでレジのパート勤務をしています。慢性胃炎で処方は右記の通りです。今回は主治医から、「武田さんに抗不整脈薬を投与したい」ということで、メキシレチン塩酸塩の投与量に関する質問がありました。

[処方内容]

  1. ファモチジン錠10mg
    2錠
    朝食後と寝る前服用
    30日分
  2. アズレンスルホン酸
    ナトリウム水和物・
    L-グルタミン顆粒
    1.5g
    朝昼夕食後服用
    30日分

〈武田さんの主治医から〉
「武田さんだが、非持続型心室頻拍で、メキシレチン塩酸塩を投与したいのだが」
「心室性の不整脈なのですね」
「うん、そんなにひどくはないのだが、抗不整脈剤は初めての投与なので投与量はどう決めたらいいだろう」
「そうですね。"不整脈のくすりは不整脈を起こす"ですから・・・」
「けっこう投与量に幅があるのだね」
「メキシレチン塩酸塩は、50mgと100mgのカプセルがあるのでバラエティに富んだ投与量を選べます。ところで先生、武田さんは心不全や心筋梗塞などはありませんよね」
「うん、不整脈以外の心疾患はないよ」
「メキシレチン塩酸塩は治療域が明らかにされていますので、血中濃度を目安にして考えていったほうがいいと思います」
「そうか! そういう方法があったか!」
「メキシレチン塩酸塩の治療域は0.5~2.0μg/mLですが、どのあたりを目指したらいいでしょうか?」
「そうだなあ・・・初めての抗不整脈剤でもあるし、とりあえず下限の0.5μg/mLを目指してみようか」
「武田さんには内分泌系の異常はありますか?異常があると投与量が変わりますので」
「内分泌系の異常はないよ。腎機能、肝機能、血清脂質とも基準値以内だね」
「そうですか! それでは、メキシレチン塩酸塩定常状態平均血中濃度0.5μg/mLを目指して投与設計をしてみます」
「ところで、メキシレチン塩酸塩0.5μg/mLの血中濃度は測れるのかい?」
「はい。測定キットはないのですが、ラボに頼めば測定できます」
「それでは、一応測ってもらおうかな」
「はい、わかりました。メキシレチン塩酸塩は定常状態があるくすりなので、確実に効果を発揮する定常状態に達してから、測定してみましょう」
「いつ頃がいいだろう」
「消失半減期は10時間ですから、50時間、つまり3日間投与すれば定常状態に到達しますが、念のため1週間後に測定しましょう」
「そうか、それではお願いするよ」
「先生、外来での採血時間なのですが、武田さんにその日は朝のメキシレチン塩酸塩は飲まないで来ていただいてください」
「はい、了解しました」
 ということになりました。

薬物動態解析

 さて、医師から質問があったメキシレチン塩酸塩の適正な投与量を求めてみましょう。薬物総クリアランスは、単位時間当たり、薬物を完全に除去することができる血液あるいは血漿の理論的な容量なので、薬物量を血液容積で考えなければならないところに、感覚的な難しさがあります。薬物の体内からの消失速度Vは薬物血中濃度Cに比例します。そこで、比例定数をクリアランスCLとしたのです。つまり、

V=CL×C ⇒ CL=V/C

となります。このように、CLは薬物体内消失速度Vを、そのときの血中濃度Cで割った値です。従って、クリアランスCLが大きいということは、血中濃度あたりの消失速度が大きいということです。つまり、短い間にたくさんのくすりが体外に出ていくことを意味します。

抗不整脈薬の選択は難しく専門医でも試行錯誤の選択を迫られる

 ここで、薬物総クリアランスの役割を考えてみましょう。定常状態の平均薬物血中濃度Cssaveがわかったとしましょう。投与間隔間消失量は、薬物総クリアランスCLtotal×定常状態平均血中濃度Cssave×投与間隔時間τで表されます。投与間隔間に、この投与間隔間消失量を補充すれば、定常状態の平均薬物血中濃度を一定に保つことができます。つまり

CLtotal ×Cssave×τ=投与間隔間消失量

になるのです。
 抗不整脈薬の選択は難しいと思います。循環器の専門医といえども試行錯誤の選択を迫られる場合も多いとのことです。なお、メキシレチン塩酸塩の総クリアランスCLtotalは 0.36L/kgで、1日3回投与とします。

投与間隔間消失量=CLtotal×Cssave×τ

  =0.36L/kg×50kg×0.5mg/L×8時間
  =72mg

 メキシレチン塩酸塩の、塩係数Sは0.84。バイオアベラビリティFは0.83です。Cssave 0.5mg/Lを達成するには

Dose=

必要成分量
バイオアベラビリティF×塩係数S

72mg
0.83×0.84

 =103mg

となります。
 従って、定常状態平均薬物血中濃度を続けて保ちたいのなら、8時間ごとに、103mgのメキシレチン塩酸塩を投与すればいいことになります。つまり、実際的には1日3回、1回100mgのメキシレチン塩酸塩カプセル投与を推薦することになります。

結論

  • 薬物総クリアランスは単位時間当たり、薬物を完全に除去することができる血液あるいは血漿の理論的な容量である。

  • 投与間隔間消失量は、薬物総クリアランスCLtotal×定常状態平均血中濃度Cssave×投与間隔時間τで表される。

  • 従って、定常状態平均薬物血中濃度を保ちたいのなら、投与間隔間の消失薬物量を投与間隔間に投与すればよい。

コラム

クリアランスとは?

 クリアランスCLは薬物動態値の中で分布容積Vdと並んで、最も重要なパラメータですが、くすりの生体(臓器)によって消失させられやすさを血液の流速で表すので、なかなかわかりにくいのです。薬物が臓器xから消失していくことを想定しましょう。くすりは臓器xに血液によってのみ運ばれてきますので、くすりの臓器によって消失させられやすさを、その血流速度で表していることになります。臓器が短時間あたり完全に薬物を除去している血液の流速です。臓器に薬物を運搬して入ってくる血流速度をQxとすると、クリアランスCLxとQxの比Eは、臓器を通過することによって低下する薬物濃度の比率を表します。

E = CLx/Qx

消失速度定数kelとは?

 消失速度定数kelは

kel = CLtot/Vd

 薬物総クリアランスCLtotalは、全身をくすりを除去する臓器と考えた場合の除去能力の指標で、分布容積Vdはくすりが溶解(分布している)体液の架空の容量についての指標です。重要なのは、それらは独立した薬物動態値であることです。つまり、CLtotalとVdは互いに影響を与えることはありません。kelは独立して決められるCLtotalとVdの相対的な関係で決められていると理解することが大切です。ここで、Kel=0.693/t1/2ですから、変化するのは消失半減期t1/2ということになります。つまり、消失速度定数Kelすなわち消失半減期t1/2を決めているのはクリアランスCLと分布容積Vdのバランスであるということになります。消失半減期が変化した場合には、その背景にクリアランスCLと分布容積Vdの両者あるいは片方の変化によると考えられます。

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