KYOWA KIRIN

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【鉄則その6】 腎障害時の薬物投与量の決定

腎障害時の投与量は腎機能正常時の投与量から、腎機能低下によって体内に残る薬物量を引いた値として求められる。

CASE

患者さんは馬場さん70歳男性、45kg。退職教員で悠々自適の生活です。糖尿病で、発症は55歳のとき。真面目な馬場さんは食事療法とボグリボース錠のみで、糖尿病をコントロールしてきましたが、ここ2~3カ月、HbA1cが7.0から下がらなくなりました。

[処方内容]

  1. ボグリボース錠0.2mg
    3錠
    1日3回 毎食前服用
    14日分
  2. アログリプチン安息香酸塩錠25mg
    1錠
    1日1回 朝食後服用
    14日分

「馬場さん、HbA1cは2~3カ月前の馬場さんの摂生程度を表しているのですが、その頃、なにかコントロールを悪くするようなことがありましたか?」
「別に思い当たることはありませんが・・・」
「しかし、食前血糖値も138mg/dLと高めに推移していますし・・・」
「う~ん、しいていえばその頃、団地の高齢者クラブの会長を引き受けたことかなあ」
「そうですか。それはかなり忙しいのですか?」
「今年は高齢者クラブ結成の30周年の催し物をしなければならないので、何回か幹部の話しあいの場が設けられました」
「忙しいという理由で血糖値が上がることはないと思うのですが・・・」
「実は、おいしいものとお酒を少々持ち寄って、会議が終わってからみんなで楽しむのが恒例でして・・・」
「そうですか、それが原因かもしれませんね」
「1人で飲むときは缶ビール1缶と決めているのですが、みんなで話をしながらだと、つい飲みすぎてしまいます」
「そうですか・・・」
「それに、珍しいお酒やじまんの家庭料理とくれば、つい堪えきれなくなって・・・」
「気持ちはわかりますが・・・」
「先生には、『とりあえず、少しくすりを増やしてみましょう』と言われました。『コントロールが良くなれば、また元に戻す』とのことですが、ほんとに元に戻せるのでしょうか?」
「今回、血糖値を下げるくすりのアログリプチン安息香酸塩錠25mgが追加投与されていますね」
「そのくすりはどんなくすりなのですか?」
「馬場さんの血糖値が高くなったときに、インスリンの分泌を増やしますが、高くないときには膵臓に作用することがありませんので、比較的優しい血糖降下剤ですよ」
「そうすると低血糖になることは少ないのですね」
「そうですね。低血糖を起こしたことがあるのですか?」
「いや、ないのですが、ひどいときは昏睡で死んでしまうということを聞いたことがあります」
「今の組み合わせでは投与量が多すぎない限り心配ないと思いますよ」
「このくすりは通常どのくらい投与されるのですか?」
「ふつうは25mgですが、馬場さんは70歳で血清クレアチニンは1.2mg/dLなので少し多いかもしれませんね。馬場さんの適正な投与量はどのくらいかを調べてみますね」
「そんなことができるのですか! すごいですね。それではお願いします」
「はい、わかりました。少しお待ちくださいね」

薬物動態解析

 腎機能低下者の薬剤投与量は下記のGiusti-Hayton法によって求められます。つまり、常用量から腎機能低下によって蓄積されるであろう薬物量を引いて腎機能低下者の投与量を求めます。納得のGiusti-Hayton法(*)を作った、GiustiさんとHaytonさんに感謝しましょう。

(*)参考文献:薬物動態を推理する55Question、P.92、2011、南江堂

【Giusti-Hayton法】

Dose(r)=Dose-Dose × fu

  CLcr-CLcr(r)
CLcr

Dose(r):腎機能低下者の投与量
Dose:腎機能正常者の投与量
fu:尿中未変化体排泄率
CLcr:腎機能正常者のクレアチニンクリアランス
CLcr(r):腎機能低下者のクレアチニンクリアランス

 腎機能低下の割合は、腎機能低下者のクレアチニンクリアランス(CLcr(r))と腎機能正常者のクレアチニンクリアランス(CLcr)の比として求められます。この式を使うにはくすりの尿中未変化体排泄率fuと患者さんのクレアチニンクリアランスが必要になります。尿中未変化体排泄率は各薬物のデータに頼るほかありません。腎機能正常者のクレアチニンクリアランスは100mL /minを用いています。患者さんのクレアチニンクリアランスは通常はかられていない場合が多いのですが、下記の2つの方法で推測できます。

腎機能低下者のクレアチニンクリアランスを推測する方法

  1. (1)患者さんの年齢しかわからない場合は、25歳を過ぎるとCLcrは通常1%/年で低下するので下記の式を使う。

    CLcr=100mL/min-(年齢-25)×1.0%

  2. (2)血清クレアチニン(S-Cr)値と性別、年齢、体重がわかる場合には下記のCockcroft-Gault法を使う。

    M(男性):CLcr =

    (140-Age)×IBW
    72×S-Cr

    F(女性):M×0.85

    IBW:ideal body weight(体重)

 馬場さんの血清クレアチニン(S-Cr)は1.2mgで、添付文書ではS-Cr1.4mgから減量となっていますので、馬場さんの投与量はそのままでいいことになります。しかし、70歳と高齢であることから、腎機能を評価し、投与量を検討します。
 まず、Cockroft-Gault法の式から馬場さんのCLcrを推測してみよう。

CLcr=

  (140-70)×45kg  
72×1.2mg/dL

=36.5mL/min

 馬場さんの推測クレアチニンクリアランスは36.5mL/minです。アログリプチン安息香酸塩錠の尿中未変化体排泄率fuを0.7とし、腎機能正常者のCLcrを100mL/minすると、

Dose(r)=Dose-Dose × fu

  CLcr-CLcr(r)
CLcr

=25mg-25mg×0.7

  100mL/min-36.5mL/min
100mL/min  

=13.9mg

 馬場さんの適切なアログリプチン安息香酸塩錠の投与量は13.9mgとなります。従って、実際には12.5mg/日の投与量がふさわしく、しばらく経過を観察したのち12.5mg投与を推薦することになるでしょう。

結論

  • 高齢者も含めた腎機能低下者の投与量の決定にはGiusti-Hayton法が用いられる。

  • その際に必要なクレアチニンクリアランスは下記の2法によって求められる。

    (1) CLcr= 100mL/min(年齢-25)×1.0%

    (2) Cockroft-Gault法

      

    M(男性):CLcr =

    (140-Age)×IBW
    72×S-Cr

      

    F(女性):M×0.85

  • Giusti-Hayton法は下記の式で表される。

    Dose(r)=Dose-Dose × fu

      CLcr-CLcr(r)
    CLcr

     Dose(r):腎機能低下者の投与量
     Dose:腎機能正常者の投与量
     fu:尿中未変化体排泄率
     CLcr:腎機能正常者のクレアチニンクリアランス
     CLcr(r):腎機能低下者のクレアチニンクリアランス

コラム

人工透析に移行する日

 荒尾中央病院を訪ね、人工透析室を見せていただきました。複雑な人工透析器をつけたベッドが40床近くも整然と清潔に並んでいました。部屋の広い窓から外の緑が見えて気持ちがいい。臨床工学技師の方が、「ARBやACE阻害剤を服用している患者さんの血清カリウムはきっちりと落とさなくてはなりません」と親切に教えてくれました。それには、くすりの知識が必要です。
 慢性腎臓病のステージは通常下記のように分類され、治療されます。

表2CKDの重症度分類

CKDの重症度分類

「CKD診療ガイド2012」日本腎臓学会編より

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