KYOWA KIRIN

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【鉄則その7】 単回投与時の薬物最高血中濃度

単回投与時最高血中濃度は、投与時最大体内薬物量であるバイオアベイラビリティ×塩係数×投与量を、くすりが分布する場所の大きさである分布容積で割った値である。

CASE

千葉さんは48歳男性、体重60kg、上室性頻拍です。千葉さんは街の小さな郵便局に内勤しています。若いときは配達もやっていたので、道は路地裏まで詳しく知っており、たいていの世帯は家族構成まで頭に入っているといいます。地域密着の素晴らしい仕事ですね。今日は初めて抗不整脈剤が投与されました。

[処方内容]

  1. クロチアゼパム錠5mg
    2錠
    1日 朝夕 内服
    14日分
  2. ピルシカイニド塩酸塩水和物カプセル50mg
    1cap
    動悸がするとき
    10回分

「千葉さん、こんにちは! 今日はいかがなさいました。不整脈のくすりが出ていますね」
「はい、そうなのですよ。3カ月くらい前から、仕事中や飲酒後にときどき動悸を感じていたのですが、そのままにしておきました」
「そうですか・・・」
「はい、それで最近回数が多くなってきたので受診したところ、先生に『不整脈のくすりを飲んでみましょう』と言われました」
「そうですか、それでこのくすりなのですね」
「心房細動かもしれない、ということでした」
「心電図はとったのですか?」
「はい。でもそのときには異常はありませんでした」
「千葉さんは、このほかにくすりは飲んでいませんね」
「はい、飲んでいません」
「肝臓や腎臓の機能に異常はありませんね」
「はい、大丈夫です。ところで、ピルシカイニド塩酸塩って、1日何回飲むくすりですか?」
「通常は1日3回飲むくすりですが、千葉さんのように、症状が出そうになったときだけや、出たときに頓服で飲む処方も多いですよ」
「そうですか・・・動悸が始まると結構苦しいし、気持ちが悪いので、くすりをしっかり飲みたいのですが」
「では、頓服で有効なのかどうか、からだの中のくすりの量をみてみましょうね」
「はい、できれば先生に定期的にくすりを飲んで心房細動が出ないようにしてほしいとお願いしてくだされば嬉しいです」
「千葉さん、心房細動は、最初はときどき出る発作性で始まるのですが、だんだんくすりも増えて効果が薄くなっていく場合が多いのですよ」
「そうですか・・・」
「ですから、あんまり強くないくすりか、少量の投与から治療を始める場合が多いのです」
「そうなのですね・・・」
「とりあえず、ピルシカイニド塩酸塩50mg頓服で、血中濃度が十分効果が出るくらいに上がるかどうか推測してみますね」

 ということになりました。心房細動は良性の不整脈ですので、命に影響はないのですが、たまに症状が強い人がいるようです。ピルシカイニド塩酸塩水和物カプセル50mg頓服で収まってほしいのですが・・・。

薬物動態解析

薬物血中濃度の推測は条件がそろえば簡単にできる

 このように、薬物血中濃度を推測してみたいと思うことはよくあります。特に、最近は多くのくすりの治療域が明らかにされる場合も多いからです。果たして、血中濃度の推測は可能なのでしょうか?
 実は、多くの場合、条件さえそろえばいとも簡単にできてしまいます。条件とは薬物動態値が入手できるかどうか? ということです。
 単回投与時の最高血中濃度Cmaxは下記で表されます。

Cmax=

F×S×Dose
Vd

 ここで必要とされる数値は、バイオアベイラビリティ(生物学的利用率)Fとそのくすりが塩かエステルの場合には、塩やエステル部分を除いた有効成分の割合を示す塩系数Sおよび分布容積Vdです。

分布容積Vdとは?

 では、分布容積Vdとはなんでしょうか? くすりが血中濃度と同じ濃度で体内に分布したとき、その容積はどのくらいの大きさになるのか? というくすりが分布する場所のみかけの大きさの指標で、リットル(L)で表されます。
 薬物血中濃度Cと体内薬物量Xは比例します。そこでその比例定数を分布容積Vdとしました。

X=Vd×C

 ところがXもCも刻々と変化して定まりません。そこで定まる1点を投与直後と決め、初期血中濃度Coとしました。初期投与量をXoとすると、

Vd=Xo/Co

としたのです。これが初期分布容積です。Vdが大きいということは、初期血中濃度Coと比較して体内薬物量Xoが大きいということなので、組織移行が大きいということです。各くすりの分布容積Vdは、数値があれば提供されます。ピルシカイニド塩酸塩水和物カプセルの薬物動態値は下記の通りです。

  • 1. 有効血中濃度:0.2~0.9μg/mL
  • 2. Vd:1.48L/kg×60kg=88.8L
  • 3. F:0.8
  • 4. S:1.0

 最高血中濃度は下記の式で計算されます。

Cmax=

  F×S×Dose  
Vd

 =

  0.8×1.0×50mg  
88.8L

=0.45mg/L=0.45μg/mL

 頓服投与でも、サンリズムは有効血中濃度0.2~0.9μg/mLの中間あたりまで上昇することがわかります。千葉さんに、頓服服用を自信をもって勧めることができます。

結論

  • 単回投与時最高血中濃度Cmaxは

      

    Cmax=

      F×S×Dose  
    Vd

    で表される。

  • 分布容積Vdは血中濃度と体内薬物量の比例定数で、くすりが血中濃度と同じ濃度で体内に分布するとしたときの、くすりが分布する場所のみかけの大きさを表す。

  • 最大血中濃度Cmaxの大きさは分布容積に依存する。分布容積Vdが大きいとCmaxは小さく、分布容積Vdが小さいと大きい。

コラム

有効血中濃度とは

 有効血中濃度が示されているくすりは15年ほど前に調べたときには142品目でしたが、現在300品目以上はあると思います。実はこの薬物血中濃度は一般的な血中濃度で、単なる目安に過ぎないと思います。ですから、鵜呑みにするのも危険かなあと思っています。
 用量反応曲線はいわゆるS字を示すのですが、このS字カーブは同じくすりでも人によって異なる形を示します。つまり、例えばAさんのように低い濃度で的確な効果を示す人もいれば、Bさんのように低い濃度では効果が小さくて高い濃度を必要として、高い濃度でも副作用を示さない人もいるわけです(表1)

表1ジゴキシンの作用反応曲線

ジゴキシンの作用反応曲線 ジゴキシンの作用反応曲線

 例えばジゴキシンの有効血中濃度はインタビューフォームやウインターの臨床薬物動態学の基礎では0.8~2.0ng/mLとされていますが、これは少し高すぎるような気がします。
 最近、ジゴキシンは心不全患者に対する有効血中濃度は0.5~1.0 ng/mLであると考えている専門家が多いようですね。また、最適血中濃度は0.9 ng/mLというデータもみられます。このように有効血中濃度が低く設定されたのは、 多くの左心室不全患者において血中濃度を高く維持しても治療効果は維持できないということがわかってきたからです。
 最近は、主流がメチルジゴキシン錠は0.1mg錠から、0.05mg錠へ、ジゴキシン錠は0.25mg錠から0.125mg錠に移って来ているように感じます。その人の個別な有効血中濃度はどのくらいかということを、ジゴキシン血中濃度と心拍数の関係などから的確に推理していくことが必要であると思われます。

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